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排ガスや集じんラインの送風機では、羽根車が薄くなる、ケーシングに穴があく、清掃したばかりなのに振動が戻る、といったトラブルが起きます。原因は機械そのものより、送風機が扱うガスの中身にあることがほとんどです。
ダストは羽根車を削り、付着したダストは質量の偏りを作ります。腐食性ガスや、冷えて結露した酸は金属を溶かします。軸封から外へガスが漏れる、あるいは負圧側で外気を吸い込むと、漏えいや局部腐食の原因になります。
この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、送風機のダスト摩耗・付着・腐食・露点腐食・軸封を、原因、形式による違い、対策、点検、仕様書の確認項目の順に整理します。送風機の形式そのものは送風機の種類と特徴、全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで説明しています。
この記事の結論
- 材質と軸封は、風量・圧力ではなく「ガスの中身」で決まります。 ダスト量・粒径・付着性、腐食成分と水分、露点、正圧か負圧か、可燃性・毒性を先にそろえます。
- ダスト摩耗は羽根車周速度の3乗に比例して速くなります。 同じ仕事でも、回転速度を下げて周速度を抑えた選定のほうが長持ちします。
- 効率の高い後向き・翼形羽根車は摩耗が早く、ラジアル羽根車は遅い傾向があります。 省エネだけで形式を決めると、補修と停止の損失が上回ることがあります。
- 露点腐食は、ガスの平均温度が露点より高くても、外気を吸い込む隙間や冷えた部分で局部的に起きます。
- 軸封は「ガスを外へ漏らさない」と「外気を中へ吸わせない」のどちらが重要かで選びます。 二重メカニカルシールや窒素パージを一律の標準にせず、差圧や監視はメーカーの設計条件に従います。
1. 羽根が減る・穴があく・振動が増える|まず劣化の種類を分ける
送風機の材料トラブルは、見た目が似ていても原因が違います。対策を誤らないために、最初に次の4つへ分けます。
| 劣化の種類 | 何が起きるか | 現場で見える症状 | 主な原因 |
| ダスト摩耗 | 粒子が当たって羽根・ケーシングが削れる | 板厚減少、羽根の欠け、振動増加、風量低下 | ダスト量・粒径・硬さ、周速度、集じん性能 |
| ダスト付着 | 粉じんが羽根に積もり、ときどき剥がれる | 振動の増減、風量・効率低下、清掃後に一時回復 | 付着性の粉、湿り気、温度低下、羽根形状 |
| 腐食 | 腐食性ガスや凝縮液で金属が溶ける | 減肉、孔あき、塗装・ライニングの剥がれ、ガス漏れ | 酸性成分、水分、塩化物、材料の不適合 |
| 軸封の劣化 | 軸貫通部の隙間が広がる | ガス臭・漏れ、効率低下、負圧側での空気吸込み | 摩耗、腐食、偏心・振動、シール方式の不適合 |
これらは単独では終わりません。摩耗・腐食・付着は、いずれも羽根車のバランスを崩して振動を増やします。 振動が大きくなれば運転を止めて補修や清掃が必要になり、プラント全体の稼働率が下がります。
さらに、羽根車の腐食や減肉は、回転による遠心力に耐える強度そのものを下げます。羽根車の板厚減少は、性能低下だけでなく破損の問題として扱います。 既設の羽根車を可変速で運転する場合の疲労の考え方は、送風機の回転速度制御の注意点で説明しています。
2. ダスト摩耗は周速度の3乗で速くなる
ダストを含むガスを扱う送風機では、設備の中で最初に羽根車が摩耗します。羽根車が高速で回転しているため、粒子が当たる速度が最も大きいからです。
羽根車の摩耗量は、次の関係で表されます。
摩耗量 ∝ 運転時間 × ダスト量 × 羽根車周速度³ ÷ ダストの種類で決まる係数
