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圧縮機の潤滑と冷却|シリンダ注油・潤滑油系統、インタークーラと各段温度・ドレンの管理

圧縮機の潤滑と冷却のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

圧縮機の運転日誌には、各段の圧力と温度のほかに、油圧、油温、油面、冷却水の温度、ドレンの状態といった「本体以外」の項目がずらりと並びます。毎日同じ値を書き写していると、なぜこれほど油と水を見るのか分からなくなりがちです。

しかし、圧縮機の大きな事故の多くは、この油と冷却水から始まります。油が切れればシリンダや軸受が焼き付き、油が多すぎれば吐出弁と吐出配管にカーボンがたまって発火の元になります。冷却水が止まれば吐出温度が一気に上がり、逆に冷やしすぎれば凝縮した液が潤滑油を洗い流します。圧縮して冷やせば水が出るので、ドレンを抜き忘れれば液が次の段へ入ります。

この記事では、化学プラントの現場オペレーター向けに、圧縮機の油の種類と行き先、シリンダ注油量の考え方、フレーム油と遠心圧縮機の潤滑油系統の点検、段間冷却の意味と各段温度の読み方、ジャケット冷却水の温度、ドレンの量と抜き方を整理します。

この記事の結論

  • 往復動圧縮機には「回って戻るフレーム油」と「ガスとともに出ていくシリンダ油」の2つがあります。シリンダ油は戻らないので、入れすぎがそのまま吐出側のカーボンになります。
  • シリンダ注油は少なすぎれば焼付き、多すぎればカーボンの自然発火と弁の故障です。立上げ直後に増やした注油量は、必ず規定量へ戻します。
  • 油の管理値は「平常値との差」で判断します。油圧の低下は、すぐに圧縮機を止める理由になります。
  • 段間冷却の不調は、次の段の吸込温度と吐出温度の上昇として現れます。温度は圧力と組で見て、冷却水の入口温度・流量とクーラー前後の温度差から確かめます。
  • ジャケット冷却水は、ガスの吸込温度より数℃高く保ちます。冷やしすぎは凝縮による摩耗を招きます。
  • 圧縮して冷やせば水が出ます。クーラーの下流のドレンは必ず抜き、可燃性ガスのドレン弁は行き先を確かめてから開けます。

1. 圧縮機の油は3種類ある|フレーム油・シリンダ油・潤滑油系統

圧縮機の「油」とひとことで言っても、機種によって行き先と役目がまったく違います。まず自分の担当機の油がどれに当たるかを押さえます。

油使う機種行き先使い方
フレーム油(クランクケース油)往復動主軸受・クランクピン・クロスヘッドギヤポンプで循環させ、クランクケースへ戻す
シリンダ油往復動(給油式)シリンダ壁・ピストンリング・弁・ロッドパッキン注油器(ルブリケータ)から少しずつ送る。一部はガスとともに吐出側へ出ていく
潤滑油系統の油遠心・軸流軸受・増速機・カップリング油タンクからポンプで強制給油し、タンクへ戻す
油冷式スクリューの油油冷式スクリューロータ・軸受・歯車、圧縮中のガスガスに噴射して冷却とすき間のシールを兼ね、油分離器で回収する

往復動圧縮機のシリンダ油は、シリンダや弁の潤滑と密封をしたあと、一部がガスの流れに巻き込まれてミストになり、100℃以上の高温にさらされます。さらにガス中の水分と一緒にドレンとして分離されたり、ミストのまま配管を通って下流へ運ばれたりします。シリンダ油は「使い捨て」で、クランクケースへは戻りません。 ここがフレーム油との決定的な違いです。

2つの油が混ざらないように、クランクケースとシリンダの間にはディスタンスピース(中間室)があり、ピストンロッドが通る所にはフレーム油側のオイルきりリングと、ガス側のロッドパッキンがあります。硫化水素を含むガスでは、ロッドがガスをフレームへ持ち込まないように、ストローク以上の長さのディスタンスピースや二重の区画を使います。フレームへ腐食性ガスや可燃性ガスが入ると、腐食や静電気による発火の危険があるので、この部分のシールの状態は見落とさないようにします。

