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送風機を担当すると、最初から「どのブロワーを選ぶか」と機種名を探しがちです。しかし実務では、ガス条件、必要風量、必要圧力、装置抵抗、運転範囲を整理しなければ、形式を正しく比較できません。同じ機械でも、ダクト、フィルター、槽内圧、水深、ダンパの状態が変われば運転点は動きます。
この記事は、ファン・ブロワー・圧縮機の違いから、種類、選定、始動停止、省エネ、サージング、異音・振動までをつなぐ「全体地図」です。現場オペレーターは日常監視と異常時の切り分けに、化学メーカーのエンジニアは仕様決定とメーカー照会の入口に使ってください。
先に結論
- ファンとブロワー:主に圧力上昇の大きさで呼び分ける。両者をまとめて「送風機」と呼ぶ。
- ターボ形と容積形:気体へエネルギーを与える仕組みの違い。圧力による呼称とは別の分類軸。
- 選定の中心:カタログの仕様点ではなく、装置抵抗との交点で決まる運転点と、最小~最大負荷を確認する。
- 運転の原則:ダンパ位置や始動方法を形式名だけで決めず、性能曲線、軸動力特性、メーカー取扱説明書、インターロック条件を確認する。
- 省エネの順番:過大風量と不要な抵抗を減らし、実際の運転点と効率を測ったうえで制御方式を比較する。
1. ファン・ブロワー・圧縮機は何が違うか
ファン、ブロワー、圧縮機はいずれも、軸から受け取った機械エネルギーを気体へ与える機械です。呼び名の境界は規格、メーカー、用途で重なるため、次の値は分類の目安として使います。
| 呼び名 | 圧力上昇の目安 | 圧力比の目安 |
| ファン | おおむね10 kPa以下 | おおむね1.1未満 |
| ブロワー | おおむね10~100 kPa | おおむね1.1~2 |
| 圧縮機 | おおむね100 kPa以上 | おおむね2以上 |
圧力比は「吐出し絶対圧力÷吸込絶対圧力」で確認します。ゲージ圧同士を割ってはいけません。また、10 kPaや100 kPaだけで機種を決めるのではなく、ガス密度、温度、必要風量、連続・間欠運転、脈動、騒音、保守性まで含めて比較します。
圧縮機と真空ポンプは別記事群にする
圧縮機は吐出し側へ気体を圧送し、圧力を高める用途を中心に考えます。真空ポンプは吸込側の圧力を下げ、装置から気体を排出する用途です。ルーツ、スクリューなど構造名が重なる機種はありますが、真空側では到達圧力、排気速度、ガス負荷、コンダクタンス、リークなど評価軸が変わります。このため、本サイトでは送風機・ブロワー、圧縮機、真空ポンプを別の記事群に分けます。
2. 送風機は「圧力区分」と「作動原理」の2軸で見る

「ファンかブロワーか」は圧力上昇による呼称です。一方、「遠心か軸流かルーツか」は作動原理と構造による分類です。この2軸を混ぜると、同じ名称でも性能が違う理由を説明できません。
| 分類 | 気体へエネルギーを与える方法 | 実務での見方 |
| ターボ形 | 回転する羽根車で気体を連続的に加速し、速度エネルギーを圧力へ変える | 装置抵抗が変わると風量が動く。形式ごとの性能曲線と安定運転範囲を見る |
| 容積形 | 一定容積の気体を閉じ込め、吸込側から吐出し側へ移す | 一定回転速度では差圧による風量変化が比較的小さい。閉塞時の圧力上昇と脈動に注意する |
ターボ形|遠心・斜流・軸流
- 遠心送風機:気体を半径方向へ送り出す。多翼、後向き、翼形、ラジアルなど羽根形状があり、効率、圧力、軸動力、ダストへの適性が異なる。
- 斜流送風機:軸方向に吸い込み、斜め方向へ流す。遠心と軸流の中間的な流れ方をする。
- 軸流送風機:主に軸方向へ流す。大風量に向くが、翼形や設備条件によって性能曲線、軸動力、失速特性が異なる。
「ターボファン」という商品名だけでは羽根形状を特定できない場合があります。銘板、仕様書、外形図、羽根車図、性能曲線を合わせて形式を確認します。
容積形|ルーツブロワー
ルーツブロワーは、互いにかみ合うロータで気体を吸込側から吐出し側へ運びます。一定回転速度では、装置抵抗が変わってもターボ形より風量が変わりにくい一方、内部漏れ、すきま、温度、回転速度の影響を受けるため「風量は常に一定」ではありません。吐出し側を閉塞すると圧力と動力が上がるため、圧力保護、逃がし、逆止め、インターロックを設備ごとに設計します。
3. 選定は7ステップで進める

- ガス条件を決める:組成、分子量、温度、湿度、ダスト、ミスト、腐食性、毒性、可燃性、凝縮の有無を整理する。
- 必要風量を決める:プロセス要求、換気、燃焼、曝気、輸送などから求める。実風量か、0℃・20℃など所定の基準状態へ換算した風量かを明記する。