周速度は、羽根車外径と回転速度の積に比例します。この式から分かることは3つです。
- 周速度が2割下がれば、摩耗の進み方は約半分(0.8³≒0.51)になる
- ダスト量が倍になれば、摩耗も倍になる
- 摩耗量はダストの粒径の2〜3乗にも比例するため、大きな粒子が混じると急に速くなる
上流の集じん機を簡略化すると、ダスト量が増えるだけでなく粒径も大きくなり、羽根車の摩耗が極端に早くなります。集じん機の性能は、送風機羽根車の摩耗寿命とセットで決めます。 集じん機の圧力損失を下げて動力を節約したつもりが、羽根車の交換費用で帳消しになることがあります。

同じ風量・圧力でも、選ぶ機種によって周速度は変わります。『ファン・ブロワ』の選定例(400 m³/min、4.0 kPa)では、20℃の空気なら小形で安い「羽根幅の広い羽根車・3,000 min⁻¹」が最適でした。しかしダストがあって摩耗する場合は、機番は大きくても「羽根幅の狭い羽根車・1,500 min⁻¹」が望ましいと結論しています。羽根幅の広い羽根車は摩耗で剛性が下がりやすく、アンバランスになりやすいうえ、高速だからです。
この例の羽根車外径から周速度を計算すると、約94 m/sと約83 m/sになります。摩耗の関係式に当てはめれば、ほかの条件が同じなら低速側の摩耗速度は約0.67倍です。ダストを含むガスでは、効率と価格が最良の機種が、寿命まで含めて最良とは限りません。
3. 羽根車の形状で摩耗の出方が変わる
羽根車の形状によって、摩耗の速さと出方が違います。一般に、高効率の後向きファンや翼形ファンは摩耗が早く、ラジアルファンは摩耗が遅いとされ、摩耗速度には約2倍の差があるといわれています。
ラジアルファンの摩耗が遅い理由は2つです。
- ラジアルファンは主板・側板を持たない構造にでき、摩耗が特定の場所に集中しにくい
- 羽根出口が半径方向を向いているため、同じ圧力を出すのに周速度を低くできる
また、ラジアルファンの羽根は平板なので、摩耗しやすい面にライナ(交換用の当て板)を付けたり、肉盛りを施工したりしやすい利点があります。羽根出口が半径方向なのでダストに遠心力が働き、付着しにくいことも特徴です。一方で、ラジアルファンの最大の欠点は効率が低いことです。

そのため、ダストを含むガスでも、最近は省エネのために後向き羽根や翼形羽根を採用し、後述の摩耗対策を施して寿命を延ばす方法が増えています。高効率形の中でも違いがあり、『ファン・ブロワ』の比較表では、後向き羽根車は回転ディフューザ付羽根車や翼形羽根車より、摩耗のしにくさ・修理のしやすさ、付着のしにくさ・清掃のしやすさで優れると評価されています。
多翼ファンは短い前向き羽根が多数並ぶ形式で、主に建築設備の換気・空調に使われます。腐食性ガス用として羽根車・ケーシングとも塩化ビニール製のものもあります。ダストや付着物を含むガスに使うかどうかは、羽根の間隔、清掃性、メーカーの適用実績で確認します。
形式の名前だけで「汚れたガスならラジアル」と決めず、ダスト量・粒径・付着性、周速度、効率差による動力費、補修費、停止損失を比べて決めます。 動力費の比較方法は送風機の風量・圧力・軸動力と密度補正を参照してください。
4. 摩耗対策|周速度・ダスト量・板厚・表面硬化
摩耗寿命は、羽根車の板厚とダストの性状に比例し、ダスト量と周速度の3乗に反比例します。この関係から、対策は次の4方向に整理できます。
| 対策 | 何を変えるか | 注意点 |
| 周速度を下げる | 大きい機番・低い回転速度を選ぶ | 機器が大きく高価になる。据付スペース |
| ダスト量を減らす | 送風機の前に集じん装置を置く、性能を上げる | 集じん機の圧力損失で動力が増える |
| 板厚を厚くする | 摩耗しろを増やす | 質量・慣性が増え、強度・危険速度・始動条件を再確認する |