往復動圧縮機の2つの油|フレーム油は戻り、シリンダ油はガスとともに出ていく

なお、シリンダに注油しない無給油式(リングやライダーリングに樹脂系の材料を使うもの)には、シリンダ油の系統がありません。フレーム油だけを管理します。

遠心圧縮機の軸受にはタービン油が使われ、駆動機と共通の潤滑油系統から給油するのが一般的です。オイルフィルムシールを使う機械では、軸封用のシール油もこの系統と共用するか、別系統にします。油冷式スクリューでは、油が圧縮熱の大部分を吸収し、80〜90℃の高温の圧縮ガスとミスト状で接するため、ほかの潤滑油より劣化が速く、熱と酸化に対する安定性がいちばん求められます。

油の銘柄と粘度は、機種とガスの組合せで決まります。現在の圧縮機油には、往復動用(カーボンの生成が少ないもの)、スクリュー用(耐熱・耐スラッジ性)、ターボ用(長寿命のタービン油)、プロセスガス用といった区分があります。使う油はメーカーの指定に従い、補給のときに銘柄を取り違えないようにします。

2. シリンダ注油は多すぎても少なすぎても事故になる

往復動圧縮機の潤滑でいちばん大切なのが、シリンダへの注油量です。

  • 少なすぎる:油切れでシリンダとピストンリングが焼き付く。大事故になる
  • 多すぎる:吐出弁や吐出配管にカーボンが生成・付着し、カーボンの自然発火による爆発事故を招く。油滴で弁が壊れやすくなり、弁の整備回数も増える

カーボンは油の量だけでなく、油の添加物とガスの組合せでもできます。ガスに合わない油を使うと、適量でもカーボンが付いて弁の割れや折れの原因になります。

立上げの時期や整備の直後は、摺動部をなじませるために注油量を増やします。1970年代の資料では、スタート期間や整備直後の1〜2週間は規定量の2倍程度とし、その後は必ず規定量へ戻すとされています。戻し忘れると、そのまま給油過剰の運転が続きます。注油器の設定を変えたら、いつ戻すかを運転記録に書いておきます。

適正な量かどうかは、弁を外したときの見た目で確かめられます。

  • 吐出弁を外したとき、わずかに濡れている程度が適量。赤褐色の錆が浮いていないことも目安
  • びっしょり濡れて油だまりがあるのは給油過剰
  • ロッドパッキンは、運転中のロッド表面がかすかに油膜を保つ程度に調整する。乾いている、汚れている、液で洗われている、ガス漏れが止まらないときは、油の質と量、ロッドの表面、リングの組合せを見直す

起動前の予備注油にも注意がいります。シリンダヘッドに弁がある高圧シリンダなどでは、ターニングのあと起動前に予備注油をやりすぎると、シリンダにたまった油をピストンが起動と同時にたたき、ピストンを壊すことがあります。通常の弁配置でも、油が弁ポートにたまって弁を傷めます。

日常点検では、注油器の作動(滴下の様子、各注油点への送り)を毎日確認します。注油器が止まっても圧縮機はすぐには止まらないので、見回りで気付くしかない場合があります。

3. フレーム油・軸受油の日常点検|油面・油圧・油温・色

フレーム油や軸受の潤滑油は、次の項目を毎日見ます。基礎的な軸受潤滑の考え方(油面、油の役目、過熱の切り分け)は、ポンプの軸受と潤滑と共通です。

見るもの見方外れたら疑うこと
油面運転中の油面計の適正範囲で見る(運転中と停止中で油面の位置が違う)低い:漏れ、消費。高すぎる:水の混入、補給しすぎ
油圧平常値と比べる低下:フィルタの目詰まり、ポンプの不調、リリーフ弁、油量不足、油温上昇
油温平常値と比べる。油冷却器の出入口温度も見る上昇:冷却水の異常、油量不足、粘度の合わない油、軸受の異常
フィルタ差圧差圧計の値の変化上昇:汚れ・摩耗粉・スラッジ
油の色・状態サンプリングして見る白濁:水の混入。黒化・異物:摩耗粉、スラッジ、フィルタの破損

