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往復定量ポンプのしくみと選び方|プランジャとダイヤフラム、吐出し量・脈動・逃し弁

往復定量ポンプのしくみ(アイキャッチ)

薬液の注入や計量に使う往復定量ポンプは、1往復ごとに決まった量の液を押し出す容積形ポンプです。吐出し側の圧力が変わっても吐出し量がほとんど変わらない代わりに、流れが脈を打ち、吐出し側を閉めると圧力が上がり続けます。

  • 吐出し量はストロークの長さと往復数で決まり、吐出し弁で絞っても変わらない
  • 吐出し側の閉塞に備えて逃し弁(安全弁)が要る(油圧式ダイヤフラムは作動油側に内蔵する形式がある)
  • 吐出し量が合わないときは、逆止弁・気泡・吸込み・漏れ・設定の順に疑う

往復定量ポンプは1往復ごとに決まった量を押し出す

往復定量ポンプの断面と2つの行程:吸込み行程では液室の下の吸込み弁だけが開き、吐出し行程では液室の上の吐出し弁だけが開いて、2つの弁は同時には開かない
この章の要点
  • 1往復ごとに決まった量を押し出すので、吐出し圧力が変わっても量はほぼ変わりません。
  • 吸込み弁は液室の下、吐出し弁は上にあり、どちらも逆止弁で同時には開きません。
  • 吐出し量はストローク長と回転速度で調整し、吐出し弁では調整しません。
部品役割
電動機・減速機回転数を下げる
クランク(偏心)機構回転を往復運動に変える
クロスヘッドプランジャに横向きの力をかけない
プランジャ(またはダイヤフラム)液室の容積を変える
吸込み弁(液室の下)吸込み行程で開く逆止弁
吐出し弁(液室の上)吐出し行程で開く逆止弁
ストローク調整1回に送る量を変える
  • 弁は球(ボール)の逆止弁が一般的です。
  • 往復ポンプは、主として圧力が高く流量が少ない場合や、粘度の高い液の輸送に使われます。高粘度の液でも効率がほとんど落ちません。
  • 理論上は吐出し側の圧力にかかわらず高い圧力を出せるので、遠心ポンプでは得られない高揚程に向きます。

プランジャ式とダイヤフラム式は、液を封じる場所が違う

方式液を封じるもの漏れ方過圧からの保護
プランジャ式プランジャが出入りする部分のパッキンパッキンが摩耗すると外へ漏れる吐出し側に逃し弁
ダイヤフラム式(機械式・直動)駆動軸を直結した膜膜が破れると駆動部の側へ漏れる吐出し側に逃し弁
ダイヤフラム式(油圧式)作動油を介して動かす膜膜が破れると作動油の側へ漏れる作動油側にリリーフ機構を内蔵する形式がある

外へ漏らしたくない液、異物を含む液はダイヤフラム式にします。高精度・高圧の注入には油圧式ダイヤフラムが使われます。

  • 往復ポンプは、隔膜式(ダイヤフラム式)を除いて、異物を含む液には一般に向きません。
  • 油圧式は、膜と駆動ピストンのあいだに作動油を満たし、油を介して力を伝えます。注入先の圧力が変動しても吐出し量が変わりにくく、高圧のラインで使われます。
  • 膜の破れを知らせる検知器を付ける形式もあります。

吐出し量は「行程容積×往復数×体積効率」、調整はストロークと回転速度

ストロークと1往復の送液量:同じ液室・同じ往復数なら、ストロークを長くするほど押しのけ容積が増え、押しのけ容積はストロークに比例する

吐出し量は吐出し弁では調整できません。ストロークの長さか回転速度(往復数)を変えるか、バイパスで戻します。

単動ポンプの理論吐出し量と実際の吐出し量(D:シリンダ径 m、L:ストローク m、n:回転速度 rpm、z:シリンダ数、ηv:体積効率):

式意味
Qth =(π/4)D2Lnz [m3/min]1往復で押しのける容積×往復数×シリンダ数
Q = Qth・ηv弁の閉じ遅れや漏れのぶんを引いた実際の量
  • 体積効率は一般に 0.85〜0.99 で、大形のポンプほどよくなります。
  • 計算例:シリンダ径 120 mm、ストローク 220 mm、180 rpm の単動1シリンダなら Qth = 0.447 m3/min。ηv = 0.95 なら Q = 0.425 m3/min。
  • 複動(1往復で2回吐き出す)は Qth =(π/4)(2D2 − d2)Lnz(d:ロッド径)。

脈動はシリンダの数と組合せで決まり、アキュムレータで均す

吐出し流量の脈動:最大流量は平均の、単動1連で約3.24倍、複動1連で約1.62倍、単動3連(120°ずつずらす)で約1.08倍になり、シリンダの数が増えるほど平らになる

