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送風機を複数台並列に設置すると、必要風量に合わせて1台運転、2台運転、3台運転と切り換えられます。しかし、停止中の2台目を起動してすぐ共通吐出ヘッダーへつなぐと、2台目側へ空気が逆流することがあります。
さらに、全台を同時に起動すれば始動電流が重なります。増台と減台の設定が近すぎれば、境界付近で起動・停止を繰り返します。瞬時停電から復電した直後の全台再起動も、電動機の残留電圧と電源容量の両面で注意が必要です。
この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、後発機を安全に系統へ入れる順序、順次起動と交互運転、増減台設定、復電時再起動の考え方を整理します。並列運転の性能曲線とサージングは送風機のサージングと並列・直列運転で解説しています。
この記事の結論
- 台数制御は総風量を段階的に変える方法です。連続的な調節が必要なら、ダンパまたは回転速度制御と組み合わせます。
- 共通吐出ヘッダーが加圧されていると、後発機は定格回転へ達する前に逆流する可能性があります。締切圧力が十分な機種では、吸込ダンパを閉じて始動し、定格回転を確認してから開きます。
- 締切圧力が運転圧力より低い条件では、バイパスまたは放風で後発機自身の流量を確保してから系統へ移行します。
- 複数台は同時始動せず、一定間隔で1台ずつ起動します。増台時は停止時間が長い機、減台時は運転時間が長い機を選ぶと運転時間を平準化できます。
- 増台設定Qupと減台設定Qdownを分け、起動頻度を制限するタイマーと組み合わせて、頻繁な増減台を防ぎます。
- 自動再起動を採用する設備では、復電直後の全台同時再起動を避け、残留電圧の減衰と電源容量を確認して時差再起動します。
1. 台数制御は風量を段階的に変える
台数制御は、並列に設置した送風機の運転台数を変えて、設備全体の風量を調節する方法です。例えば3台構成なら、要求風量の増加に応じて1台、2台、3台と増台し、要求風量が下がれば逆の順で減台します。
ただし、台数制御だけで変えられる風量は段階的です。台数を保持している間の細かな風量変化は、吸込ダンパ、吐出ダンパ、入口案内羽根、インバータなどで調節します。台数制御と回転速度制御を組み合わせる場合も、各台の最低・最高回転速度、サージ余裕、電動機冷却、起動頻度を含めて運転範囲を決めます。
| 制御の役割 | 主な操作 | 特徴 |
| 大きな風量変化 | 運転台数を増減 | 効率のよい運転範囲へ寄せやすいが、風量は段階的に変化する |
| 台数を保持中の微調節 | ダンパまたは回転速度 | 連続的に調節できるが、低風量限界や振動などを確認する |
| 負荷変動が速い場合 | プロセス側の調節と増減台を協調 | 増減台のたびに圧力・風量が急変しないよう遅延と移行手順が必要 |
2. 2台目は定格回転まで圧力を作れない
No.1送風機が運転中で、No.2送風機が停止している並列設備を考えます。両機の吐出側は共通ヘッダーへ接続されているため、停止中のNo.2吐出側にもNo.1が作った吐出圧力がかかります。
No.2へ始動信号を出しても、電動機と羽根車が定格回転へ達するまでには時間がかかります。その間はNo.2の圧力上昇能力が小さく、共通ヘッダー圧力に対抗できません。この状態でNo.2の吸込ダンパを開くと、共通ヘッダー側からNo.2を通って吸込側へ空気が逆流する可能性があります。
ここで重要なのは、「始動指令が入った」と「系統へ空気を送り出せる」は同じ時点ではないことです。後発機を共通ヘッダーへつなぐ許可条件には、少なくとも回転速度または始動完了、必要な弁・ダンパ位置、異常の有無を含めます。
3. 締切圧力が十分な機種の基本始動
締切圧力は、送風機の吐出流量がほぼゼロのときに発生できる圧力です。後発機の締切圧力が共通ヘッダーの運転圧力より十分高い条件では、『ファン・ブロワ 改訂版』に次の始動方法が示されています。
- 後発機の吸込ダンパが全閉であることを確認する
- 後発機を始動する
- 定格回転へ達したことを確認する
- 吸込ダンパを開き、共通ヘッダーへ送風する

