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ポンプの軸動力・効率・モータ出力|電流計から何が分かるか、密度が変わると過負荷になる理由

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

ポンプのモータの電流計は、運転員がいちばん頻繁に見る計器の1つです。電流が上がった、下がった、2台で値が違う——そのとき電流計は何を教えてくれているのでしょうか。

答えを先に言えば、電流を動かしているのは「密度 × 流量 × 揚程 ÷ 効率」で決まる軸動力です。この4つのどれが変わっても電流は動きます。この記事では、水動力から軸動力、モータ出力までの積み上げを数値で追い、電流の変化を「4つのうちどれか」に翻訳できるようにします。

この記事の結論

  • 水動力 Pw = ρ g Q H。液に実際に渡ったエネルギーで、密度・流量・揚程の掛け算
  • 軸動力 P = Pw ÷ ポンプ効率 η。モータはさらにモータ効率分だけ余計に電気を食う
  • 原動機の出力は軸動力に余裕率(小形ほど大きく、1.1〜1.25程度)を掛けて決める。電流計の100%はこの原動機出力で決まっている
  • 多くの遠心ポンプ(比速度の小さいもの)は、軸動力が流量と一緒に増える。電流が上がったら、流しすぎ・液が重い・液が粘い・こすれている、のどれか
  • 効率は比速度(流量と揚程の組み合わせ)で決まる。小流量・高揚程のポンプほど効率が低いのは設計が悪いからではない

1. 水動力|液に渡ったエネルギー

ポンプが1秒間に液に渡すエネルギー、つまり液側から見た「仕事の速さ」が水動力です。

Pw [W] = ρ g Q H (ρ:密度 kg/m³、Q:流量 m³/s、H:全揚程 m)

現場単位に直すと、水(ρ=1000)で流量 Q[m³/h]、揚程 H[m]のとき、おおよそ Pw[kW] ≒ Q × H ÷ 367 です。60 m³/h を 50 m 上げるなら、60×50/367 = 8.2 kW。

水動力は密度・流量・揚程の3つの掛け算で、ポンプの種類は入っていません。ポンプによる違いは、その水動力を出すのに軸へどれだけ動力を入れるか、つまり効率に出ます。

2. 軸動力と効率|ポンプの中で失われる分

電気の6割しか、液に届かない:60 m³/h・50 mの例で、モータ入力13.2 kWのうちモータで9%、ポンプで29%が失われ、液に渡る水動力は62%の8.2 kW

軸動力 P はモータがポンプの軸に与える動力で、水動力を効率で割ったものです。

P = Pw ÷ η

η はポンプ効率で、ポンプの中の損失をすべて含んだ総合効率です。損失は水力損失・漏れ損失・円板摩擦損失・機械損失の4つで、中身は5章で説明します。上の例で η = 0.68 なら、軸動力は 8.2/0.68 = 12.0 kW。液に渡ったのは8.2 kWで、残り3.8 kWはポンプの中で熱になります。

モータ側にも損失があります。モータ効率 0.91 とすると、モータへの入力は 12.0/0.91 = 13.2 kW。入力を100%とすると、モータで9%、ポンプで29%が失われ、液に届くのは62%——電気の6割しか液に渡っていない計算です。このモータ入力の棒グラフが、電流計が見ているものです。

3. 原動機出力と余裕率|電流計の100%はどう決まっているか

モータの定格出力は、軸動力に余裕率を掛けて決めます。

Pm = fs × ft × P

  • fs:原動機余裕率。小形ほど大きい。目安は 19 kW 以下で 1.25、19 kW 超え 50 kW 以下で 1.15、75 kW 以上で 1.10(API 610 第6版の値。50〜75 kW は原表に記載なし)
  • ft:伝達効率。直結 1.00、Vベルト 0.93〜0.95、歯車 0.97 程度

上の例なら 12.0×1.25 = 15.0 kW → 15 kW か、一つ上の標準出力のモータが付きます。電流計の定格(100%)は、この「余裕を含んだモータ出力」に対応しています。 ただし、電流は負荷に比例しません。モータには負荷がなくても流れる無負荷電流があり、小形ほど全負荷電流に対するその割合が大きいので、軽い負荷では電流の%が出力の%より大きく出ます。定格電流の90%以上なら電流の比で出力をほぼ見積もれますが、それより下では外れます。正常時の電流は試運転時の値を基準として記録し、そこからの変化で見ます。

電流計の100%とモータ出力:電流計の100%はモータの定格電流で、無負荷電流があるため軽い負荷では電流の%が出力の%より大きく出て、電流に比例しない

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4. 電流が上がった|4つのどれが変わったか

水動力の式に戻ると、電流(軸動力)を動かすのは密度・流量・揚程・効率の4つです。遠心ポンプで電流が上がったときの候補を並べます。

変わったもの何が起きたか現場での手がかり
流量が増えた比速度の小さい遠心ポンプの軸動力は流量と一緒に増える(右上がり)。吐出側の抵抗が減って運転点が右へ動いた流量計が増、吐出圧力が低下。下流の弁が開いた、タンク液面が下がった、配管が破れた
密度が増えた水動力は密度に比例。比重1.2の液なら同じ流量・揚程で1.2倍液の組成・温度変化。水で試運転して問題なかったポンプが本液で過負荷、はこの典型
粘度が増えた効率が下がり、同じ水動力を出すのに軸動力が増える冬場、保温の不良、組成変化
こすれている機械損失が増えた。ライナリングの接触、軸受の損傷、異物のかみ込み、芯出し不良振動・異音・軸受温度の上昇を伴う

