※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。
回転式ポンプは、回転体とケーシングの間に液を閉じ込め、一定容積ずつ吸込側から吐出側へ運ぶ容積式ポンプです。比較的少流量・高圧の用途や、高粘度液の移送に使われます。
一方、吐出側を閉じても押しのけ動作を続けるため、遠心ポンプと同じ感覚で吐出し弁を絞ると危険です。逃し弁が小さい、閉止弁の下流にある、戻り配管の抵抗が大きいといった設計上の問題も、圧力上昇を止められない原因になります。
この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、ギヤ・スクリュー・一軸偏心ねじ(モーノ)ポンプの違い、吐出側閉止時の挙動、逃し弁の位置・設定・容量・戻し先、始動前後の確認を整理します。
この記事の結論
- 回転式ポンプは、液を閉じた空間へ取り込み、その空間を吸込側から吐出側へ移動させる
- ギヤは歯溝で外周へ、三軸ねじはねじ溝で軸方向へ、モーノはキャビティーを長手方向へ運ぶ
- 吐出側抵抗が増しても流量変化が比較的小さいため、吐出し弁の絞りを通常の流量調節に使わない
- 逃し弁は、ポンプ吐出口と最初の遮断弁の間から分岐し、運転中にポンプから遮断できない構成にする
- 逃し弁容量は吐出閉止時のポンプ流量を基礎に、実液粘度・差圧・背圧・戻り配管損失で確認する
- 設定圧力を一律に「運転圧力+10〜20%」とは決めない。保護対象の許容圧力と適用規格から決める
- 内蔵逃し弁や吸込戻しを連続的な流量制御へ使うと、短い循環経路で液温が上がるおそれがある
1. 回転式ポンプは一定容積を閉じ込めて運ぶ
遠心ポンプは羽根車で液へ速度を与え、ケーシングで圧力へ変換します。回転式ポンプは作動が異なり、回転体とケーシングで区切られた空間へ液を取り込み、その空間を吐出側へ移動させます。
理論吐出量は、1回転で運ぶ容積と回転速度から決まります。実際の吐出量は、吐出側から吸込側へ戻る内部漏れ、液粘度、すきま、摩耗、差圧で理論値より小さくなります。
したがって「回転数が同じなら、差圧に関係なく必ず同じ流量」とまではいえません。ただし遠心ポンプに比べると、吐出側抵抗が増しても流量変化が小さく、代わりに吐出圧力と軸トルクが上がりやすいのが重要な特徴です。
回転式ポンプの圧力は、ポンプが自動的に決めるのではなく、吐出側の抵抗と保護装置が決めます。
2. ギヤ・スクリュー・モーノポンプの違い
ギヤポンプ

代表的な外歯車ポンプでは、同じ大きさの二つの歯車がかみ合って回転します。吸込側で歯が離れると歯溝へ液が入り、歯とケーシングの間に閉じ込められた液が左右の外周を通って吐出側へ運ばれます。
液は二つの歯車がかみ合う中央を通り抜けません。 吐出側で歯が再びかみ合うことで、歯溝の液が出口へ押し出されます。
ギヤポンプは構造が比較的単純で、燃料油、潤滑油、樹脂などの移送に使われます。ただし、内部軸受形は取扱液で軸受を潤滑する構造があり、非潤滑性液や固形物を含む液に向かない場合があります。液性に応じて外部軸受形、材質、すきまを選びます。
三軸ねじポンプ

三軸ねじポンプは、中央の主ねじと、その両側の二本の従ねじで液室を作ります。主ねじの回転に伴って従ねじが反対方向へ回り、ねじ溝に閉じ込められた液が軸方向へ連続して移動します。
ギヤポンプより吐出しの脈動、騒音、振動を小さくしやすく、潤滑油や燃料油などの連続移送に使われます。ただし「スクリュー」という名前だけで、固形物を含む液に強いとは判断できません。ねじ形状、軸受位置、すきま、液の潤滑性を確認します。
三軸ねじポンプでは、主ねじ・従ねじの配置と、液が軸方向へ進むことを構造図で確認してください。
一軸偏心ねじポンプ(モーノポンプ)