油温の目安として、小形〜中形の空気圧縮機の保全書では、一般に室温+30〜40℃程度、夏場でも70℃を超えないことが示されています。ただし、同じ資料でも「日常で正常に運転している値をベースに判断する」と念を押しています。管理値は機械ごとに決まっているので、平常値からの差で判断するのが基本です。

潤滑油の圧力低下は、油の供給量が減っていることが多く、大きな事故につながります。 そのため、油圧を検出して警報を出し、さらに下がれば圧縮機を停止させる保護装置が付いています。軸端駆動のフレームオイルポンプの機械では、起動直後に油圧が上がるまでの十数秒だけトリップ回路を短絡する設計があります。起動時に油圧が確立したことを確かめてから負荷をかけます。

フレームのオイルパンの油面が高すぎると、クランクが油面をたたいて油が泡立ち、オイルポンプにキャビテーションを起こさせます。「多めに入れておけば安心」ではありません。

油の白濁は水の混入のしるしです。原因は、クーラーの漏れ、過冷却による圧縮ガス中の水分の凝縮、ドレン切りの不良などです。現象は油回転真空ポンプの白濁と同じで、油回転ポンプとドライポンプでも解説しています。

4. 遠心圧縮機の潤滑油系統|タンク・ポンプ・クーラー・フィルタ・アキュムレータ

遠心圧縮機は、軸受へ一定の圧力と温度の油を送り続けることが運転の前提です。潤滑油系統は、次のような機器で構成されます。

  1. 油タンク:油を暖めるヒーター、窒素パージの接続口、サンプリング口、接地線を備える
  2. 主オイルポンプと補助オイルポンプ:正副2台を並列に置き、油圧が下がったら補助ポンプが自動起動する。駆動源を変えておく(例:主ポンプを蒸気タービン駆動、補助を電動機駆動)。両方とも電動機駆動なら、補助ポンプを非常用電源につなぐ
  3. オイルクーラー:冷却水で油温を調節する
  4. 2連切替式フィルタ:運転中に切り替えて清掃できる
  5. アキュムレータ:ポンプの切り替わりの瞬間の圧力降下で圧縮機が止まらないように、圧力を保つ
  6. 軸受・増速機へ給油し、タンクへ戻る

クーラーとフィルタの順序は機種によって逆のこともあります。自分の機械の系統図で確かめておきます。

遠心圧縮機の潤滑油系統|油圧が下がると補助ポンプが起動し、さらに下がると止まる

起動前は、タンクの油面が正常か、配管系統のエアベントが終わっているか、フィルタの清掃・交換が済んで差圧が異常でないか、予備ポンプに油が満たされて待機状態か、油温が35〜40℃程度に保たれているか、アキュムレータが設計どおり予圧されているか、警報・予備ポンプ自動起動・トリップ回路が生きているかを確認します。1970年代の資料は、遠心圧縮機そのものは簡単には止まらないが、こうした補機の整備が不十分だと簡単に止まってしまう、と述べています。

停止後も、潤滑油はターニングが終わるまで冷却のために循環を続けます。ケース内のパージが終わるまでは、シール油も止めません。

遠心圧縮機を止める保護装置の多くは、この潤滑・シール油の系統に付いています。 潤滑油圧の低下、油温の上昇、フィルタ差圧の増加、タンク液面の低下などに対して、警報や停止の条件が組まれます。誤作動で止まらないように、同じ目的のスイッチを3個付けて2個が作動したときだけトリップさせる方式(2 out of 3)もあります。

オイルフィルムシールを使う機械では、シール油をヘッドタンクの液位や差圧で、ガス圧より一定だけ高く保ちます。ガス側に出た油はガスを溶かし込んでいるので、そのまま潤滑油タンクへ戻さず、脱ガスしてから戻すか廃棄します。シール油の系統が潤滑油と共用のときは、潤滑油タンクに可燃性ガスが入り込む可能性があることを覚えておきます。