逆に電流が下がったときは、流量が減った(弁が閉まった、詰まった、吸込側の不足、空気を吸った)か、液が軽くなった、を疑います。電流計は単独では読まず、流量計と吐出圧力計と一緒に読む。 吐出圧力の記事で書いたのと同じ作法です。

軸流ポンプは逆で、流量が減るほど軸動力が増えます。形式によって「電流が上がる方向」が逆になるので、自分のポンプの軸動力曲線がどちら向きかは、性能曲線で一度確かめておいてください。

吐出し量と軸動力:比速度の小さい遠心ポンプは流量を増やすと軸動力が増え、軸流ポンプは流量を絞るほど軸動力が増えて締切で約2.3倍になる

5. 効率は何で決まるか|小さいポンプほど低いのは普通

「このポンプは効率が60%しかない、悪いポンプだ」という評価は、たいてい的外れです。ポンプの効率は、流量と揚程の組み合わせ(比速度)でおおむね決まっています。

比速度と損失:比速度が小さいほど漏れ損失と円板摩擦損失が大きくなり、水力損失と機械損失はほぼ一定なので、小流量・高揚程のポンプほど効率が低い
  • 損失のうち、漏れ損失と円板摩擦損失は比速度が小さいほど(小流量・高揚程ほど)大きい。水力損失と機械損失はほぼ一定
  • だから小流量・高揚程のポンプほど効率が低い。JIS(小形渦巻・小形多段・両吸込渦巻ポンプ)が最高効率の下限として決めている値も、吐出し量0.1 m³/minで37%、1 m³/minで65.5%、10 m³/minで76%と、流量が小さいほど低い
  • 同じ流量でも比速度で効率は変わる。比速度100前後の高揚程ポンプと、300〜400のポンプでは10ポイント違うことがある

効率の評価は「このポンプの比速度ならどのくらいが相場か」と比べて初めて意味を持ちます。また、カタログの効率は最高効率点の値です。実際の運転点がBEPから外れていれば、効率はそれより低く、軸動力はその分大きくなります。見積りの段階で軸動力を計算するときは、最高効率を2〜3%割り引いて使うのが実務の作法です。

6. 電流から軸動力を逆算する

三相モータの電流 I[A]、電圧 V[V]、力率 cosφ、モータ効率 ηm から、軸動力は

P ≒ √3 × V × I × cosφ × ηm ÷ 1000 [kW]

で概算できます。力率とモータ効率は銘板か試験成績書の値を使います。負荷が軽いと力率も効率も下がるので、その電流のときの力率・効率(試験成績書の負荷特性)を使います。電流の比をそのまま軸動力の比にしないのが要点で、比で見積もってよいのは定格電流の90%以上のときだけです。

こうして出した軸動力を性能曲線の軸動力曲線と比べれば、今の流量でその軸動力が妥当か、それとも「こすれている分」が乗っているかが見えます。流量計・圧力計2つ・電流計の4つを一緒に読めば、ポンプの状態はかなり診断できます(「ポンプの性能曲線の読み方」「全揚程と吐出し圧力の違い」)。

まとめ

  • 現場単位では Pw[kW] ≒ Q[m³/h]×H[m]÷367(水)
  • 電流は負荷に比例しない。電流計は流量計・吐出し圧力計と一緒に読み、試運転時の値と比べる
  • 軸動力の見積りは最高効率を2〜3%割り引いて使う

本文の数値例(60 m³/h・50 m・効率0.68・モータ効率0.91)は参考文献の式を使って筆者が計算したものです。余裕率・伝達効率の値は化学装置便覧に引用された旧API 610の目安で、現行規格や各社の基準とは異なることがあります。

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計算と選定の結果は構想段階の概算で、保証計算ではありません。必要NPSHの概算や比速度からの羽根車の形は目安です。3Dは代表構造の教育用モデルで、特定の機種の寸法・形状とは一致しません。実機の選定・発注・安全判断は、メーカーの性能曲線と仕様書、適用規格で確認してください。

参考文献

  • 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』理工学社, 2章「ポンプ」4. ポンプ動力と効率(水動力・軸動力・JISによるポンプ効率)  Amazonで見る
  • 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』丸善, 第18章 18・1・2 ポンプの型式選定(原動機出力、余裕率 表18・3、伝達効率 表18・4、図18・1 吐出し量とポンプ効率)
  • 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 1-10「ポンプの効率」(予想効率、効率を決める要因、ポンプ効率とモータ入力との関係)  Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』学識編 11.5「圧縮機とポンプ」動力(式11.36)、運転中のトラブル「原動機の過負荷」
  • 尾形俊輔 編著『ファン・ブロワ 改訂版』省エネルギーセンター(電流値から電動機出力を求める方法)
  • 大浜庄司『完全図解 自家用電気設備の実務と保守早わかり』オーム社(誘導電動機の特性:無負荷電流と全負荷電流)
  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善, 第2章「ポンプ性能」  Amazonで見る
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