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「このファンは電気を使いすぎていないか」と聞かれて、すぐに答えられる現場は多くありません。DCSには電流値とダンパ開度があっても、実際の風量が記録されていない送風機が多いからです。
電流だけを見て「定格の7割だから余裕がある」と判断したり、カタログの三乗則だけで「インバータにすれば半分になる」と見積もったりすると、効果を外します。送風機の無駄を正しく見つけるには、風量・圧力・電力を同じ時刻に測り、空気の密度をそろえて性能曲線に載せることが必要です。
この記事では、化学メーカーの設備・生産技術のエンジニアと、測定に立ち会う運転員向けに、机上での当たり付けから、ピトー管による風量測定、測定断面の選び方、電力の測り方、密度補正、効率の出し方、省エネ効果の概算までを順に説明します。
この記事の結論
- 省エネ診断は「運転記録で当たりを付ける → 現地で風量・圧力・電力を同時に測る → 密度を補正して性能曲線に載せる → 対策と効果を見積もる」の順で進めます。
- 電流値と静圧だけでは運転点の風量は決まりません。 省エネ量を見積もるなら、ピトー管などで風量を実測します。
- 測定断面は、曲がりやダンパから離れた一様断面の直管部に置き、旋回がないことを確かめます。 現場で確保できない場合は、測定精度が下がることを前提に扱います。
- 電力は電力計で測るのが基本です。 電流×電圧で計算するなら力率が要り、電流比だけで軽負荷の電力を推定すると誤差が大きくなります。
- 性能曲線と比べる前に、測定値を曲線と同じ空気密度へ換算します。 圧力と動力は密度に比例して変わります。
- 効果の概算は負荷帯ごとの必要風量・必要圧力から積み上げ、三乗則は固定抵抗がない場合の目安にとどめます。
1. 省エネ診断は4段階で進める
送風機の省エネ診断は、いきなり機器を替える話ではありません。まず「送風機が作っている圧力のうち、プラントが本当に必要としている分はいくらか」を明らかにします。
| 段階 | やること | 主な情報源 | ここで分かること |
| 1. 机上診断 | 運転記録、ダンパ開度、電流、銘板・性能曲線を並べる | DCSトレンド、日常点検記録、仕様書 | 無駄がありそうか、どの運転条件を測るべきか |
| 2. 現地測定 | 風量、吸込・吐出静圧、電力、気温・気圧・湿度を同時に測る | ピトー管、圧力計、電力計、温湿度計 | 実際の運転点と入力電力 |
| 3. 評価 | 密度を補正し、性能曲線と抵抗曲線に運転点を載せる | 工場試験の性能曲線 | 風量過剰、抵抗増加、性能低下のどれか |
| 4. 対策と効果 | 負荷帯ごとに対策後の動力を見積もり、年間電力量で比べる | 運転パターン、対策案 | 対策の優先順位と投資判断の材料 |

省エネの検討には、風量と圧力がプラントの負荷とどう対応しているかのデータが要ります。1日のうちでの変化、月や季節による最大・最小も含めて、想定されるすべての運転条件について測ることが、診断の手間の大半を占めます。
2. 机上診断|運転記録から当たりを付ける
現地測定の前に、手元の資料と運転記録で次の点を確認します。どれも「送風機が必要以上の仕事をしている」ことの手がかりです。
| 確認すること | 見る記録 | 疑う無駄 |
| 実際の送風抵抗が銘板の静圧に近いか | 吸込・吐出圧力、主要機器の差圧 | 計画時の圧力余裕のとりすぎ |
| ダンパを大きく絞っていないか | ダンパ・ベーン開度の長期トレンド | 能力過大をダンパで捨てている |
| 送風機の直前・直後に曲がりがないか | 配管図、現場写真 | システムエフェクトによる性能低下 |
| ダクト内の風速が速すぎないか | ダクト寸法と風量 | 管路抵抗の増大 |
| フランジや点検口から漏れていないか | 系統ごとの風量収支、現場の音 | 漏風の分まで送風している |
| フィルタ、ダクト、羽根車が汚れていないか | 差圧の経年トレンド、清掃履歴 | 抵抗増加で回転速度や開度を上げている |