| 表面を硬くする | 溶射、硬化肉盛り、セラミックスの取付け | 衝突角度と材料の相性、剥離、補修後のバランス |
表面硬化では、溶射や肉盛りで表面の硬度を上げて羽根車の寿命を延ばします。セラミックスを接着やロー付けで羽根に取り付ける方法も実用化されています。『ファン・ブロワ』では、ビッカース硬さ1,700以上のセラミックスが、1,000程度の肉盛りと比べて4倍以上の摩耗寿命を持つと紹介されています。
ただし、硬い材料ならどこに使っても長持ちするわけではありません。 粒子が浅い角度でこするように当たる場所では、柔らかい金属が切削されて大きく減り、硬い材料が有利です。一方、粒子が直角に近い角度でぶつかる場所では、硬く脆い材料が割れて損傷します。また、鋼を熱処理で硬くしても、粒子衝突による損傷への耐久性は上がらないという実験結果もあります。角ばった粒子は丸い粒子より損傷を大きくします。
表面硬化の種類と施工範囲は、実機の摩耗痕(どこが、どの向きに削れているか)とダストの性状を見て、メーカーと決めます。
粉体輸送のように摩耗が避けられない用途では、羽根車を消耗品と考え、現場で取り替えやすい形状と取付け方にします。遠心形なら羽根を直線状にしてライナを取り付け、摩耗したらライナを交換する方法があります。
肉盛りやライナ交換の後は、羽根車の質量分布が変わります。補修した羽根車は、バランス修正と振動確認を済ませてから運転に戻します。 補修溶接は疲労強度にも影響するため、補修の範囲と方法は記録に残します。
5. ダスト付着|摩耗と逆向きのトラブル
集じん機の一次側に置く送風機や、製鉄・セメントなどの粉じんを扱う送風機では、摩耗とは逆に羽根車へダストが付着して問題になります。
付着したダストは、流路を狭めて風量と効率を下げます。さらに問題なのは、付着と剥がれ落ちが羽根ごとに不均一になると、羽根車の重心がずれて大きな振動が出ることです。付着による振動は、軸1回転に1回の周期を持つ、正弦波に近い波形になります。アンバランスの典型的な姿です。

付着への対策は次のとおりです。
- 付着しにくい羽根車形状、短時間で清掃できる形状を選ぶ
- 水または空気の吹付けで付着を防ぐ
- 定期的・間欠的な水洗浄や、機械的な除去を計画する
- 付着しやすい温度・湿り気の条件(結露、吸湿性の粉)を運転で避ける
振動が出たら、運転を止めて羽根車の全面を清掃するのが基本です。付着力が強く完全に取り切れない場合は、できるだけ清掃したうえでバランスを調整します。「半分だけ剥がれた」状態がいちばん振動を大きくするので、部分的な清掃で運転を再開しないようにします。
水洗浄や吹付けを使う場合は、洗浄水による腐食、急冷、電動機や軸受への水の侵入、排水の処理方法を、メーカーの手順と設備の条件で確認します。
6. 腐食対策|耐食材料で作るか、ライニングするか
腐食性ガスへの対策は、大きく2つです。
- ガスに触れる部分を耐食材で覆う(ライニング)
- ガスに触れる部分を耐食材で製作する
ライニングは、耐食材で製作するより安価ですが、温度や風圧が高い条件には適しません。 また、高効率羽根車の中には、構造上ライニングが難しいものがあります。腐食が進んでから補修・取替えに多額の費用がかかる例もあるため、形式を決める段階で防食方法も一緒に検討します。
吸込側が負圧になる送風機では、ライニングの接着・固定が負圧の条件で成り立つか、温度の上昇下降を繰り返しても浮き・剥がれが起きないかを、メーカーに確認します。
材料は、「ステンレスなら安心」「高級合金にすれば解決」とは決められません。たとえば、硫酸露点腐食が起きる排ガス中に塩化物を含む場合、ステンレス鋼では孔食を伴うことが多いとされています。材料は、次の入力条件をそろえたうえで、腐食データとメーカー・自社の使用実績で決めます。
