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最終確認:2026年10月24日
電験三種の理論・電力・機械で使う、電気と力学のきほんの道具を5つまとめた辞書です。仕事と電力、回る物の力、電気のきほん語、文字と記号の読み方、電子の動き方の順に確かめます。
準備編:数学の道具|電気と力学のきほん
力・仕事・電力 ── 電力は1秒あたりの仕事、電力量は電力×時間

| 量 | 記号と単位 | 意味 |
|---|---|---|
| 力(ちから) | F〔N〕 | 物を押したり引いたりする働き |
| 仕事(しごと) | W〔J〕 | 力×力の向きに動いた距離 |
| 電力(でんりょく) | P〔W〕 | 1秒あたりの仕事。1 W=1 J/s |
| 電力量(でんりょくりょう) | W〔J〕〔kW·h〕 | 電力×使った時間 |
電力は1秒あたりの仕事で、電力量は電力に時間を掛けた量です。1 kW·hは3.6×10⁶ Jです。熱の量も、同じJで量ります。
言葉の式 仕事 = 力 × 力の向きに動いた距離
W:仕事〔J〕 F:力〔N〕 x:力の向きに動いた距離〔m〕
言葉の式 電力量 = 電力 × 時間
W:電力量〔W·s〕 P:電力〔W〕 t:時間〔s〕
言葉の式 電力 = 電圧 × 電流
P:電力〔W〕 V:電圧〔V〕 I:電流〔A〕
- 仕事は、力〔N〕に、力の向きに動いた距離〔m〕を掛けた値です。1 Nの力で1 m動かすと1 Jです。
- 力の向きと直角に動いた分は、仕事に数えません。荷物を持ったまま水平に歩いても、持ち上げる仕事は0です。
- 質量1 kgの物の重さ(地球が引く力)は、約9.8 Nです。持ち上げる力は、質量×9.8で出します。
- 直流では、電力は電圧と電流の積です(交流では別の式になります)。電力量の単位はW·s(=J)か、時間を時で数えたkW·hです。
電験で使う所
計算の型
例1:質量10 kgの荷物を、6秒で3 mの高さまで持ち上げます。
- 持ち上げる力は、10×9.8=98 Nです。
- 1秒あたりの仕事(電力)は、294÷6=49 Wです。
例2:1.2 kWの電熱器を30分使います。電力は1200 W、時間を秒に直すと1800 sです。
- kW·hで数えると、1.2×0.5=0.6 kW·hです。0.6に3.6×10⁶を掛けると2.16×10⁶ Jで、上の2.16×10⁶ W·sと同じです。
よくある間違い:
- 電力〔W〕と電力量〔J・kW·h〕を取り違える。電力は「速さ」、電力量は「ためた量」です。
- 30分を30のまま掛ける。時で数えるなら0.5 h、秒で数えるなら1800 sです。
- kW·hをJに直すとき、3600だけを掛けて1000を忘れる。1 kW·hは1000×3600=3.6×10⁶ Jです。
回る物の力学 ── 出力はトルクと角速度の積

| 量 | 記号と単位 | 意味 |
|---|---|---|
| トルク(とるく) | T〔N·m〕 | 力×回転軸から力までの腕の長さ |
| 回転速度(かいてんそくど) | N〔min⁻¹〕 | 1分間に回る回数 |
| 角速度(かくそくど) | ω〔ラジアン毎秒〕 | 1秒間に回る角度。1回転は2π rad |
| 出力 | P〔W〕 | 角速度×トルク |
回る物の出力は、角速度とトルクの積です。同じ出力なら、回転が遅いほどトルクは大きくなります。
- トルクは「回そうとする力」です。同じ力でも、軸から遠くを押すほど大きくなります。腕の長さは、軸から力の線までの直角の距離です。
- 角速度は、1秒あたりの回転数に2π(パイ)を掛けた値です。回転速度が1分あたりで与えられたら、60で割って1秒あたりに直します。角をradで測るわけは三角比とラジアンにあります。
- 出力がこの積になるわけ:腕の長さの所を押す力は、1回転で円周の長さだけ動きます。1回転の仕事は2π×トルクで、1秒の回転数を掛けると角速度×トルクです。
- 電動機のコイルのように、軸の両側で逆向きの力が働く形を偶力(ぐうりょく)と言います。トルクは、片方の力×2つの力の線の間隔です。
言葉の式 偶力のモーメント = 力 × 腕の長さ
T:偶力のモーメント(トルク)〔N·m〕 F:偶力の1つ分の力〔N〕 D:2つの力の作用線の間隔(腕の長さ)〔m〕
言葉の式 角速度 = 2π × 回転速度〔min⁻¹〕÷ 60
ω:角速度〔rad/s〕 N:回転速度(1分あたりの回転数)〔min⁻¹〕
言葉の式 出力 = 角速度 × トルク
P:出力(機械的な出力)〔W〕 ω:角速度〔rad/s〕 T:トルク〔N·m〕
電験で使う所
計算の型
例1:長さ0.25 mのレンチの先に、柄と直角に40 Nの力を掛けます。
