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Cp と Cv、どちらを使えばいいのか毎回迷う。
比熱比γの値が、ガスによって1.4だったり1.67だったりする理由が分からない。
そんな悩みを解決します。
Cp − Cv = R ── 差が R になる理由は「膨張仕事」
γ は分子の形で決まる(単原子1.67/二原子1.40)
熱交換器の設計で使うのはCp、密閉容器の加熱はCv
混合ガスはモル分率で加重平均。ただし γ は加重平均できない

熱交換器の熱量計算、圧縮機の吐出温度、断熱膨張の温度低下。すべてこの値が入ります。
現場で、比熱はどこに出てくるか
| 場面 | 使う量 | 式 |
|---|---|---|
| 熱交換器の熱量計算 | Cp | Q = mCpΔT |
| 加熱器・冷却器の能力 | Cp | 同上 |
| 密閉容器の加熱 | Cv | Q = nCvΔT |
| 圧縮機の吐出温度 | γ = Cp/Cv | T₂ = T₁(p₂/p₁)^((γ−1)/γ) |
| 安全弁の口径計算 | γ | 臨界流の判定と流量係数 |
| 断熱火炎温度 | Cp | T = T₀ + Qc/Σ(nCp) |
| 音速 | γ | a = √(γRT/M) |
Cv を使うのは密閉容器を加熱するときだけと覚えておいて、ほぼ間違いありません。
定義と、Cp > Cv になる理由
Cv = (∂U/∂T)_V 体積一定で1 K上げるのに必要な熱
Cp = (∂H/∂T)_p 圧力一定で1 K上げるのに必要な熱
なぜ Cp のほうが大きいのか
体積が変わらない → 外に仕事をしない
→ 加えた熱がすべて内部エネルギー(=温度上昇)になる
気体が膨張して外に仕事をする
→ 加えた熱の一部が仕事に使われる
→ 同じ温度上昇に、より多くの熱が要る
差が R になることの導出
膨張仕事 W = pΔV
pV = RT より、pΔV = RΔT = R × 1 = R
→ Cp = Cv + R
マイヤーの関係と呼びます。
Cp − Cv = R(理想気体、モル熱容量)
γ = Cp / Cv(比熱比)
実在気体では厳密には成り立ちませんが、常温常圧付近では十分な近似です。
液体・固体では体積変化が小さいので、Cp ≒ Cv になります。だから液体の比熱は1つの値しか書かれていない。
比熱比γは分子の形で決まる
エネルギーを蓄えられる「自由度」の数で決まります。
1つの自由度あたり (1/2)R のモル熱容量を持つ
Cv = (f/2) R(f:自由度の数)
| 分子 | 自由度 f | 内訳 | Cv | Cp | γ |
|---|---|---|---|---|---|
| 単原子 He・Ar・Ne | 3 | 並進のみ | (3/2)R =12.5 | (5/2)R =20.8 | 1.67 |
| 二原子 N₂・O₂・H₂・空気 | 5 | 並進3+回転2 | (5/2)R =20.8 | (7/2)R =29.1 | 1.40 |
| 多原子(直線) CO₂ | 5〜7 | 並進3+回転2+振動 | 約28 | 約37 | 1.30 |
| 多原子(非直線) CH₄・NH₃・H₂O | 6以上 | 並進3+回転3+振動 | 約27〜33 | 約35〜42 | 1.30前後 |
なぜ二原子分子は回転が2つなのか
結合軸まわりの回転は、エネルギーを持てないからです(原子が軸上にあるので慣性モーメントがほぼゼロ)。
非直線の多原子分子は3方向すべてに回転できます。 だから自由度が1つ多い。
温度が上がると γ は小さくなる
高温では振動の自由度が効いてくるからです。
| 空気の γ | 温度 |
|---|---|
| 1.40 | 常温 |
| 1.38 | 300℃ |
| 1.35 | 600℃ |
| 1.30 | 1,200℃ |
圧縮機の吐出温度計算では常温の値(1.40)で十分ですが、燃焼ガスを扱うときは注意が必要です。
数値で確かめる
例1:熱交換器の熱量 ── Cp を使う
空気 1,000 Nm³/h を 20℃ から 150℃ まで加熱する。必要な熱量は?
(空気の Cp = 29.1 J/(mol·K)、Nm³ は0℃・1気圧)
〔解答〕
1 Nm³ = 1,000 / 22.4 = 44.6 mol
1,000 Nm³/h = 44,600 mol/h = 12.4 mol/s
Q = nCpΔT = 12.4 × 29.1 × 130
= 46,900 W = 約47 kW
例2:密閉容器の加熱 ── Cv を使う
内容積 5 m³ の密閉容器に窒素が 1.0 MPaA・20℃ で入っている。
100℃まで加熱するのに必要な熱量と、到達圧力は?
〔解答〕
n = pV/(RT) = 1.0×10⁶ × 5 / (8.314 × 293.15) = 2,052 mol
Q = nCvΔT = 2,052 × 20.8 × 80 = 3.41×10⁶ J = 3.41 MJ
圧力:定容なので p/T = 一定
p₂ = 1.0 × 373.15 / 293.15 = 1.27 MPaA
W = 0 なので、加えた熱がすべて内部エネルギーになります。 だから Cv。
例3:混合ガスの熱容量
Cp,mix = Σ(yᵢ Cp,ᵢ)
Cv,mix = Σ(yᵢ Cv,ᵢ)
ヘリウム40 mol%、酸素60 mol% の混合ガスの Cv と γ は?
