熱Ⅱの流体の入口の論点を、表と例題で並べました。流体の性質、静止した流体の圧力、流れの基礎式(連続の式・ベルヌーイの式・運動量の法則)を扱います。
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密度・粘度と動粘度 ── 粘度は温めると液体で下がり、気体で上がる

| 量 | 定義・単位 | 温度・圧力で |
|---|---|---|
| 密度 ρ | 単位体積の質量[kg/m³] | 液体はほぼ一定とみなせる。気体は温度と圧力で大きく変わる |
| 粘度 μ | せん断応力÷速度こう配[Pa·s] | 温めると液体は急に下がり、気体は上がる。圧力ではほとんど変わらない |
| 動粘度 ν | μ÷ρ[m²/s](力の単位を含まない) | 密度で割るので、気体は圧力で大きく変わる |
なぜ:粘度は、速い層が遅い層を引きずる内部の摩擦の強さです。液体は分子どうしの引き合いが摩擦のもとなので、温めて分子が動きやすくなると下がります。気体は分子が層の間を飛び移って勢いを運ぶことが摩擦のもとなので、温めて分子が速く飛ぶほど上がります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 温度が上がると、液体も気体も粘度が小さくなる | × | 気体は逆に大きくなる |
| 動粘度の SI 単位は m²/s で、長さと時間だけでできている | ○ | Pa·s を kg/m³ で割ると力が消える |
| 水や空気は、せん断応力が速度こう配に比例しない非ニュートン流体である | × | 比例するのがニュートン流体(水・油・空気) |
| 気体の粘度は圧力でほぼ変わらないが、動粘度は圧力で大きく変わる | ○ | 動粘度は密度で割るから |
例題
密度 800 kg/m³、粘度 0.016 Pa·s の油の動粘度を、m²/s と mm²/s で求めます。
①式:ν=μ/ρ。
②数字を入れる:0.016÷800=2.0×10⁻⁵ m²/s。
③単位を直す:1 mm²/s=10⁻⁶ m²/s なので 20 mm²/s。
④確かめる:逆に μ=ρν=800×2.0×10⁻⁵=0.016 Pa·s で元に戻る。割るか掛けるかを取り違えると桁が大きくずれるので、単位で確かめます。
- せん断応力 τ=μ(dU/dy)。速度こう配に比例する流体をニュートン流体、比例しないもの(高分子の溶液・乳濁液・懸濁液)を非ニュートン流体と呼ぶ。
- レイノルズ数 Re=VD/ν の分母に入るのは動粘度。
- 重油を温めて送るのは、液体は温めると粘度が下がるから。
静圧・ヘッドと液柱計 ── 圧力は深さと密度だけで決まる

| 関係 | 式 | 読み方 |
|---|---|---|
| 静止した液の中の圧力 | p=p₀+ρgz | 深さ z と密度 ρ だけで決まり、容器の形によらない |
| 液柱の高さと圧力(ヘッド) | p=ρgH | 流体を決めれば高さ H で圧力を表せる。水柱 1 mm=9.81 Pa |
| ゲージ圧と絶対圧 | 絶対圧=ゲージ圧+大気圧 | ゲージ圧は大気圧を 0 にした値 |
| パスカルの原理 | F₂/F₁=A₂/A₁ | 密閉した液に加えた圧力は全体に同じ強さで伝わる |
| U字管で気体の差圧 | Δp≒ρ封液gh | 重い封液ほど同じ差圧で液面差が小さい |
なぜ:静止した液のある深さの面は、その上に載っている液柱の重さを支えています。液柱の重さは密度×g×高さ×面積です。面積で割った圧力は深さと密度だけで決まり、容器が太くても細くても同じです。逆に読めば、液柱の高さの差で圧力の差が測れます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 水柱 1 m に当たる圧力は約 98 Pa | × | 約 9.8 kPa(98 Pa は水柱 10 mm) |
| 同じ深さの差なら、容器の形や断面積が違っても圧力の差は同じ | ○ | ρgh だけで決まる |
| 絶対圧は、ゲージ圧から大気圧を引いた値 | × | ゲージ圧に大気圧を足す |
| U字管の封液を水から水銀に替えると、同じ差圧で液面差は大きくなる | × | 約 1/13.6 に小さくなる |
例題
空気のダクトの2点の差圧を、水を入れたU字管で測ったら液面差が 150 mm でした。差圧を求め、水銀なら液面差がいくらになるかを確かめます。
①気体の密度は封液に比べて小さいので無視し、Δp=ρgh を使う。
②数字を入れる:1,000×9.81×0.150=1,471.5 Pa≒1.47 kPa。
③水柱 1 mm=9.81 Pa から見ても:150×9.81=1,471.5 Pa で同じ。
④水銀(比重 13.6)なら:150÷13.6≒11.0 mm。封液が重いほど液面差は小さく、小さな差圧は水か軽い液で測る。
- 標準大気圧 1 atm=760 mmHg=1.013×10⁵ Pa。1 mmHg=13.6 mmH₂O。
- ヘッドは圧力などを長さ[m]で表したもの。水のときは水頭とも呼ぶ。
- 圧力計の基準(ゲージ圧と絶対圧、真空計)は熱Ⅳの計測でも問われる。
関連:圧力の基準と単位
層流と乱流(レイノルズ数) ── レイノルズ数が大きいほど乱流