- 必要圧力を決める:ダクト、曲がり、フィルター、スクラバー、熱交換器などの変動抵抗と、槽内圧、水深、炉内圧などの固定抵抗を分けて積み上げる。
- 形式と運転点を決める:送風機特性と装置抵抗の交点を確認し、通常点だけでなく最小・最大負荷、起動時、異常時が安定範囲に入るかを見る。
- 材料・軸封・電動機を決める:腐食、摩耗、漏えい、防爆、屋外環境、周囲温度、電源、始動方式を含める。
- 制御と省エネを決める:ダンパ、吸込ベーン、回転速度、台数制御を、負荷変動と固定抵抗を含む系全体で比較する。
- 運転・保全条件を決める:計器、警報、トリップ、予備機、点検空間、清掃、潤滑、消耗品、騒音・振動対策を仕様へ入れる。
機器単体の最高効率点だけで決めるのではなく、吸込から吐出しまでの系統全体を一つの設備として扱うのが要点です。
4. 性能曲線と抵抗曲線の交点が運転点になる
ターボ形送風機では、カタログの風量・圧力がそのまま現場で出るわけではありません。ある回転速度での送風機特性と、ダクトや機器の抵抗を表す装置抵抗曲線が交わる点が実際の運転点です。
- ダンパを絞る:装置抵抗が増え、運転点が小風量側へ移る。
- フィルターが詰まる:抵抗が増え、風量が低下する。
- 回転速度を変える:送風機特性そのものが移動する。
- ガス密度が変わる:同じ体積流量でも圧力・動力の関係が変わる。
配管摩擦などの変動抵抗は概ね風量の二乗で増えますが、槽内圧や水深のような固定抵抗は風量ゼロでも残ります。固定抵抗が大きい設備では、単純な二乗則・三乗則だけで回転速度制御の効果を見積もらず、実際の装置抵抗を分けて計算します。
風量の基準状態を必ず合わせる
送風機の風量は、一般に吸込状態の体積流量で扱います。一方、プロセス収支ではNm³/hなどの基準状態流量が使われます。「N」が0℃なのか、20℃なのか、乾きガスか湿りガスかは会社・仕様書によって定義が異なるため、温度、絶対圧力、湿度を併記します。実風量と基準状態流量を混ぜると、風量、圧力、動力、配管径の判断がずれます。
5. 始動・通常運転・停止で確認すること
始動前
- ケーシング、ダクト、ガード、基礎、継手、ベルト、潤滑、冷却、ドレンを確認する。
- 吸込・吐出し経路、逆止弁、逃がし、パージ、ダンパのラインアップを確認する。
- 回転方向を所定の方法で確認し、人や工具が回転部・ダクト内にないことを確認する。
- 始動時のダンパ位置は、羽根形状と軸動力特性で変わるため、取扱説明書と運転標準に従う。
- 警報・トリップ、インターロック、予備機自動起動の条件を確認する。
通常運転
| 見る値 | 意味 |
| 吸込・吐出し圧力、差圧、風量 | 装置抵抗、運転点、フィルター詰まり、弁・ダンパ状態 |
| 電流・電力 | 過負荷、風量変化、接触、差圧上昇。形式ごとの軸動力特性と比較する |
| 軸受・ケーシング・吐出し温度 | 潤滑不良、冷却不良、圧縮による温度上昇、循環不良 |
| 振動・音 | アンバランス、付着、芯ずれ、軸受、共振、サージング、脈動 |
| 漏れ・臭気・ドレン | 軸封、腐食、凝縮、シールガス、排液不良 |
単発の値だけでなく、同じ負荷・同じ外気条件での通常値と比較します。異常の早期発見には、圧力、風量、電流、温度、振動を同じ時刻で記録するのが有効です。
停止・待機
停止順序、パージ、冷却継続、ドレン抜き、逆流防止、ダンパ閉止、予備機への切換えはプロセスごとに決めます。湿ったガスや腐食性ガスでは、停止後の冷却で凝縮し、停止中に腐食が進むことがあります。長期停止ではロータ固着、軸受、防錆、盤の結露も確認します。
6. 省エネは送風機ではなくシステムで考える
省エネ診断では、インバータを付ける前に、なぜ現在の風量と圧力が必要なのかを確認します。
- 過大風量、過大圧力、過大な設計余裕がないか。
- フィルター、消音器、ダンパ、ダクト、曲がりに不要な抵抗がないか。
- 実際の運転点が高効率域にあるか。
- 低負荷時間が長いか、負荷変動に制御方式が合っているか。
- 固定抵抗を含めても回転速度制御の効果があるか。
| 制御方式 | 確認点 |
| 吐出しダンパ | 導入しやすいが、絞り損失を作る。軸動力の変化は羽根形状で異なる |
| 吸込ベーン | 入口流れを変えて制御する。適用範囲と効率を性能資料で確認する |
| 回転速度制御 | 変動抵抗主体の系では有効になりやすい。最低回転数、共振、冷却、固定抵抗を確認する |
| 台数制御 | 負荷幅が大きい設備で候補になる。追加・離脱時の逆流、運転点、順次起動を確認する |
7. 異常は「機械・ガス・流路・運転点」に分けて調べる
