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最終確認:2026年10月24日
電験三種の理論で、複雑な直流回路を解く道具になる4つの論点をまとめた辞書です。テブナンの定理(てぶなんのていり)、重ね合わせの理(かさねあわせのり)、ブリッジの平衡、電力と最大電力の順に確かめます。
理論の論点:直流回路①|直流回路②|静電気|磁気|電磁誘導|交流の基本
テブナンの定理 ── どんな回路も、内部抵抗つきの電源に置き換えられる

| 置き換えた電池 | 中身 | 出し方 |
|---|---|---|
| 起電力(きでんりょく) | 負荷を外した2端子間の電圧(開放電圧(かいほうでんあつ)) | 分圧や電位の差で出す |
| 内部抵抗(ないぶていこう) | 2端子から見た回路の合成抵抗 | 電源を取り除いてから見る |
| 負荷の電流 | 置き換えた電池に負荷をつないだ電流 | 下の式で出す |
2端子から先の回路は、開放電圧を起電力とし、2端子から見た抵抗を内部抵抗とする1つの電池に置き換えられます。これがテブナンの定理です。
言葉の式 電流 = 起電力 ÷(内部抵抗 + 外部の抵抗)
I:回路に流れる電流〔A〕 E:電源の起電力〔V〕 r:電源の内部抵抗〔Ω〕 R:外部の抵抗(負荷抵抗)〔Ω〕
言葉の式 電流 = 開放電圧 ÷(電源を取り除いて見た抵抗 + 負荷抵抗)
I:負荷抵抗に流れる電流〔A〕 V0:開放電圧(負荷をつなぐ前の2端子間の電圧)〔V〕 R0:電源を取り除いて2端子から見た合成抵抗〔Ω〕 R:負荷抵抗〔Ω〕
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 開放電圧を、そのまま負荷の抵抗だけで割って電流を出す | × | 内部の抵抗でも電圧が下がる。内部の抵抗と負荷の和で割る |
| 同じ電池を4個並列にすると、内部抵抗は1個の4倍になる | × | 並列では4分の1になる。起電力は1個分のまま |
| 端子を短絡(たんらく)したときの電流を流す定電流源(ていでんりゅうげん)に、同じ内部の抵抗を並列につないだ形でも、端子から見た振る舞いは同じ | ○ | ノートンの定理(のーとんのていり)の形 |
| 端子を短絡したとき、端子側の枝に流れる電流は、並列の相手の枝の抵抗を分子にした分流の比で決まる | ○ | 流れにくい枝ほど、流れる電流は少ない |
- 電池は、起電力と内部抵抗の直列で表せます。電流が流れると内部抵抗で電圧が下がり、端子の電圧は起電力より低くなります。
- 電流が流れていないときは内部抵抗で電圧が下がらず、端子の電圧は起電力に等しくなります。
- 内部の抵抗を出すときは、定電圧源(ていでんあつげん)を導線にし(短絡)、定電流源を切り離してから、2端子から見ます。
- 電池を並列にすると、起電力は1個分のまま、電流の通り道が増えて内部抵抗が小さくなります。
解き方:負荷の電流をテブナンの定理で出す
- ① 最初の一手は、負荷を外した2端子間の電圧(開放電圧)を出すことです。
- ② 電源を短絡して、2端子から見た抵抗を出します。
- ③ 開放電圧を、内部の抵抗と負荷の和で割ります。
例の条件を短くまとめます(令和2年度 問7)。5 Vの電源に、1 Ω・2 Ω・3 Ω・4 Ωの4本をブリッジの形につなぎ、中央の2点の間にスイッチと8 Ωがあります。
スイッチを開いたとき、その両端の電圧は1 Vでした。スイッチを閉じたときの8 Ωの電流を求めます。
- 開放電圧は、スイッチを開いたときの両端の電圧で、1 Vです。
- 5 Vの電源を短絡すると、電源の両端が同じ点になります。片方の点からは1 Ωと4 Ωの並列で0.8 Ω、もう片方からは2 Ωと3 Ωの並列で1.2 Ωです。
- 2つは直列なので、内部の抵抗は0.8+1.2=2 Ωです。
