熱Ⅱの熱力学の基礎の論点(熱量・状態量・第一法則・仕事・エンタルピー)を、表と例題で並べました。課目Ⅰで問われる熱量と第一法則の基礎もここで扱います。
理想気体の計算は理想気体の状態変化、第二法則は第二法則・エントロピー・エクセルギーの記事にあります。
熱量・比熱・顕熱と潜熱 ── 顕熱と潜熱は分けて計算して足す

| 熱の種類(温度) | 求め方 | 水の値 |
|---|---|---|
| 顕熱(温度が変わる) | Q=c·m·(t2−t1) | 比熱 c 約4.19 kJ/(kg·K) |
| 潜熱・融解熱(0℃のまま) | Q=m×融解熱 | 約335 kJ/kg(氷→水) |
| 潜熱・蒸発熱(標準大気圧で100℃のまま) | Q=m×蒸発熱 | 約2,257 kJ/kg(水→水蒸気) |
| 熱容量 | C=m·c〔J/K〕 | 物体全体を1 K上げる熱 |
なぜ:相変化が起きている間は、熱が入っても温度は上がらず、熱はすべて状態を変えるのに使われます。温度差から計算できるのは、温度が動く部分だけです。温度が動く段(顕熱)と止まる段(潜熱)を別々に求め、最後に足します。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 同じ質量に同じ熱を入れると、比熱の小さい物質のほうが温度は大きく上がる | ○ | Δt=Q/(c·m)。比熱に反比例 |
| 熱容量は物質1 kgを1 K上げる熱で、単位は J/(kg·K) | × | 物体全体の量で J/K(C=m·c)。1 kgあたりは比熱 |
| 大気圧で沸騰している水が、温度を変えずに受け取る熱は顕熱 | × | 温度が変わらない熱は潜熱(蒸発熱) |
| 放熱のない容器で 80℃の水1 kgと20℃の水2 kgを混ぜると、平均の50℃になる | × | 質量で重みを付ける:(1×80+2×20)/3=40℃ |
| 1気圧の水の蒸発熱は、氷の融解熱より小さい | × | 蒸発熱 約2,257、融解熱 約335 kJ/kg |
例題
大気圧で20℃の水2 kgを100℃まで温め、さらに全部を蒸発させるのに要る熱を求めます。
①顕熱:Q₁=c·m·Δt=4.19×2×(100−20)=670 kJ。
②潜熱:Q₂=m×蒸発熱=2×2,257=4,514 kJ。
③足す:Q=670+4,514=5,184 kJ≒5.2 MJ。
④桁を確かめる:蒸発の潜熱が全体の約9割。80 K温めるより、100℃のまま蒸発させるほうがずっと多くの熱が要る。
- 比熱は温度・圧力・加熱の条件で変わる。固体・液体ではほぼ一定とみてよいが、気体は条件で大きく違うので定圧比熱と定容比熱を使い分ける。
- 比熱の単位が J/(kg·K) でも、温度差は℃の差をそのまま使える。T=t+273.15 の 273.15 は差をとると消える。
- 化学反応で出入りする熱は反応熱。燃料の燃焼は反応熱を取り出している。
- 蒸発熱は圧力で変わる。圧力ごとの値は蒸気表で読む。
系・状態量と単位 ── 熱と仕事は状態量ではない

| 区分 | 例 | 性質 |
|---|---|---|
| 強度性状態量 | 圧力・温度 | 物質の量を変えても値は変わらない |
| 容量性状態量 | 体積・内部エネルギー・エンタルピー・エントロピー | 物質の量に比例する。1 kgあたりは「比」を付けて小文字(比体積 v=V/m) |
| 状態量でない | 熱量・仕事 | 始めと終わりが同じでも、途中の道筋で値が変わる |
| 系の種類 | 閉鎖系(閉じた系)/開放系(開いた系) | 物質は出入りせず熱と仕事だけ/物質も出入りする |