- トルクは、40×0.25=10 N·mです。
例2:トルク20 N·mで、1500 min⁻¹で回る電動機の出力を出します。
- 1秒あたりの回転数は、1500÷60=25回です。
- 角速度は、2π×25=50π、約157.1 rad/sです。
- 出力は約3142 W、約3.14 kWです。
よくある間違い:
- 1分あたりの回転速度を、60で割らずに使う。
- 1秒あたりの回転数に2πを掛け忘れ、角速度の代わりに使う。
- 腕の長さに、軸から力までの距離ではなく、回る円の直径を使う。
電気のきほん語 ── 電荷が流れて電流、押す働きが電圧、流れにくさが抵抗

| 電気の量(記号と単位) | 意味 | 水のたとえ |
|---|---|---|
| 電荷(でんか)(Q〔C〕) | 電気の量 | 水の量 |
| 電流(でんりゅう)(I〔A〕) | 1秒に通る電荷 | 1秒に流れる水の量 |
| 電圧(でんあつ)(V〔V〕) | 1 Cあたりのエネルギーの差。1 V=1 J/C | 水位の差 |
| 抵抗(ていこう)(R〔Ω〕) | 電流の流れにくさ | 細い管 |
| 起電力(きでんりょく)(E〔V〕) | 電池が電荷を押し上げる働き | ポンプ |
電荷が流れたものが電流、電荷を流そうとする働きが電圧、流れにくさが抵抗です。1 Aは、1秒に1 Cが通る電流です。1 Vは、1 Cあたり1 Jのエネルギーの差です。
言葉の式 電流 = 電荷 ÷ 時間
I:電流〔A〕 Q:通過した電荷〔C〕 t:時間〔s〕
言葉の式 仕事 = 電荷 × 電位差
W:仕事(エネルギー)〔J〕 Q:運ぶ電荷〔C〕 V:電位差〔V〕
- 電圧は2点の差です。1点の電気の高さは電位(でんい)と言い、基準の点(0 V)から測ります。
- 金属の中を動くのは、負の電荷を持つ電子(でんし)です。電流の向きは正の電荷が動く向きと決めたので、電子は電流と逆に動きます。
- たとえが崩れる所:水は管の先からこぼれても流れますが、電流は回路が一周つながらないと流れません。また、スイッチを入れると電線の中の電子が一斉に押されるので、電子そのものはゆっくりでも電球はすぐ点きます。
電験で使う所
計算の型
例1:2 Aの電流が5秒流れたときに通った電荷を出します。
- 電荷は電流×時間で、2×5=10 Cです。式に戻して確かめます。
例2:その10 Cを、12 Vの差がある2点の間で運びます。
- 1 Cあたり12 Jなので、10 Cでは120 Jです。
よくある間違い:
- 電荷〔C〕と電流〔A〕を取り違える。電流は「1秒あたり」の電荷です。
- 電圧を1点の値と考える。電圧はいつも2点の電位の差です。
ギリシャ文字と量の記号 ── 斜体の文字は量、立てた文字は単位
| 文字(読み) | 電験で表す量 | 単位 |
|---|---|---|
| π(パイ) | 円周率(約3.14) | 単位なし |
| θ(シータ) | 角度・位相(いそう)・力率角(りきりつかく) | rad・° |
| φ(ファイ) | 位相差(いそうさ)。力率角に使う本もある | rad・° |
| ω(オメガ) | 角速度・角周波数(かくしゅうはすう) | ラジアン毎秒 |
| τ(タウ) | 時定数(じていすう) | s |
| Δ(デルタ) | 変化した量(ΔIは電流の変化) | もとの量と同じ |
| η(イータ) | 効率(こうりつ) | %(または単位なし) |
| 文字(読み) | 電験で表す量 | 単位 |
|---|---|---|
| ε(イプシロン) | 誘電率(ゆうでんりつ) | F/m |
| μ(ミュー) | 透磁率(とうじりつ) | H/m |
| ρ(ロー) | 抵抗率(ていこうりつ) | Ω·m |
| σ(シグマ) | 導電率(どうでんりつ) | S/m |
| Φ(ファイの大文字) | 磁束(じそく) | Wb |
| Ω(オメガの大文字) | 抵抗の単位(オーム) | 単位そのもの |
斜体の文字は量、立てた文字は単位です。同じVでも、斜体のVは電圧という量、立てたVはボルトという単位です。
- 電圧をVと置いて100 Vと書くとき、斜体のVは量、100の後ろのVは単位です。量の記号は、値と単位をまとめて表します。
- 単位は、量を決める式から組み立てます。電力は電圧×電流なのでW=V·A、電力量は電力×時間なのでJ=W·s、電荷は電流×時間なのでC=A·sです。
- μは2つの意味で使います。単位の前に付くμ(マイクロ)は10⁻⁶倍の接頭語(せっとうご)で、量の記号のμは透磁率です。
- 添字は、同じ種類の量を区別する小さい文字です。比誘電率(ひゆうでんりつ)はεr(イプシロン・アール)と書きます。
- 磁束は、試験では大文字のΦ(ファイ)で書きます。小文字のφ(ファイ)で書く本もあります。