〔解答〕
Cv,mix = 0.40 × 12.5 + 0.60 × 20.8 = 5.0 + 12.5 = 17.5 J/(mol·K)
Cp,mix = Cv,mix + R = 17.5 + 8.31 = 25.8 J/(mol·K)
γ_mix = 25.8 / 17.5 = 1.47
比の量は加重平均できません。 Cp と Cv をそれぞれ平均してから割ります。
例4:γ から音速を出す
a = √(γRT/M)(M:モル質量 kg/mol)
20℃の空気(γ=1.40、M=0.029 kg/mol)の音速は?
〔解答〕
a = √(1.40 × 8.314 × 293.15 / 0.029)
= √(3,412 / 0.029) = √117,700 = 343 m/s
音速は安全弁の設計で使います。 出口が音速に達すると(臨界流)、下流の圧力を下げても流量は増えません。
→ 安全弁の口径計算
実務での使いどころと、失敗例
使いどころ:比熱の温度依存を無視してよいか
Cp は温度で変わります。 実務では平均値を使うか、多項式で表現します。
Cp = a + bT + cT² + dT³
係数は物性データ集(JSME、Perry’s など)から引く
| 温度範囲 | 扱い |
|---|---|
| ΔT < 100 K | 平均温度での値を使えば十分(誤差数%) |
| ΔT = 100〜300 K | 始点と終点の平均を取る |
| ΔT > 300 K | 積分するか、区間分割する |
失敗例①:熱交換器で Cv を使ってしまう
能力が3割不足します(空気の場合)。
流れているなら Cp(開いた系、定圧)
閉じ込めているなら Cv(閉じた系、定容)
プラントの配管系はほぼすべて定圧です。迷ったら Cp。
失敗例②:質量基準と物質量基準を混ぜる
| 表記 | 単位 | 空気の値 |
|---|---|---|
| モル熱容量 Cp | J/(mol·K) | 29.1 |
| 比熱 cp | J/(kg·K) | 1,005 |
| 比熱 cp | kJ/(kg·K) | 1.005 |
cp[J/(kg·K)] = Cp[J/(mol·K)] / M[kg/mol]
空気なら 29.1 / 0.029 = 1,005 J/(kg·K)
文献の単位を必ず確認してください。 35倍違います(空気の場合)。
失敗例③:混合ガスの γ を加重平均する
前述のとおり、比の量は加重平均できません。
安全弁の口径計算で γ を使うため、混合ガスでは注意が必要です。
① Cv,mix = Σ(yᵢ Cv,ᵢ)
② Cp,mix = Cv,mix + R
③ γ_mix = Cp,mix / Cv,mix
水と比べると、気体の比熱がいかに小さいか
| 物質 | 比熱[kJ/(kg·K)] |
|---|---|
| 水 | 4.18 |
| 空気 | 1.005 |
| 水素 | 14.3 |
| 炭素鋼 | 0.46 |
| 油(熱媒油) | 2.0前後 |
だから水素は冷却媒体として優秀です。大型発電機の冷却に水素が使われるのはこの理由です。
甲種化学ではこう出ます
学識では型4(熱力学の状態変化)と型1(混合気体)の中で使われます。
| 年度・問 | 内容 |
|---|---|
| R5 国試 問1 | ヘリウム-酸素混合気の定容モル熱容量 |
| R6 検定 問6(1) | モル熱容量とマイヤーの関係(記述) |
答案の骨組み
定容で加熱する場合、気体は体積が変わらないため外部に仕事をしない。したがって加えた熱はすべて内部エネルギーの増加に使われる。
一方、定圧で加熱する場合は気体が膨張して外部に仕事をするため、同じ温度上昇を得るのにその分だけ多くの熱が必要になる。
1 mol の理想気体を1 K上昇させるときの膨張仕事は pΔV = RΔT = R であるから、Cp − Cv = R が成り立つ。これをマイヤーの関係という。
解き方と過去問は学識・型4|熱力学の状態変化・学識・型1|理想気体と混合気体、記述対策は学識 問6の記述問題へ。
まとめ
- Cp − Cv = R(マイヤーの関係)。差は膨張仕事の分
- γ = Cp/Cv。単原子1.67/二原子1.40/多原子1.30前後
- γ は自由度の数で決まる(Cv = (f/2)R)
- 流れているなら Cp、閉じ込めているなら Cv
- プラントの配管系はほぼ定圧。迷ったら Cp
- 混合ガスは Cp と Cv を加重平均。γ は加重平均できない
- モル熱容量と比熱(質量基準)を混ぜない(空気で35倍違う)
- ΔT が300 K を超えるなら温度依存を考慮する
- 水素の比熱は水の3倍以上(冷却媒体として優秀)
状態変化での使い方は熱力学第一法則と4つの状態変化、圧縮機への応用は圧縮機の理論動力、燃焼への応用は断熱火炎温度の計算へ。
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