- 1 Vを8 Ωだけで割った0.125 Aは誤りです。8 Ωをつなぐと、内部の抵抗2 Ωの分だけ電圧が下がります。
重ね合わせの理 ── 電源ごとの結果を足せばよい

| 取り除く電源 | 置き換え方 | わけ |
|---|---|---|
| 定電圧源 | 短絡(導線にする) | 電圧を0にする |
| 定電流源 | 開放(かいほう)(切り離す) | 電流を0にする |
| 残す電源 | そのまま | 1つずつ順に残す |
電源が複数ある回路は、電源を1つずつ残して電流を出し、向きをそろえて足します。残さない定電圧源は短絡し、定電流源は開放します。
言葉の式 枝の電流 = 電源1つだけのときの電流の和
I:電源が複数あるときの、ある枝の電流〔A〕 I1:電源①だけがあるときのその枝の電流〔A〕 I2:電源②だけがあるときのその枝の電流〔A〕
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 定電圧源と直列の抵抗2本の間に定電流源がつながっても、2本には同じ電流が流れる | × | 定電流源の電流が途中の点で合流する。後ろの抵抗の電流は、その分だけ多い |
| 足した電流が負なら、仮に決めた向きと逆に流れている | ○ | 問われる大きさは、符号を外した値 |
| スイッチを閉じて抵抗の電流が2倍になったら、定電圧源から来る電流も2倍 | × | 2倍になるのは抵抗を流れる合計。定電流源の分は変わらない |
| 抵抗の両端の電圧8 Vを、そのまま抵抗値8 Ωとする | × | 抵抗値は電圧を電流で割った値。4 Aなら2 Ω |
- 定電流源は、つないだ回路が変わっても決まった電流を流し続ける電源です。定電圧源は、決まった電圧を保つ電源です。
- 足してよいのは電流と電圧です。電力は電流の2乗に比例するので、電源ごとの電力を足しても正しい値になりません。
- ミルマンの定理(みるまんのていり)は、並列の枝が並ぶ2点の間の電圧を一度に出す形です。考え方は、節点の電位を置いてキルヒホッフの第一法則で解くのと同じです。
解き方:電源ごとに分けて足す
- ① 最初の一手は、定電流源を開放し、定電圧源だけの回路で電流を出すことです。
- ② 次に定電圧源を短絡し、定電流源だけの回路で電流を出します。
- ③ 2つの電流を、向きをそろえて足します。
例の条件を短くまとめます(令和5年度上期 問6)。左に4 Vの電源(上が+)があり、上の線に左から3 Ωと5 Ωが並びます。
2つの抵抗の間の点には、下の線から2 Aを送り込む定電流源がつながっています。3 Ωの電流を求めます。
- 定電圧源だけ:4÷(3+5)=0.5 Aが、3 Ωを右向きに流れます。
- 定電流源だけ:2 Aが、3 Ωの道と5 Ωの道に抵抗の逆の比で分かれます。3 Ωの道へは次の分が左向きに流れます。
I1:R₁ を流れる枝の電流〔A〕 I0:分かれる前の電流〔A〕 R1:1つ目の抵抗〔Ω〕 R2:2つ目の抵抗〔Ω〕
- 右向きを正にし、左向きの1.25 Aは−1.25 Aとして足します。
- 大きさは0.75 Aで、向きは左向きです。4 Vを8 Ωで割った0.5 Aは、定電流源の分を落とした値です。
ブリッジの平衡 ── 向かい合う抵抗の積が等しいと中央に流れない

| 状態 | 中央の枝 | 計算の仕方 |
|---|---|---|
| 平衡している | 電流が流れない | 中央の枝を外すか短絡して、直列と並列でまとめる |
| 平衡していない | 電流が流れる | Δ-Y変換(でるたわいへんかん)で形を直すか、キルヒホッフの法則で解く |
| 交流のブリッジ | 平衡すれば流れない | 抵抗の代わりにインピーダンス(いんぴーだんす)の積で考える |