| 項目 | 層流 | 乱流 |
|---|---|---|
| レイノルズ数(円管) | 約 2,300 より小さい | 約 2,300 より大きい(2,000〜4,000 で移る) |
| 流れの様子 | 層になってそろって流れる | 塊が入り乱れて混ざる |
| 起こりやすい条件 | 遅い・細い・ねばい | 速い・太い・さらさら |
| 乱れ | 粘性で消える | 増幅される |
なぜ:流れの乱れは、勢い(慣性力)で広がり、粘りけ(粘性力)で消されます。レイノルズ数 Re=VD/ν は、この二つの力の比です。Re が大きいほど勢いが勝って乱れが育ち、乱流になります。だから速さ V・内径 D が大きいほど、動粘度 ν が小さいほど乱流に近づきます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| レイノルズ数は粘性力に対する慣性力の比で、値が小さいほど乱流になりやすい | × | 大きいほど乱流 |
| 十分に発達した円管内の流れの臨界レイノルズ数は約 23,000 | × | 約 2,300(2,000〜4,000) |
| 円管のレイノルズ数は Re=VD/ν(=ρVD/μ)で、代表長さに内径をとる | ○ | 管の直径を使う |
| 臨界レイノルズ数は、入口の形・管壁の粗さ・流入する流れの乱れで変わる | ○ | 2,000〜4,000 の範囲 |
例題
動粘度 1.0×10⁻⁶ m²/s の水が内径 25 mm の管を流れます。平均流速 0.05 m/s と 0.5 m/s のとき、層流か乱流かを判断します。
①式:Re=VD/ν(D は m に直す:0.025 m)。
②0.05 m/s:0.05×0.025÷(1.0×10⁻⁶)=1,250。約 2,300 より小さいので層流。
③0.5 m/s:0.5×0.025÷(1.0×10⁻⁶)=12,500。4,000 を十分超えるので乱流。
④確かめる:Re は速さに比例するので、速さ10倍で Re も10倍(1,250→12,500)。
- ν=μ/ρ なので、Re=ρVD/μ と書いても同じ値になる。
- 管の入口から流れが十分発達するまでを助走区間という。乱流では層流より非常に短い。
- 層流か乱流かで、管摩擦係数の決まり方が変わる(層流は Re だけ)。
連続の式とベルヌーイの式 ── 細い所ほど速く、速い所ほど圧力が低い