一軸偏心ねじポンプは、真円断面を持つ1条雄ねじのローターと、長円断面を持つ2条雌ねじのステーターを組み合わせます。ローターとステーターの間には、互いに独立した密閉空間であるキャビティーができます。
ローターが偏心回転すると、キャビティーは形を保ちながら吸込側から吐出側へ進みます。このため、粘度の高い液、固形物を含む液、せん断を抑えたい液を連続・定量的に送りやすい形式です。
一方、ステーターにはエラストマーを使う機種が多く、液との化学的適合性、温度、固形物、摩耗、空運転に注意が必要です。「モーノポンプならどのスラリーでも送れる」のではなく、固形物径、濃度、摩耗性、ステーター材質をメーカー条件と照合します。
3形式の使い分け
| 項目 | 外歯車ポンプ | 三軸ねじポンプ | 一軸偏心ねじポンプ |
| 液の運び方 | 歯溝で外周へ運ぶ | ねじ溝で軸方向へ運ぶ | 密閉キャビティーを長手方向へ運ぶ |
| 得意な用途 | 潤滑油、燃料油、樹脂など | 潤滑油、燃料油などの低脈動移送 | 高粘度液、固形物を含む液、定量移送 |
| 主な注意 | 固形物、非潤滑性液、すきま摩耗 | 液の潤滑性、異物、軸受、すきま | ステーター適合性、摩耗、空運転 |
| 脈動 | 形式・歯形で生じる | 比較的小さくしやすい | 小さくしやすいが、設備条件で変動は残る |
| 選定の決め手 | 粘度、潤滑性、清浄度、差圧 | 粘度、潤滑性、脈動、差圧 | 固形物、せん断、定量性、ステーター材質 |
3. 流量調節は回転速度かバイパスで行う
回転式ポンプは、回転速度を変えると吐出量を変えやすい形式です。通常の流量調節は、メーカーが許容する回転速度範囲でインバータなどを使う方法、または吐出側から戻すバイパスで行います。
吐出し弁を絞っても、ポンプは閉じ込めた液を押し出そうとします。そのため、流量を大きく下げるより先に差圧、軸トルク、電流、漏れ量が増えることがあります。
- 回転速度制御:動力低減を期待しやすいが、最低回転速度、冷却、潤滑、計量精度を確認する
- バイパス制御:流量調節はしやすいが、循環動力と液温上昇が残る
- 吐出し弁絞り:容積式ポンプの通常調節には原則使わない。必要な背圧弁などは目的と設計根拠を明確にする
流量を下げたいときは、吐出し弁を絞る前に、回転速度制御とバイパス制御のどちらで設計されているかをP&IDと取扱説明書で確認します。
4. 吐出側を閉じると何が起きるか

吐出し弁の誤閉止、ストレーナー・配管の閉塞、下流弁の故障、液の固化が起こると、吐出側抵抗が急に大きくなります。それでも回転体が押しのけを続ければ、吐出圧力と軸トルクが上がります。
実機の圧力が「無限大」になるわけではありません。次のいずれかが先に起こります。
- 逃し弁が開いて液を逃がす
- 高圧トリップ、過トルク・過電流保護がポンプを停止する
- 内部漏れが増えて吐出量が減る
- カップリング、軸、歯車、ステーターなどが機械限界へ達する
- ガスケット、軸封、配管、ケーシングなどが損傷して漏えいする
何が先に起こるかは、ポンプ形式、回転速度、駆動機、液粘度、温度、配管強度、保護設定で変わります。「モータがトリップするはず」を圧力保護の代わりにしてはいけません。
5. 逃し弁はポンプと最初の遮断弁の間に置く

液体用ポンプの圧力上昇を逃がす装置は、一般に逃し弁またはリリーフ弁と呼びます。安全弁という言葉が広く使われる現場もありますが、この記事では液体を逃がす用途を「逃し弁」と表記します。
逃し弁入口は、ポンプ吐出口と、吐出流路を閉止できる最初の遮断弁との間から分岐します。遮断弁の下流へ逃し弁を置くと、その弁を閉じた瞬間にポンプが逃し弁から切り離されます。
運転中に、ポンプ吐出口と逃し弁入口の間を閉止できないことが必要です。 保全用の隔離弁を設ける場合は、施錠、封印、弁位置管理、インターロックなど、誤閉止を防ぐ設計と手順を確認します。
ポンプに逃し弁を内蔵する形式もあります。内蔵弁が実際の回転方向、必要流量、設定圧力に対応するかを確認してください。正逆運転するポンプでは、内蔵弁が片方向だけを保護する構造があります。
6. 設定圧力・容量・戻し先をどう決めるか

