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学識・型1|理想気体と混合気体|「取り出し問題」は2本立てて引くだけ【甲種化学】

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困っている人
困っている人

容器からガスを取り出す問題で、何を未知数にすればいいのか分からない。

混合気体の平均モル質量と密度の関係が、毎回あやふやになる。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

取り出し問題は式を2本立てて引くだけ ── 10回中2回

10回中5回で出題。学識の入口にあたる型

平均モル質量 M̄ = Σ(yᵢMᵢ) と密度 ρ = pM̄/(RT)

単位(Pa・m³・mol・K)を一度で揃えるコツ

難しくはありませんが、単位の取り違えで落とすと痛い型です。ここは確実に取ってください。

この型はpV = nRT だけで解けます。

難しいのは式ではなく、状態が2つ以上あるときの整理です。

そこさえ手順化してしまえば、学識の中で最も確実な得点源になります。

型別の全体像は学識の計算は「10の型」しか出ないを参照してください。

10回中5回。出る形は4つ

年度・ルート・問テーマ
R3 国試 問1容器からの取り出しと圧力変化取り出し
R2 国試 問2混合気体のモル質量・密度・充填量平均モル質量
R6 国試 問1混合気体の密度から平均モル質量平均モル質量
R5 国試 問1液化ガス過充填・体膨張係数と圧縮率液の膨張
R5 検定 問1ヘリウム-酸素混合気の定容モル熱容量混合の加重平均

平均モル質量が2回、取り出しが1回。 検定側では単独の大問になりにくく、国試に偏っています。

使う式は5つ

① 理想気体の状態方程式

pV = nRT R = 8.314 J/(mol·K)

② 質量とモルの変換

n = m / M(m:質量 g、M:モル質量 g/mol)

③ 密度

ρ = m/V = pM / (RT)

④ 混合気体の平均モル質量

M̄ = Σ(yᵢ Mᵢ)(yᵢ:モル分率)

⑤ ドルトンの分圧の法則

pᵢ = p_total × yᵢp_total = Σpᵢ

これだけです。 型1で新しく覚えることはありません。

最初に単位を固定する

この型の失点は、9割が単位です。 先に潰しておきます。

使う単位よくある間違い
圧力 pPaMPa・kPa のまま代入する
体積 VL のまま代入する(1 L = 10⁻³ m³
物質量 nmolkmol のまま
温度 TK摂氏のまま(+273.15
モル質量 Mg/molkg/mol と混ぜる
R = 8.314 のとき、この組み合わせしか成り立たない

Pa × m³ = mol × 8.314 × K

R の単位が J/(mol·K) = Pa·m³/(mol·K) だからです。ここを軸にすれば迷いません。

よく使う換算

  • 1 MPa = 10⁶ Pa / 1 kPa = 10³ Pa
  • 1 L = 10⁻³ m³ / 1 mL = 10⁻⁶ m³
  • 1 kg = 10³ g / 1 kmol = 10³ mol
  • 0℃ = 273.15 K(試験では273でも可)

問題を読んだらすぐ、与えられた数値をこの単位に直して書き出してください。 あとで直そうとすると必ず抜けます。

取り出し問題 ── 式を2本立てて引く

令和3年度 国家試験 問1 で実際に出た形です。

設問(要約)

分子量44の理想気体が、温度27℃・圧力1.5 MPa で密閉容器に充填されている。温度を一定に保ちながら中の気体を 1.0 kg 取り出すと、容器内の圧力は 0.5 MPa になった。

(1) 容器の内容積 V は? (2) はじめに充填されていた気体の質量は?

手順は3つだけ

  1. 状態①の式を立てる
  2. 状態②の式を立てる(取り出した分だけ n が減る)
  3. ①−②で未知数を1つ消す
状態① 取り出す前

1.5×10⁶ × V = n × R × 300 … ①

状態② 取り出した後

取り出した物質量 = 1,000 g ÷ 44 g/mol

0.5×10⁶ × V = (n − 1000/44) × R × 300 … ②

①−② を計算する

(1.5 − 0.5)×10⁶ × V = (1000/44) × R × 300

1.0×10⁶ × V = 22.73 × 8.314 × 300

V = 56,690 / 1.0×10⁶ = 0.057 m³

n が消えました。 これが「2本立てて引く」の意味です。未知数が2つあっても、引き算で1つ消えます。

(2) 初期の質量

①に V を戻す

n = 1.5×10⁶ × 0.05669 / (8.314 × 300)

