動画解説はこちら|YouTube

比熱・マイヤーの関係・比熱比γ|CpとCvはなぜRだけ違うのか

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

困っている人
困っている人

Cp と Cv、どちらを使えばいいのか毎回迷う。

比熱比γの値が、ガスによって1.4だったり1.67だったりする理由が分からない。

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

Cp − Cv = R ── 差が R になる理由は「膨張仕事」

γ は分子の形で決まる(単原子1.67/二原子1.40)

熱交換器の設計で使うのはCp、密閉容器の加熱はCv

混合ガスはモル分率で加重平均。ただし γ は加重平均できない

熱交換器の熱量計算、圧縮機の吐出温度、断熱膨張の温度低下。すべてこの値が入ります。

現場で、比熱はどこに出てくるか

場面使う量
熱交換器の熱量計算CpQ = mCpΔT
加熱器・冷却器の能力Cp同上
密閉容器の加熱CvQ = nCvΔT
圧縮機の吐出温度γ = Cp/CvT₂ = T₁(p₂/p₁)^((γ−1)/γ)
安全弁の口径計算γ臨界流の判定と流量係数
断熱火炎温度CpT = T₀ + Qc/Σ(nCp)
音速γa = √(γRT/M)

プラントの流れはほぼ定圧なので、実務では Cp を使う場面が圧倒的に多い。

Cv を使うのは密閉容器を加熱するときだけと覚えておいて、ほぼ間違いありません。

定義と、Cp > Cv になる理由

定義

Cv = (∂U/∂T)_V 体積一定で1 K上げるのに必要な熱

Cp = (∂H/∂T)_p 圧力一定で1 K上げるのに必要な熱

なぜ Cp のほうが大きいのか

定容で加熱すると

体積が変わらない → 外に仕事をしない

→ 加えた熱がすべて内部エネルギー(=温度上昇)になる

定圧で加熱すると

気体が膨張して外に仕事をする

→ 加えた熱の一部が仕事に使われる

同じ温度上昇に、より多くの熱が要る

差はちょうど膨張仕事の分です。そしてそれが R になります。

差が R になることの導出

1 mol の理想気体を定圧で1 K 上げる

膨張仕事 W = pΔV

pV = RT より、pΔV = RΔT = R × 1 = R

Cp = Cv + R

マイヤーの関係と呼びます。

マイヤーの関係

Cp − Cv = R(理想気体、モル熱容量)

γ = Cp / Cv(比熱比)

R = 8.314 J/(mol·K)。この値がそのまま差になります。

実在気体では厳密には成り立ちませんが、常温常圧付近では十分な近似です。

液体・固体では体積変化が小さいので、Cp ≒ Cv になります。だから液体の比熱は1つの値しか書かれていない。

比熱比γは分子の形で決まる

エネルギーを蓄えられる「自由度」の数で決まります。

エネルギー等分配則

1つの自由度あたり (1/2)R のモル熱容量を持つ

Cv = (f/2) R(f:自由度の数)

分子自由度 f内訳CvCpγ
単原子
He・Ar・Ne
3並進のみ(3/2)R
=12.5
(5/2)R
=20.8
1.67
二原子
N₂・O₂・H₂・空気
5並進3+回転2(5/2)R
=20.8
(7/2)R
=29.1
1.40
多原子(直線)
CO₂
5〜7並進3+回転2+振動約28約371.30
多原子(非直線)
CH₄・NH₃・H₂O
6以上並進3+回転3+振動約27〜33約35〜421.30前後

なぜ二原子分子は回転が2つなのか

結合軸まわりの回転は、エネルギーを持てないからです(原子が軸上にあるので慣性モーメントがほぼゼロ)。

非直線の多原子分子は3方向すべてに回転できます。 だから自由度が1つ多い。

γ が小さいほど、分子が複雑ということです。実務では γ の値からガスの種類が推測できます。

温度が上がると γ は小さくなる

高温では振動の自由度が効いてくるからです。

空気の γ温度
1.40常温
1.38300℃
1.35600℃
1.301,200℃

圧縮機の吐出温度計算では常温の値(1.40)で十分ですが、燃焼ガスを扱うときは注意が必要です。

数値で確かめる

例1:熱交換器の熱量 ── Cp を使う

空気 1,000 Nm³/h を 20℃ から 150℃ まで加熱する。必要な熱量は?
(空気の Cp = 29.1 J/(mol·K)、Nm³ は0℃・1気圧)

〔解答〕

1 Nm³ = 1,000 / 22.4 = 44.6 mol

1,000 Nm³/h = 44,600 mol/h = 12.4 mol/s

Q = nCpΔT = 12.4 × 29.1 × 130

 = 46,900 W = 約47 kW

ここで Cv(20.8)を使うと 33 kWになり、能力不足の設計になります。

例2:密閉容器の加熱 ── Cv を使う

内容積 5 m³ の密閉容器に窒素が 1.0 MPaA・20℃ で入っている。
100℃まで加熱するのに必要な熱量と、到達圧力は?

〔解答〕

n = pV/(RT) = 1.0×10⁶ × 5 / (8.314 × 293.15) = 2,052 mol

Q = nCvΔT = 2,052 × 20.8 × 80 = 3.41×10⁶ J = 3.41 MJ

圧力:定容なので p/T = 一定

p₂ = 1.0 × 373.15 / 293.15 = 1.27 MPaA

W = 0 なので、加えた熱がすべて内部エネルギーになります。 だから Cv。

熱力学第一法則と4つの状態変化

例3:混合ガスの熱容量

モル分率で加重平均

Cp,mix = Σ(yᵢ Cp,ᵢ)

Cv,mix = Σ(yᵢ Cv,ᵢ)

ヘリウム40 mol%、酸素60 mol% の混合ガスの Cv と γ は?

