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COPが1を超えるのが、いまだに腑に落ちない。
設定温度を1℃下げると電気代がどれだけ変わるのか、根拠を持って説明したい。
そんな悩みを解決します。
COPは効率ではない。作った熱ではなく「運んだ熱」の比
上限は COP = T_L/(T_H − T_L)。温度差が小さいほど大きい
膨張弁で仕事を捨てている理由と、その代償
冷凍トン・冷凍能力・冷媒の選び方

冷凍設備の省エネ検討、能力不足の原因究明、冷媒の選定。判断の軸はすべてここにあります。
現場で、冷凍サイクルはどこにあるか
| 設備 | 何を冷やしているか |
|---|---|
| チラー | プロセス冷却水(7〜15℃) |
| 冷凍機(アンモニア・フロン) | 低温プロセス(−10〜−40℃) |
| 冷凍倉庫 | 製品保管(−20〜−25℃) |
| ガス液化装置 | 深冷分離(−100℃以下) |
| 空調 | 計器室・電気室 |
| ヒートポンプ | 逆に加熱側を使う |
冷凍設備は電力消費の大きい部分です。COPを1上げれば、そのまま運転費が下がります。
蒸気圧縮式冷凍サイクル ── 4つの機器
① 圧縮機:低温低圧の冷媒蒸気を圧縮(動力を入れる)
② 凝縮器:高温高圧のまま放熱して液化(Q_H を捨てる)
③ 膨張弁:減圧して低温にする(等エンタルピー)
④ 蒸発器:低温低圧で吸熱して気化(Q_L を汲み上げる)
冷やす仕事をしているのは蒸発器です。ここで冷媒が蒸発するときの潜熱で熱を奪います。
なぜ圧縮するのか
低温側から熱をもらった冷媒は、まだ低温
そのままでは外気に熱を捨てられない(熱は高温→低温にしか流れない)
→ 圧縮して温度を上げてから捨てる
エネルギー収支
Q_H = Q_L + W
汲み上げた熱 + 入れた仕事 = 捨てる熱
COP ── 効率ではなく「運搬効率」
冷凍機:COP = Q_L / W(汲み上げた熱 ÷ 入れた仕事)
ヒートポンプ:COP = Q_H / W(捨てた熱 ÷ 入れた仕事)
COP_HP = COP_冷凍 + 1
なぜ1を超えるのか
熱を「作って」いないからです。
| 電気ヒーター | ヒートポンプ | |
|---|---|---|
| やっていること | 電気を熱に変える | 熱を運ぶ |
| 1 kWの電力で | 1 kWの熱 | 3〜5 kWの熱 |
| 指標 | 効率(≦1) | COP(>1) |
だから「効率」という言葉を使わないのです。成績係数(Coefficient of Performance)と呼びます。
上限は逆カルノーで決まる
冷凍機:COP_max = T_L / (T_H − T_L)
ヒートポンプ:COP_max = T_H / (T_H − T_L)
絶対温度で計算する
数値で確かめる
例1:温度差とCOPの関係
| 用途 | T_L | T_H | 温度差 | COP_max | 実機の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| チラー | 7℃(280 K) | 35℃(308 K) | 28 K | 10.0 | 4〜5 |
| 冷凍 | −10℃(263 K) | 35℃(308 K) | 45 K | 5.8 | 2.5〜3 |
| 低温冷凍 | −40℃(233 K) | 35℃(308 K) | 75 K | 3.1 | 1.3〜1.6 |
| 超低温 | −80℃(193 K) | 35℃(308 K) | 115 K | 1.7 | 0.7前後 |
実機はカルノーの4〜5割程度。膨張弁の損失、圧縮機の断熱効率、熱交換の温度差で落ちます。
例2:設定温度を変えると電気代はどう変わるか
チラーの出口を 7℃ から 12℃ に上げられるとしたら、消費電力はどれだけ減るか。
(凝縮温度35℃、実機COPはカルノーの45%とする)
〔解答〕
7℃:COP_max = 280 / 28 = 10.0 → 実機 4.5
12℃:COP_max = 285 / 23 = 12.4 → 実機 5.6
同じ冷却熱量なら消費電力は 4.5/5.6 = 0.80
→ 約20%削減
「念のため低めに設定」が、そのまま電気代になります。 プロセスが本当に必要な温度を確認してください。
例3:凝縮温度を下げる効果
同じチラー(出口7℃)で、凝縮温度を 40℃ から 32℃ に下げられたら?
