課目Ⅰのエネルギー管理の手法の論点を、表と例題で並べました。判断基準、管理標準、進め方、使用状況の把握、原単位、改善の段階、仕事と動力を扱います。
熱力学の基礎は熱Ⅱの論点です:熱量・比熱/第一法則/状態式/状態変化/第二法則
伝熱と流れの基礎も熱Ⅱの論点です:伝熱の三形態/平板の熱伝導/黒体放射/熱通過/ベルヌーイの式
判断基準の構成 ── 基準部分は守るもの、目標及び措置部分は目指すもの

| 部分 | 中身 | 性格 |
|---|---|---|
| Ⅰ 基準部分(エネルギーの使用の合理化の基準) | 全ての事業者の取組(取組方針・管理体制・責任者の配置・教育・文書管理など)と、工場等・設備ごとの管理。工場は6分野×4項目 | 遵守する |
| Ⅱ 目標及び措置部分 | 原単位(又は電気需要最適化評価原単位)を中長期的にみて年平均1%以上低減、又はベンチマーク指標の水準を目標に。ISO 50001 の活用の検討 | 技術的かつ経済的に可能な範囲で努める |
なぜ:どの事業者にも守ってほしい最低限の管理と、技術や投資に応じて中長期に高めていく目標とでは、求め方が違います。前者は遵守、後者は努力として分けて書いてあります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 遵守すべき基準を定めたのが「目標及び措置部分」、目指す目標を定めたのが「基準部分」 | × | 名前と中身が逆 |
| 工場等の判断基準で定める事項には、燃焼の合理化・廃熱の回収利用とならんで、放射・伝導・抵抗等による損失の防止が入る | ○ | 法第5条第1項第2号イ〜ヘの6つ |
| 基準部分(工場)の4項目のうち、管理標準を定めるのは「新設・更新に当たっての措置」だけ | × | 管理・基準、計測・記録、保守・点検の3項目 |
| 判断基準は、需給の見通しや技術水準などの事情が変われば改定される | ○ | 法第5条第4項 |
| ISO 50001 の認証取得は、目標及び措置部分で全事業者の義務とされている | × | 活用の検討と、計画的な取組への努力 |
- 6分野は法第5条第1項第2号のイ〜ヘに当たる。燃焼、加熱・冷却・伝熱、廃熱回収、熱の動力変換、放射・伝導・抵抗の損失防止、電気の動力・熱変換の各合理化。
- 4項目:管理・基準/計測・記録/保守・点検/新設・更新に当たっての措置。管理標準を定めるのは前の3つ。
- 専ら事務所に使う工場等は「基準部分(事務所)」、それ以外は「基準部分(工場)」で分けて定めている。
- 年平均1%の低減は前年度比の掛け算で積み重なる。毎年1%ずつ5年なら 0.99⁵≒0.951 で、初めの約95%。
関連:原単位の努力目標とベンチマーク/法令の体系(法律・政令・省令・告示)
管理標準の整備 ── 事業者が判断基準を設備ごとの手順書に落とす

| 比べる点 | 判断基準 | 管理標準 |
|---|---|---|
| 定める者 | 国(法第5条に基づき定めて公表) | 事業者が自主的に |
| 範囲 | 全国共通。何について管理標準を定めるかまで | 工場・設備ごと。管理値・計測記録の項目・点検の周期 |
| 詳しさ | 一般的 | 具体的 |
なぜ:判断基準は全国の工場に共通の書き方なので、「空気比を適正に」のような一般的な表現にとどまります。業種・規模・設備に合わせて管理値と手順に置き換えて初めて、現場で使えます。担当者が替わっても同じ管理が続きます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 管理標準は、国が業種ごとに定めて配る統一の運転マニュアルで、事業者はそのまま使う | × | 事業者が自主的に作る |
| 管理標準で工場の業種・規模・設備・エネルギーの流れを踏まえるのは、一般的な要求を設備ごとの管理値と手順に置き換えるため | ○ | 置き換えて初めて現場で使える |
| 管理標準は、運転・計測記録・保守点検の手順を事業者が決めたもので、ねらいは原単位の改善 | ○ | 管理・計測記録・保守点検の3つ |
| 設備ごとの管理値まで決めているのは判断基準で、管理標準はそれより大まか | × | 詳しいのは管理標準 |
- 整備では、具体的な省エネルギー目標をはっきりさせ、担当部門を決め、管理する設備と管理の内容を決める。
- 作ったことと、現場で実施していることは別。定めた計測・記録を行っているかは、記録と設備の状態で確かめる。
- 新設・更新に当たっての措置は管理標準ではなく、判断の基準と技術基準をはっきりさせておく項目。
省エネルギーの進め方・組織・目標 ── 全員参加で回し、処置(Act)で歯止め