| 排気末端の吹出し速度が大きくないか | 放出口の寸法 | 出口で捨てる動圧 |
| 必要のない時間も送風していないか | 運転時間と生産の対応 | 停止や減風ができる時間の運転 |
日常点検で電流、電圧、吸込・吐出圧力、ダンパ開度を記録していれば、それだけで傾向が見えます。ダンパ開度が長期間小さいまま、あるいは差圧が年々増えている送風機は、優先して測る候補です。
運転中に風量を簡単に測れない場合は、吸込側と吐出側の静圧差から送風機静圧を求め、電流計の値と定格電流の比から動力の目安を出す方法もあります。ただし、この方法ではダクトやダンパの圧力損失はおおよそ分かっても、運転点の風量は精度よく決まりません。 省エネ量を数字で出す段階では、風量を実測します。
3. 現地では何を同時に測るか
測定値は、同じ運転状態のものをそろえないと比較できません。風量を測った10分後に電力を読むと、その間にダンパやプロセス負荷が変わっているかもしれません。風量・圧力・電力・空気状態は、同じ時間帯に、運転条件を固定して測ります。
| 測定項目 | 測る場所・方法 | 使い道 |
| 大気圧 | 気圧計 | 絶対圧と密度の計算 |
| 乾球温度・湿球温度(または相対湿度) | 風量測定断面 | 湿り空気の密度 |
| 風量測定断面の静圧・動圧 | ピトー管トラバース | 風量 |
| 送風機吸込口・吐出口の静圧 | 管壁の静圧孔 | 送風機静圧・全圧 |
| 主要機器・ダンパの差圧 | 前後の静圧孔 | 抵抗の内訳、ダンパで捨てている圧力 |
| 入力電力(電圧・電流・力率) | 電力計、盤の計器 | 電力と効率 |
| 回転速度、ダンパ・ベーン開度、周波数 | 回転計、DCS | 操作量と運転点の対応 |
| 生産量・プロセス条件 | DCS | 必要風量との関係 |
測定口の寸法、ダクトの内寸、送風機の吸込口・吐出口の面積も控えておきます。面積が分からないと、動圧から風量や吐出口の動圧が計算できません。
4. 静圧・動圧・全圧と送風機静圧
送風機の圧力には、静圧・動圧・全圧の3つがあります。
- 静圧:流れに平行な面を押す圧力。管壁に垂直にあけた穴で測る。送風抵抗に打ち勝つための圧力
- 動圧:流れの運動エネルギーを圧力で表したもの。動圧=ρv²/2(ρ:密度 kg/m³、v:流速 m/s)
- 全圧:静圧+動圧。流れに正対させたピトー管の先端で測る
たとえば密度1.2 kg/m³の空気が10 m/sで流れているとき、動圧は1.2×10²/2=60 Paです。
送風機の性能は、吸込口(添字1)と吐出口(添字2)の差で表します。
- 送風機全圧=吐出口の全圧-吸込口の全圧=(ps2-ps1)+(pd2-pd1)
- 送風機静圧=送風機全圧-吐出口の動圧=ps2-ps1-pd1
ゲージ圧で測ると、吸込側の静圧はマイナスになります。たとえば吸込静圧-2.0 kPa、吐出静圧+0.35 kPa、吸込口の動圧0.18 kPaなら、送風機静圧は0.35-(-2.0)-0.18=2.17 kPaです。吸込側のマイナス符号を落とすと、送風機静圧を大きく見誤ります。

メーカーのカタログの性能曲線は、通常、風量に対する送風機静圧で描かれています。一方、工場試験の成績書では送風機全圧で整理されていることもあります。現場の測定値を曲線に載せるときは、曲線が静圧か全圧かを確認し、同じ定義で計算します。 性能曲線の読み方は送風機の性能曲線と運転点で解説しています。
静圧孔は直径3 mm前後で、管壁の内面に突起が出ないように仕上げます。大きすぎると動圧が入り、小さすぎるとダストや水滴で詰まります。1断面につき上下左右の4か所で別々に測って平均し、4か所の値が大きく違うときは、平均せずに原因を確かめるか、測定位置を変えます。 吸込側の静圧孔は、吸込口から等価直径の1/2以上離すのが望ましいとされています。
5. 風量の測り方|ピトー管トラバース
現場で最もよく使われるのは、ピトー管をダクト断面の決められた点へ順に差し込み、各点の動圧を測る方法です。これをトラバースと呼びます。
各点の流速は次式で求めます。