〔解答〕
40℃:COP_max = 280 / 33 = 8.5
32℃:COP_max = 280 / 25 = 11.2
→ 約24%の消費電力削減
凝縮器の汚れ、冷却水温度、送風機の性能低下は、すべて凝縮温度を上げます。
例4:冷凍トンと冷凍能力
1日本冷凍トン(JRT)= 3.86 kW
(0℃の水1トンを24時間で0℃の氷にする能力)
1米国冷凍トン(USRT)= 3.52 kW
法令上の「冷凍能力」は、日本冷凍トンで計算します。
| 1日の冷凍能力 | 区分 |
|---|---|
| 50トン以上 | 第一種製造者(許可) |
| 20トン以上50トン未満 | 第二種製造者(届出) |
| 3トン以上20トン未満 | その他(一部の規制のみ) |
→ 製造の許可と届出
膨張弁 ── なぜ仕事を捨てるのか
理論的には、膨張タービンで仕事を回収できます。 なのに実際は膨張弁を使う。
| 膨張弁 | 膨張タービン | |
|---|---|---|
| 過程 | 等エンタルピー(ΔH=0) | 等エントロピーに近い |
| 仕事の回収 | なし | あり |
| 温度低下 | 小さい | 大きい |
| 二相流 | 問題なし | 羽根が壊れる |
| 構造 | 単純・安価 | 複雑・高価 |
| 制御 | 容易(過熱度制御) | 難しい |
だから小型の冷凍機では膨張弁が標準です。回収できる仕事より、設備費と信頼性のほうが重要。
大型の空気分離装置では膨張タービンを使います。 規模が大きければ回収が経済的に見合う。
膨張弁でも温度が下がる理由
ジュール・トムソン効果と、一部の液が蒸発する潜熱の両方です。
高圧の液冷媒が減圧される
→ 飽和温度が下がる → 一部が蒸発(フラッシュ)
→ その潜熱で残りの液が冷える
フラッシュした分は冷却に寄与しません。 これが膨張弁の損失です。
冷媒の選び方 ── 何を見るか
| 観点 | 何が重要か |
|---|---|
| 使用温度域 | その温度で適度な蒸気圧になるか |
| 蒸発潜熱 | 大きいほど冷媒循環量が少なくて済む |
| 臨界温度 | 凝縮温度より十分高いこと |
| 安全性 | 可燃性・毒性 |
| 環境性 | ODP(オゾン層破壊)・GWP(温暖化) |
| 材料適合性 | 銅・アルミ・シール材との相性 |
主な冷媒の比較
| 冷媒 | 蒸発潜熱 [kJ/kg] | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| アンモニア(R717) | 1,370 | 潜熱が極めて大きい/GWP=0/安価 | 可燃性かつ毒性/銅を腐食 |
| CO₂(R744) | 約230 | GWP=1/不燃・無毒 | 臨界温度31℃(超臨界運転) |
| フルオロカーボン (R404A等) | 150〜200 | 扱いやすい | GWPが高い/規制強化 |
| プロパン(R290) | 約425 | GWP小/性能良好 | 可燃性 |
| 水(R718) | 2,260 | 安全・安価 | 0℃以下で使えない/真空運転 |
だから大型の産業用冷凍はアンモニアが主流です。毒性と可燃性を管理できる工場なら、性能と経済性で圧倒的に有利。
アンモニアは銅を腐食します。 配管は鋼を使う。フロン用の銅配管をそのまま流用すると事故になります。
CO₂の臨界温度31℃という制約
外気35℃で運転すると、凝縮側が臨界温度を超えます。
この場合は超臨界サイクル(トランスクリティカル)になり、通常の凝縮が起きません。
実務での失敗例
失敗例①:能力不足の原因を圧縮機だけに求める
| 症状 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 蒸発温度が上がらない | 冷媒不足/膨張弁の開度不足/蒸発器の汚れ |
| 凝縮圧力が高い | 凝縮器の汚れ/冷却水不足/不凝縮ガスの混入 |
| 吸込圧力が低い | 冷媒不足/フィルタドライヤの詰まり |
| 過熱度が大きい | 冷媒不足/膨張弁の詰まり |
飽和圧力より実際の圧力が高いなら、不凝縮ガスを疑ってください。パージで戻ります。
失敗例②:低温側を必要以上に下げる
前述のとおり、5℃で20%変わります。
プロセスは10℃で足りる
→ 「余裕を見て」7℃設定
→ 熱交換器の温度差も見て、蒸発温度は2℃
→ 本来より8℃低い温度で運転している
余裕は必要ですが、その代償を認識してください。
失敗例③:ヒートポンプのCOPを冷凍機と同じにする
COP_HP = COP_冷凍 + 1 です。
加熱用途でカタログのCOPを見るとき、どちらの定義かを確認してください。
失敗例④:部分負荷でのCOPを見ない
多くの冷凍機は定格点で最も効率が良い
部分負荷ではCOPが下がる(オンオフ制御なら特に)
インバータ機は部分負荷でCOPが上がることがある
複数台に分割して台数制御するのが、実務での標準的な対処です。
甲種化学ではこう出ます
学識の型5にあたります。R6国試問2で逆カルノーサイクルのT-S線図が出ました。
COP = T_L/(T_H − T_L)(絶対温度)
COP_HP = COP_冷凍 + 1
COPは1を超える(熱効率と別物)
膨張弁は等エンタルピー
法令では、冷凍能力による第一種・第二種の区分が出ます。
| 冷凍以外の製造 | 冷凍 | |
|---|---|---|
| 第一種製造者 | 処理能力100 m³/日以上 | 冷凍能力50トン以上 |
| 第二種製造者 | 同上未満 | 20トン以上50トン未満 |
学識の解説は学識・型5|圧縮機動力と冷凍サイクル、法令は製造の許可と届出を参照してください。
まとめ
- COPは効率ではない。熱を作るのではなく運んでいるから1を超える
- COP_max = T_L/(T_H − T_L)(絶対温度)
- 温度差が小さいほどCOPは大きい。−80℃ではCOPが1を割る
- 実機はカルノーの4〜5割
- 設定温度を5℃上げれば約20%省エネ
- 凝縮温度を8℃下げれば約24%省エネ
- 膨張弁は二相流に耐えるために仕事を捨てている
- アンモニアの潜熱はフロンの7倍以上。ただし銅を腐食する
- CO₂は臨界温度31℃。夏場は超臨界運転になる
- 凝縮圧力が高いときは不凝縮ガスの混入も疑う
- 法令では冷凍能力50トン以上が第一種製造者
圧縮機そのものは圧縮機の理論動力、エントロピーとカルノーはエントロピーとカルノーサイクルへ。
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