= 85,035 / 2,494 = 34.09 mol

質量に直す

m = 34.09 × 44 = 1,500 g = 1.5 kg

1.5 kg 入っていて1.0 kg 取り出したので、残りは0.5 kg。圧力が1.5→0.5 MPa になったことと整合します。

温度一定なら、圧力と物質量は比例します。 1.5→0.5 は3分の1。質量も1.5→0.5 kg で3分の1。この検算は必ずやってください。

温度も変わる場合

同じ手順です。各状態の式を丁寧に書くだけ。

一般形

p₁V = n₁RT₁

p₂V = n₂RT₂

→ 取り出し量 Δn = n₁ − n₂ = (V/R)(p₁/T₁ − p₂/T₂)

V が既知なら1本で済みます。 2本立てるのは V が未知のときです。

混合気体 ── 平均モル質量が軸

定義

M̄ = Σ(yᵢ Mᵢ)

yᵢ:モル分率(体積分率と同じ ── 理想気体だから)

質量分率ではありません。 ここが最大の落とし穴です。

なぜモル分率=体積分率なのか

理想気体では、同じ温度・圧力なら1 mol が占める体積は種類によらず同じだからです(アボガドロの法則)。

だから vol% = mol%。問題文が vol% で与えていても、そのままモル分率として使えます。

ただし質量%(wt%)で与えられたら、モル分率に直す必要があります。

質量%からモル分率へ

① 各成分の質量を仮に100 gとして割り振る

② それぞれ ÷ Mᵢ でモル数にする

③ 合計で割ってモル分率にする

ミニ例題(平均モル質量)

メタン(M=16)60 vol%、エタン(M=30)40 vol% の混合気体の平均モル質量は?

〔解答〕

M̄ = 0.60×16 + 0.40×30 = 9.6 + 12.0 = 21.6 g/mol

密度から逆に求める(R6国試問1)

ρ = pM̄/(RT) を M̄ について解くだけです。

M̄ = ρRT / p

例:25℃・101.3 kPa で密度 1.20 kg/m³ なら

M̄ = 1.20 × 8.314 × 298.15 / 101.3×10³

= 2,974 / 101,300 = 0.02936 kg/mol = 29.4 g/mol

ρ を kg/m³ で入れると M̄ が kg/mol で出ます。 最後に1000倍して g/mol に直すのを忘れずに。

空気の平均モル質量は約29(N₂ 79% + O₂ 21% で 0.79×28 + 0.21×32 = 28.8)。この値を覚えておくと、答えの妥当性がその場で判断できます。

組成を求めさせる形

「平均モル質量が○○だった。組成は?」という逆問題も出ます。

2成分なら1次方程式

yA + yB = 1 かつ M̄ = yA MA + yB MB

yA = (M̄ − MB) / (MA − MB)

混合気体とドルトンの法則はドルトンの分圧の法則、理想気体そのものは理想気体の状態方程式と気体定数で扱っています。

液化ガスの過充填 ── 10回中1回(R5国試問1)

これだけは理想気体の話ではありません。 液体の膨張の問題です。

使う量

体膨張係数 β:温度が1 K上がると体積が何倍になるか ΔV/V = βΔT

圧縮率 κ:圧力が1 Pa上がると体積が何倍縮むか ΔV/V = −κΔp

満液の容器で温度が上がると何が起きるか

  1. 液が膨張しようとする(βΔT だけ)
  2. 容器の体積は変わらないので、逃げ場がない
  3. 圧力が上がって液が圧縮される(κΔp だけ)
  4. 膨張したい量 = 圧縮された量 で釣り合う
釣り合いの式

