熱Ⅱの理想気体の論点(状態式・比熱・等容等圧等温・断熱とポリトロープ・絞りと混合)を、表と例題で並べました。熱と仕事の基礎は熱力学の基礎と第一法則の記事にあります。
理想気体の状態式とガス定数 ── ガス定数は一般ガス定数÷分子量

| 気体(分子量の概略) | ガス定数 R〔J/(kg·K)〕 | 1 kmol の体積(273.15 K・101.325 kPa) |
|---|---|---|
| 水素 H₂(2) | 約4,126 | 22.414 m³ |
| 窒素 N₂(28) | 約296.9 | 22.414 m³ |
| 空気(29) | 約287.1 | 22.414 m³ |
| 二酸化炭素 CO₂(44) | 約189.0 | 22.414 m³ |
| どの気体も | R=R0/M(R0=8,314.4 J/(kmol·K)) | 種類によらず同じ |
なぜ:同じ温度・圧力なら、一定の体積に入る気体の kmol 数は種類によりません(アボガドロの法則)。だから kmol で書いた PV=nR0T の R0 は、どの気体でも同じです。質量で書き直すと n=m/M なので、R=R0/M が気体ごとに変わります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 気体ごとのガス定数は、一般ガス定数をその気体の分子量で割って求める | ○ | R=R0/M |
| 水素は分子量が小さいので、ガス定数は空気より小さい | × | 分子量に反比例なので大きい |
| 分子量28の窒素のガス定数は、8,314÷28 から約297 kJ/(kg·K) | × | 約297 J/(kg·K)(0.297 kJ/(kg·K)) |
| 質量 m〔kg〕の理想気体の状態式は、一般ガス定数を使って PV=mR0T と書ける | × | 質量なら PV=mRT。R0 を使うなら PV=nR0T |
| 状態式には、ゲージ圧に大気圧を足した絶対圧力と、℃に273.15を足した絶対温度を使う | ○ | 熱力学の計算は絶対値で |
例題
内容積 5 m³ のタンクに、窒素(分子量28)が絶対圧力 0.4 MPa、27℃で入っています。質量を求めます。
①ガス定数:R=8,314/28=296.9 J/(kg·K)。
②絶対温度:T=27+273.15=300.15 K。
③質量:m=PV/(RT)=0.4×10⁶×5/(296.9×300.15)=22.4 kg。
④kmol で確かめる:n=PV/(R0T)=0.801 kmol。これに分子量28を掛けると 22.4 kg で一致する。
- 温度一定で PV が一定(ボイルの法則)、圧力一定で V/T が一定(シャルルの法則)。2つを合わせたのが PV=mRT。
- 実在の気体には厳密には成り立たないが、常温・常圧の気体なら工学上の誤差は小さい。この式が成り立つ気体を理想気体という。
- 標準状態の 1 kmol は約22.4 m³。燃焼計算で使う 22.4 m³N はこの値。
- J/(kg·K) と kJ/(kg·K) を取り違えると1000倍ずれる。
関連:燃焼反応式と物質量・体積
定圧比熱・定容比熱と比熱比 ── 定圧比熱は膨張の仕事の分だけ大きい

| 気体 | 比熱比 κ(理論値) | cv と cp(R を単位に) |
|---|---|---|
| 単原子(アルゴン・ヘリウム) | 1.667 | cv 1.5R、cp 2.5R |
| 2原子(窒素・空気など) | 1.400 | cv 2.5R、cp 3.5R |
| 3原子以上(CO₂ など) | 1.333 | cv 3R、cp 4R |
| どの気体も | κ=cp/cv | cv=R/(κ−1)、cp=κR/(κ−1)、cp−cv=R |
なぜ:理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まります。1 K 上げるのに中へためる熱は、体積一定でも圧力一定でも同じ cv です。圧力一定ではさらに膨らんで、外へ P dv=R dT の仕事をします。その分だけ熱が多く要り、cp=cv+R になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 理想気体では、定圧比熱と定容比熱の差がガス定数に等しい | ○ | cp−cv=R |
| 定圧比熱が大きいのは、圧力一定だと同じ温度上昇でも内部エネルギーが多く増えるから | × | 増え方は同じ。差は膨張の仕事の分 |
| 比熱比を κ とすると、定容比熱は κR/(κ−1) で表される | × | cv=R/(κ−1)。κR/(κ−1) は cp |
| 比熱比の理論値は、分子を作る原子の数が多いほど小さい | ○ | 1.667 → 1.400 → 1.333 |
| 理想気体の内部エネルギーとエンタルピーは、温度が同じなら圧力や体積が違っても同じ値 | ○ | どちらも温度だけの関数 |
例題
二酸化炭素(R=0.189 kJ/(kg·K)、κ=1.30)の定容比熱と定圧比熱を求めます。
①定容比熱:cv=R/(κ−1)=0.189/0.30=0.630 kJ/(kg·K)。
②定圧比熱:cp=κcv=1.30×0.630=0.819 kJ/(kg·K)。
③差を確かめる:0.819−0.630=0.189 で、R に戻る。
④実在の値と比べる:0℃の CO₂ は cp 約0.819、cv 約0.630 kJ/(kg·K) で合う。実際の κ は3原子の理論値 1.333 より少し小さい。
- 内部エネルギーが温度だけで決まることは、真空へ膨張させても温度が変わらない実験で示された(ジュールの法則)。
- du=cvdT、dh=cpdT。理想気体なら、等容でない変化でも Δu=cvΔT。
- 空気(0℃)は cp 1.005、cv 0.717、R 0.287 kJ/(kg·K)、κ 約1.40。
関連:等容・等圧・等温変化
等容・等圧・等温変化 ── 変化の種類で熱の行き先が変わる

