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差圧式流量計は、配管の中に穴の開いた板(オリフィスプレート)を入れ、その前後の圧力差(差圧)から流量を求める、最も古くて最も多く使われている流量計です。
最大の特徴は、差圧が流量の2乗に比例することです。流量が2倍になると差圧は4倍、流量が半分になると差圧は4分の1。この関係を元に戻す計算を「開平」と呼び、伝送器か受信計器のどちらか一方で行います。
この記事では、動作原理と2乗の関係、開平とゼロカット、システムの構成(導圧管・三岐弁・直管部)、連載記事が「弱点とされる5つの指摘」に反論した内容、気体の温圧補正、そしてトラブルの大半が導圧管側で起きる理由を説明します。
この記事の結論
- 差圧は流量の 2乗に比例する。流量 2 倍で差圧 4 倍。直線の流量信号にするには 開平が要る
- 開平は入力ゼロ付近でゼロ点誤差を大きく増幅するので、流量 10% 以下はゼロカットし、レンジの 30% 以上で使うのが目安
- 直管部は 上流 10D 以上、下流 5D 以上。流速分布の偏りと旋回流を減らすため
- 最大の長所は、国際規格に従って製作・設置すれば実流校正が要らないこと。構造が簡単で安価、液・気・蒸気に使える
- 弱点とされる「流量範囲が狭い(3:1 程度)」「精度が低い」は、伝送器の進歩と使い方で緩和できる。本当の弱点は導圧管の詰まり
- 差圧式のトラブルのほとんどは導圧管に起因する。ダイヤフラムシールやダイレクトマウントで導圧管を短くするのが対策
1. 動作原理|絞ると圧力が下がる
管の途中で流れを絞ると、流速が上がり、その分だけ圧力が下がります。下がる程度は流体の密度と流速で決まるので、絞りの上流と下流の圧力差を測れば流量が分かります。これがベルヌーイの定理による差圧式の原理です。

絞り機構にはいくつか種類があります。
| 絞り機構 | 用途 | 特徴 |
| 同心エッジオリフィス | 汎用 | 形状簡単、製作容易、安価。圧力損失は大きい |
| ノズル | 高温・高圧・高速流体 | 機械的強度が大きい。スラリーに強い。高価 |
| ベンチュリ | 低圧損が要る流体 | 圧損はオリフィスの 1/4〜1/6。沈殿物が溜まりにくい。高価 |
| 四分円・円筒オリフィス | 低レイノルズ数、微少流量 | エッジオリフィスの補完 |
ほとんどの現場ではオリフィスプレートです。旋盤作業と寸法検査だけで精度が保証されるので、製造コストで圧倒的に有利です。
2. 差圧は流量の2乗|開平とゼロカット
差圧と流量の関係は直線ではなく、2乗(自乗特性)です。連載記事の言葉では「流量が 2 倍に増えると差圧は 4 倍になる」。逆に、流量が 50% のとき差圧は 25%、流量 10% のとき差圧はわずか 1% です。

この差圧信号を流量に比例した信号にするには、平方根を取る「開平演算」が要ります。開平は伝送器に内蔵されている場合と、受信側の演算器で行う場合があります。どちらか一方だけで行うのが正しく、両方でやると流量が大きく狂います(トラブルの記事で扱います)。
開平には落とし穴があります。入力信号がゼロに近いところで、変換の増幅率が非常に大きくなるのです。計装の教科書の表では、差圧入力 0.1% は開平後 3.16% になり、増幅率は 31.6 倍。そのためゼロ付近では、小さなゼロ点のずれが流量指示を大きく動かします。たとえば流れが止まっていても、伝送器や導圧管のゼロ点が差圧で 0.5% ずれていれば、流量指示は約 7% を示します(√0.005 ≒ 0.071)。差圧 0.1%(流量 3.2%)のところで同じ 0.5% ずれると、流量指示は 3.2% から 7.7% へ、約 4.6 ポイント動きます。
だから、差圧 1%(流量 10%)付近でゼロカット(それ以下の信号をゼロとみなす)し、流量測定レンジの 30% 以上で使うことが推奨されています。デジタル式では精度が上がったので差圧 0.5%(流量 7%)をゼロカットにする場合もあります。
「流量が 10% 以下だと指示が信用できない」のは差圧式の性質で、故障ではありません。
3. システムの構成|導圧管・三岐弁・直管部
差圧式流量計は、オリフィスだけでは動きません。連載記事の構成例を要素に分けます。