向かい合う辺の抵抗の積が等しいとき、中央の2点は同じ電位になり、中央の枝に電流は流れません。これがブリッジ回路の平衡(ぶりっじかいろのへいこう)で、中央の枝は外しても短絡しても、ほかの電流は変わりません。
言葉の式 斜めに向かい合う抵抗の積が等しいとき、橋の部分には電流が流れない
R1:ブリッジの辺の抵抗(R₄ と向かい合う辺)〔Ω〕 R2:ブリッジの辺の抵抗(R₃ と向かい合う辺)〔Ω〕 R3:ブリッジの辺の抵抗(R₂ と向かい合う辺)〔Ω〕 R4:ブリッジの辺の抵抗(R₁ と向かい合う辺)〔Ω〕
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 平衡したブリッジで、上の枝だけを電流の道として電源電圧を出す | × | 平衡でも上下の枝の両方に流れる。2本の並列にまとめる |
| 平衡のときは、検流計も電源側の電流計も振れない | × | 振れないのは中央の検流計だけ。電流計は電源からの全電流を指す |
| すべり抵抗器の抵抗を除いて、平衡の式を立てる | × | 接点で分かれた2つの部分も、それぞれの辺に入れる |
| 2本の枝で上と下の抵抗の比が等しければ、中間の2点の電位は等しい | ○ | 2本とも同じ割合で電圧を分けるから |
- スイッチを開け閉めしても電流が変わらないなら、スイッチの両端は同じ電位で、ブリッジは平衡しています。
- 交流のブリッジも、向かい合う辺のインピーダンスの積が等しいと平衡します。抵抗とコンデンサの並列の辺は、直列の足し方で書きません。
- ほかの2辺を抵抗にして、未知の辺の向かい側に抵抗とコンデンサの並列を置きます。測れるのは、コイルの性質(虚数部が正)のものです。
解き方:平衡を見つけて中央の枝を外す
- ① 最初の一手は、向かい合う辺の抵抗の積を比べることです。等しければ、中央の枝を外します。
- ② 残った2本の枝を、直列と並列でまとめます。
- ③ 直列の抵抗の電圧から全電流を出し、電源電圧を出します。
例の条件を短くまとめます(令和4年度下期 問5)。上の枝は4 Ωと5 Ω、下の枝は8 Ωと10 Ωで、中央を12 Ωがつなぎます。
このブリッジに3 Ωが直列で、3 Ωの電圧は1.8 Vでした。電源電圧を求めます。
- 4 Ωの向かいは10 Ω、5 Ωの向かいは8 Ωです。積はどちらも40で等しく、平衡しています。
- 平衡なので、12 Ωには電流が流れません。12 Ωを外して考えます。
- 上の枝は4+5=9 Ω、下の枝は8+10=18 Ωです。並列は9×18÷27=6 Ωです。
- 全電流は1.8÷3=0.6 Aで、ブリッジの電圧は0.6×6=3.6 Vです。電源電圧は3.6+1.8=5.4 Vです。
- 上の枝だけで考えた7.2 Vは、下の枝の道を落とした値です。
電力と最大電力 ── 負荷が内部抵抗と等しいとき最大

| 場面 | そろう量と使う式 | 電力が大きいのは |
|---|---|---|
| 直列 | 電流がそろう。電流の2乗と抵抗の積 | 抵抗の大きい方 |
| 並列 | 電圧がそろう。電圧の2乗を抵抗で割る | 抵抗の小さい方 |
| 内部抵抗のある電源の負荷 | 電圧と電流の積 | 負荷が内部抵抗と等しいとき |
直列は抵抗の大きい方が、並列は抵抗の小さい方が大きい電力を使います。内部抵抗のある電源から取り出す電力は、負荷が内部抵抗と等しいとき最大です。
言葉の式 電力 = 電流の2乗 × 抵抗
P:電力(抵抗で消費される電力)〔W〕 R:抵抗〔Ω〕 I:電流〔A〕
言葉の式 電力 = 電圧² ÷ 抵抗
P:抵抗で消費される電力〔W〕 V:抵抗にかかる電圧〔V〕 R:抵抗〔Ω〕
言葉の式 負荷で消費される電力が最大 ⟺ 負荷抵抗 = 電源の内部抵抗
R:負荷抵抗(電力が最大になるときの値)〔Ω〕 r:電源の内部抵抗(等価内部抵抗)〔Ω〕
