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ステンレス鋼の型番が多すぎて、どれが何に強いのか覚えられない。
焼なましと焼ならし、焼入れと焼戻し。名前が似ていて毎回混乱する。
そんな悩みを解決します。
この分野は技術検定にしか出ない(25記述すべて検定)
SUS316と304Lの入れ替えが最頻出(2回)
焼なまし(炉冷)と焼ならし(空冷)のすり替えが3回
C量が増えると硬く強くなり、脆くなる ── これが全部の土台

覚える量は多くありませんが、名前が似ているものを正確に区別する必要がある分野です。
最初に集計結果です。
| 国家試験 | 技術検定 | |
|---|---|---|
| 材料の独立問題 | なし | 問3(5年連続) |
| 記述数 | 0 | 25 |
note版の教材では、国試の問3を「高圧装置用材料」と書いていましたが、実データでは腐食でした。
腐食側は材料の劣化・腐食と防食、全体像は保安管理技術15問の攻略を参照してください。
誤りの作り方 ── 3つに集中
| 型 | 件数 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 用語の入れ替え | 5 | 焼なまし↔焼ならし、SUS316↔304L |
| ② 性質の入れ替え | 2 | 靭性↔硬さ、上昇↔低下 |
| ③ 適用の誤り | 1 | ねずみ鋳鉄が圧延できる |
逆に言えば、2組の用語を正確に押さえるだけで、誤りの6割が切れます。
最頻出① 焼なましと焼ならし ── 3回すり替えられた
| 熱処理 | 冷却方法 | 目的 |
|---|---|---|
| 焼なまし(焼鈍・アニーリング) | 炉冷(炉の中でゆっくり) | 軟化・内部応力の除去・加工性の回復 |
| 焼ならし(焼準・ノーマライジング) | 空冷(静かな大気中) | 結晶粒の微細化・炭化物の調整・内部応力の除去 |
| 焼入れ(クエンチング) | 急冷(水冷・油冷) | 硬化(マルテンサイト化) |
| 焼戻し(テンパリング) | 焼入れ後に再加熱 | 靭性の回復(硬さは少し下がる) |
出た誤り記述(令和3年度 検定 問3ハ)
焼なましは、オーステナイト域に加熱したのち静かな大気中で空冷する操作で、結晶粒の微細化、炭化物の調整、内部応力の除去を目的に行われる。
→ × これは焼ならしの説明。
令和4年度 検定 問3ニでは、まったく同じ文章が「焼ならし」として正しく出ています。
令和6年度 検定 問3ハでも同じ2語が入れ替えられました。 3年で3回。
焼なまし → ゆっくり冷ます → 炉冷 → やわらかくする
焼ならし → 組織を「ならす(均一にする)」→ 空冷 → 結晶粒を細かく
焼なましのほうが冷却が遅く、より軟らかくなると覚えてください。
なぜ焼戻しが必要か
焼入れ → マルテンサイトができる → 硬いが極めて脆い
残留応力も大きい → 割れる
→ 焼戻しで靭性を回復させる
ただしCr-Mo鋼には焼戻し脆化という問題があります(後述)。
最頻出② SUS316と304L ── 2回入れ替えられた
| 鋼種 | 改良点 | 何に強いか |
|---|---|---|
| SUS304 | 基本(18Cr-8Ni) | 汎用のオーステナイト系 |
| SUS316 | Mo添加+Ni増量 | 耐孔食性・耐酸性 |
| SUS304L | 低炭素化(C ≦ 0.03%) | 耐粒界腐食性 |
| SUS316L | Mo添加+低炭素化 | 両方 |
| SUS317 | Mo増量 | SUS316より耐孔食性が高い |
| SUS321・SUS347 | Ti・Nb添加(安定化) | 耐粒界腐食性 |
出た誤り記述(令和4年度 検定 問3ホ・令和5年度 検定 問3ホ)
耐酸性や耐孔食性を向上させたSUS304L、耐粒界腐食性を向上させたSUS316がある。
→ × 逆。耐孔食性はSUS316、耐粒界腐食性はSUS304L。
2年連続で同じすり替えです。 ここは確実に取ってください。
なぜ低炭素化で粒界腐食を防げるのか
溶接などで500〜800℃に加熱される
→ 炭素とクロムが結合してCr炭化物(Cr₂₃C₆)が粒界に析出
→ 粒界の周辺だけCrが欠乏する(Cr欠乏層)
→ その部分の不動態皮膜が作れなくなる
→ 粒界だけが腐食される(粒界腐食)
