最終確認:2026年11月3日
電験三種の電力で、水力発電の土台になる4つの論点をまとめた辞書です。発電所の分け方、ベルヌーイの定理と水頭、発電所の出力、水をくみ上げる揚水と調整池の運用の順に確かめます。
電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性
水力発電所の分類 ── 落差の作り方と流量の使い方の組合せで名前が決まる

| 分け方 | 方式 | 中身 |
|---|---|---|
| 落差の作り方 | 水路式 | 上流で取り入れた水を、ゆるやかな水路で運び、下流で一気に落とす |
| 落差の作り方 | ダム式 | ダムで川をせき止め、水位を上げて落差を作る |
| 落差の作り方 | ダム水路式 | ダムで上げた水を、さらに水路で下流へ運ぶ |
| 流量の使い方 | 流込み式 | 流量を調整する池を持たず、川の流れのまま使う |
| 流量の使い方 | 調整池式(ちょうせいちしき)・貯水池式(ちょすいちしき) | 池にためて、日間・週間(調整池)や季節(貯水池)の流量をならす |
| 流量の使い方 | 揚水式(ようすいしき) | 余った電力で、水を上の池へくみ上げておく |
水力発電所は、落差の作り方と流量の使い方の2つの軸で分けます。どの方式も、高い所の水が落ちるエネルギーで水車を回し、つないだ発電機で電気に変えます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 水路式・ダム式・ダム水路式は、流量の使い方による分け方 | 落差の作り方による分け方。流量の使い方で分けると、流込み式・調整池式・貯水池式・揚水式 |
| 池を持たない水路式でも、水をためて需要の大きい時間に出力を上げられる | 池を持たない水路式は流込み式で、川から入る分しか使えない。発電する量の調整には向かない |
| アーチダムは、両岸の幅が広い谷に向く | 水圧を両岸の岩盤で支えるので、両岸の幅が狭く、岩盤の丈夫な所に作る |
| アースダムは、岩などの強固な基礎の上にしか作れない | 粘土などの柔軟な基礎の上にも作れ、かんがい用の池などに向く |
- 水路式は、川が長い距離をかけてゆるやかに下ることを生かします。上流で取った水を川とは別の道で運ぶと、下流へ行くほど川との高さの差が開きます。
- 水路式でも、ゆるやかな水路で運ぶので、下流では川との間に大きな落差ができます。ただ、ダム式・ダム水路式に比べると、高い落差を得にくい方式です。
- 水路式は大きなダムが要らないので、建設費は安くなります。
- 調整池は、日間または週間の負荷の変動に合わせる池です。深夜や軽負荷の時間に川の水を蓄え、ピークの時間に放流します。
- 貯水池は、季節の流量の変動をならす池です。洪水や豊水期の水を蓄え、渇水期に使います。
水路式の設備とダムの種類
水路式の並びは、取水ダム、取水口、沈砂池、導水路、水槽、水圧管、発電所(水車)、放水路の順です。
| 設備 | 役目 |
|---|---|
| 取水ダム | 川の水をせき止めて取り入れる、高さの低いダム |
| 取水口 | 川の水を取り入れて、水路に導く入口 |
| 導水路 | 取水口から水槽までの、水の通り道 |
| 水槽 | 流量を調整する。水路の形で2種類ある |
| 水圧管 | 水槽から水車(発電所)まで、水を落とす管 |
| 水路の種類 | 水の満ち方 | 流速を決めるもの |
|---|---|---|
| 開きょ | 上が開いた溝。土砂や落ち葉が入る | こう配 |
| 無圧トンネル | 水が満ちていない(上に空間がある) | こう配 |
| 圧力トンネル | 水が満ちている | 水圧の差(こう配は関係ない) |
- トンネルは山の中を進むので、川沿いに回り道をしなくて済みます。土砂や落ち葉も入りません。
- 水槽には、ヘッドタンクとサージタンクがあります。無圧の水路の先がヘッドタンク、圧力トンネルの先がサージタンクです(水力発電②で扱います)。
| ダム | 支え方・つくり | 向く所 |
|---|---|---|
| 重力ダム | コンクリートの重さで水圧に耐える。構造が簡単で安定し、国内で最も多い | — |
| アーチダム | 薄いアーチ形で、水圧を両岸の岩盤に伝える。コンクリートを節約できる | 両岸の幅が狭く、岩盤が丈夫な谷 |