| 段階 | すること | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 計画(Plan) | 目的と計画を明確にし、達成方法・時期・手順を決めて関係者に徹底 | |
| 実施(Do) | 教育・訓練をして、計画に基づいて実施 | |
| 確認(Check) | 測定・点検で、実施結果を目標値と比べる | 比べる段で、標準にはしない |
| 処置(Act) | 目標を達成したら作業標準を定めて歯止め、問題が残れば修正処置 | 歯止めはここ |
なぜ:エネルギーは照明・空調・生産設備を扱う全員が使っています。担当者や供給側だけが頑張っても、使う側の無駄で効果が消えます。また良い結果も標準として残さないと、担当が替われば元に戻ります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 推進の3本柱は経営者・推進組織・エネルギー管理担当者で、全員参加までは求めない | × | 3本柱は経営者・推進組織・全員参加 |
| 供給する部門がいくら効率を上げても、使う側が無駄遣いをすれば工場全体の省エネルギーにならない | ○ | 使う側を巻き込む体制が要る |
| 改善の内容を作業標準にして歯止めをかけるのは、確認(Check)の段階 | × | 処置(Act)の段階 |
| 組織・管理標準・目標を整えてから、使用状況の把握と原単位の管理に進み、改善策を立てる | ○ | 体制 → 目標 → 現状把握 → 対策 |
- 順は、組織 → 管理標準 → 目標 → 使用状況の把握 → 原単位の管理 → 改善策の立案 → 実施(PDCA)。
- 組織は、経営者(統括者がリーダー)・推進委員会・全員参加に、教育と外部の専門家を加える。
- 目標は、経営者が取組方針(目標と、設備の運用・新設・更新の方針)をはっきりさせ、関係部門が具体的な目標と計画を作る。
- 外部の専門家には、省エネルギー診断や、資金調達まで面倒をみる ESCO 事業者もある。
関連:エネルギー管理統括者
エネルギー使用状況の把握(計測・記録) ── 把握が第一歩、条件も記録

| すること | 中身 | ねらい |
|---|---|---|
| 測定器の設置 | 判断基準が定める最低限の項目を念頭に、流量計・温度計・圧力計・排ガス O₂ 計・電圧計・電流計・電力量計を置く | 測らないものは管理できない |
| 流れの定量的把握 | 燃料の熱・受電した電力が、どの工程へ送られ、消費され、損失になるか | 損失の大きい所を見つける |
| 操業条件との関係分析 | 原料・品質・量・周囲条件と使用量を一緒に記録 | 効率的な操業条件を見つける |
| 記録・整理・グラフ化 | 損失の分布が分かる図表、傾向が分かるグラフ | 改善の前後を比べる |
なぜ:どこでどれだけ失っているかが分からなければ、効果の大きい対策を選べず、対策の後に減ったかを比べる基準も持てません。把握は最後の確認ではなく、省エネルギー推進の出発点です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 使用状況の把握は、改善策を実施した後に効果を確かめる最後の段階 | × | 推進の第一歩 |
| 使用量と一緒に原料・品質・生産量・外気などの操業条件を残すと、条件ごとに比べて使用量の少ない運転条件を探せる | ○ | 条件と使用量の関係分析 |
| 最低限計測・記録すべき項目は、判断基準と関係なく管理標準だけで自由に決めてよい | × | 最低限の項目は判断基準が定める |
- 計測と同時に、その計測に対応する操業条件・周囲条件・環境条件も把握する。
- 使用量の数字だけを並べても、減ったのが改善の効果か、生産量や運転時間が減った結果かは分からない。比べる条件まで記録に残す。
- 判断基準が最低限の項目を示し、事業者は自工場に必要な計測を管理標準で上乗せする。
原単位管理 ── 使用量÷生産量、固定分があると減産で悪化