Ti・Nb はCrより炭素と結びつきやすい
→ 先にTiC・NbCを作ってしまう
→ Crが炭化物にならない
→ Cr欠乏層ができない
「炭素を減らす」か「炭素を先取りする」か。 どちらも同じ目的です。
ステンレス鋼の系統(令和2年度 検定 問3ハ・正しい記述)
| 系統 | 組織 | 磁性 | 代表鋼種 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| オーステナイト系 | 面心立方(FCC) | 非磁性 | SUS304・316 | 低温脆性を示さない/加工性良好 |
| フェライト系 | 体心立方(BCC) | 磁性あり | SUS430 | SCCに強い/安価 |
| マルテンサイト系 | 体心正方 | 磁性あり | SUS410 | 焼入れで硬化 |
| 二相系 | FCC+BCC | 磁性あり | SUS329 | 強度と耐SCC性を両立 |
面心立方は低温脆性を示さないので、極低温(液体窒素・LNG)にも使えます。
→ 金属材料の基礎
C量が変えるもの ── この分野の土台
上がる:引張強さ・降伏点・硬さ
下がる:伸び・絞り・靭性(吸収エネルギー)・溶接性
出た誤り記述(令和2年度 検定 問3ロ)
低合金鋼は、C量に比例して降伏点、引張強さおよび靭性が上昇する反面、伸びおよび硬さが低下する。
→ × 靭性と硬さが逆。硬さが上がり、靭性が下がる。
令和3年度 検定 問3ロでは正しい形で、令和6年度 検定 問3イでは全部逆にした形で出ています。
3年で3回。この分野の最重要論点です。
だから溶接構造用鋼はC量に上限がある
正しい記述(令和4年度 検定 問3ハ)
炭素鋼は溶接の急熱急冷により硬化し、さらに靭性が低下する傾向があり、その傾向は主に鋼中のC量に影響される。
溶接部は急速に加熱され、急速に冷える
→ 焼入れと同じ状態(マルテンサイト化)
→ 硬く脆い組織ができる
→ 低温割れのリスク
だから圧力容器用鋼板ではC量を0.2〜0.3%以下に規定しています。
予熱・後熱(PWHT)も、冷却速度を落として硬化を防ぐためです。
炭素鋼の分類
| 区分 | C量 | 用途 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | 0.02〜2% | ── |
| 軟鋼(低炭素鋼) | 0.18〜0.30% | 圧力容器・配管 |
| 硬鋼(高炭素鋼) | 0.50〜0.60% | 工具・ばね |
| 鋳鉄 | 2%超 | 鋳物 |
不純物:製鋼上入るSi・Mn、不純物としてのP・S(2回出題)。
PとSは有害です。Pは低温脆性を、Sは高温脆性(赤熱脆性)を招きます。
低合金鋼 ── 添加元素5%以下
正しい記述(R4検定問3イ・R6検定問3ニ:同一記述が2回)
低合金鋼は特別な性質を与える目的でCr、Mo、Ni、Cuなどの合金元素を添加した鋼で、添加元素の合計が5%以下である。
Cr-Mo鋼 ── 高温用の主力
正しい記述(令和3年度 検定 問3ニ)
Crを含有した鋼は高温強度が高く、耐酸化性が良好なため、Moと組み合わせて400℃〜650℃の温度範囲で用いられる。
Cr:耐酸化性(スケール生成の抑制)・耐水素侵食
Mo:高温強度(クリープ強度)
1Cr-0.5Mo、2.25Cr-1Mo といった鋼種が、加熱炉管や高温高圧の反応器に使われます。
焼戻し脆化 ── Cr-Mo鋼の弱点
400〜600℃に長時間保持される(または徐冷される)
→ P・Sn・Sb・As といった不純物が粒界に偏析
→ 常温での靭性が低下する
→ 起動・停止時の低温で脆性破壊のリスク
だから起動・停止時の昇温降温速度に制限があります。 「最低使用温度以上で加圧する」という運転規則の根拠。
対策は不純物元素(特にP)の低減です。J-factor、X-bar という指標で管理します。
低温用材料 ── 面心立方かどうか
正しい記述(令和2年度 検定 問3ホ)
低温用Ni鋼は、Niの添加量によって最低使用温度が異なる。また、オーステナイト系ステンレス鋼は極低温領域でも用いられる。
| 材料 | 最低使用温度の目安 | 結晶構造 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | −30℃程度まで | 体心立方(BCC) |
| 2.5%Ni鋼 | −60℃ | BCC |