βΔT = κΔp

Δp = (β/κ) ΔT

どれくらい上がるか

液化プロパン:β = 2.5×10⁻³ /K、κ = 3.0×10⁻⁹ /Pa とする。
満液の容器の温度が1 K 上がると圧力はいくら上がるか。

〔解答〕

Δp = 2.5×10⁻³ / 3.0×10⁻⁹ = 8.3×10⁵ Pa = 0.83 MPa/K

たった1℃で0.83 MPa。10℃上がれば8 MPa以上です。容器はもちません。

これが液化ガスの過充填が危険な理由であり、容器に G = V/C という充填制限がある根拠です(→ 容器保安規則)。

貯槽の90%制限も同じ理由です(→ 製造の技術上の基準)。

気相部を残しておけば、膨張した液はそこへ逃げられます。 だから満液にしない。

実際の事故形態はBLEVE、圧力逃がしは安全弁を参照してください。

混合気体の物性は「モル分率で加重平均」

R5検定問1(ヘリウム-酸素の定容モル熱容量)がこの形でした。

物性混合の求め方
モル質量 M̄Σ(yᵢ Mᵢ)
モル熱容量 Cv、CpΣ(yᵢ Cᵢ)
仮臨界定数(Kayの方法)Σ(yᵢ Tc,ᵢ)Σ(yᵢ pc,ᵢ)

すべてモル分率での単純加重平均です。これはKayの方法(→ 型2|実在気体)と同じ発想。

ただし密度は違います。 ρ = pM̄/(RT) なので、M̄ を先に出してから使います。

比熱比γも加重平均できるか

できません。 γ = Cp/Cv なので、Cp と Cv をそれぞれ加重平均してから割ります。

正しい手順

① Cv,mix = Σ(yᵢ Cv,ᵢ)

② Cp,mix = Σ(yᵢ Cp,ᵢ) (または Cv,mix + R)

γ_mix = Cp,mix / Cv,mix

γ をそのまま加重平均すると違う値になります。比の量は加重平均できません。

熱容量そのものは比熱・マイヤーの関係、状態変化での使い方は型4|熱力学の状態変化へ。

この型の練習のしかた

  1. 単位を Pa・m³・mol・K に直すを、5つの数値で練習(1分)
  2. 取り出し問題を1題(R3国試問1。2本立てて引くのを体で覚える)
  3. 平均モル質量 ⇄ 密度の往復を2回
  4. 空気の M̄ = 29 を検算の基準として持つ

①だけで失点の9割が消えます。 型1は式ではなく単位の勝負です。

よくある失点

失点対策
MPa をそのまま代入R = 8.314 なら圧力は Pa
L をそのまま代入1 L = 10⁻³ m³
摂氏のまま計算+273.15
平均モル質量を質量分率で計算モル分率(=vol%)
ρ の単位で1000倍ずれるkg/m³ を入れたら M̄ は kg/mol
γ をそのまま加重平均Cp と Cv を先に平均してから割る

暗記カードにするならこれだけ

単位(これが本体)

Pa × m³ = mol × 8.314 × K

1 MPa = 10⁶ Pa/1 L = 10⁻³ m³/T = ℃+273.15

取り出し問題

状態①と状態②の式を立てて引く

① p₁V = n₁RT₁ ② p₂V = n₂RT₂

取り出し量 Δn = (V/R)(p₁/T₁ − p₂/T₂)

温度一定なら圧力と物質量は比例(検算に使う)

混合気体

M̄ = Σ(yᵢMᵢ)(モル分率=vol%)

ρ = pM̄/(RT)

空気の M̄ ≒ 29

熱容量・仮臨界定数もモル分率で加重平均

γ は加重平均できない

液化ガスの過充填

βΔT = κΔpΔp = (β/κ)ΔT

満液なら1℃で0.8 MPa程度上がる

だから充填制限(G=V/C、90%)がある

まとめ

  • 型1は10回中5回。学識の入口にあたる型
  • pV = nRT だけで解ける。難しいのは単位の管理
  • 取り出し問題は2本立てて引くだけ
  • 平均モル質量はモル分率(=vol%)で加重平均。質量分率ではない
  • 空気の M̄ ≒ 29 を検算の基準にする
  • 液化ガスの過充填は Δp = (β/κ)ΔT。1℃で約0.8 MPa
  • 比の量(γ)は加重平均できない

次は型2(実在気体)です。理想気体からのズレを、圧縮係数とKayの方法で扱います。→ 型2|実在気体

型の全体像は計算10の型、学識全体の攻略は学識の出題マップへ。

出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計60大問を筆者が型に仕分けして独自に行ったものです。設問の要約と解法の解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。