単動1連では最大流量が平均の約3.2倍になります。単動3連(120°ずつずらす)なら約1.08倍まで平らになります。

ポンプの形式位相差最大流量/平均流量
単動プランジャ 1―3.24
単動プランジャ 290°2.22
単動プランジャ 2180°1.62
複動ピストン 1―1.62
複動ピストン 290°1.31
単動プランジャ 3120°1.079
複動ピストン 3120°1.079
  • 脈動を均すには、吐出し側に空気室やアキュムレータ(ゴム袋形・ダイヤフラム形)を置きます。
  • 脈動は水撃を起こします。運転中の弁操作は慎重に行います。
  • 脈動は圧力計や流量計の指示も振らせます(圧力計と圧力伝送器)。

吐出し側を閉めると圧力は上がり続ける:逃し弁が要る

逃し弁の位置:弁の締め切り・異物・凍結で吐出し側が閉塞すると圧力が上がり続けるため、逃し弁をポンプと最初の遮断弁の間に置き、液を供給タンク側へ戻す

往復ポンプは押し込む形のポンプなので、吐出し側が閉塞すると圧力が上がり続け、配管・ポンプ・電動機を壊します。逃し弁(安全弁)は欠かせません。

  • 遠心ポンプは吐出し側を閉めても一定以上に圧力が上がりませんが、往復ポンプと回転式ポンプは上がり続けます。
  • 閉塞の原因は、弁の締め切り、異物の詰まり、凍結などです。
  • 電動機はサーマルリレーで過負荷から守ります。
  • 油圧式ダイヤフラムには作動油側にリリーフ機構を内蔵した形式があり、液側に別の逃し弁を置かずに済むことがあります。どちらにするかは取扱説明書で確かめます。
  • 逃し弁の位置・設定圧力・戻し先の考え方は、回転式ポンプと同じです(逃し弁はポンプと最初の遮断弁の間に置く)。

吸込み側は、加速損失のぶんだけ圧力が余計に要る

項目遠心ポンプ往復ポンプ
必要NPSHの目安最低 2 m 程度最低 3〜5 m 程度
吸込み側で失う水頭摩擦損失摩擦損失+加速損失
呼び水必要不要(吸上げ性能がよい)

往復ポンプは吸込み管の液を往復ごとに加速します。加速損失は、吸込み管が長いほど、平均流速と回転速度が大きいほど大きくなります。

  • 条件:利用できるNPSH > 加速損失水頭 + 配管の摩擦損失水頭 + ポンプの必要NPSH
  • 足りないと流れが断続的になり、吸い込めない・騒音・振動が起きます。
  • 加速損失を小さくするには、吸込み管を短くし、流速と回転速度を下げます。
  • NPSHの考え方は NPSHaとNPSHr を参照してください。

吐出し量が足りない・合わないときは、弁・気泡・吸込み・漏れ・設定の順に見る

原因何が起きるか確かめ方
吸込み弁・吐出し弁への異物の噛み込み、弁座の摩耗弁が閉じきらず、押し出した液の一部が戻る吐出し圧力の脈の形、分解して弁座を見る
液室の気泡、パッキン部からの空気の吸込み泡が縮むだけで液を押し出さないポンプヘッドの空気抜き(手順書どおり)
吸込み側の圧力不足(ストレーナの詰まり、細く長い吸込み管)液が途切れ、吸い込めない・音・振動ストレーナの差圧、吸込み槽の液面
プランジャのパッキンの摩耗液が漏れて吐出し量が落ちるパッキン部の漏れ
ダイヤフラムの破れ液が駆動部の側へ漏れる破れ検知器の警報
ストローク・回転速度の設定目盛りと実際の量がずれる実際の吐出し量を計って設定と比べる
この章の要点
  • まず実際の吐出し量を計って設定と比べます。
  • 次に弁への異物の噛み込みと液室の気泡を疑います。往復ポンプは弁の故障が多いためです。
  • 吸込み側の圧力不足、パッキンの摩耗、ストローク・回転速度の設定も確かめます。
  • 往復ポンプはシリンダ、弁、プランジャ、ロッド、グランドパッキンに腐食・摩耗・割れが起きやすく、吸込み不良や吐出し量の低下につながります。定期的な点検が要ります。
  • 症状から引く全体の早見は ポンプのトラブル診断早見。

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出典:化学工学便覧 改訂五版(5・6 流体輸送機器と計画、図5・65〜5・66、表5・23・5・24)、高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』2・10 往復形ポンプ、『高圧ガス保安技術』11章 高圧設備(往復ポンプ)、『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』表2・1、タクミナ「ダイヤフラムポンプとは」・用語集(油圧ダイヤフラムポンプ、リリーフ弁)

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