v=C×√(2×pd/ρ)(v:流速 m/s、pd:動圧 Pa、ρ:その断面の空気密度 kg/m³、C:ピトー管係数)
標準ピトー管(L形)の係数は1として扱います。風量は、断面の平均流速にダクト断面積を掛けて求めます。
Q=A×v平均(Q:m³/s、A:m²。60を掛ければm³/min)
ここで注意したいのは平均のとり方です。流速は動圧の平方根に比例するので、動圧をそのまま算術平均せず、各点の流速(動圧の平方根)を平均します。 動圧を平均してから平方根をとると、流速分布が偏っているほど風量を大きく見積もります。
測定点は、円形ダクトでは直径線を3本とり、各直径上に8点ずつ置くlog-linear法、長方形ダクトでは格子状に点を置くlog-Tchebycheff法が使われます。円形では管壁に近いほど点の間隔が狭くなり、長方形でも壁のすぐ近くに点を置きます。どちらも中心の1点だけで代表させない配置です。測定点は最低でも24点とし、断面積が大きいダクトでは0.2 m²に1点以上を目安に増やします。
ピトー管の種類と計測上の注意は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 標準ピトー管(L形) | 清浄な空気向け。気流に対して±5°以内の傾きなら全圧・静圧への影響は小さく、動圧は±10°程度まで影響しないとされる |
| S形(ウェスタン形)ピトー管 | ダスト濃度が高いガスや湿ったガス向け。係数は0.85前後で個体差があるため、購入後に検定して使う |
| 小径ダクト(内径400 mm以下) | 最外側の測定点で管壁の影響を受けやすい。オリフィス板や吸込ノズルを検討する |
| 差圧計 | 動圧が小さいときは傾斜マノメータやデジタル微差圧計で拡大して読む。傾斜マノメータは水平に据え、拡大率を確認する |
| 熱線風速計 | ダストやミストがある気流では使えない |
| 超音波・レーザ(ドップラ)式 | ダスト粒子と気体の速度が違う条件では注意が必要 |
圧力が高いブロワーでは、ダクトにオリフィス板を入れて前後差圧から風量を求める方法もあります。流量計の原理と選び方は、流量計・圧力計の原理と適用条件も参考になります。
6. 測定断面の選び方|直管長と旋回
風量測定の精度を最も左右するのは、どこで測るかです。
工場で行う送風機の性能試験(JIS B 8330)では、測定部の前後に十分な直管と整流を設けます。現場ではそれだけの直管がとれないことがほとんどで、整流が不十分な断面で何点測って平均しても、工場試験の結果とは対応しないことがあります。そのため、現場測定には現地試験向けの指針(AMCA 203、ISO 5802など)の考え方を使います。
現場で測定断面を選ぶときの目安は次のとおりです。
- できれば送風機の吸込側のダクトに設ける(吐出直後は流速分布が偏りやすい)
- 等価直径の2倍以上の長さをもつ、一様断面の直管部に置く
- 曲がり、ダンパ、分岐、断面変化の直後を避ける
- 気流が軸方向で、旋回していないことを確かめる(ピトー管を回して最大動圧の向きがずれていないか、各点の値が極端に偏っていないか)
- 適当な場所がなければ、ガイドベーンなどの整流装置を設けてから測る

条件のよい断面を選んでも、現場での風量測定には2〜10%程度、静圧測定には2〜8%程度の不確かさがあるとされています。数%の差で「性能が落ちた」「省エネになった」と判断しないでください。 改造前後の比較は、同じ断面・同じ測定点・同じ方法で行います。
送風機の直前・直後の曲がりが性能を下げる仕組みは、送風機のダクトとシステムエフェクトで詳しく説明しています。測定断面を探すときにダクトの曲がりが多い系統は、それ自体が省エネの対象になっていることがあります。
7. 電力の測り方|電力計と電流×電圧×力率
省エネの効果は電力量で決まるので、入力電力は電力計(電力モニタ、可搬形の電力計)で測るのが基本です。
電力計がなく、電圧と電流を測る場合は、三相電動機の入力電力を次式で計算します。電圧・電流は3相それぞれを測って平均します。