〔解答〕

Cv,mix = 0.40 × 12.5 + 0.60 × 20.8 = 5.0 + 12.5 = 17.5 J/(mol·K)

Cp,mix = Cv,mix + R = 17.5 + 8.31 = 25.8 J/(mol·K)

γ_mix = 25.8 / 17.5 = 1.47

γ をそのまま加重平均すると 0.40×1.67 + 0.60×1.40 = 1.51 となり、間違いです。

比の量は加重平均できません。 Cp と Cv をそれぞれ平均してから割ります。

例4:γ から音速を出す

音速

a = √(γRT/M)(M:モル質量 kg/mol)

20℃の空気(γ=1.40、M=0.029 kg/mol)の音速は?

〔解答〕

a = √(1.40 × 8.314 × 293.15 / 0.029)

 = √(3,412 / 0.029) = √117,700 = 343 m/s

音速は安全弁の設計で使います。 出口が音速に達すると(臨界流)、下流の圧力を下げても流量は増えません。

安全弁の口径計算

水素の音速は約1,300 m/s(M が小さいから)。同じ配管でも流速の感覚がまったく違います。

実務での使いどころと、失敗例

使いどころ:比熱の温度依存を無視してよいか

Cp は温度で変わります。 実務では平均値を使うか、多項式で表現します。

よく使われる形

Cp = a + bT + cT² + dT³

係数は物性データ集(JSME、Perry’s など)から引く

温度範囲扱い
ΔT < 100 K平均温度での値を使えば十分(誤差数%)
ΔT = 100〜300 K始点と終点の平均を取る
ΔT > 300 K積分するか、区間分割する

燃焼計算では必ず温度依存を考慮します。 常温から2,000℃まで上がるので、常温の Cp を使うと大きく外れます。

断熱火炎温度の計算

失敗例①:熱交換器で Cv を使ってしまう

能力が3割不足します(空気の場合)。

見分け方

流れているなら Cp(開いた系、定圧)

閉じ込めているなら Cv(閉じた系、定容)

プラントの配管系はほぼすべて定圧です。迷ったら Cp。

失敗例②:質量基準と物質量基準を混ぜる

表記単位空気の値
モル熱容量 CpJ/(mol·K)29.1
比熱 cpJ/(kg·K)1,005
比熱 cpkJ/(kg·K)1.005
換算

cp[J/(kg·K)] = Cp[J/(mol·K)] / M[kg/mol]

空気なら 29.1 / 0.029 = 1,005 J/(kg·K)

「比熱」という言葉は、質量基準を指すのが一般的です。モル基準は「モル熱容量」と呼び分けます。

文献の単位を必ず確認してください。 35倍違います(空気の場合)。

失敗例③:混合ガスの γ を加重平均する

前述のとおり、比の量は加重平均できません。

安全弁の口径計算で γ を使うため、混合ガスでは注意が必要です。

正しい手順

① Cv,mix = Σ(yᵢ Cv,ᵢ)

② Cp,mix = Cv,mix + R

γ_mix = Cp,mix / Cv,mix

水と比べると、気体の比熱がいかに小さいか

物質比熱[kJ/(kg·K)]
4.18
空気1.005
水素14.3
炭素鋼0.46
油(熱媒油)2.0前後

水素の比熱は水の3倍以上です。モル熱容量は空気と同じ(二原子分子)なのに、分子量が小さいから。

だから水素は冷却媒体として優秀です。大型発電機の冷却に水素が使われるのはこの理由です。

甲種化学ではこう出ます

学識では型4(熱力学の状態変化)型1(混合気体)の中で使われます。

年度・問内容
R5 国試 問1ヘリウム-酸素混合気の定容モル熱容量
R6 検定 問6(1)モル熱容量とマイヤーの関係(記述)

記述で「CpとCvはなぜRだけ違うか」がそのまま出ています。

答案の骨組み

定容で加熱する場合、気体は体積が変わらないため外部に仕事をしない。したがって加えた熱はすべて内部エネルギーの増加に使われる。

一方、定圧で加熱する場合は気体が膨張して外部に仕事をするため、同じ温度上昇を得るのにその分だけ多くの熱が必要になる。

1 mol の理想気体を1 K上昇させるときの膨張仕事は pΔV = RΔT = R であるから、Cp − Cv = R が成り立つ。これをマイヤーの関係という。

解き方と過去問は学識・型4|熱力学の状態変化学識・型1|理想気体と混合気体、記述対策は学識 問6の記述問題へ。

まとめ

  • Cp − Cv = R(マイヤーの関係)。差は膨張仕事の分
  • γ = Cp/Cv。単原子1.67/二原子1.40/多原子1.30前後
  • γ は自由度の数で決まる(Cv = (f/2)R)
  • 流れているなら Cp、閉じ込めているなら Cv
  • プラントの配管系はほぼ定圧。迷ったら Cp
  • 混合ガスは Cp と Cv を加重平均γ は加重平均できない
  • モル熱容量と比熱(質量基準)を混ぜない(空気で35倍違う)
  • ΔT が300 K を超えるなら温度依存を考慮する
  • 水素の比熱は水の3倍以上(冷却媒体として優秀)

状態変化での使い方は熱力学第一法則と4つの状態変化、圧縮機への応用は圧縮機の理論動力、燃焼への応用は断熱火炎温度の計算へ。