| ロックフィルダム | 水を通さない粘土のコアを砂利で守り、岩石で支える。非常に大きくなる | 近くに岩石や砂利が多い所 |
| アースダム | 砂・砂利・粘土を混ぜた土が主な材料 | 柔軟な基礎の上。かんがい用の池 |
- ダムの種類は出題が少なめですが、正誤問題では、向く所(谷の幅・基礎の固さ)の取り違えが問われます。
水力発電の特徴と位置づけ
| 見る所 | 中身 |
|---|---|
| 運転 | 短時間で起動・停止でき、ピークの需要に合わせて動かせる |
| 設備 | 耐用年数が長く、エネルギーを変える効率が高い |
| 国内の発電電力量に占める割合 | 近年は10%未満(揚水を含む2020年度で7.8%)。1975年ごろまでは20%以上だった |
| いまの役割 | ピーク対応で盛んに使われ、温室効果ガスの排出も少ない。役割が失われたわけではない |
ベルヌーイの定理と水頭 ── 高さ・圧力・速さの水頭の合計は流れに沿って一定

| 水頭 | 表すもの | 求め方 |
|---|---|---|
| 位置水頭(いちすいとう) | 基準面からの高さ | 高さそのもの |
| 圧力水頭(あつりょくすいとう) | 水の圧力を、水柱の高さに直した分 | 圧力÷(密度×重力加速度) |
| 速度水頭(そくどすいとう) | 流れる速さを、高さに直した分 | 流速の2乗÷(2×重力加速度) |
損失の無い流れでは、同じ流れの線に沿って、3つの水頭の合計(全水頭)が変わりません。同じ高さで管が細くなると、流速が上がって速度水頭が増え、その分だけ圧力が下がります。
言葉の式 位置水頭 + 圧力水頭 + 速度水頭 = 一定(2か所で等しい)
h1:地点1の位置水頭(基準面からの高さ)〔m〕 p1:地点1の水圧〔Pa〕 v1:地点1の流速〔m/s〕 h2:地点2の位置水頭〔m〕 p2:地点2の水圧〔Pa〕 v2:地点2の流速〔m/s〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕
言葉の式 管のどの断面でも、流量(=断面積 × 流速)は同じ
Q:流量(1秒間に通る水の量)〔m³/s〕 A1:断面1の断面積〔m²〕 v1:断面1の流速〔m/s〕 A2:断面2の断面積〔m²〕 v2:断面2の流速〔m/s〕
言葉の式 水圧 = 密度 × 重力加速度 × 水柱の高さ(高さ = 水圧 ÷ (密度×重力加速度))
p:水圧〔Pa〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水柱の高さ(水頭)〔m〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 同じ高さで管が細くなると、細い所の水の圧力は高くなる | 流速が上がって速度水頭が増え、その分だけ圧力水頭が下がる |
| 流速は、管の内径に反比例して変わる | 流速は断面積に反比例する。円い管では、内径の比の2乗で変わる |
| 管の位置が下がると、全水頭も同じだけ下がる | 損失が無ければ全水頭は変わらない。下がった位置水頭の分は、圧力水頭か速度水頭に移る |
| 流れに沿ってエネルギーの和が一定という定理を、パスカルの原理と呼ぶ | ベルヌーイの定理と呼ぶ。1 m³あたりの運動エネルギーは、½×密度×流速の2乗(密度は2乗しない) |
3つのエネルギーから水頭へ
管の中を流れる水は、位置・圧力・運動の3つのエネルギー〔J〕を持っています。位置エネルギーは、高さが下がると運動エネルギーと圧力エネルギーに変わります。
言葉の式 位置エネルギー = 質量 × 重力加速度 × 高さ(g=9.8 m/s²)
m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕
言葉の式 圧力エネルギー = 水圧 × 体積 = 質量 × 水圧 ÷ 密度
p:水圧〔Pa〕 V:水の体積〔m³〕 m:水の質量〔kg〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕
言葉の式 運動エネルギー = ½ × 質量 × 速さ²
Wk:運動エネルギー〔J〕 m:質量〔kg〕 v:速さ〔m/s〕
- 3つを、どれも質量×重力加速度(mg)で割ると、単位がJからmに変わり、位置水頭・圧力水頭・速度水頭になります。