吸込ダンパを閉じている間は、後発機を通る流量を抑えたまま回転速度を上げます。定格回転へ達して圧力上昇能力が確保されてからダンパを開くことで、共通ヘッダー側からの逆流を避けます。
ただし、この方法をすべての送風機へ適用できるわけではありません。締切圧力、締切運転の許容時間、起動時の軸動力、温度上昇、ダンパの設置位置は機種によって異なります。実機ではメーカーの始動要領と設備のSOPを優先してください。
4. 締切圧力が不足するならバイパス・放風で流量を作る
後発機の締切圧力が共通ヘッダー圧力より低い場合、吸込ダンパ全閉で定格回転へ上げても、系統へ押し込めません。吸込ダンパを途中まで開けたとき、後発機が逆流またはサージング領域へ入る場合があります。
この条件では、後発機の吐出側にバイパスまたは放風経路を設け、まず後発機自身の流量を確保します。原著のバイパス・放風による始動例は次の考え方です。
- 後発機の吐出弁を全閉にする
- バイパス弁または放風弁を全開にする
- 吸込弁を微開にして始動する
- 定格回転後、吸込弁を全開にし、バイパス・放風側へ流して安定した運転点を作る
- 吐出弁を徐々に開けながら、バイパス弁・放風弁を徐々に閉じる
- 共通ヘッダーへの移行後、弁位置と運転状態を確認する

バイパス方式では、後発機吐出から取り出した空気を後発機吸込へ戻します。放風方式では大気など設備設計で定めた安全な場所へ逃がします。扱うガスの毒性、可燃性、臭気、温度、騒音によっては大気放風できません。
この弁順序は原理を示す一例です。逆止弁と吐出弁の位置、バイパスの分岐・戻り位置、弁の操作速度、インターロックは設備ごとに異なります。P&ID、メーカー図書、シーケンス表、現場SOPが一致していることを確認してください。
5. 順次起動と交互運転を分けて考える
順次起動は始動電流を重ねないため
電動機の始動電流は定格運転時の電流より大きくなります。複数台を同時に始動すると、変圧器、母線、遮断器などへ始動電流が集中し、電圧降下や保護装置動作の原因になります。

そのため、複数台を起動するときは、No.1の始動完了を確認し、所定の間隔を置いて1台ずつ起動します。間隔は一律ではありません。電動機の始動方式、始動時間、電源容量、送風機の機械条件、プロセスが許容できる風量変化を基に電気設計者・メーカーと決めます。
交互運転は運転時間を偏らせないため
毎回No.1から起動すると、No.1だけ運転時間と起動回数が増えます。予備機を含む各機の状態を均等に保つには、増台時と減台時の選択ルールを分けます。
- 増台時:使用可能な機器のうち、停止時間が最も長い機を起動する
- 減台時:運転中の機器のうち、運転時間が最も長い機を停止する
- 故障・整備中:自動選択の候補から除外し、別の使用可能機を選ぶ
運転時間だけでなく、起動回数、直近の点検結果、予備機として残す必要性を選択条件へ加える設備もあります。何を均等化するかは、設備の運用方針として明文化します。
6. QupとQdownを分けて頻繁な増減台を防ぐ
要求風量が増台境界の近くで上下すると、同じ設定値で増台と減台を判定するロジックでは、「1台追加→すぐ1台停止→再び追加」を繰り返すことがあります。これを防ぐ基本が、増台設定Qupと減台設定Qdownを分ける方法です。
- 風量が増加し、Qupを超えたらN台からN+1台へ増台する
- 風量が低下し、Qdownを下回ったらN+1台からN台へ減台する
- QdownからQupの間では、現在の運転台数を保持する
- 設定関係はQdown < Qupとする

QupとQdownの差はヒステリシスとして働き、境界付近で増減台が反転するのを抑えます。ただし、設定差だけでは不十分な場合があります。計器ノイズ、需要変動、ダンパ・VFDの応答、増台後の風量変化を踏まえ、判定遅延、最小運転時間、最小停止時間、時間当たりの起動回数制限も検討します。
7. 自動シーケンスに必要な確認条件
台数制御を自動化するときは、「要求風量が増えた」という条件だけで後発機を起動しないようにします。設備ごとに異なりますが、少なくとも次の確認項目をシーケンス表で整理します。
| 段階 | 主な確認項目 |
| 起動機の選択 | 運転・停止状態、故障、保護装置、整備中、遠方・自動選択、停止時間、起動回数 |
| 起動前 | 吸込・吐出・バイパス弁の所定位置、潤滑、冷却、補機、盤電源、非常停止復帰 |
| 始動中 | 始動完了、回転速度、始動時間超過、電流、振動、異音 |
| 系統への移行 | 定格回転または始動完了、弁・ダンパ操作許可、共通ヘッダー圧力、逆流・サージ兆候 |
| 増台完了 | 風量、圧力、各機負荷、弁開度、サージ余裕、異常警報 |
| 減台 | 残存機で必要風量・圧力を維持できること、停止機の弁順序、停止後の逆流防止 |
起動条件とトリップ条件が同時に成立したり、増台中に要求風量が下がったりする例外処理も必要です。設計時には通常手順だけでなく、始動失敗、弁不動作、計器異常、選択機故障、通信断を含む状態遷移を確認します。
8. 瞬時停電後は残留電圧を考慮して時差再起動する
排気・換気など連続運転が必要な設備では、瞬時停電から復電した後に送風機を自動再起動することがあります。このとき、復電を検出した瞬間に全台へ始動指令を出してはいけません。
電源が切れても、電動機と送風機はすぐには停止せず惰走します。回転中の電動機には残留電圧があるため、その位相や大きさを考慮せず再投入すると、大きな電気的・機械的過渡が生じる可能性があります。原著では、残留電圧が十分減衰してから電源を投入する考え方が示されています。
さらに、複数台を同時再起動すると、始動電流が集中します。復電後は、再起動してよい設備だけを選び、残留電圧に関する投入条件を満たしてから、所定の間隔で1台ずつ起動します。VFDが瞬時停電後の自動再加速機能を持つ場合も、複数台を同時に再加速させると電源側が過電流になる可能性があるため、時差を設けます。