| 変化(状態量の関係) | 仕事 W | 熱 Q の行き先 |
|---|---|---|
| 等容(P/T 一定) | 0 | 全部が内部エネルギー:Q=mcv(T2−T1) |
| 等圧(V/T 一定) | P(V2−V1)=mR(T2−T1) | エンタルピーの増加:Q=mcp(T2−T1) |
| 等温(PV 一定) | mRT ln(V2/V1)=mRT ln(P1/P2) | 全部が仕事:Q=W(ΔU=0) |
なぜ:第一法則は Q=ΔU+W で、理想気体の ΔU は温度だけで決まります。体積が変わらなければ W=0 なので、熱は全部 ΔU になります。温度が変わらなければ ΔU=0 なので、熱は全部 W になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 体積一定で加熱すると外への仕事は0で、加えた熱は全部が内部エネルギーの増加になる | ○ | Q=mcvΔT |
| 圧力一定の変化で出入りする熱は mcv(T2−T1) で計算する | × | mcp(T2−T1)=m(h2−h1) |
| 理想気体を等温で膨張させるとき、温度が変わらないので熱の出入りもない | × | 外へした仕事と同じ量の熱を受け取る |
| 圧力一定のまま理想気体を0℃から273℃まで温めると、体積はほぼ2倍になる | ○ | 273.15 K → 546.15 K。V/T 一定 |
| 温度一定のまま理想気体の圧力を2倍にすると、体積も2倍になる | × | 反比例なので 1/2 |
例題
空気 1 kg を 300 K から変化させます。R 0.287、cv 0.717、cp 1.005 kJ/(kg·K) とします。
①等容で 350 K へ:Q=0.717×50=35.9 kJ、W=0。
②等圧で 350 K へ:Q=1.005×50=50.3 kJ、W=0.287×50=14.4 kJ。
③等温(300 K)で体積を3倍に:W=0.287×300×ln3=94.6 kJ、Q=W=94.6 kJ、ΔU=0。
④確かめる:②の Q−W=50.3−14.4=35.9 kJ は①と同じ。同じ温度上昇なら、ΔU は変化の種類によらない。
- 等温変化は、熱をやり取りしながらゆっくり変化させるもの。等温で圧縮するときは、加えた仕事と同じ量の熱を外へ出す必要がある。
- 等温では V2/V1=P1/P2。ln の中の比の向きに注意する。
- 等圧の熱 Q=mcpΔT は、ΔU と膨張の仕事 mRΔT の和になっている。
関連:エントロピーとT-s線図
断熱変化とポリトロープ変化 ── 断熱圧縮で温度上昇、PVⁿ一定が一般形