- 高校の物理の「位置エネルギー+運動エネルギー=一定」に、流れる水では圧力エネルギーが加わります。両辺をmgで割ったものが、ベルヌーイの定理です。
- この定理は、粘り気(粘性)が無く、圧力をかけても縮まない理想の流れ(完全流体)で成り立ちます。エネルギー保存の法則に基づく定理です。
- 水圧は、水柱の重さを底の面積で割った値です。水では水頭1 mが約9.8 kPaにあたり、深さ10 mの底は約98 kPaです。
- 実際の管では、摩擦で失う分(損失水頭(そんしつすいとう))だけ、全水頭は下流ほど下がります。発電所では、2つの水面の差(総落差(そうらくさ))から損失水頭を引いた有効落差(ゆうこうらくさ)で出力を考えます。
- 水車の入口で損失が無視でき、高さの基準を水車の中心にとれば、そこの圧力水頭と速度水頭の和が、そのまま有効落差になります。
解き方:細くなった所の流速と水圧
- ① 最初の一手は、連続の定理で、細い所の流速を出すことです。流速に、内径の比の2乗を掛けます。
- ② ベルヌーイの定理に、2か所の高さ・圧力・流速を入れます。
- ③ 圧力はPaで計算し、最後にkPaに直します。
例の条件を短くまとめます(令和3年度 問2)。水が満ちて流れる水圧管で、断面Aは内径2.2 m、流速3 m/s、圧力24 kPaです。Aより30 m低い断面Bは、内径2 mです。
- 内径の比は2.2÷2=1.1です。Bの流速は3×1.1×1.1=3.63 m/sで、約3.6 m/sです。
- Bの水圧は、Bを高さの基準にして、ベルヌーイの定理から出します。
- 約316 kPaです。高さの分で294 kPa増え、速くなった分で約2 kPa減ります。
- 流速を3 m/sのまま入れると318 kPaになり、外れます。
関連:水力発電所の出力|キャビテーションと水撃作用|力・仕事・電力
水力発電所の出力 ── 出力は流量と有効落差に比例し、効率の分だけ減る

| 量 | 表すもの | 単位 |
|---|---|---|
| 総落差 | 貯水池の水面と、放水面の高さの差 | m |
| 損失水頭 | 水路や水圧管の摩擦で失う分を、高さで表したもの(損失落差とも言う) | m |
| 有効落差 | 総落差から損失水頭を引いた、出力に結びつく落差 | m |
| 理論水力 | 有効落差を落ちる水が、1秒間にする仕事。効率を掛ける前の値 | kW |
| 水車出力・発電機出力 | 理論水力に水車効率を掛け、さらに発電機効率を掛けた値 | kW |
| 年間発電電力量 | 発電機出力に、設備利用率(せつびりようりつ)と1年の時間を掛けた値 | kW·h |
理論水力は9.8×流量×有効落差で、出力は流量にも有効落差にも比例します。水の位置エネルギーを水車が回る力に、発電機が電気に変えるので、効率を2回掛けます。
言葉の式 有効落差 = 総落差 − 損失水頭
H:有効落差〔m〕 Ha:総落差〔m〕 hg:損失水頭〔m〕
言葉の式 理論水力 = 9.8 × 流量 × 有効落差
P0:理論水力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕
言葉の式 水車出力 = 理論水力 × 水車効率
Pw:水車出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率
言葉の式 発電機出力 = 理論水力 × 水車効率 × 発電機効率(水車と発電機の総合効率が1つで与えられたらそれを掛ける)
Pg:発電機出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率 ηg:発電機効率
言葉の式 年間発電電力量 = 発電機出力 × 設備利用率 × 8 760 時間(=24 h×365 日)
W:年間発電電力量〔kW·h〕 Pg:発電機出力(最大出力)〔kW〕 設備利用率:設備利用率(小数)
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 理論水力は、損失水頭を引く前の総落差で計算する | 有効落差(総落差−損失水頭)で計算する。理論水力は、損失水頭を引いた後で、効率を掛ける前の値 |
| 流量を2倍にすると、理論水力は4倍になる | 理論水力は流量に比例するので、2倍になる |