設定圧力
逃し弁の設定圧力は、保護するポンプ、ケーシング、配管、弁、計器、ホースなどの許容圧力を超えない範囲で決めます。通常運転の圧力変動、必要差圧、逃し弁の吹始めと全量通過時の圧力、背圧、適用法規・規格も考慮します。
設定圧力を一律に「通常圧力+10〜20%」としてはいけません。保護対象の設計条件と適用規格を基準に決定します。
容量
吐出側閉止を想定したとき、逃し弁はポンプが送り込む流量を逃がせなければなりません。必要逃し量の基礎は、閉止条件でのポンプ吐出量です。
ただし、弁の銘板口径や水でのカタログ流量だけでは決められません。実際の液粘度・密度・温度、入口圧力、出口背圧、戻り配管の圧力損失、弁前後差圧から能力を確認します。
高粘度液では、長い戻り配管や細い配管の抵抗が大きくなり、必要量を逃がせないことがあります。
吸込側へ戻す場合
ポンプ近傍の吸込配管へ戻すと、配管を短くできます。一方、同じ液が短い経路を循環するため、ポンプ入力が熱へ変わって液温が上がります。温度上昇による粘度低下、蒸気圧上昇、吸込条件悪化、液の劣化、ステーターやシールへの影響を確認します。
供給タンクへ戻す場合
供給タンクへ戻すと、吸込戻しより大きな液量へ熱を分散しやすくなります。ただし、タンクの圧力・ベント能力・空き容量、戻り液温、泡立ち、静電気、危険物・有毒物の放出、戻り位置と吸込口の短絡を確認する必要があります。
タンク戻しでも、逃し弁を長時間吹かせてよいとは限りません。逃し弁作動は異常として検知し、原因を除く設計にします。
7. 内蔵逃し弁を通常運転へ使わない
ポンプ内蔵逃し弁は、吐出側から吸込側へ短絡させる構造が一般的です。配管が簡単で、ポンプ本体の圧力保護に有効ですが、次の点を確認します。
- 必要な逃し量を通せるか
- 設定圧力を現場で確認・試験できるか
- 正しい回転方向に取り付けられているか
- ポンプ本体だけでなく、上流側にある配管・機器も保護できるか
- 連続作動時の温度上昇をどう検知するか
逃し弁を開かせたまま流量を調節すると、入力動力の多くが循環液の熱になります。粘度が下がって内部漏れが増える、液が劣化する、シールやステーターが過熱するなど、別の異常へ進むことがあります。
内蔵逃し弁は圧力保護であり、通常の流量制御弁ではありません。
8. 始動前・運転中・停止時の確認

