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冬の木枯らしで電線がヒューヒューと鳴るのは、電線の後ろに空気の渦が交互に発生するからです。この渦をカルマン渦と呼び、発生する周波数は流速に比例します。渦流量計は、配管の中に柱状の物体(渦発生体)を置き、下流にできる渦を数えて流量を求めます。
可動部がなく、液体・気体・蒸気を1つの検出器で測れ、400℃の過熱蒸気にも使える。一方で、流量がある値以下に下がると信号が突然消える、配管の振動を拾う、という癖があります。
この記事では、原理と計算例、長所、5つの短所、蒸気に強い理由、そしてメーカーの技術者が経験した「バルブを絞ると流量が増える」「真夏に信号が消える」といった不思議なトラブルの正体を説明します。
この記事の結論
- 渦の周波数 f は f = St × v ÷ d(St はストローハル数、v は流速、d は渦発生体の幅)。密度や粘度に関係なく、流速だけで決まる
- 精度は指示値の 1% 程度、流量範囲は液体で 10:1〜15:1。出力が周波数なのでゼロ点変動がない
- 低流量で信号が突然消える。渦が規則正しく発生しなくなるためで、故障ではない。システム設計で対処する
- 直管部は 上流 10D、下流 5D 程度。配管振動と脈動流に弱い。往復動ポンプのすぐ下流には置かない
- 蒸気に強い。オリフィスのように導圧管に凝縮水を満たす必要がなく、季節で流量が大きく変わる蒸気配管に向く
- 渦発生体のエッジが磨耗すると精度が落ちる。研磨性スラリーでは要注意
1. 原理|渦の周波数は流速に比例する
流れの中に柱状の物体を置くと、その両側から交互に渦が剥離し、下流に規則正しい渦列ができます。この現象を理論的に解明した研究者の名にちなんで、カルマン渦と呼びます。


渦の発生周波数 f は、流速 v と渦発生体の幅 d で決まります。
f = St × v ÷ d
St はストローハル数という無次元の定数で、渦発生体の形状と寸法で決まります。計装の教科書は、台形断面の渦発生体では広いレイノルズ数の範囲で St がほぼ 0.19 で一定になる図を示しています。St が一定なら、渦の周波数は流速だけに比例し、流体の密度や粘度には関係しません。 液体でもガスでも同じ周波数です。
教科書の計算例です。渦発生体の幅 1 cm、流速 1 m/s、St 0.19 なら、f = 0.19 × 1 ÷ 0.01 = 19 Hz。逆に、太さ 5 mm の電線が 500 Hz で鳴っていれば、風速は 500 × 0.005 ÷ 0.19 ≒ 13 m/s と計算できます。
渦の検出は、渦によって生じる力を圧電素子や半導体歪ゲージで電気信号に変えるのが一般的です。渦発生体の断面は、渦の剥離する場所を一定にするため台形がよく使われます。
2. 長所
連載記事とメーカーの実務書が挙げる長所をまとめます。
| 長所 | 内容 |
| 構造が簡単で堅牢 | 機械的可動部がなく、定期点検が不要。渦発生体は磨耗しにくい形状 |
| 精度がよい | 指示値の 1% 程度(口径 10 mm 以下を除く)。流量が下がっても積算精度は落ちない |
| 流量範囲が広い | 液体で 10:1 から 15:1 程度 |
| 多種類の流体 | 液体・気体・蒸気を同じ検出器で測れる(超音波渦検出方式は液体専用) |
| 圧損が少ない | オリフィスより小さい |
| パルス信号が直接得られる | 渦の数を数えているので積算に便利。アナログからパルスへの変換誤差がない |
| ゼロ点変動がない | 出力が周波数なので、ゼロ点という概念がない |
実務書には、大手石油会社が欧州の製油所で流量計の 60% 以上(約 500 台)を渦流量計に置き換え、初期投資・計装・操業・保守を含めた総経済効果を実証した例が載っています。
3. 短所|低流量で信号が消える
連載記事は短所を5つ挙げています。

- 直管部が必要:差圧式や超音波式と同様、上流に口径の 10 倍、下流に 5 倍程度。配管状況によってはさらに長く
- 振動に弱い:配管を通して伝わる外部振動を渦検出素子が拾い、偽の流量信号を出すことがある。最近の製品は改良されている
- 脈動流の影響:プランジャポンプやダイヤフラムポンプの脈動と渦の周波数が近いと同期する。容積式流量計や渦流量計の出口にも脈動が生じるので、これらのすぐ下流には置かない
- 高粘度流体に不適:粘度が高いと、精度を保証できる下限流量が上がる
- 低流量で信号が消える:流量がある値以下に下がると、渦が規則正しく発生しなくなり、信号が出なくなる。出力が急にゼロになるので、システム設計の際に注意が要る
5つ目は運転員が最も戸惑う癖です。流量を絞っていくと、ある点で指示がゼロに飛びます。流れは止まっていないのに、流量計は「ゼロ」と言う。差圧式なら下限付近で指示が不安定になるだけですが、渦式は消えます。低流量の警報やインターロックに渦流量計を使うときは、この性質を織り込んで設計します。
4. 蒸気に強い理由