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 抵抗の発熱は、電流の2乗と抵抗に反比例する | × | 比例する。反比例になるのは、電圧が一定で抵抗を変えるとき |
| 並列の2本では、抵抗の大きい方が大きい電力を使う | × | 電圧がそろうので小さい方が大きい。6 Ωと2 Ωなら2 Ωが3倍 |
| 電池に並列の抵抗がある回路でも、最大電力の負荷は元の電池の内部抵抗に等しい | × | 負荷から見た電源側全体の内部の抵抗に等しい。並列の抵抗があれば、それとの合成 |
| 電池を何個か直列にした電源では、最大電力の負荷も個数倍の内部抵抗に等しい | ○ | 起電力も内部抵抗も、個数倍になる |
- 電力(でんりょく)は1秒あたりに使うエネルギーで、抵抗ではジュール熱(じゅーるねつ)になります。電力量(でんりょくりょう)は電力に時間を掛けた量です。
- 同じ時間なら、電力量の比は電力の比と同じです。
- 最大電力のとき、起電力は内部抵抗と負荷で半分ずつに分かれます。電流は、起電力を内部抵抗の2倍で割った値です。
- 抵抗が周りへ逃がす熱は、周りとの温度差にほぼ比例します。発熱と放熱がつり合った所で、温度が落ち着きます。
- 工場・現場では、ケーブルの端子の締め付けがゆるむと接触部の抵抗が増え、そこにジュール熱が集まって発熱します。
解き方:抵抗器の許容電力から上限を出す
- ① 最初の一手は、抵抗器ごとに、許容電力から流せる電流の上限を出すことです。
- ② 直列は電流がそろうので、上限の小さい方に合わせます。
- ③ 並列は電圧がそろうので、かけられる電圧の上限の小さい方に合わせます。
例の条件を短くまとめます(平成30年度 問5)。抵抗器Aは100 Ωで許容電力0.25 W、Bは200 Ωで0.125 Wです。
直列で流せる電流と、直列と並列でかけられる電圧の上限の比を求めます。
- Aは0.25÷100=0.0025の平方根で、0.05 A(50 mA)まで流せます。
- Bは0.125÷200=0.000625の平方根で、0.025 A(25 mA)までです。
- 直列はBに合わせて25 mAです。Bの電力は次のとおりで、許容電力ちょうどです。
- 直列の電圧の上限は、300 Ωに25 mAを掛けて7.5 Vです。
- 並列では、Aは0.25×100=25の平方根で5 Vです。Bも0.125×200=25の平方根で5 Vです。
- 比は7.5÷5=1.5倍です。電流の比(50 mAと25 mAで2倍)をそのまま電圧の比とするのは誤りです。
まとめ
複雑な回路は、2端子から先を開放電圧と内部抵抗の電池1つに置き換えて解けます。
電源が複数あれば電源ごとに電流を出して足し、ブリッジは向かい合う積が等しいと中央に流れません。
負荷の電力は、負荷が電源の内部抵抗と等しいとき最大です。
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参考文献
- 日高 邦彦・堀 桂太郎・井上 弘司『First Stage シリーズ 新訂電気回路入門』実教出版 第2章(ブリッジ回路・電力) Amazonで見る
- 高木 茂孝・堀 桂太郎『First Stage シリーズ 新訂電子回路概論』実教出版 付録「鳳・テブナンの定理」の節 Amazonで見る
- 『みんなが欲しかった!電験三種 理論の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH01 直流回路の章(SEC05 複雑な電気回路) 最新版をAmazonで見る
- 第三種電気主任技術者試験 理論 問題(電気技術者試験センター) 平成30年度・令和2年度・令和4年度下期・令和5年度上期
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