始動前
- 吸込タンクの液位と吸込弁、ストレーナー、吸込配管の詰まりを確認する
- 吐出流路が開いていること、下流設備が受入れ可能であることを確認する
- 逃し弁が使用可能で、入口・戻り経路が隔離されていないことを確認する
- ポンプ内部を取扱説明書どおりに満液・潤滑し、必要なエア抜きを行う
- 液温と粘度が始動可能範囲にあることを確認する
- 軸封、軸受、冷却、加熱、フラッシングなどの補助系を確立する
- 回転方向とカップリングガードを確認する
高粘度液は温度低下で圧力損失と始動トルクが増えます。スチームトレースやジャケットを使う設備では、液を局部的に過熱・固化・分解させない手順で予熱します。
「ヒーターが入っている」ではなく、ポンプ入口から吐出配管までの実液温度と、始動時許容粘度を確認してください。
起動時・運転中
起動後は、吐出圧力だけでなく、流量、電流またはトルク、本体温度、戻り液温度、漏れ、音、振動を同時に見ます。圧力上昇と流量低下が同時に起きた場合は、吐出閉止・閉塞を疑います。
- 吐出圧力が通常より速く上がっていないか
- 流量が回転速度に見合っているか
- 電流またはトルクが増えていないか
- 逃し弁または戻り配管の温度が上がっていないか
- 異音、振動、軸封漏れがないか
逃し弁作動、高圧トリップ、過電流、流量消失が起きたら、原因未確認のまま再起動しないでください。
停止時
停止順序は設備SOPを優先します。固化・重合・腐食のおそれがある液では、停止後の排液、洗浄、置換、保温・冷却を計画します。正逆回転で液を抜く操作は、メカニカルシール、内蔵逃し弁、逆止弁、下流設備への影響を確認してから行います。
9. 機種別の故障予防
ギヤポンプ
- 異物混入と歯面・側板の摩耗を監視する
- 内部軸受形では液の潤滑性と清浄度を確認する
- 粘度低下で内部漏れと吐出量低下が増えていないかを見る
- 粘度上昇時は吸込抵抗、始動トルク、吐出配管損失を確認する
三軸ねじポンプ
- 主ねじ・従ねじ、軸受、バランス機構の異常音と摩耗を確認する
- 非潤滑性液や異物への適用可否をメーカー仕様で確認する
- 低脈動という特徴だけで計器変動がゼロと決めつけない
一軸偏心ねじポンプ
- ステーター材質と液の耐薬品性・温度を確認する
- 空運転、入口閉塞、供給不足を防ぐ
- 固形物径、濃度、摩耗性に適したローター・ステーターを選ぶ
- 吐出圧力上昇によるステーター発熱と摩耗を監視する
空運転への耐性は形式名だけでは決まりません。取扱液で摺動部を潤滑・冷却する機種では、液切れが摩擦と温度上昇を招きます。特にエラストマー製ステーターを使う一軸偏心ねじポンプは、ローターとの摩擦熱に注意します。
空運転可能時間を推測せず、メーカーの許容条件と、低液位・低流量・温度・トルクなどの保護方法を確認します。
10. 選定・仕様書で確認する項目
- 通常、最小、最大流量と必要差圧
- 液の名称、組成、密度、運転温度ごとの粘度
- 固形物径、濃度、形状、硬さ、摩耗性
- 潤滑性、腐食性、毒性、可燃性、重合・固化性
- 吸込圧力、NPSHa、吸込配管損失、ガス混入量
- 回転速度範囲、起動トルク、電動機容量、インバータ条件
- ローター、歯車、ねじ、ケーシング、ステーター、軸封の材質
- 許容差圧、最高許容圧力、最高・最低液温
- 逃し弁の形式、設定圧力、必要容量、戻し先、背圧
- 高圧、過電流・過トルク、低流量、低液位、温度の警報・停止
- 保温、加熱、冷却、洗浄、フラッシング、ドレン方法
- 正逆運転の可否と、内蔵逃し弁・軸封・逆止弁への影響
- 性能試験液と実液の粘度差、保証点、許容差
機種名から選ぶのではなく、液性、差圧、流量調節、安全保護、洗浄・保全を一枚の仕様書でつなげて選定します。
ポンプ形式全体の選び方は「ポンプの種類と分類」、始動時の共通確認は「ポンプの始動・停止・切換え」、空運転保護は「ポンプの空運転と保護装置」も参照してください。
11. まとめ
回転式ポンプは、一定容積の液を閉じ込めて運ぶ容積式ポンプです。ギヤポンプは歯溝で外周へ、三軸ねじポンプはねじ溝で軸方向へ、一軸偏心ねじポンプは密閉キャビティーを長手方向へ運びます。
吐出側抵抗が増しても押しのけを続けるため、吐出し弁の誤閉止や閉塞では圧力と軸トルクが急上昇します。逃し弁はポンプと最初の遮断弁の間から分岐し、閉止条件でポンプが送り込む流量を実液条件で逃がせるようにします。
設定圧力、容量、戻し先は別々に検討します。吸込戻しには熱蓄積、タンク戻しにはタンク圧力・ベント・容量・危険物放出などの条件があります。どの戻し先でも、逃し弁の連続作動を通常運転にしないことが重要です。
始動前は、吸込源、吐出流路、逃し経路、満液、液温・粘度、補助系を確認します。運転中は圧力だけでなく流量、電流・トルク、温度、漏れ、音、振動を組み合わせて判断してください。
参考文献
- 化学工学会編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 2.1.4「回転ポンプ」
- 化学工学協会編『化学工学便覧 改訂五版』5・6・2「容積ポンプ」(参照版は改訂五版。リンク先は改訂七版) 最新版(改訂七版)をAmazonで見る
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』理工学社, 2章「ポンプ」12「容積形ポンプ」 Amazonで見る
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』学識編11.5「圧縮機とポンプ」表11.8、保安管理技術編「安全装置」
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス製造保安責任者 甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』逃し弁の必要吹出し量
- 兵神装備株式会社「なぜ困難を解決できるのか」
- Imo Pump「3-Screw Pumps Design Philosophy」
化学プラント大全 