| 名前 | 中身 | 見方 |
|---|---|---|
| エネルギー消費原単位 | エネルギー使用量÷生産量(単位製品あたりの使用量) | 小さいほどよい |
| 燃料原単位・電力原単位・蒸気原単位 | 使ったものごとの原単位。自社のボイラで作る蒸気は燃料原単位に含めることが多い | |
| 一次エネルギー消費原単位 | 電力を一次エネルギーに換算して熱量に足した全エネルギー÷生産量 | 熱と電気の両方を使う工場 |
| 減産したとき | 生産量によらない固定分(照明・空調・保温・待機運転)が、少ない生産量で割られる | 効率が同じでも悪化して見える |
なぜ:原単位の定義(使用量÷生産量)から導くと、分子には生産に比例する分と、生産しなくてもかかる分が混ざっています。生産が減ると後者を少ない個数で割るので、設備の効率が変わらなくても原単位は上がります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| エネルギー消費原単位は、生産量をエネルギー使用量で割った値 | × | 使用量÷生産量。逆数にすると良し悪しが逆になる |
| 固定分 400 GJ・比例分 2 GJ/t の工場で、生産量が 400 t から 200 t になると、原単位は 3 GJ/t から 4 GJ/t になる | ○ | 1,200/400 と 800/200 |
| 減産で原単位が悪化して見えるのは、必ず設備の効率が下がったため | × | 固定分が少ない生産量で割られる |
| 燃料と電力を使う工場の原単位は、電力を一次エネルギーに換算してから燃料の熱量と合計する | ○ | 3.6 MJ/kWh のままでは発電の損失が抜ける |
例題
月の使用量が、固定分 300 GJ と生産 1 t あたり 1.5 GJ の比例分からなる工場です。生産量が 600 t から 300 t に減ったときの原単位を求めます。
①使用量:600 t なら 300+1.5×600=1,200 GJ。300 t なら 300+1.5×300=750 GJ。
②原単位:1,200÷600=2.0 GJ/t、750÷300=2.5 GJ/t。
③分けて見る:比例分はどちらも 1.5 GJ/t。固定分の負担が 300÷600=0.5 から 300÷300=1.0 GJ/t に増えた。
④確かめる:2.0=1.5+0.5、2.5=1.5+1.0。効率は同じでも原単位は25%悪化して見える。
- 原単位は、同業の他工場との比較、自社の改善の余地、達成の評価の尺度に使う。
- 合理化は使用量の絶対量を減らすことではなく、原単位を下げること。生産量が増えて使用量が増えても、原単位が下がれば合理化になる。
- 原単位の増減を評価するときは、生産量の変化の影響を切り分けて見る。
関連:購入した電気の熱量換算
改善策の立案と効果の見積もり ── 管理強化→設備付加→プロセス変更の順