| 入力条件 | 確認すること |
| 腐食成分 | SOx、HCl、塩化物、硫化水素、有機酸などの種類と濃度 |
| 水分と凝縮 | 水分量、露点、起動・停止・低負荷時に結露するか |
| 温度 | 通常・最高・最低温度、停止中の冷却、局部的に冷える場所 |
| ダスト | 摩耗と腐食が同時に起きるか、付着物の下で腐食が進むか |
| 応力 | 羽根車の遠心応力、溶接部、振動、補修履歴 |
| 補修 | 現地で溶接補修できるか、ライニングの補修方法 |
部分的な材料変更で寿命を延ばせる例もあります。ある送風機では、本体はフッ素樹脂系ライニング、軸封部のスタフィングボックスなどはステンレス鋼SUS316Lでしたが、吸引ガスでその部分が腐食しました。形状はそのままで材質だけを充塡材入りのPTFE(フッ素樹脂)に変え、寿命を延ばしています。腐食した部品は、同じ材料で交換する前に、腐食の形と場所から原因を確かめます。
7. 露点腐食|ガスが露点より高くても局所で起きる
硫黄分を含む燃料の燃焼排ガスには、SO₂と一部のSO₃が含まれます。温度が下がって水蒸気が凝縮すると、そこへSO₃が溶け込んで硫酸になり、炭素鋼を激しく腐食させます。これが硫酸露点腐食です。塩化物を含む廃棄物の燃焼では、同じ仕組みで塩酸露点腐食が起きます。
排熱回収ボイラの後に置く誘引送風機や循環送風機は、熱を回収して温度が下がったガスを扱うため、露点腐食の条件に近づきます。
SO₃の露点は、ガス中の水分とSO₃濃度で決まり、固定値ではありません。 『ファン・ブロワ』に載っているガス組成と露点のグラフを読むと、SO₃が10 ppm程度でも、水分量によって露点はおおむね100〜150℃の範囲になり、水分やSO₃が増えるほど高くなります。基本の対策は、ボイラ出口のガス温度を露点以上に保つことです。
注意すべきなのは、ガス温度が露点以上でも、ケーシングの洩れから冷たい外気を吸い込むと、その周辺だけが冷えて局部的に腐食することです。軸封部も同じ理由で、外気を吸い込まないよう十分にシールする必要があります。

露点腐食が起きやすい場所と場面は次のとおりです。
- 負圧で運転する誘引送風機のケーシング継目、点検口、軸封部
- 保温が切れている、または外気・雨で冷やされるケーシング底部やダクト
- 起動直後や停止後など、ガスや金属が冷えている時間帯
- ドレン抜きが詰まり、凝縮液がたまる低い部分
凝縮液を排出するドレン抜きが詰まると、腐食だけでなく、たまった液を羽根車が吸い込んで過負荷になることもあります。ケーシングのドレン抜きは、運転前の点検項目に入れます。
材料面では、銅などを加えた耐硫酸露点腐食鋼があり、一般の炭素鋼に比べて腐食速度を半分程度に抑えられるとされています。ステンレス鋼が使われることもありますが、露点温度や塩化物の条件によっては耐えられません。材料で耐えるより先に、金属表面を露点以上に保ち、外気を吸わせない設計と保全を優先します。
8. 軸封の選び方|漏らさないのか、吸わせないのか
軸封は、回転する軸がケーシングを貫通する部分の隙間をふさぐ装置です。送風機の軸封には2つの役割があります。
- 正圧の部分では、内部のガスを外へ漏らさない
- 負圧の部分では、外気(酸素・湿気)を中へ吸わせない
どちらが重要かは、軸封がある位置の圧力で決まります。大気を吸って押し込む送風機と、装置から吸い出して大気側へ送る送風機では、ケーシング内が大気圧より高いか低いかが逆になることが多く、同じ機種でも軸封の役割が変わります。運転中だけでなく、停止中・起動時・ダンパ全閉時に軸封部が正圧か負圧かを確認します。

| 軸封の形式 | 仕組み | 向く条件 | 限界・注意 |