渦流量計は 400℃ の高温で使える製品があり、過熱蒸気も測れます。差圧式のオリフィスと比べて次の利点があります。
- 測れる流量範囲が広いので、季節により流量が大きく変わる蒸気配管に向く
- 導圧管に凝縮水を満たす必要がない。オリフィスの蒸気測定では導圧管の凝縮水の管理が最大の手間
実務書には、エチレン分解炉のナフサ流量計を差圧式から渦式に替えた例があります。差圧式では、ナフサに含まれる微量の固形物で導圧管が詰まり、接続箇所が多くて漏れや腐食の問題があり、ゼロ点調整やデコーキング後の調整が要りました。渦式では渦発生体をナフサ専用形にし、取付姿勢を水平にして付着を避けています。コスト比較では、差圧式は工事費が 40%、伝送器が 35% を占めるのに対し、渦式は工事費 10% で済んだとあります。
5. 不思議なトラブルの正体
メーカーの技術者が「計装」誌に書いたトラブル事例は、渦流量計の癖をよく表しています。
- バルブを絞ると流量が増える:蒸気配管で、渦流量計の下流の手動弁を絞ると、初めは流量が下がるが、ある点で急に増えてスケールアウトした。渦の検出信号をオシロスコープで見ると十数 kHz の強烈なノイズ。上流の自力制御弁が笛のように鳴り、その音を圧電素子が渦と誤認していた。配管の途中を膨らませて(車のマフラーのように)音を減衰させ、アンプも設計変更した
- バルブを開閉すると流量が回復する:高温の油の枝管で、流量指示が時間とともに下がり数時間でゼロになるが、下流の弁を全閉して全開すると直る。流体に含まれる触媒が枝管に沈殿し、渦発生体が埋もれていた。取出し口を主管の上部へ移して解決
- 真夏に消える信号:液体アンモニアの輸送ラインの先端(約 50 m)に付けた渦流量計が、午後の日盛りに数秒間だけ信号を失う。配管は断熱してあるが、熱が入り込んでガスの塊ができ、それが流量計を通過していた。タンクの近く、弁の上流側にあったオリフィスと設置場所を入れ替えて解決
- 2台の流量計の応答が違う:冷却水ヘッダから分岐した配管に渦式とタービン式を直列に入れたところ、渦式の瞬時値が大きく振れる。分岐管の流量比は常に揺らいでいて、渦式はそれを正直に告げ、タービン式はロータの慣性で平均化していた
どれも「センサは正常で、原因は配管や流体の側にある」例です。
6. 現場で見る場所
- 低流量の下限:その流量計の下限流量はいくらか。運転流量がそれに近づいていないか
- 上流の弁の音:制御弁が笛のように鳴っていないか。渦式はその音を拾う
- 配管振動:ポンプや圧縮機の振動が配管を伝わっていないか。往復動ポンプが上流にないか
- 枝管の沈殿:主管の下側から取り出した枝管に固形物が溜まっていないか
- 気化:液化ガスや高温液で、流量計の位置が弁の下流や配管の末端にないか
- エッジの磨耗:研磨性スラリーでは渦発生体のエッジと管内壁を分解時に確認
7. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 渦の周波数は、流体の密度が変わるとどうなりますか。
- 渦流量計の指示が低流量で急にゼロになりました。故障ですか。
- 渦流量計を往復動ポンプのすぐ下流に置いてはいけないのはなぜですか。
答えは順に、変わらない(流速だけで決まる)/故障ではなく、渦が規則正しく発生しなくなる下限を割った/脈動と渦の周波数が同期して誤った信号を出すから、です。
まとめ
渦流量計はカルマン渦の周波数が流速に比例する性質を使い、密度や粘度に関係なく、液体・気体・蒸気を可動部なしで測れます。出力が周波数なのでゼロ点変動がなく、積算に向きます。
短所は直管部、振動、脈動流、高粘度、そして低流量で信号が突然消えることで、いずれも故障ではなく癖です。蒸気には特に強く、導圧管の凝縮水管理が要りません。指示がおかしいときは、上流の弁の音、配管振動、枝管の沈殿、気化を疑ってください。
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参考文献
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第5回 渦流量計」MS TODAY, 2001年11月号
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.3.2「渦流量計」、【解説】渦周波数の計算例 Amazonで見る
- 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅳ「渦流量計」3「渦流量計の特長」、11「代表的なテストデータとアプリケーション事例」 Amazonで見る
- 佐鳥聡夫「現場計器の”不思議な”トラブルシューティング 第3回・第4回」計装, Vol.41 No.5, No.6 (1998)
設備技術は、回転機械・静機器・配管・計装・設備信頼性の12の記事マップで案内しています。
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