なぜ:状態量はいまの状態だけで決まるので、出発点と到着点が同じなら、差はどの道を通っても同じです。熱と仕事は、状態から状態へ移る途中でやり取りされる量で、どの道を通ったかで量が変わります。物体が「いまの熱量」や「いまの仕事」を持っているわけではないので、状態量になりません。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 熱量や仕事が状態量でないのは、始めと終わりが同じでも途中の道筋で量が変わるから | ○ | 状態量はいまの状態だけで決まる |
| 圧力や温度は、物質の量を2倍にすると値も2倍になる | × | 量によらない強度性状態量。量に比例するのは体積など |
| 圧力〔Pa〕と体積〔m³〕の積はエネルギーと同じ単位 J になる | ○ | N/m²×m³=N·m=J |
| 水柱1 mの圧力は、水銀柱1 mの圧力より大きい | × | 水銀柱のほうが約13.6倍大きい |
- 状態量は、任意の2つが決まれば残りがすべて決まる(ふつうは圧力と温度を使う)。
- 単位:Pa=N/m²、J=N·m、W=J/s。1 mH₂O=9.807 kPa、1 mHg=133.3 kPa、1 atm=101.325 kPa。
- 熱力学の計算は絶対圧力と絶対温度で行う。ゲージ圧で与えられたら大気圧を足し、℃には 273.15 を足す。
- 比熱は一般には状態量でないが、体積一定・圧力一定と条件を決めた比熱(定容比熱 cv・定圧比熱 cp)は状態量になる。
関連:静圧・ヘッドと液柱計
第一法則と内部エネルギー ── 熱は内部エネルギーの増加と外への仕事に分かれる

| 場面 | 式 | 符号の約束・読み方 |
|---|---|---|
| 熱Ⅱの書き方 | Q=ΔU+W | 熱は系に入るとき+、仕事は系から出るとき+(膨張で+、圧縮で−) |
| 課目Ⅰの書き方 | ΔU=Q+W | W は外から気体に与えた仕事(圧縮で+) |
| 断熱(Q=0) | ΔU=−W(熱Ⅱの書き方) | 膨張すると内部エネルギーが減って温度が下がる |
| サイクル1周 | ΔU=0 | 正味に受け取った熱=正味の仕事(W=Q1−Q2) |
なぜ:エネルギーは生まれも消えもしません。閉じた系に入った熱は、中にたまる分(内部エネルギーの増加)と、外へ出ていく分に分かれるしかありません。外へ出る分は、ピストンを押す仕事です。入った熱=たまった分+出ていった仕事、これが第一法則です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 熱Ⅱの式 Q=ΔU+W で気体を圧縮したときは、W に負の値を入れる | ○ | 仕事は系から出るとき+ |
| 閉じた系に 80 kJ の熱を入れ、気体が外へ 30 kJ の仕事をすると、内部エネルギーは 110 kJ 増える | × | ΔU=80−30=50 kJ |
| 外からエネルギーをもらわずに動き続ける機関が作れないのは、第二法則による | × | 第一法則(エネルギー保存)。第二法則が否定するのは第二種永久機関 |
| 断熱圧縮で温度が上がるのは、熱の出入りがないまま外から仕事を受け、内部エネルギーが増えるから | ○ | Q=0 なので受けた仕事が全部 ΔU |
| 外から気体に与えた仕事を W とする書き方では、ΔU=Q−W になる | × | どちらも入るエネルギーなので ΔU=Q+W |
例題
閉じた系の気体の内部エネルギーの変化を、熱Ⅱの書き方(Q=ΔU+W)で求めます。
①加熱して膨張:熱 120 kJ が入り、気体が外へ 45 kJ の仕事をした。ΔU=Q−W=120−45=75 kJ(増える)。
②冷やしながら圧縮:熱 10 kJ が出て(Q=−10)、外から 30 kJ の仕事を受けた(W=−30)。ΔU=−10−(−30)=20 kJ(増える)。
③課目Ⅰの書き方で確かめる:②は加えた熱 −10、与えた仕事 30 なので ΔU=−10+30=20 kJ。同じ答えになる。