自動再起動の可否は、プロセス安全を優先して決めます。可燃性雰囲気、炉・ボイラ、局所排気、反応設備などでは、再起動前に確認すべき条件が異なります。待ち時間や投入条件を一律に決めず、電動機・VFD・開閉器・電源系統・送風機・プロセスの設計を合わせて検証します。
9. 現場で増台・減台するときの確認表
増台前
- 起動対象機が自動選択対象で、故障・整備中ではないか
- 吸込弁、吐出弁、バイパス弁・放風弁が始動前の所定位置か
- 共通ヘッダー圧力と後発機の締切圧力の関係を把握しているか
- 前回停止から必要な停止時間を確保しているか
- 先発機がサージングや過負荷状態にないか
- 電源側が次の1台の始動を許容できるか
増台中
- 始動完了・定格回転を確認する前に吸込ダンパを開けていないか
- 後発機側に逆流音、圧力の異常変動、サージングの兆候がないか
- バイパス・放風方式では、後発機の流量を確保してから吐出弁を開けているか
- 吐出弁とバイパス・放風弁を急操作していないか
増台後
- 総風量と共通ヘッダー圧力が目標へ安定したか
- 各機の電流、圧力、風量、振動、温度が許容範囲か
- 1台だけ低流量側へ偏ったり、逆流したりしていないか
- 弁・ダンパが最終位置へ到達し、不要なバイパス・放風が残っていないか
減台時
- 残す送風機だけで必要風量・圧力を維持できるか
- 停止機側への逆流を防ぐ弁順序になっているか
- 減台後に残存機が過負荷またはサージング領域へ入っていないか
- 次の再起動までの最小停止時間と起動頻度制限を満たせるか
10. 設計・試運転で確認すること
設計時
- 各送風機の性能曲線、締切圧力、サージライン、許容運転範囲を重ねて確認したか
- 1台、2台、全台運転時の管路抵抗と運転点を確認したか
- 後発機投入時の逆流を想定し、必要な弁・ダンパ・逆止弁・バイパス・放風経路を決めたか
- 放風先が安全か。可燃性、毒性、臭気、温度、騒音を評価したか
- 順次起動間隔と電源容量を電気設計へ反映したか
- 増台・減台設定、判定遅延、最小運転・停止時間、起動頻度制限を決めたか
- 故障・整備機の除外と代替機選択をシーケンスへ入れたか
- 瞬時停電後の自動再起動可否と、残留電圧・時差再起動条件を決めたか
試運転時
- 1台目から順に増台し、各段階の風量、圧力、電流、振動、弁位置を記録したか
- 後発機の始動から定格回転、系統接続までの時間変化を確認したか
- バイパス・放風から共通ヘッダーへの移行中に逆流やサージングがないか
- QupとQdown付近で要求風量を変え、頻繁な増減台が起きないか
- 始動失敗、選択機故障、弁不動作、計器異常時に安全な状態へ移るか
- 許可された試験条件で、瞬時停電後の再起動順序と電源・プロセス応答を確認したか
11. まとめ
送風機の台数制御では、必要風量に応じて運転台数を変えるだけでなく、後発機を共通ヘッダーへ安全に入れる操作が重要です。先発機が作った吐出圧力に対し、後発機は定格回転へ達するまで十分な圧力を作れないため、吸込ダンパを開く時点を誤ると逆流する可能性があります。
締切圧力が十分な機種では、吸込ダンパを閉じて始動し、定格回転後に開きます。締切圧力が不足する条件では、バイパスまたは放風で後発機自身の流量を確保してから、共通ヘッダーへ移行します。
複数台は1台ずつ順次起動し、交互運転で運転時間の偏りを抑えます。QupとQdownの差、判定遅延、最小運転・停止時間、起動頻度制限を組み合わせ、増減台の繰り返しを防ぎます。瞬時停電後に自動再起動する設備では、残留電圧と電源容量を確認し、全台同時ではなく時差再起動してください。
実際の弁構成と操作順序は機種・設備によって異なります。メーカー図書、P&ID、シーケンス表、現場SOPを一致させ、試運転で過渡状態まで確認することが大切です。
送風機記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』5.1.2、5.4「台数制御」、PDF p.132、144–147 Amazonで見る
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