入力電力P[kW]=√3×V×I×cosφ/1000(V:線間電圧 V、I:線電流 A、cosφ:力率)
モータ軸出力(送風機の軸動力)は、入力電力に電動機効率を掛けて求めます。
たとえば400 V、62 A、力率0.85なら、入力電力は√3×400×62×0.85/1000≒36.5 kWです。力率を1とおいて計算すると、この例では約43 kWとなり、2割近く過大になります。

電流比から動力を推定するときは、次の点に注意します。
- 電流には、負荷がなくても流れる無負荷電流(励磁電流)が含まれる。電流が定格の半分でも、電力が定格の半分とは限らない
- 運転電流が定格電流の90%以上なら、入力を電流に比例するとみなしても誤差は5%以下とされる
- それより軽い負荷では、電流比例の推定と、無負荷電流を差し引いて比例配分する推定の両方を計算して平均する方法があるが、あくまで概算である
- インバータ運転では、盤の電流計や力率計の値をそのまま使わず、インバータの入力側で電力を測る(受電側の省エネ効果はここで決まる)
電流計から軸動力を読むときの考え方は、ポンプの例ですがポンプの軸動力・効率・モータ出力、力率と電力の基礎は課目Ⅰの電気基礎(電力・力率・電動機)で確認できます。
8. 密度補正|気温・大気圧・湿度・吸込負圧
工場試験の性能曲線は、多くの場合、標準空気(20℃、101.325 kPa、相対湿度65%、密度1.2 kg/m³)に換算して描かれています。現場で測った値は、その日の気温・気圧・湿度・吸込負圧での値なので、同じ密度に換算しないと曲線に載せられません。
測定断面の湿り空気の密度は、次式で求められます。
ρ=1.293×273/(273+t)×(P-0.378×φ×ps)/101.325
- t:乾球温度 ℃
- P:測定断面の絶対圧 kPa(大気圧+測定断面の静圧。吸込側では静圧がマイナス)
- φ:相対湿度(乾球・湿球温度から求める)
- ps:温度tにおける飽和水蒸気圧 kPa
たとえば35℃、大気圧100.5 kPa、測定断面の静圧-1.8 kPa、相対湿度60%(35℃の飽和水蒸気圧5.63 kPa)なら、ρ≒1.10 kg/m³です。標準空気より約8%軽い空気です。
ターボ形送風機を同じ回転速度で回すとき、体積風量はほぼ変わらず、圧力と軸動力は密度に比例して変わります。 したがって、標準空気へ換算するには圧力と動力に1.2/ρを掛けます。夏と冬で同じ送風機の電流が違うのはこのためで、密度を補正しないまま季節の違うデータを比べると、性能低下や改善を誤認します。
温度・分子量・湿度による密度の求め方と、Nm³/hとの換算は送風機の風量・圧力・軸動力と密度補正で詳しく扱っています。
9. 効率を出す|空気動力と電力の比
風量と圧力が分かれば、送風機が空気に与えた仕事(空気動力)が計算できます。圧力比が小さい送風機では、次式で十分です。
空気動力[kW]=Q[m³/s]×送風機圧力[Pa]/1000
これを軸動力で割れば送風機効率、入力電力で割れば電動機やインバータを含めた総合効率になります。送風機静圧を使えば静圧効率、送風機全圧を使えば全圧効率です。どの圧力を使ったかを必ず書き添えます。
ここまでの例を通しで計算します。
| 項目 | 値 | 求め方 |
| 測定断面の密度 | 1.10 kg/m³ | 8.の式 |
| トラバースの代表動圧 | 180 Pa | 24点の動圧の平方根を平均して2乗 |
| 平均流速 | 18.1 m/s | √(2×180/1.10) |
| 風量(ダクト内径0.8 m、断面積0.503 m²) | 9.09 m³/s(545 m³/min) | 18.1×0.503 |
| 送風機静圧 | 2.17 kPa | 0.35-(-2.0)-0.18 |
| 静圧空気動力 | 19.7 kW | 9.09×2170/1000 |
| 入力電力(電力計) | 36.0 kW | 実測 |
| 軸動力(電動機効率93%) | 33.5 kW | 36.0×0.93 |
| 送風機静圧効率 | 約59% | 19.7/33.5 |