潤滑・シール・制御油の系統は、現在は API 614 がその規格です。

5. 油タンクと油の事故|窒素パージとアースを止めない

潤滑油タンクは「ただの油の入れ物」ではありません。シール油と共用のタンクでは、油に溶け込んだガスや漏れたガスがタンクの気相にたまります。

1970年、ナフサ分解ガスを送る圧縮機の潤滑油タンクが爆発した事故がありました。運転を止めて補修していた最中で、運転中に行っていたタンクの窒素シールは止め、シール用の潤滑油だけを循環させていました。シール油に混入していた分解ガスがタンクのベントから放出され、真上にあった高温の蒸気の安全弁に触れて着火しました。ベントには逆火防止の金網もありませんでした。

この事故から分かることは次のとおりです。

  • シール油を回しているかぎり、タンクには可燃性ガスが出てくる。保全中でもシール油を循環させるなら、窒素パージを止めない
  • タンクのベントの出口の周りに高温の配管や機器がないかを確かめる

静電気にも注意がいります。タンクを接地していても、タンクの内面を防錆塗装すると内部が絶縁され、戻り油の落下や揺れる液面で静電気がたまります。1970年代の資料は、油の液面から直接アースをとることと、窒素パージを常時続けることを忘れてはならない、としています。静電気がたまる条件の一般論は、静電気はなぜ危ないかを参照してください。

6. なぜ冷やすのか|段間冷却で吐出温度と動力を下げる

ガスを圧縮すると温度が上がります。吐出温度が高くなりすぎると、次のことが起きます。

  • 潤滑油の潤滑性が落ち、ピストンリングやロッドパッキンが耐熱の限界を超えて著しく摩耗する
  • 吐出弁や配管で油が炭化してカーボンになりやすくなる
  • ガスによっては重合や腐食が進む

そこで、圧力比が大きいときは何段かに分けて圧縮し、段と段の間でインタークーラによって冷やします。1970年代の設計の資料では、吐出ガス温度を一定の温度以下におさえるように各段の圧力比を決め、そこから段数を決めることが多いとしています。高温で重合や腐食のおそれがあるガスでは、段数を増やして各段の圧力比を下げます。

空気を30℃から絶対圧で8倍まで圧縮する例で比べると、断熱圧縮の理論値で次のようになります。

条件各段の圧力比吐出温度(理論値)
1段で圧縮8約276℃
2段、インタークーラで30℃まで冷やす各段 約2.83各段とも約135℃
2段、インタークーラ出口が50℃に上がった各段 約2.832段目が約162℃
2段圧縮の吐出温度|段間で冷やせば低く抑えられ、インタークーラが効かないと2段目が上がる

段間で吸込温度まで冷やせば、各段の吐出温度は低く抑えられます。 冷やしたぶん次の段のガスの体積が小さくなるので、圧縮に要る動力も減り、等温圧縮に近づきます。

逆に、インタークーラが効かずに出口温度が30℃から50℃に上がると、2段目の吐出温度は理論値で約27℃上がります。2段目の理論動力は吸込みの絶対温度に比例するので、この例では約7%増えます。遠心圧縮機でも中間冷却器を使って等温圧縮に近づけているので、中間冷却の不足はすぐに軸動力の増加になります。原因は、中間冷却器の水側の汚れ、冷却水量の不足、冷却水温度の上昇です。

これらは断熱圧縮の理論値で、実機では効率やシリンダの冷却で値が変わります。最適な中間圧の求め方と吐出温度の式は、圧縮機の理論動力で解説しています。

7. 各段の温度・圧力で冷却の不調を読む

多段圧縮機の各段の温度と圧力は、温度は圧力と組で、平常値と比べて見ます。ある段の温度が上がる原因は、大きく3つに分かれます。

原因温度の出方圧力の出方確かめるもの
前段のクーラーの能力低下次の段の吸込温度が上がり、吐出温度も上がる。徐々に上がることが多いある段の圧力が上がることがある冷却水の入口温度・流量、クーラーのガス出入口と水出入口の温度差
弁の漏れによる逆流その段の吸込温度や弁カバーの温度が上がる中間圧力が変わる(まず中間圧力の変化に現れ、次に温度に現れることが多い)弁カバーの表面温度、中間圧力の変化の向き
圧縮比の増加吐出温度が上がる吸込圧力の低下、吐出圧力の上昇吸込フィルタの詰まり、下流の閉塞