| 9.8×流量×有効落差の単位は、kJ | 1秒あたりの仕事なので、kW。kJは仕事(エネルギー)の単位 |
| 損失水頭を引いた高さを実効落差、総落差を基準落差や自然落差と呼ぶ | 有効落差・総落差と呼ぶ。「自然落差」「基準落差」「実効落差」は正しい呼び名ではない |
- 1 m³の水は1 000 kgで、9.8 kNの重力がかかります。この水が有効落差を落ちると、9.8×有効落差〔kJ〕の仕事をします。
- 単位を組み立てると、kg/m³・m/s²・m³/s・mは(kg·m/s²)・m/sです。kg·m/s²は力の単位N、N·mは仕事の単位J、J/sは仕事率の単位Wです。
- 密度の1 000がk(キロ)にあたるので、kWで表せます。Wで書くと、9.8×流量×有効落差×効率×10³〔W〕です。
- 水車と発電機の総合効率が1つの値で与えられたら、2つの効率の積の代わりに、その値を掛けます。
- 工場・現場では、ポンプの水動力も9.8×流量×全揚程(ぜんようてい)〔kW〕の同じ形です。ポンプは水へ動力を入れ、水車は水から動力を取り出します。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 設備利用率 | ある期間の発電電力量を、同じ期間に定格出力で運転したときの電力量で割った割合。参考書の式では「利用率」とだけ書くこともある |
| 利用率を掛ける所 | 出力は流量に比例するので、出力に掛けても、流量に掛けても同じ答えになる |
| 定格出力と負荷 | 定格出力は100%負荷のこと。80%負荷なら、出力は定格の0.8倍 |
| 流量を求める | 出力を、9.8×有効落差×効率で割る |
| 出力が下がった原因 | 流量・有効落差・効率のどれが下がったかを考える。出力は流量で決まるので、電圧や励磁の変化は原因の外 |
- 水路式で、出力が下がり、水車の流量が減ったのに、上部水槽の水位が上がったとします。水槽までは水が来ているので、原因は水槽より下流(水圧管・水車)と考えます。
解き方:年間発電電力量
- ① 最初の一手は、総落差から損失水頭を引いて、有効落差を出すことです。
- ② 9.8×流量×有効落差に効率を掛けて、発電機出力を出します。
- ③ 発電機出力に、設備利用率と1年の時間8 760 hを掛けます。
- ④ kW·hをGW·hに直すときは、10⁶で割ります。
例の条件を短くまとめます(令和5年度下期 問15(a))。最大使用水量20 m³/s、総落差200 m、損失水頭7 mです。水車と発電機の総合効率は85%、設備利用率は60%です。
- 有効落差は193 mです。
- 総合効率0.85は、水車効率の所に0.85、発電機効率の所に1を入れて掛けます。
- 1年の電力量は、次のとおり約1.69×10⁸ kW·hで、約170 GW·hです。
- 総落差200 mのまま計算すると、約175 GW·hになり、外れます。
解き方:雨の量から流量と電力量へ
- ① 最初の一手は、面積をm²、降水量をmにそろえることです。1 km²は10⁶ m²、1 mmは10⁻³ mです。
- ② 雨の体積に流出係数を掛け、1年の秒数で割ると平均の流量です。
- ③ 電力量を問われたら、体積を質量にし、位置エネルギー〔J〕を出して、kW·hに直します。
例の条件を短くまとめます(令和2年度 問15(a))。流域面積15 000 km²、年間降水量750 mm、流出係数0.7です。
Q:年間の平均流量〔m³/s〕 A:流域面積〔m²〕 r:年間降水量〔m〕 c:流出係数
- 平均の流量は、約250 m³/sです。
次の例の条件です(令和8年度上期 問2)。面積6 500 km²、平均海抜750 m、年間降水量1 100 mm、流出係数1です。理論的な包蔵水力を、電力量で求めます。
- 降った雨の体積は、6.5×10⁹ m²×1.1 m=7.15×10⁹ m³です。
m:水の質量〔kg〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 V:水の体積〔m³〕
m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕
- 電力量への換算は、次の関係を使います。
言葉の式 電力量〔kW·h〕× 3 600 = 熱量〔kJ〕(1 W×3 600 s=3 600 J)
W:電力量〔kW·h〕