| ポリトロープ指数 n | PVⁿ=一定 が表す変化 | 熱の出入り |
|---|---|---|
| 0 | 等圧(P 一定) | あり |
| 1 | 等温(T 一定) | あり(Q=W) |
| κ | 可逆断熱(PVκ 一定) | なし |
| ∞ | 等容(V 一定) | あり |
| 1 と κ の間 | ポリトロープ変化 | 比熱 cn=cv(n−κ)/(n−1) が負 |
なぜ:断熱では Q=0 なので、第一法則から W=−ΔU です。膨張して外へ仕事をすれば内部エネルギーが減って温度が下がり、圧縮されれば温度が上がります。温度まで一緒に動くので、P-V 線図の曲線は等温より急になります(κ>1)。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 理想気体の可逆断熱変化では T2/T1=(P2/P1)κ/(κ−1) が成り立つ | × | 指数は (κ−1)/κ |
| κ=1.4 の空気を 290 K から圧力比5で可逆断熱圧縮すると、約459 K になる | ○ | 290×50.286 |
| 同じ状態から同じ体積まで膨張させると、終わりの圧力は断熱のほうが等温より高い | × | 断熱は温度も下がるので低い |
| PVⁿ=一定 で、n=0 は等容変化、n=∞ は等圧変化を表す | × | 逆。n=0 が等圧、n=∞ が等容 |
| 1<n<κ の可逆なポリトロープ膨張では、熱を受け取りながら温度が下がる | ○ | cn<0。ΔT<0 なので Q>0 |
例題
空気 1 kg(κ=1.4、cv 0.717 kJ/(kg·K))を、290 K から圧力比5まで圧縮します。
①可逆断熱:T2=290×50.4/1.4=290×1.584=459 K(186℃)。
②仕事:W=cv(T1−T2)=0.717×(290−459)=−121 kJ。負なので外から受ける仕事。
③途中で冷やすポリトロープ(n=1.3):T2=290×50.3/1.3=290×1.450=420 K。冷やした分だけ出口の温度が低い。
④桁を確かめる:空気の指数 (κ−1)/κ は約0.286。逆数の 3.5 を使うと 53.5≒280倍になり、ありえない温度が出る。
- シリンダ内の気体を急に圧縮すると、壁から熱が出入りする時間がないので断熱とみなせる。
- 断熱の関係:PVκ、TVκ−1、T/P(κ−1)/κ がどれも一定。
- 断熱の仕事は W=mcv(T1−T2)=(P1V1−P2V2)/(κ−1)。ポリトロープの仕事は (P1V1−P2V2)/(n−1) で、κ を n に替えた形。
- 熱の向きは Q=mcn(T2−T1) で決まる。cn の正負(n と κ の大小)と、温度の上下(圧縮か膨張か)の両方を見る。
不可逆変化(絞り・混合)と混合気体 ── 理想気体の絞りでは温度は変わらない

| 変化 | 保たれる量 | 理想気体での結果 |
|---|---|---|
| 絞り膨張(弁・オリフィス) | エンタルピー(h1=h2) | 温度は変わらず、圧力が下がって体積が増える |
| 断熱容器内の混合 | 内部エネルギー | 混合前の温度がそろっていれば温度は変わらない |
| 流れの混合 | エンタルピー | 混合後の温度は ΣmicpiTi/Σmicpi |
| 不可逆断熱膨張 | ― | 摩擦の熱で出口温度が可逆より高く、仕事は少ない |
| 混合気体(ダルトンの法則) | ― | 全圧=分圧の和、体積割合=分圧÷全圧 |
なぜ:絞りでは外と熱も仕事もやり取りせず、前後の流速もほぼ同じなので、エネルギー式から h1=h2 が残ります。理想気体のエンタルピーは温度だけで決まるので、h が同じなら温度も同じです。下がった圧力は、仕事として取り出されずに摩擦と乱れで失われます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 理想気体を弁やオリフィスで絞り膨張させると、圧力が下がる分だけ温度も下がる | × | h1=h2 で温度は変わらない |
| 不可逆断熱膨張の終わりの温度は、同じ圧力まで可逆断熱膨張したときより高い | ○ | 摩擦などの熱が気体に加わる |
| 断熱効率は、可逆断熱の温度降下を実際の温度降下で割った値 | × | 実際÷可逆。1より小さい |
| 理想気体の混合気体では、ある成分の体積割合はその成分の分圧÷全圧に等しい | ○ | ri=Vi/V=Pi/P |
| 温度が同じで圧力の違う2つの理想気体を断熱容器内で混ぜると、温度は下がる | × | 内部エネルギーが保たれ、温度は変わらない |
例題
空気(κ=1.4)が 600 K からタービンで圧力 1/4 まで断熱膨張し、出口で 430 K でした。断熱効率を求めます。
①可逆なら:T2ad=600×(1/4)0.286=600×0.673=404 K。
②断熱効率:ηad=(T1−T2)/(T1−T2ad)=(600−430)/(600−404)=0.87。
③同じ圧力まで弁で絞るだけなら:温度は 600 K のままで、仕事は取り出せない。
④確かめる:実際の出口 430 K は、可逆の 404 K と入口の 600 K の間に入る。断熱効率は実際÷可逆なので、1より小さい。
- 摩擦・混合・絞りは元に戻せない変化(不可逆変化)。前後の状態量だけで計算できるものを扱う。
- 不可逆断熱変化をポリトロープ変化で近似すると、指数は膨張で n<κ、圧縮で n>κ になる。
- 混合後の圧力が変わらないのは、混合前の温度と圧力がすべて等しいときだけ。
- 燃焼ガスの全圧と体積割合から水蒸気の分圧が分かり、露点を知ることができる。
関連:蒸気の状態変化と絞り
出典:エネルギー管理士試験講座(省エネルギーセンター)熱分野Ⅱ 1編2〜3章、共通Ⅰ 3編2章
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