④符号を確かめる:②で W を+30 のまま入れると −40 kJ になる。出入りの向きを先に決めてから数字を入れる。
- 内部エネルギーは、分子の運動エネルギーと、分子どうしの力による位置エネルギーを合わせたもの。状態量で、U〔J〕、1 kgあたりは比内部エネルギー u〔J/kg〕。
- 断熱した容器の水を羽根車でかき混ぜると、加えた仕事は全部が水の温度上昇になる(ジュールの実験。熱と仕事が同じエネルギーだと示した)。
- サイクルを1周すると元の状態に戻るので ΔU=0。正味に受け取った熱と正味の仕事が等しい。
関連:等容・等圧・等温変化
膨張の仕事と工業仕事 ── P-V線図の横軸側と縦軸側の面積

| 比べる点 | 閉じた系の膨張の仕事 | 流れ系の工業仕事 |
|---|---|---|
| 式 | W=∫P dV | Wt=−∫V dP(可逆、速度の変化を無視) |
| P-V線図の面積 | 経路と横軸(体積の軸)の間 | 経路と縦軸(圧力の軸)の間 |
| 等圧変化 | P(V2−V1) | 0 |
| 等容変化 | 0 | V(P1−P2) |
| 理想気体の等温変化 | 両方が等しい(P1V1=P2V2) | 両方が等しい |
| 圧縮・昇圧 | 負(外から仕事を受ける) | 負(動力が要る) |
なぜ:ピストンが dx 動くと、力 PA×距離 dx=P dV の仕事をします。これを足し合わせたのが閉じた系の仕事 ∫P dV です。流れ系では、流体が入るとき押し込まれる仕事 P1V1 と、出るとき押し出す仕事 P2V2 も出入りします。可逆で速度の変化を無視すると、外へ取り出せる仕事(工業仕事)は ∫P dV+P1V1−P2V2 です。これを P-V 線図で見ると、縦軸側の面積 −∫V dP になります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| P-V 線図で、可逆変化の経路と縦軸の間の面積が、閉じた系の仕事 ∫P dV に等しい | × | 横軸との間。縦軸との間は −∫V dP |
| 実際の膨張の仕事は、摩擦や乱れで一部が熱になるので、可逆として計算した値より小さい | ○ | 不可逆な膨張は仕事が減る |
| 圧力 0.4 MPa 一定で体積が 0.05 m³ から 0.15 m³ に増えたとき、気体が外へする仕事は 60 kJ | × | 0.4×10⁶×(0.15−0.05)=40 kJ。終わりの体積を掛けない |
| 理想気体の可逆な等温変化では、流れ系の工業仕事と閉じた系の膨張の仕事は等しい | ○ | P1V1=P2V2 で、差し引く分が0 |
| 圧縮機のように圧力を上げる可逆な流れでは、−∫V dP が正になり、流体が外へ仕事をする | × | dP>0 なので負。外から仕事を受ける |
例題
気体が圧力 0.3 MPa 一定のまま、体積 0.05 m³ から 0.20 m³ まで可逆的に膨張します。閉じた系の仕事と、同じ変化を流れ系で起こしたときの工業仕事を求めます。
①膨張の仕事:W=P(V2−V1)=0.3×10⁶×0.15=45,000 J=45 kJ。
②押し込みと押し出し:P1V1=0.3×10⁶×0.05=15 kJ、P2V2=0.3×10⁶×0.20=60 kJ。
③工業仕事:45+15−60=0。圧力が変わらないので縦軸側の面積(−∫V dP)も0で、一致する。
④桁を確かめる:MPa×m³=MJ なので 0.3×0.15=0.045 MJ=45 kJ。MPa を Pa に直さずに J と書くと、桁が大きくずれる。
- 工業仕事は、状態変化で生じる仕事から、系に出入りするのに要る仕事を差し引いた、外へ取り出せる仕事。
- −∫V dP の形は導ける。速度の変化を無視したエネルギー式 q=h2−h1+wt と、可逆変化の dq=dh−v dP を比べる。