| 3.5%Ni鋼 | −100℃ | BCC |
| 9%Ni鋼 | −196℃(LNG用) | BCC(組織制御) |
| オーステナイト系ステンレス鋼 | −269℃(液体ヘリウム) | 面心立方(FCC) |
| アルミニウム合金 | 極低温可 | FCC |
BCC:すべり系が温度で変わる → 低温で塑性変形できなくなる → 脆性破壊
FCC:すべり系が多く、温度に依存しにくい → 低温でも延性を保つ
だからLNGタンクの内槽は9%Ni鋼かオーステナイト系ステンレス鋼、アルミ合金です。
タイタニック号の船体が脆性破壊したのは、低温でのBCC鋼の脆化が一因とされています。
鋳鉄 ── 圧延できない
出た誤り記述(令和2年度 検定 問3ニ)
鋳鉄は融点が低く流動性が良好であるため鋳物が作りやすく、ねずみ鋳鉄は鋼と同様に圧延などの加工もできる。
→ × 脆いため塑性加工はできない。
ねずみ鋳鉄には片状黒鉛が分散している
→ 黒鉛の先端が切り欠き(応力集中源)になる
→ 引張るとそこから割れる
| 鋳鉄 | 黒鉛の形 | 特徴 |
|---|---|---|
| ねずみ鋳鉄 | 片状 | 脆い/振動吸収性が高い/安価 |
| ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄) | 球状 | 延性がある/強度が高い |
黒鉛を球状にすると切り欠き効果が減るので、延性が出ます。
高圧ガス設備では鋳鉄の使用が制限されています。 脆性破壊のリスクが高いためです。
この分野の対策
- 焼なまし(炉冷)と焼ならし(空冷)を正確に(3回すり替えられた)
- Mo=耐孔食(316)/低炭素・Ti・Nb=耐粒界腐食(304L・321・347)(2回すり替えられた)
- C量が増えると硬く強く、脆く(3回出た)
- 面心立方は低温脆性を示さない
よくある失点
| 失点 | 対策 |
|---|---|
| 焼なましと焼ならしを取り違える | 「ま」は炉冷でやわらかく、「ら」は空冷でならす |
| SUS316と304Lを逆にする | Mo=孔食、低C=粒界 |
| 靭性と硬さを逆にする | C量↑で硬く・脆く |
| 低合金鋼の定義(5%)を忘れる | 添加元素の合計5%以下 |
| ねずみ鋳鉄が加工できると思う | 片状黒鉛が割れの起点 |
暗記カードにするならこれだけ
焼なまし=炉冷=軟化
焼ならし=空冷=結晶粒の微細化
焼入れ=急冷=硬化(マルテンサイト)/焼戻し=再加熱=靭性回復
冷却速度:焼入れ > 焼ならし > 焼なまし
SUS316 = Mo添加 = 耐孔食・耐酸性
SUS304L = 低炭素化 = 耐粒界腐食
SUS321・347 = Ti・Nb添加 = 耐粒界腐食
オーステナイト系=面心立方=非磁性=低温脆性なし
上がる:引張強さ・降伏点・硬さ
下がる:伸び・絞り・靭性・溶接性
炭素鋼=0.02〜2%/鋳鉄=2%超
低合金鋼=添加元素の合計5%以下
Cr-Mo鋼=400〜650℃(Cr=耐酸化性、Mo=高温強度)
焼戻し脆化=400〜600℃で不純物が粒界偏析
9%Ni鋼=−196℃(LNG用)
ねずみ鋳鉄は圧延できない(片状黒鉛)
まとめ
- この分野は技術検定にしか出ない(問3が5年連続)
- 誤り8つのうち5つが用語の入れ替え
- 焼なまし(炉冷)と焼ならし(空冷)が3回すり替えられた
- SUS316(Mo=耐孔食)と304L(低C=耐粒界腐食)が2回すり替えられた
- C量が増えると硬く強くなり、脆くなる(3回出題)
- 面心立方(オーステナイト系)は低温脆性を示さない
- 低合金鋼は添加元素5%以下
- ねずみ鋳鉄は片状黒鉛のため塑性加工できない
次は材料の劣化・腐食と防食です。国試・検定の両方で出ます。→ 腐食と防食の出題
材料の基礎は金属材料の基礎、ステンレス鋼の選定はステンレス鋼の選び方で扱っています。
保安管理技術の全体像は保安管理技術15問の攻略へ。
出典:高圧ガス保安協会『甲種化学・機械 試験問題集 令和7年度版』甲種化学編。集計は令和2〜6年度の国家試験5回・技術検定5回、計150問671記述を筆者が1記述ずつ分解して独自に行ったものです。設問の要約と解説にとどめ、問題文そのものの転載は行っていません。
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