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2008年 インペリアル・シュガー粉じん爆発|衛生のための密閉が、爆発の器になった

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2008年2月7日午後7時15分ごろ、米国ジョージア州のインペリアル・シュガー社ポートウェントワース工場で、粉じん爆発が起きました。14名が亡くなり、36名が負傷しています。

爆発が始まった場所は、前年に取り付けられたコンベヤのカバーの内側でした。

そのカバーは、安全のために付けたものではありません。異物混入を防ぐために付けたものです。

この記事の要点

  • 衛生のための密閉が、無換気で爆発性濃度に達する空間を作った
  • 80年以上無事故。密閉工事から1年未満で工場が壊れた
  • 二次爆発は縦(階段室)にも横(スクリューコンベヤ)にも伝わった
  • 堆積の許容は1/32インチ。現場の記録は「膝の深さ」
  • 2週間前、放散口のある設備では小爆発が安全に逃がされていた

1. 何が起きたのか

一次爆発は、粒糖貯蔵サイロ1・2の下にある、密閉されたスチールベルトコンベヤの内部で起きました。

CSB報告書の記述です。「数秒後、大規模な二次粉じん爆発が、粒糖・粉糖の包装棟全体、バルク糖積込棟、原糖精製部の一部へ伝播した。」

就任9日目の新CEOが従業員3名と工場を見学中でした。包装棟の方向で「フォークリフトから重い包装材ロールが落ちたような音と衝撃」を感じ、3〜5秒後に大爆発で吹き飛ばされています。

起きたこと
3インチ厚のコンクリート床が持ち上がり、座屈した
パレタイザー室の木造屋根が粉砕され、鉄道積込エリアへ吹き飛ばされた
頭上の面から振り落とされた糖粉が着火し、激しい火球が包装棟・パレタイザー棟の全体を進行した
激しい火球が15分以上にわたり施設から噴出し続けた
スプリンクラー系統は爆発で配管が破断し、機能しなかった
一部の非常口は、崩落した煉瓦壁と瓦礫で塞がれた
105フィート高のサイロ内の糖の火災は7日以上くすぶり続け、2月15日に専門会社が消火

被害

区分内容
死者 14名従業員12名+請負業者2名
 現場で死亡 8名4名は落下瓦礫と床の崩落で閉じ込められて焼死。他4名は火災から脱出できず。うち2名は、同僚を救助するため燃える建屋に再突入した人
 熱傷センターで死亡 6名最後の1名は、事故から6か月後に亡くなった
負傷 36名19名が重度熱傷。一部は永久的で生活を一変させる障害を負った
建物包装棟、粒糖サイロ、パレタイザー棟が全壊

2. 一次爆発は、去年つけたカバーの中で起きた

CSBの判定は明快です。

「最初の粉じん爆発が、糖サイロ下の密閉されたスチールベルトコンベヤ内で開始した。ベルトコンベヤに最近設置されたスチール製カバーパネルが、囲い内部に爆発性濃度の糖粉が蓄積することを許した。」

――CSB報告書 Executive Summary

なぜ密閉したのか

2007年、同社はサイロ下トンネルとペントハウスの粒糖ベルトコンベヤを密閉しました。糖の汚染(異物混入)に関する懸念に対処するためです。

食品工場として、まっとうな動機です。問題は、その先です。

  • 新しい囲いの内部で可燃性粉じんが発生・蓄積することに伴うハザードを、評価しなかった
  • 囲い内部で糖粉が最小爆発濃度に達しないようにする集じん系を、設置しなかった
  • 囲いに爆燃放散口を装備しなかった

密閉によって何が変わったのか。報告書は、数字で示しています。

「新しいスチールベルト囲いの容積は、サイロトンネルの容積の10分の1であった。」

密閉前は、粉じんはトンネルの大容積に放出されていました。トンネル内の気流も濃度を低く保っていました。だから――

「浮遊糖粉が着火可能濃度に達することは、おそらく一度もなかった。」

「80年以上、この工場はサイロトンネル内で開放型のスチールベルトコンベヤを事故なく運転していた。しかし密閉工事の完了から1年未満で、サイロと包装棟は破壊された。」

――CSB報告書 §3.3.3

これは変更管理の失敗です。設備を追加したのではなく、既存の設備にカバーを付けただけ。プロセスも物質も変わっていません。だからこそ、リスクレビューの対象になりませんでした。「閉じ込め」という、爆発の必要条件の1つが増えたことに、誰も気づかなかったということです。