| グランドパッキン | 軸の周りにパッキンを詰めて押さえる | 一般的な送風機で広く使われる | 劣化すると漏風・効率低下。接ガス部の材質に注意 |
| ラビリンス | 狭い隙間を何段も通して漏れを絞る | 非接触で摩耗しにくい。空気・窒素など | 単独では漏れをゼロにできない |
| バッファガス併用ラビリンス | 機内圧力より少し高い圧力のバッファガス(一般に窒素)を吹き込む | 空気・窒素以外のガスで、機内ガスの漏れを止めたい | バッファガスの消費、圧力制御、ガス抜き先の処理 |
| カーボンリング | 軸との隙間を微小にしたカーボン製リングにバッファガスを供給 | バッファガス消費を減らしたい | リング破損でガス漏れ。停止時の漏れ防止機構を検討 |
| メカニカルシール | 回転環と固定環を押し付けて密封する接触形 | 漏れを小さくしたい。容積形送風機の高圧側など | 高い摺動速度には適用範囲が限られる |
二葉送風機(ルーツブロワー)では、軸受や歯車の潤滑油を封じるオイルシールを使い、高圧の場合はメカニカルシールが使われます。ガスへの異物の混入が許されない場合は、カーボンやPTFEのリングを使う無潤滑の構成もあります。オイルシールの劣化は油の減りで気づけるので、油面の日常点検は軸封の点検も兼ねます。
有毒ガスや可燃性ガスでも、「二重メカニカルシール+窒素パージ」を一律の標準にはしません。 送風機の形式と回転速度、軸封部の圧力、ガスの危険性、許容できる漏れ量、メーカーの標準構造から選びます。ポンプのメカニカルシールで使う補助配管の方式(シールプラン)を、そのまま送風機へ当てはめることもしません。
バッファガスを使う場合、バッファガスの圧力・流量の設定値、差圧の監視方法、低下時の警報と処置は、送風機・軸封メーカーの設計条件に従います。 窒素を使うなら、軸封部から周囲へ出る窒素による酸欠にも注意します。ポンプの軸封の基本はポンプ軸封の選び方で解説していますが、送風機では軸径・周速度・圧力差が違うことを前提に読んでください。
9. 可燃性ガスを扱う送風機で材料側から確認すること
可燃性のガスや蒸気を扱う送風機では、電動機の防爆だけでなく、送風機本体が着火源にならないかも確認します。羽根車とケーシングの接触、軸のずれ、異物の噛み込みによる火花や摩擦熱、静電気が対象です。
米国の送風機業界規格AMCA 99-0401は、火花を出しにくい構造を3段階に分類しています。送風機メーカーの解説資料によると、要点は次のとおりです。
- 最も軽い段階は、羽根車や軸がずれても鉄系部品同士が接触しない構造
- 中間の段階は、一般に非鉄金属の羽根車と、軸貫通部の非鉄の接触リング、ずれ止め
- 最も厳しい段階は、ガスに触れる部分を非鉄にする
- いずれの段階でも軸受や電気品を気流中に置かず、送風機の接地は使用者の責任
- アルミニウムが錆びた鋼とこすれると火花が出るため、鋼面の塗装と錆の清掃が必要
- ステンレス鋼は、この分類では非鉄金属として扱われない
- 樹脂(FRP)の羽根車は静電気がたまるため、導電性の表面層を軸へ接地する
この分類は防爆構造そのものを保証するものではありません。国内の法令・社内基準での扱いは別に確認します。
電動機などの電気機器の防爆は、危険場所の区分だけで構造が一つに決まるわけではありません。危険場所の区分、ガスの分類(ガスグループ)、温度等級、機器の保護レベル、防爆構造、検定の有無を別々に照合します。 選定は電気担当とメーカーが、最新の工場電気設備防爆指針と検定合格証で確認します。
10. 点検で劣化を早く見つける
材料の劣化は、運転中の計器に遅れて現れます。開放点検の周期は少なくとも1年程度とし、ダスト付着の多いものや腐食雰囲気のものは短くします。
運転前・運転中に見ること:
- ケーシングと羽根車のライニングの状態