- εは誘電率のほか、ネイピア数(約2.718)の記号にも使います(指数関数)。
電験で使う所
計算の型
例1:100 Vで2 Aの電流が3秒流れたときの量を、単位で確かめます。
- V·AはWなので、電力は100×2=200 Wです。
- W·sはJなので、電力量は200×3=600 Jです。
例2:47 μF(マイクロファラド)を、Fに直します。μは10⁻⁶倍なので、47×10⁻⁶=4.7×10⁻⁵ Fです。接頭語の直し方は10の何乗と接頭語にあります。
よくある間違い:
- 接頭語のμ(10⁻⁶)と、透磁率のμを取り違える。
- 同じφを、磁束にも位相差にも使う本がある。式の中の役目で見分けます。
等加速度運動と円運動 ── 一定の力で速さが一様に増え、横向きの力で円を描く

| 受ける力 | 速さ | 動きの形 |
|---|---|---|
| 力が無い | 変わらない | まっすぐ進み続ける |
| 進む向きに一定の力 | 時間に比例して増える | まっすぐ速くなる(等加速度運動) |
| 進む向きと直角に一定の力 | 横向きの速さだけ増える | 曲がっていく(放物線) |
| いつも速さと直角で、大きさが一定の力 | 変わらない | 向きだけが変わり、円を描く |
進む向きに一定の力を受けると、速さは時間に比例して増えます。いつも速さと直角で大きさが一定の力を受けると、速さは変わらず円を描きます。電界の中の電子は前の形、磁界に直角に入った電子は後の形で動きます。
言葉の式 力 = 質量 × 加速度
F:力〔N〕 m:質量(電子なら m₀)〔kg〕 a:加速度〔m/s²〕
言葉の式 速度 = 加速度 × 時間
v:速度〔m/s〕 a:加速度〔m/s²〕 t:時間〔s〕
言葉の式 力 = 電荷 × 電界の強さ(電子なら F = eE)
F:電荷が電界から受ける力〔N〕 q:電荷(電子なら電気素量 e)〔C〕 E:電界の強さ〔V/m〕
言葉の式 力 = 電荷 × 速度 × 磁束密度(速度が磁界に垂直なとき)
F:ローレンツ力〔N〕 q:電荷(電子なら e)〔C〕 v:速度〔m/s〕 B:磁束密度〔T〕
- 加速度(かそくど)は、1秒あたりの速さの増え方です。同じ力なら、質量が小さいほど大きくなります。
- 速さと時間のグラフでは、加速度は直線の傾き、走った距離は直線の下の面積です(変化の割合・グラフの面積)。
- 電子は負の電荷なので、電界と逆向きに一定の力を受けます。力が一定なので、加速度も一定です。
- 磁界から受けるローレンツ力(ろーれんつりょく)は、いつも速さと直角です。速さを増やす向きの成分が無いので、向きだけを変え続けて円を描きます。
電験で使う所
- 電界中の電子の運動:一定の力で加速される電子と、放物線
- 磁界中の電子の運動:ローレンツ力で円を描く電子
- ホール効果・熱電効果・光電効果:磁界で曲げられた電荷が片側に集まる
計算の型
例1:質量2 kgの物に、6 Nの一定の力を加え続けます。
- 加速度は、力÷質量で6÷2=3です。1秒ごとに、速さが3 m/sずつ増えるという意味です。
- 止まっていた物の4秒後の速さは、加速度×時間で3×4=12 m/sです。
例2:電荷2×10⁻⁶ Cの粒子を、強さ500 V/mの電界の中に置きます。
よくある間違い:
- 電子が受ける力を、電界と同じ向きにする。負の電荷なので逆向きです。
- 磁界の中で、電子の速さが増えると考える。速さは変わらず、向きだけが変わります。
- 速さと加速度を取り違える。加速度は「1秒あたりの速さの増え方」です。
まとめ
電力は1秒あたりの仕事、電力量は電力×時間で、回る物の出力は角速度×トルクです。
電荷が流れて電流になり、電圧は1 Cあたりのエネルギーの差です。斜体の文字は量、立てた文字は単位です。
一定の力では速さが時間に比例して増え、速さと直角の力では円を描きます。
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参考文献
- 日高 邦彦・堀 桂太郎・井上 弘司『First Stage シリーズ 新訂電気回路入門』実教出版 第1章・第2章(電力と電力量) Amazonで見る
- 『みんなが欲しかった!電験三種 理論の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) 静電気・磁気・電子理論の章 最新版をAmazonで見る
- 『みんなが欲しかった!電験三種 機械の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) 電動機のトルクと出力の節 最新版をAmazonで見る
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