- 1 TW·hは10⁹ kW·hなので、3.6×10¹⁵ Jです。5.26×10¹⁶ Jを割ると約14.6で、約15 TW·hです。
関連:ベルヌーイの定理と水頭|揚水発電と調整池の運用|10の何乗と接頭語
揚水発電と調整池の運用 ── 揚水は損失を足し、発電は引くので往復で必ず減る

| 比べる所 | 揚水(発電と逆向き) | 発電 |
|---|---|---|
| 損失が無いとき | 9.8×流量×総落差 | 9.8×流量×総落差 |
| 使う高さ | 総落差+損失水頭(揚程) | 総落差−損失水頭(有効落差) |
| 効率の扱い | 水に渡す動力を、効率で割る | 水が出す動力に、効率を掛ける |
| 求める電力 | 電動機の入力 | 発電機の出力 |
揚水は損失水頭を足して効率で割り、発電は損失水頭を引いて効率を掛けるので、往復すると必ず減ります。調整池は、1日に入る水をためておき、電気の多く要る時間にまとめて使う池です。
言葉の式 電動機入力 = 9.8 × 流量 × (総落差+損失水頭) ÷ (ポンプ効率 × 電動機効率)
Pm:電動機入力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 Ha:総落差〔m〕 hp:揚水時の損失水頭〔m〕 ηp:ポンプ効率 ηm:電動機効率
言葉の式 総合効率 = 発電機出力 ÷ 揚水に要る電力 = (Ha−hg)/(Ha+hp) × ηp ηm ηw ηg
η:揚水発電所の総合効率 Ha:総落差〔m〕 hg:発電時の損失水頭〔m〕 hp:揚水時の損失水頭〔m〕 ηp:ポンプ効率 ηm:電動機効率 ηw:水車効率 ηg:発電機効率
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 揚水するときも、総落差から損失水頭を引いた高さまで上げればよい | 管でこすれて失う分も余分に上げるので、損失水頭を足す |
| 電動機の入力は、水に渡す動力に効率を掛けて出す | 入力は出力より大きいので、効率で割る |
| 揚水と発電の流量が違っても、総合効率は出力の比で出す | 時間も違ってくるので、電力量(出力×時間)の比で出す |
| 調整池に要る水の量は、ピークに使う流量×ピークの時間 | ピークの間も川の水は入るので、(使う流量−入る流量)×時間 |
- 揚水式は、電気が余る深夜などに下の池の水を上の池へくみ上げ、電気が多く要る時間に落として発電します。
- 1台のポンプ水車と発電電動機で、くみ上げと発電を切り替える発電所もあります。
- 総合効率は、同じ量の水で、揚水に使った電力の何割を発電で取り戻せるかを表します。
- 損失水頭を0とみなしても、ポンプ・電動機・水車・発電機の効率の分が残ります。総合効率は100%より小さくなります。
- 揚水と発電で流量が違うときは、揚水にかかる時間を、発電で使った水の量÷揚水の流量で出します。総合効率は電力量の比です。
言葉の式 揚水所要時間 = 発電で使った水量 ÷ 揚水の流量 = (発電の流量×発電の時間) ÷ 揚水の流量
TP:揚水所要時間〔h〕 QG:発電時の使用流量〔m³/s〕 TG:発電時間〔h〕 QP:揚水の流量〔m³/s〕
言葉の式 総合効率 = 発電電力量 ÷ 揚水電力量 = (発電機出力×発電時間) ÷ (電動機入力×揚水時間)
η:総合効率 PG:発電機出力〔kW〕 TG:発電時間〔h〕 PP:電動機入力(揚水入力)〔kW〕 TP:揚水所要時間〔h〕
- 水の量から揚水の電力量を出すときは、位置エネルギーを効率で割ります。例は令和4年度上期 問15(a)の条件です。揚程450 m、効率は0.9×0.98=0.882、水量1 800 000 m³です。
m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕
- 3.6×10⁹ Jが1 MW·hなので、約2 205 MW·hです。効率で割ると、約2 500 MW·hです。
- 流況曲線(りゅうきょうきょくせん)は、1年の毎日の流量を、多い日から順に並べた曲線です。横軸は日数、縦軸は流量です。
- 横軸の日数の所の流量は、1年のうちその日数は、少なくともその流量があることを表します。200日の所が14 m³/sなら、1年に200日以上は14 m³/s以上あります。