燃料を、ベルトに乗せた作業

では、なぜその囲いの中で濃度が上がったのか。

事故に先立つ3〜4日間、作業者はサイロ1の排出孔に詰まった糖の塊を、鋼棒で砕く作業をしていました。

その間も、サイロ2からの糖はベルト上へ流れ続けていました。

  • 動いているベルトとサイロ1の排出シュートの間に、糖の塊が挟まった可能性が高い
  • 塊が「ダム」になり、サイロ2から来た糖が上流でベルトから溢れた
  • 溢れた糖が囲い内部に堆積し、ベルトが糖の山の中を通る状態になった
  • ベルトのリターンループは、トンネル床から10インチ未満。作業者は「飛散した粒糖がリターンループと支持ベアリングを覆うことがあった」と証言

最後の1行が、着火源につながります。

着火源は特定されていない。ただし最有力は

報告書は、こう書いています。「爆発と長時間の火災による破壊の程度が、一次爆発のもっともらしい着火源の特定を妨げた。」

そのうえで、原因の項では「スチールベルトコンベヤの過熱したベアリングが、一次粉じん爆発に着火した可能性が最も高い」と明記されています。

候補CSBの判定と根拠
電気スパーク可能性が低い。焼け残ったリミットスイッチ2個は防爆定格だった
過熱ベアリング最有力。作業者が「ベアリングが時々故障して非常に熱くなった」と証言。糖粉じん雲の最小着火温度は360〜420℃だが、滞留時間が長いほど低下する
摩擦火花最も可能性が低い(排除はせず)。炭素鋼の摺動火花は接触速度が約9.2 m/s超でないと着火しにくいが、ベルト速度は1.5 m/s未満と推定
裸火排除。喫煙は指定区域のみ、火気作業は許可制で監視員配置

飛散した糖がベアリングを埋め、ベアリングが過熱し、同じ囲いの中で糖粉が爆発濃度に達していた。燃料・着火源・閉じ込めの3条件が、1つの改造と数日の詰まり除去作業で同時に揃いました。

3. 二次爆発 ― 縦にも横にも伝わった

粉じん爆発が恐ろしいのは、一次爆発そのものではなく連鎖です。この事故は、その伝播経路が詳しく記録されています。

段階経路
サイロトンネル内の密閉ベルトコンベヤで一次爆発
過圧波が3つのサイロ室へ(各室の床には、トンネルに通じる直径12インチの孔が最大4個あった)
縦方向 ― サイロ1と2の間を上昇し、南階段室へ抜けて、煉瓦壁を包装棟内へ吹き飛ばした
高所面の糖粉が舞い上げられ、包装機周辺の床の糖が火球の燃料になる
床が座屈し、床上に堆積していた糖が下階へ降り注ぎ、進行する火球にさらに燃料を加えた
水平方向 ― スクリューコンベヤが導管となり、火球が数百フィート先まで伝播。バルク糖のスチール製ビンを破裂させた

包装棟南壁のスチールサッシ窓の一部は、200フィート以上吹き飛ばされています。

⑥に注目してください。スクリューコンベヤやダクトは、本来「粉じんを飛散させないための設備」です。それが、火球の高速道路になりました。密閉搬送設備は、粉じん爆発では伝播経路として設計に組み込む必要があります。

報告書は、この連鎖の中で起きる圧力積み上げ(pressure piling)も説明しています。「急速に燃焼する粉じん雲の前方を進む圧力波が、さらに粉じんを空中に舞い上げ、進行する火球に燃料を供給し、設備内部の圧力をさらに高める。」

4. 1/32インチと、膝の深さ

二次爆発の燃料は、床と高所に積もっていた糖です。では、どれくらい積もっていたのか。

基準(NFPA 654)天井高10〜12フィートの部屋では、高所水平面の堆積は1/32インチ(約0.8mm)を超えるべきでない
現場の記録爆発に先立つ1年間、品質監査と作業者の傷害報告に、飛散糖が「膝の深さ」に達していると記録されていた

0.8mm に対して、膝の深さ。

CSBの主要所見の1つは、この点を正面から述べています。

「二次粉じん爆発、施設全体への火災の急速な拡大、およびその結果としての死者は、同社が頭上および高所の作業面から糖粉を除去し、包装棟全体の大量の飛散糖を除去する日常的な整理整頓の方針・手順を徹底していれば、おそらく発生しなかったであろう。」