- ケーシングのドレン抜きが通っているか
- 軸封部のすき間(記録を残す)
- ガス・空気の漏れ、ガス臭
- 振動・軸受温度・騒音の傾向(記録を残す)
開放点検で見ること:
- 羽根車のダストを落としてから、減肉・欠け・腐食・割れを見る
- リベット・止めナットのゆるみ
- ケーシング内面の付着状況、塗装の剥がれ、発錆、ラビリンスの接触傷と腐食
- 吸込口(サクションコーン)の腐食・摩耗
- 羽根の板厚を決めた点で測り、前回値と比べる
『ファン・コンプレッサーの本』では、ブロワの異常の例として、羽根車の腐食・摩耗による振動増加と風量低下、サクションコーンの腐食による風量低下、ドレン詰まりによる過負荷、カーボンシールの破損によるガス漏れと軸受焼損が挙げられています。振動が上がったときは、軸受の異常だけでなく、羽根車の付着・摩耗・腐食によるバランスの崩れを疑います。 症状からの切り分けは送風機の運転・保全ポイントと異常現象で扱います。
11. 仕様書・引合いで伝える項目
材料と軸封の選定を誤らないためには、メーカーへガスの中身を正確に伝えることが最も効きます。「空気相当」「腐食性あり」とだけ書かず、次の項目を数値で伝えます。
| 区分 | 伝える項目 |
| ダスト | 量(g/m³N)、粒径分布、硬さ・種類、形状、付着性・吸湿性、上流の集じん装置 |
| 腐食 | 成分と濃度(SOx、HCl、塩化物、水分など)、露点、凝縮の有無 |
| 温度 | 通常・最高・最低、起動・停止時の変化、停止中の冷却 |
| 圧力 | 吸込・吐出しの絶対圧、軸封部が正圧か負圧か(運転中・停止中) |
| 危険性 | 可燃性・毒性、許容できる漏れ量、危険場所の区分 |
| 運転 | 連続・間欠、回転速度制御の有無、清掃・水洗の方法 |
| 保全 | 期待する羽根車寿命、ライナ・予備羽根車、補修方法、点検周期 |
回答を受け取ったら、羽根車周速度、形式、接ガス部の材料とライニング、表面硬化の範囲、軸封の形式とバッファガス条件、ドレン抜きの位置、点検口の配置を確認します。比較するときは購入価格と効率だけでなく、摩耗補修費と停止損失を含めたトータルコストで評価します。
まとめ
- 材質と軸封は、ダスト、腐食成分、水分と露点、圧力の正負、危険性という「ガスの中身」で決めます。
- ダスト摩耗は周速度の3乗に比例します。 低い回転速度の選定、集じん、板厚、表面硬化を組み合わせます。
- 後向き・翼形は効率が高い一方で摩耗が早く、ラジアルは摩耗に強い一方で効率が低いので、トータルコストで比べます。
- 付着は不均一に剥がれたときに振動を大きくします。 清掃は全面で行い、必要ならバランスを調整します。
- 露点腐食は、外気を吸い込む隙間や冷えた部分で局部的に起きます。 金属を露点以上に保ち、ケーシングと軸封から外気を吸わせないことが基本です。
- 軸封は漏らさないのか吸わせないのかで選び、バッファガスの条件と監視はメーカーの設計に従います。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』1.2「形式別の特徴」、2.2「産業用送風機の選定」表2.4・表2.6・図2.7、5.5「ダスト摩耗と腐食の注意点」式(5.9)・図5.30 Amazonで見る
- 日本プラントメンテナンス協会編『ファン・コンプレッサーの本』第2章「送風機の種類と構造」表2.2・表2.3・表2.7・図2.25・図2.26・図2.29、二葉送風機の保全 Amazonで見る
- 化学工学協会編『化学装置便覧 改訂二版』第1章「概論」(硫酸露点腐食)、第3章「腐食とエロージョン」図3・44〜3・46、第18章 18・5「動的シール」
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