- 355日の所の流量を渇水量と呼びます。1年のうち355日は確保できる流量です。
- 流況曲線は、使用水量や発電電力量の計画に使います。
解き方:揚水の入力と発電の出力
- ① 最初の一手は、揚水は「総落差+損失水頭」、発電は「総落差−損失水頭」と書き分けることです。
- ② 揚水は9.8×流量×揚程を効率で割り、発電は9.8×流量×有効落差に効率を掛けます。
- ③ 総合効率は、発電の出力を揚水の入力で割ります。
例の条件を短くまとめます(令和6年度上期 問2)。総落差200 m、流量は揚水・発電とも100 m³/s、損失水頭はどちらも総落差の2.5%です。ポンプと水車の効率は85%、電動機と発電機の効率は98%です。
- 損失水頭は200×0.025=5 mです。揚程は205 m、有効落差は195 mです。
Pg:発電機出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率 ηg:発電機効率
- 入力は約241 MW、出力は約159 MWです。損失水頭を忘れると、235 MWと163 MWになり、外れます。
- 総合効率は、約66%です。

解き方:調整池の1日の水の釣り合い
- ① 最初の一手は、1日に入る水の量と、1日に使う水の量を等しくおくことです。
- ② 運転する時間で1日分を使い切るなら、1日の流入量を運転の秒数で割ると、使える流量です。
- ③ 池に要る量は、運転の間に足りない流量(使う流量−入る流量)×運転の秒数です。
例の条件を短くまとめます(令和7年度上期 問15)。流況曲線を持つ川の全流量を使う調整池式の発電所です。渇水量8 m³/sの日に、1日6時間だけ運転します。
V:水の量(体積)〔m³〕 Q:流量〔m³/s〕 t:時間〔s〕
- この691 200 m³を、6時間(21 600 s)で使い切ります。使用流量は、691 200÷21 600=32.0 m³/sです。
- 運転しない18時間(64 800 s)に池へたまるのは、8×64 800=518 400 m³です。
- 次に、200日以上出る流量14 m³/sの日に、32 m³/sで8時間運転するときの池の大きさです。
V:調整池の有効貯水量〔m³〕 QP:最大使用水量(ピーク時の使用流量)〔m³/s〕 QN:自然流量(川から取り入れる流量)〔m³/s〕 T:ピークの継続時間〔h〕
- 518 400 m³以上の池が要ります。運転中も14 m³/sは入るので、32×8時間分は要りません。
もう1つの例です(平成30年度 問15)。自然流量6 m³/sで一定の池から、ピークに10 m³/sを6時間使います。残りの時間は一定の流量で、1日の自然流量をすべて使います。
- 有効落差100 m、水車効率90%、発電機効率96%です。
QO:オフピーク時の使用流量〔m³/s〕 QN:自然流量(一定)〔m³/s〕 QP:最大使用水量(ピーク時の使用流量)〔m³/s〕 T:ピークの継続時間〔h〕
- 池は86 400 m³、オフピークの流量は約4.67 m³/sです。その間の発電機出力は約3 950 kWで、選ぶ値は約4 000 kWです。時間を秒に直し忘れると、桁が合いません。
まとめ
水力発電所は、落差の作り方と流量の使い方の組合せで名前が決まります。
損失が無ければ3つの水頭の合計は一定で、出力は流量と有効落差に比例します。
揚水は損失水頭を足して効率で割り、発電は引いて掛けるので、往復で必ず減ります。
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参考文献
- 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH01 水力発電の章(SEC01〜03)
- 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第1章 水力発電
- 第三種電気主任技術者試験 電力・法規 問題(電気技術者試験センター) 平成29年度・平成30年度・令和2年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度下期・令和6年度上期・令和7年度上期・令和7年度下期・令和8年度上期
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