| 式(出どころ) | 形 | 分かること |
|---|---|---|
| 連続の式(質量保存) | ρ₁V₁A₁=ρ₂V₂A₂ | 液体なら VA 一定。流速は内径の2乗に反比例 |
| ベルヌーイの式(エネルギー保存。出入りと損失なし) | p+½ρV²+ρgz=一定 | 水平なら、速くなった分だけ静圧が下がる |
| ヘッドの形(上の式を ρg で割る) | p/(ρg)+V²/(2g)+z=一定 | 圧力ヘッド・速度ヘッド・位置ヘッド[m] |
| 損失・仕事がある形(一般化したエネルギーの式) | 入口の和+Ein−Eout−Eloss=出口の和 | ポンプの仕事や摩擦損失を足し引きする |
なぜ:途中で流体が増えも減りもしないので、毎秒通る量は細い所でも同じで、断面積が小さい所ほど速く流れます。損失がなければ、単位体積あたりの圧力・運動・位置のエネルギーの合計も保たれます。速くなって動圧が増えた分だけ、静圧が下がります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 内径が 2:1 の管を続けて流れる液体の流速は、細い側が太い側の4倍 | ○ | 断面積は内径の2乗 |
| ベルヌーイの式で、p を動圧、½ρV² を静圧と呼ぶ | × | p が静圧、½ρV² が動圧、ρgz は静止流体圧(静水圧) |
| ヘッドの形で書くと速度ヘッドは V²/g | × | V²/(2g) |
| p+½ρV²+ρgz=一定は、摩擦損失やポンプの仕事があってもそのまま使える | × | 出入りと損失を無視した式。あれば一般化した式 |
| 空気のダクトでは ρgz の項を省くことが多い | ○ | 空気の密度が小さく、高低差の効きが小さい |
例題
水平な管で、内径 100 mm の所を水が 1.5 m/s で流れ、内径 50 mm に絞られます。絞った所の流速と静圧の低下を求めます(損失なし、水 1,000 kg/m³)。
①連続の式:内径が 1/2 なら断面積は 1/4、流速は4倍で 6.0 m/s。
②ベルヌーイの式(水平):p₁−p₂=½ρ(V₂²−V₁²)。
数字を入れると ½×1,000×(36−2.25)=16,875 Pa≒16.9 kPa。
③ヘッドで確かめる:速度ヘッドは 1.5²/(2×9.81)=0.11 m。
細い所は 6.0²/(2×9.81)=1.83 m。
差 1.72 m×1,000×9.81≒16.9 kPa で②と一致。
④桁を確かめる:静圧の低下は速さの2乗の差で効くので、速さを4倍にすると動圧は16倍になる。
- 気体でも流れの中の圧力・温度の変化が小さければ、密度一定として同じ式を使える。
- 単位質量あたりで書くと p/ρ+V²/2+gz[J/kg]、単位体積あたりなら[Pa]、ρg で割ったヘッドなら[m]。
- 絞った所の差圧から流量を求めるのがベンチュリ管・オリフィス(同じ原理)。
運動量の法則 ── 流れの向きを変える力の反作用で流体が物を押す

| 場面 | 流体に加わる力(流れの向き) | 物が受ける力 |
|---|---|---|
| 平板に垂直に当たって直角にそれる噴流 | M(0−V)=−MV | 噴流の向きに MV |
| 180°向きを変えて戻る噴流 | M(−V−V)=−2MV | 噴流の向きに 2MV |
| 速さは同じで向きだけ変える曲がり管 | 成分ごとに M(V2x−V1x) | 0 にならない(向きの変化も運動量の変化) |
| 縮小管(管の中の流れ) | 前後の圧力による力+壁から受ける力=M(V₂−V₁) | 圧力の力も入れて求める |
なぜ:力は「単位時間あたりの運動量の変化」に等しい量です。流れでは力=質量流量×速度の変化(Fx=M(V2x−V1x))になります。流体の速さや向きを変えたのは壁なので、その反作用で流体は壁を押します。速度は向きをもつので、速さが同じでも向きが変われば力が要ります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 流体に加わる力の合計(壁から受ける力と前後の圧力による力の和)は M(V₂−V₁) に等しい | ○ | 圧力による力を落とさない |
| 速さを変えずに向きだけ曲げる曲がり管には、流れから力は加わらない | × | 向きが変われば運動量が変わる |
| 噴流が平板に垂直に当たって直角にそれるとき、板が受ける力は 2MV | × | MV(180°戻るときが 2MV) |
| 質量流量の代わりに体積流量を使うと Fx=ρQ(V2x−V1x) | ○ | M=ρQ |
例題
内径 20 mm のノズルから水が 15 m/s で噴き出し、平板に垂直に当たって直角にそれます。板が受ける力を求め、180°向きを変える受け皿ならいくらかを確かめます。
①断面積:A=(π/4)×0.020²=3.14×10⁻⁴ m²。
②質量流量:M=ρAV=1,000×3.14×10⁻⁴×15≒4.71 kg/s。
③力:噴流の向きの速さが 15 から 0 になるので、F=4.71×15≒70.7 N。
④180°戻すなら速度の変化は 30 m/s で 141 N(2倍)。単位は kg/s×m/s=kg·m/s²=N で合う。
- 大気中の噴流は前後の圧力がどちらも大気圧なので、圧力の項が消えて M·ΔV だけで済む。
- 管の中の流れでは、ベルヌーイの式で出口の圧力を出してから、圧力の力を入れて運動量の式を立てる。
- x・y・z の成分ごとに求めて合成する。
関連:連続の式とベルヌーイの式
出典:エネルギー管理士試験講座 熱Ⅱ「熱と流体の流れの基礎」2編1章・2章(2.1)、共通Ⅰ 3編2章(2.1.8)。
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