――CSB報告書 Key Findings 第8項

掃除で14名の死を防げた、と読める記述です。粉じんを扱う工場で、清掃が安全設備と同格である理由がここにあります。

知らなかったわけではない

  • 同社と業界は、1925年に遡って糖粉じん爆発の危険性を認識していた
  • 1958年という早い時期に、この工場の管理者が適切な粉じん取扱設備と良好な整理整頓の重要性を強調していた。しかし行動を取らなかった
  • 過熱ベアリングや電気機器を原因とする糖の火災が、長年にわたり包装棟で発生していた
  • 2007年10月に出たOSHAの可燃性粉じん重点プログラムを、直後にレビューし配布していた。しかし堆積を除去する行動は取らなかった
  • 2007年5月に外部が実施したリスクアセスメント報告書は、可燃性粉じんハザードを適切に扱っていなかった

CSBは、こうまとめています。「経営陣も両工場の管理者・作業者も、ニアミスの継続的な履歴があったにもかかわらず、糖粉じんが及ぼす重大なハザードを認識していなかった。」

5. 2週間前に、答えは出ていた

報告書に、ひときわ重い一文があります。

「2月の事故の2週間足らず前、包装棟屋上の乾式集じん機で小規模な爆発が起き、集じん機を損傷したが、爆燃放散パネルにより安全に放散された。」

同じ工場で、同じ糖粉じんが、2週間前にも爆発しています。

違ったのは、爆燃放散口が付いていたかどうかだけです。

設備放散口結果
屋上の乾式集じん機(2週間前)あり設備を損傷したが、安全に放散
新設のベルトコンベヤ囲い(2月7日)なし14名が死亡

同一施設内で、これ以上ないほど明快な対照が成立していました。そして2週間前の爆発は、事故を防ぐ行動につながりませんでした。

なお報告書は、サイロトンネル内のコンベヤについては放散口の設計が現実的でなかったとも書いています。建屋中央の1階にあり、外壁・屋根から遠かったためです。放散口を付けられないなら、そもそも密閉してはいけなかった――そういう順序の話になります。

6. 「Kst が小さいから大丈夫」は成り立たない

CSBが実測した粉体特性です。

物質平均粒径PmaxKstMECMIE
粉糖23 µm7.5 bar13995 g/m³10〜30 mJ
粒糖(500µm篩下)286 µm6.0 bar56115 g/m³1,000 mJ 超
粒糖(受入まま)5.2 bar35115 g/m³1,000 mJ 超

Kstによる危険等級はST 1(1〜200)。分類上は最も弱い区分です。

それでも、試験セル内で5.2〜7.5 bar(約76〜110 psig)の過圧を発生させています。普通の建屋も設備も、この圧力には耐えられません。

もう1つ、表の右端を見てください。粒径が下がるだけで、最小着火エネルギーが2桁変わります。

受け入れる粒糖は 1,000 mJ 超で、そう簡単には着火しません。しかし搬送や落下で微粉が生じれば、10〜30 mJ の世界に入ります。同じ物質が、粒径だけで別物の危険物になります。

7. 逃げられなかった

CSBが挙げた原因の7番目は、避難です。

「緊急避難計画が不適切だった。避難訓練は実施されておらず、緊急時に避難を促す速やかな作業者への通知も不適切だった。」

具体的には――緊急通報は2ウェイ無線と携帯電話の使用者にしか行われず、多くの作業者は対面の口頭連絡に頼らざるを得ませんでした。そして会社は、避難訓練を実施していませんでした。

亡くなった14名のうち、2名は同僚を救助するため、燃える建屋に戻った人でした。

8. 自分の工場で確かめる5つのこと

  • 粉体設備に「カバーを付ける」変更を、リスクレビューにかけていますか。閉じ込めが1つ増えます
  • 密閉した搬送設備に、爆燃放散口はありますか。付けられない場所を密閉していませんか
  • 高所(梁、配管上、ダクト上)の堆積を、見たことがありますか。床だけ掃除していませんか
  • スクリューコンベヤやダクトが、伝播経路になることを想定していますか。
  • 受け入れる粒体と、工程内で生じる微粉を、別物として評価していますか。

まとめ

  • 異物混入対策の密閉が、無換気で爆発濃度に達する空間を作った
  • 80年以上無事故、密閉から1年未満で全壊
  • 二次爆発は階段室とスクリューコンベヤを通って広がった
  • 許容堆積1/32インチに対し、現場の記録は「膝の深さ」
  • 2週間前、放散口のある設備では同じ爆発が安全に逃がされていた

「良かれと思って付けたカバー」が事故の器になる。変更管理にプロセス安全の視点が入っているかどうかは、こういう形で問われます。

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参考文献

※本記事中の事実関係・数値・引用は、上記CSB報告書の記述に基づいています。日本語訳は筆者によるものです。