| 現象 | 最初に確認すること | 主な原因群 |
| 風量不足 | 回転方向、回転速度、ダンパ、フィルター差圧、吸込・吐出し圧力 | 詰まり、漏れ、逆回転、ベルト滑り、密度変化、装置抵抗増加、羽根摩耗・付着 |
| 圧力・風量の周期変動 | 変動周期、運転点、弁・ダンパ、並列機、圧力波形 | サージング、軸流失速、ルーツの圧力脈動、逆流、制御ハンチング |
| 電流上昇・トリップ | 電圧、電流、風量、差圧、回転部、温度 | 形式固有の過負荷、閉塞、接触、軸受、異物、ガス密度上昇 |
| 温度上昇 | 軸受、吐出し、潤滑、冷却、吸込温度 | 潤滑不良、冷却不良、差圧上昇、再循環、接触、周囲温度上昇 |
| 振動・異音 | 振動値と周波数スペクトル、回転数、負荷、基礎、ダクト | アンバランス、付着、芯ずれ、軸受、共振、緩み、流体励振、サージング |
| 腐食・摩耗・穴あき | 付着物、ダスト、凝縮、温度履歴、肉厚 | ダスト摩耗、液滴衝突、露点腐食、材料不適合、停止中凝縮 |
サージングとルーツブロワーの圧力脈動は別の現象です。また、振動診断では生波形だけでなく周波数スペクトルを併記すると、回転数成分、羽根通過成分、電源周波数、軸受由来の高周波を切り分けやすくなります。警報値やトリップ値を超えた場合は、原因調査を続ける前に運転標準とメーカー手順に従って設備を安全な状態へ移します。
8. 送風機・ブロワー記事群の読み方
- BL-02 ファン・ブロワー・圧縮機の違い:圧力比、ゲージ圧と絶対圧、Nm³/hとm³/hを整理する。
- BL-03 送風機の種類と特徴:多翼・後向き・翼形・ラジアル・軸流・斜流・ルーツを見分ける。
- BL-04 性能曲線と抵抗曲線・運転点:ダンパ、詰まり、回転速度で運転点がどう動くかを学ぶ。
- BL-05 風量・圧力・軸動力と密度補正:ガス条件、温度、湿度、法規風量を仕様へ落とす。
- BL-06 風量制御と省エネ:ダンパ、吸込ベーン、回転速度、固定抵抗を比較する。
- BL-07 サージングと並列・直列運転:不安定領域、脈動、逆流を理解する。
- BL-08 ダクトとシステムエフェクト:吸込・吐出し近傍の曲がりで性能が落ちる理由を学ぶ。
- BL-09 回転速度制御の注意点:捩り共振、低サイクル疲労、インバータ振動を確認する。
- BL-10 台数制御と順次起動:追加時の逆流、復電時の起動を確認する。
- BL-11 材質・軸封・摩耗・腐食:ダスト摩耗、露点腐食、漏えい、防爆を扱う。
- BL-12 運転・保全ポイントと異常現象:軸流・遠心・ルーツ別に日常点検と異常原因を整理する。
- BL-13 省エネ診断と現場計測:風量、風圧、電力を測り、机上診断と現地確認をつなぐ。
BL-02以降は順次、一次資料で全面改稿します。詳細記事が未改稿の間は、本ページの原則とメーカー取扱説明書を優先してください。
9. 職種別に最初に見る項目
現場オペレーター
- 吸込・吐出し圧力、風量、電流、温度、振動、音の通常値
- ダンパ、逆止弁、逃がし、パージ、ドレンの正常位置
- 始動・停止・予備機切換えの順序
- どの値で警報、トリップ、現場退避とするか
化学メーカーのエンジニア
- ガス組成、温度、湿度、ダスト・ミスト、腐食性、毒性、可燃性
- 風量の基準状態と、最小・通常・最大風量
- 変動抵抗と固定抵抗を分けた必要圧力
- 運転点、安定運転範囲、軸動力、効率、制御範囲
- 材料、軸封、防爆、計装、保護、騒音、振動、保全スペース
10. まとめ
- ファンとブロワーは圧力上昇による呼称で、両者をまとめて送風機と呼ぶ。
- ターボ形と容積形は作動原理の分類であり、圧力区分と分けて考える。
- 選定は、ガス条件、風量、圧力、運転点、材料・軸封、制御、保全の順で進める。
- 始動時のダンパ位置や過負荷対策は形式で異なるため、一律の操作にしない。
- 省エネと異常診断は送風機単体ではなく、吸込から吐出しまでのシステム全体で行う。
参考にした一次資料
技術内容は、所蔵する一次資料の該当ページをPDF原本の画像で確認し、現場向けに再構成しました。原本の図表は転載していません。
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』
- 日本プラントメンテナンス協会『ファン・コンプレッサーの本』
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』
- 化学工学協会編『改訂二版 化学装置便覧』
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