クーラーの能力が落ちる原因は、冷却水側のスケール(水あか)、ガス側のカーボンの堆積、冷却水量の減少(給水圧力の低下、配管のスケールによる抵抗の増加)、夏場の入口水温の上昇です。水側だけでなく、ガス側のカーボンの堆積も忘れないようにします。 汚れ係数と清掃の考え方は汚れ係数(ファウリング)の考え方、水質の管理は冷却水系の管理とスケール・スライムを参照してください。

温度の上がり方の速さも手掛かりです。徐々に上がる場合は、吸込温度や冷却水の入口温度の上昇、クーラーの汚れ、冷却水量の減少が考えられます。急に上がる場合は、冷却水の停止や弁の異常など大事故につながるおそれが大きく、すぐに圧縮機を止めて処置します。

弁の漏れによる温度上昇と区別するには、まず冷却水の入口温度と流量、クーラー前後の温度差を確かめます。 クーラー出口のガス温度が平常より高ければ冷却側、クーラー出口は平常なのにその段の温度だけが上がるなら弁を疑います。

なお、1段目の吐出ガスを中間冷却せずに2段目へ吸い込ませる機械では、1段目の吐出温度が比較的低いため、1段目のトラブルに気付かず、2段目の吐出温度の上昇として初めて異常が見つかることもあります。異常温度の原因はいくつもあるので、一方的に決めつけず、点検で原因を詰めてから保全のための停止をします。

8. シリンダジャケット水は冷やしすぎない

往復動のシリンダはジャケットの冷却水で冷やしますが、冷やしすぎも害になります。

水分や凝縮しやすい炭化水素を含む湿ったガスでは、シリンダ壁の温度が露点より低いと、シリンダの中でガスが凝縮します。凝縮した液は潤滑油を薄めたり洗い流したりして、リングやシリンダの摩耗を著しく早め、弁板の破損も招きます。量が多いとノッキングを起こします。硫化水素を含む湿ったガスでは特に、冷却水の温度管理が求められます。

そのため、シリンダの冷却水はガスの吸込温度より数℃高く保ちます。 1970年代の設計の資料では吸込ガス温度より5〜10℃高く、同じシリーズの運転の章では5〜6℃高く、と示されています。高い温度の冷却水がないときは蒸気で加熱し、循環式にして高い温度で回すのが理想です。冬の起動前は、冷却液を温めておきます。

同じ理由で、吸込配管が冷えて凝縮液ができないように、気液分離器より下流の吸込配管を保温・スチームトレースすることもあります。

クロスヘッドガイドやロッドの案内部を冷やしすぎると、そこで結露した水が潤滑油に入ります。ある水素の無給油往復動圧縮機の運転マニュアル(1977年)では、各部の冷却水出口温度を夏季最高40℃以下とする一方、潤滑油に水分が混入しないよう、クロスヘッドガイドとロッド案内を冷やしすぎて凝結水を出さないように、と注記しています。

9. インタークーラ・アフタークーラとドレン

大気やガスを圧縮して冷やすと、水分が液になって出てきます。空気なら必ず出ます。

大気(30℃、相対湿度70%)100 m³ を 0.69 MPaG まで2段で圧縮し、各段のクーラーで40℃まで冷やす例で計算すると、次のようになります。

位置空気が含める水(40℃で飽和)出るドレン
吸込み(30℃、湿度70%)約2.12 kg が入ってくる―
インタークーラ出口(約0.18 MPaG)約1.88 kg約0.24 kg
アフタークーラ出口(0.69 MPaG)約0.66 kg約1.22 kg
合計―約1.5 kg
圧縮して冷やすと水が出る|大気100 m³を0.69 MPaGまで圧縮して40℃に冷やしたときのドレン量