この効率を性能曲線上の効率と比べます。曲線上の効率より大きく低い場合は、運転点が最高効率点から外れているか、送風機自体の性能が落ちている可能性があります。 比較するときは、効率は密度補正でほとんど変わらないこと、圧力と動力は1.2/ρ(この例では約1.09倍)で換算してから曲線と見比べることに注意します。
10. 性能曲線に載せて運転点を評価する
密度を補正した運転点を性能曲線と抵抗曲線に載せると、無駄の種類が見えてきます。
| 見え方 | 考えられる原因 | 対策の方向 |
| 計画点より風量が多く、ダンパで絞って計画風量にしている | 計画時の圧力余裕のとりすぎ、実際の抵抗が予想より小さい | 回転速度を下げる、羽根車外径の加工、プーリ交換など |
| 計画点より風量が少なく、圧力が高い | フィルタ目詰り、熱交換器コイルやダクトの汚れ、スケール堆積 | 清掃・交換で抵抗を戻す。回転速度を上げて帳尻を合わせない |
| 風量も圧力も性能曲線より低い | 吸込・吐出直近の曲がり、羽根車の摩耗・付着、ケーシングの漏れ | 配管の改善、整流、羽根車の点検 |
| 運転点が最高効率点から大きく外れている | 選定時の過大余裕、負荷の変化 | 羽根車交換、機種の見直し、台数の見直し |

計画点より風量が多く、ダンパで絞っている送風機では、ダンパで捨てている圧力がそのまま無駄になっています。逆に、抵抗が経年的に増えた系統で計画風量を確保しようとすると、動力は大きく増えます。フィルタやダクトの汚れを定期的に取り除くことは、それだけで動力を下げる対策になります。
ダンパを絞ったときに風量・圧力・軸動力がどう動くかは送風機の性能曲線と運転点を参照してください。
11. よくある無駄と、その見つけ方
実際の省エネ事例から、化学プラントでも見られる無駄を整理します。
| よくある無駄 | 例 | 見つけ方 |
| ダンパ絞り運転 | 能力過大な送風機を、ダンパでほぼ閉じた状態で常時運転する | ダンパ前後の差圧と開度のトレンド |
| 過大な設計余裕 | 将来の需要や最終的なフィルタ圧損を見込んで選定し、運転初期から過大な風量を流している | 計画点と実測点の比較、清浄時と目詰り時の差圧 |
| バイパス・戻し運転 | 容積形ブロワーの余剰分を吸込側へ戻して吐出し圧力を一定にしている | 戻しラインの流量、吐出ガスや冷却器出口の温度上昇 |
| 吸込側の損失 | 吸込フィルタの目詰り、吸込ダンパ、送風機直前のエルボ | 吸込側の静圧分布、吸込口の静圧4点のばらつき |
| 付着による抵抗増加 | 塗料やダストがダクト・羽根車に付着し、清掃前後で運転点が大きく動く | 清掃前後で同じ条件の測定 |
| 漏風 | フランジ、点検口、ダンパ軸のすき間から吸い込む・吹き出す | 上流と下流の風量収支 |
| 季節で必要風量が変わるのに一定運転 | 空冷式熱交換器を夏の最高気温で決めた設計風量のまま通年運転する | 月別の気温・必要風量・電力の比較 |
空冷式熱交換器では、空気の設計温度を夏の最高気温にとることが多いため、夏の日中以外は必要風量が設計風量より小さくなります。必要風量が季節や負荷で変わる送風機では、定格点ではなく年間の運転パターンで評価します。 空冷式熱交換器の特徴は空冷式熱交換器で解説しています。
12. 省エネ効果を概算する手順
対策の効果は、次の順で見積もります。
- 負荷帯を分ける:高・中・低負荷、待機など、年間の運転パターンを時間とともに整理する
- 負荷帯ごとの必要風量と必要圧力を決める:実測した抵抗から、ダンパで捨てている分、汚れによる増加分を分けて「本当に必要な圧力」を出す
- 固定抵抗を分離する:水深、槽内圧、炉内圧など、風量が減っても下がらない圧力を確認する
- 対策後の運転点を性能曲線から読む:対策後の回転速度、効率を曲線で確かめる
- 入力電力を計算する:空気動力を送風機効率、電動機効率、インバータ効率で割る
- 年間電力量で比べる:各負荷帯の入力電力×運転時間を合計し、現状との差をとる
- 対策後に同じ方法で測り直す:同じ断面・同じ負荷条件で効果を確認する