- オリフィスプレート:配管のフランジ間に挟む
- 導圧管:オリフィス前後の圧力を伝送器へ導く細い配管。元弁が付く
- 三岐弁(三方弁マニホールド):流れを止めずに伝送器の高圧側と低圧側を均圧し、ゼロ点を調整するための弁
- 差圧伝送器:差圧を 4〜20 mA に変える。開平を内蔵していることが多い
- 直管部:オリフィスの上流に口径の 10 倍以上、下流に 5 倍以上の直管。流速分布の偏りや旋回流を減らして測定条件を一定にする
- 温圧補正(気体のとき):圧力伝送器と温度変換器を加え、密度の変化を補正する
最も簡単な構成は、開平内蔵の差圧伝送器と絞り機構だけです。
4. 弱点とされる5つの指摘と、その正当性
連載記事は、差圧式の弱点とされるポイントを5つ挙げ、それぞれが正当かを論じています。
| 指摘 | 記事の見方 |
| 1. 流量範囲が狭い(最大最小比 3:1 程度) | 伝送器の性能向上で状況は変わった。測定範囲は絞りの設計と差圧レンジで自由に選べるので、実際に使う範囲に合わせれば困らない。使用域が変わったらレンジ再調整かプレート交換 |
| 2. 精度が低い(フルスケールの 2〜3%) | 実流校正を省いているため。絞りと直管部を一体化して実流校正すれば、ずっと良くなる。使用状態での精度は、どの形式でも現場に校正装置を持ち込まない限り証明できない |
| 3. 導圧管が詰まりやすい | 本当。差圧式のほとんどのトラブルは導圧管に起因する。導圧管をダイヤフラムシールに置き換える、伝送器を配管に直接付けるダイレクトマウントで導圧管を極めて短くする |
| 4. 上下流に長い直管部が要る | 事実だが、渦式・超音波式・タービン式など流速分布の影響を受ける流量計に共通の問題。整流器で上流側を短縮できる。ベンチュリや V コーンでは必要直管長が大幅に短い |
| 5. 圧損が大きい | 圧損が問題なら差圧レンジを低目に設定すればよい。ベンチュリや V コーンは構造上オリフィスより圧損が小さい |
記事の結論は「差圧式はいわば万能流量計。ただし精度は容積式やタービン式の指示値 0.2% にかなわず、圧損は電磁式や超音波式の”まったくない”より劣る」。弱点も分かった上で「できるだけこの形式を使う」と決めるのは一つの見識、と書いています。
5. 気体は温圧補正が要る
気体の密度は温度と圧力で大きく変わります。差圧式は密度を含んだ式で流量を出すので、運転条件が設計条件と違うと、そのまま誤差になります。そこで圧力伝送器と温度計を追加し、演算器で密度を補正します。気体の流量は標準状態(0℃、1 気圧)に換算した Nm³/h で表すのが一般的です。

温圧補正は、設定間違いが意外に多い場所です。連載記事には、200 気圧級の水素ラインで、圧縮係数の補正が 12% あるのに理想気体の式で計算していた例や、プラントの運転条件が変わったのに補正器の設定変更を忘れた例が載っています。温圧補正の詳細は差圧式流量計の温圧補正で説明しています。
6. 現場で見る場所|トラブルは導圧管から
差圧式の指示がおかしいとき、疑う順番です。
- 導圧管:液体を測る導圧管に気体が溜まっていないか、気体を測る導圧管に液が溜まっていないか、凍っていないか、元弁が閉まっていないか。ここが原因の大半
- 三岐弁の状態:均圧弁が開いたままだと差圧がゼロになる。点検後の戻し忘れ
- 使用レンジ:流量がレンジの 30% 以下で運転していないか。下限付近は指示が信用できない
- 開平の二重:伝送器と受信側の両方で開平していないか
- オリフィスのエッジ:長年使うとエッジが磨耗し、流量係数が変わる。分解時に確認
- 温圧補正の設定:設計条件と今の運転条件が合っているか
導圧管の正しい引き回しは別の記事で詳しく扱います。
7. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 流量が 3 倍になると、差圧は何倍になりますか。
- 差圧式流量計を、レンジの 30% 以上で使うのが望ましいのはなぜですか。
- 差圧式のトラブルのほとんどは、どこで起きますか。
答えは順に、9 倍/開平がゼロ付近でゼロ点誤差を大きく増幅するから/導圧管、です。
まとめ
差圧式流量計は、絞りの前後の差圧から流量を求める最も古い形式で、差圧は流量の2乗に比例します。開平で直線にしますが、ゼロ付近では誤差が増幅されるので、流量 10% 以下はゼロカットし、レンジの 30% 以上で使います。直管部は上流 10D、下流 5D が目安です。
規格どおり作れば実流校正が要らないのが最大の長所で、流量範囲や精度の弱点は使い方で緩和できます。本当の弱点は導圧管の詰まりで、トラブルの大半はここで起きます。気体では温圧補正の設定も疑ってください。
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参考文献
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第2回 差圧式流量計」MS TODAY, 2001年8月号
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.3.1「差圧式流量計」、【解説】差圧式流量計の測定精度とゼロ点誤差の考え方 Amazonで見る
- 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅱ「差圧・圧力伝送器」 Amazonで見る
- 佐鳥聡夫「現場計器の”不思議な”トラブルシューティング 第2回 流量計(その1)」計装, Vol.41 No.4 (1998)
設備技術は、回転機械・静機器・配管・計装・設備信頼性の12の記事マップで案内しています。
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