計算は飽和水蒸気圧(30℃で約4.25 kPa、40℃で約7.38 kPa)から、大気圧を 0.101 MPa、クーラー出口のガスは40℃で飽和しているとして求めました。同じ40℃でも、圧力が高いほど空気が含める水は少なくなるので、圧縮して冷やした所で水が出ます。 吸込量が毎分10 m³ の圧縮機なら、この条件で1日に約210 kg(約0.2 m³)のドレンが出る計算です。

ドレンを抜かないと、次のことが起きます。

  • 液が次の段のシリンダへ入り、弁板が割れる、液撃を起こす
  • ドレンが圧縮機から出る油やカーボンと混ざってワニスのような膠(にかわ)状になり、配管や空気機器の錆と作動不良の原因になる
  • 潤滑油が白濁し、錆が出る

1970年代の資料は、中間冷却器の下流には必ずドレンセパレータを設けるとしています。ドレン弁と自動ドレントラップの作動、ドレンの排出量と色を毎日見ます。ドレンが黒くなってきたら、シリンダ油の多すぎやカーボンの増加を疑います。

クーラーのチューブの漏れにも注意します。運転中はガス側の圧力が高いのでガスが冷却水側へ漏れ、停止中は逆にガス側へ水が入ります。運転中に冷却水の排水に気泡が混じっていれば、ガスの漏れと考えます。 多段のインタークーラでは、停止中に冷却水が高圧側へ入るおそれがあります。長期間止めるときは、凍結による損傷を防ぐため、ドレンだけでなく冷却水も抜いておきます。

可燃性ガスの圧縮機でドレン弁を開けるときは、ガスがどこへ出ていくかを先に確かめます。 1968年、計装用空気の圧力低下で緊急停止した分解ガス圧縮機で、排水弁が開かれていたために、分解ガスがドレン抜き配管からピットへ噴き出して圧縮機室へ流れ込み、爆発した事故があります。

10. 冷却水と油の管理を記録で続ける

油と冷却水の異常は、ゆっくり進むものと、急に来るものがあります。ゆっくり進むものは記録の傾向で、急に来るものは保護装置で捕まえます。

冷却水では、入口温度、流量、各部の出口温度を記録します。管理値は機械ごとに決まっていて、先の水素圧縮機の例では、各部の冷却水出口温度を夏季最高40℃以下としていました。急な温度上昇は大事故につながるので、断水リレー(通水の確認)、温度の警報、インターロックが設けられます。冷却水が止まったら、圧縮機は止めます。 夏場の入口水温の上昇、クーラーの汚れによる温度差の縮小は、傾向を見ていれば事前に分かります。

油は、見た目の点検に加えて、定期的にサンプリングして分析します。汚染度(異物の量)と摩耗粉を調べる方法があり、摩耗粉の形と量からは、どこが摩耗しているかの手掛かりが得られます。スクリュー圧縮機の保全の例では、運転開始後500時間でサンプリングし、その後は1000時間ごとに行い、油の取替えは劣化状態を見て決めるが少なくとも3〜5年に1回は新油にする、としています。油冷式スクリューの油は劣化が速いので、交換の周期を短めに見ます。

1台の機械の運転マニュアルでは、管理値を具体的に書いておきます。先の水素の無給油往復動圧縮機(1977年)の例を SI に直すと、次のとおりです。

項目管理値の例
潤滑油圧正常 0.29〜0.39 MPaG。低下時の警報と自動停止はどちらも 0.25 MPaG 以下と記載
潤滑油温30〜60℃
各部冷却水出口温度夏季最高40℃以下
吐出ガス温度70℃以下

これは1台の機械の値で、一般値ではありません。自分の機械の管理値を、運転マニュアルとメーカーの資料で確かめて、日誌の欄に書き込んでおくと、見回りのたびに平常値と比べられます。据付や大規模な修理のあとのオイルフラッシングは、日常管理とは別の手順です。