先ほどの例で、吸込ダンパ前後の差圧を測ったら0.6 kPaだったとします。ダンパを全開にして回転速度制御で同じ風量を得るなら、必要な送風機静圧は2.17-0.6=1.57 kPa、空気動力は9.09×1570/1000≒14.3 kWです。性能曲線から読んだ新しい運転点の静圧効率を60%、電動機とインバータの効率を合わせて0.90とすると、入力電力は14.3/0.60/0.90≒26.5 kWです。現状36.0 kWとの差は約9.5 kWで、年間6,000時間運転なら約57,000 kWhになります。
この計算は、抵抗がすべて風量の2乗に比例し、新しい運転点の効率を曲線から読めることが前提です。 固定抵抗が大きい系では、回転速度を下げると圧力が固定抵抗を下回って送風できなくなり、遠心形ではサージングに近づくため、回転速度を下げられる範囲が限られます。このような系では、「軸動力は回転速度の3乗で下がる」という相似則をそのまま使えません。固定抵抗と制御方式の関係は送風機の風量制御と省エネ、回転速度制御にしたときの共振や羽根車の疲労は送風機の回転速度制御の注意点、台数を見直す場合は送風機の台数制御と順次起動で確認してください。
古い省エネ事例に載っている電力単価や投資回収年数は、現在の条件と大きく違います。効果の比較は電力量(kWh)で行い、金額は現在の電力単価と見積りで計算し直します。 保守費、停止リスク、予備品も含めて総合的に判断します。
省エネ法の工場等判断基準でも、ファンやブロワーなどの流体機械は、使用端の圧力と吐出量を見直し、運転台数や回転数を管理して電動機の負荷を下げることが求められています。管理標準に入れる計測・記録項目の考え方は判断基準と管理標準の整理も参考にしてください。
まとめ
- 送風機の省エネ診断は、机上で当たりを付け、現地で風量・圧力・電力を同時に測り、密度を補正して性能曲線に載せる順で進めます。
- ピトー管トラバースでは、各点の流速を平均し、測定断面は曲がりやダンパから離れた一様な直管部に置きます。 現場測定の不確かさは数%あることを前提にします。
- 送風機静圧は吐出静圧-吸込静圧-吸込口の動圧です。 吸込側のマイナス符号と、曲線が静圧か全圧かを確認します。
- 電力は電力計で測り、計算するなら力率を入れます。 軽負荷での電流比例の推定は誤差が大きくなります。
- 効果の概算は負荷帯ごとに積み上げ、固定抵抗がある系では三乗則を使いません。 対策後は同じ方法で測り直して確認します。
送風機全体の選定・運転・保全の流れは送風機・ブロワー完全ガイドにまとめています。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』第1章1.3「送風機の性能と運転点」、第4章「各分野での省エネルギー対策」(4.3 クリーンルーム、4.6 ガス製造所、4.7 塗装ブース、4.8 セメント工場)、第5章5.2.2「固定抵抗があるときの回転速度制御」、第6章「省エネルギー診断法」、図6.1〜6.13、表6.1〜6.3 Amazonで見る
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』第3章3・1「送風機・圧縮機の概要」 Amazonで見る
- 日本プラントメンテナンス協会『ファン・コンプレッサーの本』第2章2・3・2「遠心形送風機の保全ポイント」 Amazonで見る
- 吉田英生 監修『熱交換器ハンドブック』Ⅱ編1.1「空冷」(5)「軸流ファンと省エネルギー」 Amazonで見る
- JIS B 8330:2000「送風機の試験及び検査方法」
- AMCA Publication 203-90 (R2011) “Field Performance Measurement of Fan Systems”
- 工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準(日本法令索引)
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