| 段階 | 中身と投資 | 例 |
|---|---|---|
| 第1段階 管理強化・操業改善 | 既存の設備のまま作業方法を見直す。投資は要らない | 全員参加の提案に基づく操業管理の強化 |
| 第2段階 設備付加・設備改善 | 本体は変えず、設備を付け加える・一部を改善する。小規模な投資 | 排熱回収装置、送風機・ポンプの回転速度制御装置 |
| 第3段階 プロセス変更・高効率設備導入 | 工程全体を省エネルギー型に変える。投資は多額で、技術力と時間も要る | 設備の大型化、工程の連続化・省略、コージェネレーション設備 |
なぜ:運用の無駄が残ったまま設備を選ぶと、無駄で増えた負荷に合わせて設備が過大になります。先に投資の要らない対策で負荷を減らせば、本当に要る大きさで次の投資を決められ、予測どおりの効果が得られます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 対策は効果の大きいプロセス変更・高効率設備導入から先に行い、管理強化・操業改善は後にする | × | 管理強化 → 設備付加 → プロセス変更の順 |
| 設備付加の前に管理強化・操業改善を十分に行うのは、無駄を除いた後の負荷で設備を選べば過大な設備を避けられるから | ○ | 作業方法の複雑化も避けられる |
| 送風機・ポンプの回転速度制御装置を付けるのは、本体を変えないので第1段階 | × | 装置を買う小規模な投資なので第2段階 |
| 改善策は部門ごとに問題点を挙げ、実施の難易や投資の有無を比べてテーマを決める | ○ | できるだけ多くの参加者で、広い視野で |
- 段階を分けるのは、お金をかけるかどうかと、本体を変えるかどうか。投資ゼロの運用の見直しだけが第1段階。
- 第1段階は提案に基づく操業管理の強化で、すぐに効果が出る。
- 第3段階は大きな効果が期待できるが、投資額が多いので事前に十分に検討する。
関連:インバータによる回転速度制御/ポンプの流量調節(吐出し弁の絞りとインバータ)
仕事・動力と力学的エネルギー ── 仕事は力×距離、動力は力×速さ

| 量 | 式 | 単位 |
|---|---|---|
| 仕事 | W=F·s(s は力の向きに動いた距離) | J(=N·m) |
| 仕事率(動力) | P=W/t=F·v | W(=J/s) |
| 運動エネルギー | EK=½mv² | J |
| 位置エネルギー | EP=mgh | J |
| 力と重さ | F=m·a、重さは F=mg | N |
なぜ:仕事は力の向きに動いた分だけで決まるので、力と移動が直角なら0です。1秒間に動く距離が速さなので、仕事率は力×速さになります。同じ力で速さを2倍にするには、加速の時間も平均の速さも2倍になります。押して進む距離が4倍になるので、運動エネルギーは速さの2乗で効きます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 一定の力 F で物体を一定の速さ v で動かすときの仕事率は P=F/v | × | P=F·v |
| 500 kg の物体を 49 秒で 20 m 持ち上げる平均の仕事率は約 2 kW(g=9.8 m/s²) | ○ | 500×9.8×20÷49 |
| 運動エネルギーは速さに比例するので、速さ2倍で2倍 | × | ½mv²。速さ2倍で4倍 |
| 荷物を提げて水平に歩くとき、荷物を支える上向きの力は荷物に仕事をしていない | ○ | 力と移動が直角 |
例題
2,000 kg の水を 60 秒で 15 m の高さまでくみ上げます。要る平均の動力を求めます(g=9.8 m/s²、損失は考えない)。
①重さ(力):F=mg=2,000×9.8=19,600 N。
②仕事:W=F·h=19,600×15=294,000 J=294 kJ。
③仕事率:P=W/t=294,000÷60=4,900 W=4.9 kW。
④桁を確かめる:1 t を 1 m 上げる仕事は約 10 kJ。2 t を 15 m なら約 300 kJ で、294 kJ と合う。
- 仕事は、何秒かけたかには関係しない。同じ仕事を短い時間で行うほど、大きな動力が要る。
- 高さと速さは、位置エネルギーと運動エネルギーとして互いに入れ替わる。流体ではベルヌーイの式に当たる。
- 熱と仕事は同じエネルギーで、互いの出入りは第一法則で数える。
出典:省エネ法 第5条(2026年4月1日時点)。エネルギー管理士試験講座 共通Ⅰ(省エネルギーセンター)3編1章「エネルギー管理の手法」、2章 2.1・2.2。
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