まとめ|油・冷却水・ドレンの日常点検表

点検項目見る場所正常の目安外れたら疑うこと
シリンダ注油注油器の滴下、各注油点規定量どおり作動。弁を外したとき「わずかに濡れている」少ない:焼付き。多い:カーボン、弁の故障
フレーム油の油面油面計(運転中)運転中の適正範囲低い:漏れ。高い:水の混入、泡立ち
油圧圧力計平常値と同じフィルタ詰まり、ポンプ・リリーフ弁の異常、油温上昇
油温温度計、油冷却器の出入口平常値と同じ(小形空気圧縮機の目安:室温+30〜40℃、70℃以下)冷却水の異常、油量不足、粘度違い
フィルタ差圧差圧計平常値と同じ汚れ、摩耗粉、スラッジ
油の色サンプリング透明で白濁なし白濁:水の混入。黒化:摩耗・スラッジ
各段の吸込・吐出温度各段の温度計平常値と同じ(気温差とクーラーの状態を考える)クーラー能力低下、弁の逆流、圧縮比の増加
冷却水入口温度、流量、出口温度平常値と同じ、排水に気泡なし水量不足、水温上昇、クーラーの汚れ、チューブ漏れ
ジャケット水温ジャケット出入口吸込ガス温度より数℃高い低すぎ:凝縮による摩耗
ドレンドレン弁、トラップ、排出物排出量が適正で黒くない抜けていない:液撃・弁割れ。黒い:給油過剰・カーボン
  • 往復動のシリンダ油はガスとともに出ていくので、入れすぎはカーボンと発火の元になります。 立上げ直後に増やした注油量は必ず規定量へ戻します。
  • 油の管理値は平常値との差で判断し、油圧の低下はすぐに止める理由と考えます。
  • 遠心圧縮機の保護装置の多くは潤滑・シール油の系統にあります。 起動前の確認と、停止後の油の循環を省きません。
  • シール油と共用の油タンクは、保全中も窒素パージとアースを止めません。
  • 段間冷却の不調は次の段の温度に出ます。 冷却水の入口温度・流量とクーラー前後の温度差を先に確かめます。
  • ジャケット水は吸込ガス温度より数℃高く保ち、冷やしすぎによる凝縮を避けます。
  • 圧縮して冷やせば水が出ます。 クーラー下流のドレンを抜き、可燃性ガスのドレン弁は行き先を確かめてから開けます。

圧縮とガスの性質の基本はファン・ブロワー・圧縮機の違い、クーラーのチューブ破損や冷却喪失の考え方は熱交換器のプロセス安全、熱交換器全体は熱交換器の完全ガイドを参照してください。

参考文献

  • 化学工学協会編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』第3章 3・3・3「軸受」、3・4・2(図3・27 シールオイルシステム)、3・5・2「段数、圧力比の選定」、3・5・9「湿ガス、飽和ガスおよび腐食成分含有ガスの圧縮」、第6章 6・1・2「運転」、6・1・3(5)「補機類」、6・2・2「運転」、6・2・3「保全」
  • 日本プラントメンテナンス協会編『ファン・コンプレッサーの本』第3章 3・3・1「往復動圧縮機の保全」(表3・1)、3・3・2「スクリュー圧縮機の保全」、3・4・3、3・4・5「一般的な保全管理のポイント」(図3・42〜図3・44、表3・7) Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』11.5「圧縮機とポンプ」(多段圧縮機の理論、運転管理)
  • 『環境保全技術シリーズ(化学プラント安全対策技術)3 保安・保全の管理技術』第6章 6・8(表6・20、表6・21 主要機器運転マニュアル記入例)
  • 『環境保全技術シリーズ(化学プラント安全対策技術)4 事故災害事例と対策』第6章 6・4「石油化学工業」
  • 出光興産「圧縮機油|工業用潤滑油」
  • API 614「Lubrication, Shaft-sealing and Oil-control Systems and Auxiliaries」
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