- 閉じた系の膨張の仕事 ∫P dV は、一般に「絶対仕事」とも呼ばれる。
- 圧縮では体積が減る(右から左へ進む)ので ∫P dV は負になり、「出る仕事を+」の約束と合う。
定常流れ系のエネルギー式とエンタルピー ── 流れの収支はエンタルピーで数える

| 装置(定常流れ) | 1 kgあたりの収支(位置の差は無視、w は流速) | 読み方 |
|---|---|---|
| 一般形 | h1+w1²/2+q=h2+w2²/2+wt | 入る分=出る分 |
| 加熱器・ボイラ(仕事なし、速度の変化小) | q=h2−h1 | 加えた熱はエンタルピーの増加 |
| タービン(断熱、速度の変化小) | wt=h1−h2 | 取り出す仕事はエンタルピーの減少 |
| ノズル(断熱、仕事なし) | w2²/2−w1²/2=h1−h2 | 速さが増えた分だけ h が下がる |
| 絞り(弁・オリフィス) | h1=h2 | 前後でエンタルピーが等しい |
なぜ:流体は系に入るとき、自分の内部エネルギー u に加えて、後ろから押し込まれる仕事 Pv も持ち込みます。出るときも同じように Pv を持ち出します。u と Pv はいつも一緒に出入りするので、まとめて h=u+Pv(エンタルピー)で数えます。u・P・v はどれも状態量なので、h も状態量です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 流れの収支をエンタルピーで書くのは、流体が内部エネルギーと一緒に押し込み・押し出しの仕事も運ぶから | ○ | h=u+Pv |
| 比エンタルピーは、比内部エネルギーから圧力と比体積の積を引いた h=u−Pv | × | 足す。h=u+Pv |
| 仕事のやり取りがなく速度の変化も無視できる流れで、4 kg/s の流体に 240 kW の熱を加えると、比エンタルピーは 60 kJ/kg 増える | ○ | 240÷4=60 kJ/kg |
| 熱も仕事もやり取りしないノズルで流速が上がると、出口の比エンタルピーも大きくなる | × | 速さが増えた分だけ h は下がる |
| エンタルピーは熱量と同じく道筋で値が変わるので、状態量ではない | × | u・P・v が状態量なので u+Pv も状態量 |
例題
①タービン:3 kg/s の気体が断熱のタービンを通り、比エンタルピーが 900 から 500 kJ/kg に下がった。速度の変化を無視すると、出力は ṁ(h1−h2)=3×400=1,200 kW。
②ノズル:断熱のノズルで比エンタルピーが 20 kJ/kg 下がり、入口の速さは無視できる。出口の速さは w2=√(2×20,000)=200 m/s。
③単位を確かめる:J/kg=m²/s² なので、√の中は kJ/kg を J/kg に直してから計算する。kJ のまま入れると √40≒6.3 m/s と桁違いになる。
④桁を確かめる:50 m/s の運動エネルギーは 50²/2=1,250 J/kg=1.25 kJ/kg。流速が数十 m/s なら、速度の項はエンタルピーの変化に比べて小さいことが多い。
- 定常流れ系は、流れ込む量が時間で変わらない開放系。ボイラ・タービン・圧縮機・熱交換器・ノズルなど。
- 圧力一定で加熱すると、dq=dh−v dP で dP=0 なので dq=dh。等圧で出入りする熱はエンタルピーの変化に等しい。
- 絞りの前後ではエンタルピーが等しい。理想気体なら温度も変わらない。
関連:蒸気の状態変化と絞り
出典:エネルギー管理士試験講座(省エネルギーセンター)熱分野Ⅱ 1編1〜2章、共通Ⅰ 3編2章
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