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電験三種 電力 水力発電①|発電所の分類・ベルヌーイの定理・出力・揚水発電

電験三種 電力 水力発電①|発電所の分類・ベルヌーイの定理・出力・揚水発電

最終確認:2026年11月3日

電験三種の電力で、水力発電の土台になる4つの論点をまとめた辞書です。発電所の分け方、ベルヌーイの定理と水頭、発電所の出力、水をくみ上げる揚水と調整池の運用の順に確かめます。

電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性

水力発電所の分類 ── 落差の作り方と流量の使い方の組合せで名前が決まる

水力発電所の分類:落差の作り方(水路式・ダム式・ダム水路式)と流量の使い方(流込み式・調整池式・貯水池式・揚水式)の2つの組合せで名前が決まり、池なしの水路式は流込み式につながる。例はダム水路式・調整池式
分け方方式中身
落差の作り方水路式上流で取り入れた水を、ゆるやかな水路で運び、下流で一気に落とす
落差の作り方ダム式ダムで川をせき止め、水位を上げて落差を作る
落差の作り方ダム水路式ダムで上げた水を、さらに水路で下流へ運ぶ
流量の使い方流込み式流量を調整する池を持たず、川の流れのまま使う
流量の使い方調整池式(ちょうせいちしき)・貯水池式(ちょすいちしき)池にためて、日間・週間(調整池)や季節(貯水池)の流量をならす
流量の使い方揚水式(ようすいしき)余った電力で、水を上の池へくみ上げておく

水力発電所は、落差の作り方と流量の使い方の2つの軸で分けます。どの方式も、高い所の水が落ちるエネルギーで水車を回し、つないだ発電機で電気に変えます。

よくある誤り正しくは
水路式・ダム式・ダム水路式は、流量の使い方による分け方落差の作り方による分け方。流量の使い方で分けると、流込み式・調整池式・貯水池式・揚水式
池を持たない水路式でも、水をためて需要の大きい時間に出力を上げられる池を持たない水路式は流込み式で、川から入る分しか使えない。発電する量の調整には向かない
アーチダムは、両岸の幅が広い谷に向く水圧を両岸の岩盤で支えるので、両岸の幅が狭く、岩盤の丈夫な所に作る
アースダムは、岩などの強固な基礎の上にしか作れない粘土などの柔軟な基礎の上にも作れ、かんがい用の池などに向く
  • 水路式は、川が長い距離をかけてゆるやかに下ることを生かします。上流で取った水を川とは別の道で運ぶと、下流へ行くほど川との高さの差が開きます。
  • 水路式でも、ゆるやかな水路で運ぶので、下流では川との間に大きな落差ができます。ただ、ダム式・ダム水路式に比べると、高い落差を得にくい方式です。
  • 水路式は大きなダムが要らないので、建設費は安くなります。
  • 調整池は、日間または週間の負荷の変動に合わせる池です。深夜や軽負荷の時間に川の水を蓄え、ピークの時間に放流します。
  • 貯水池は、季節の流量の変動をならす池です。洪水や豊水期の水を蓄え、渇水期に使います。

水路式の設備とダムの種類

水路式の並びは、取水ダム、取水口、沈砂池、導水路、水槽、水圧管、発電所(水車)、放水路の順です。

設備役目
取水ダム川の水をせき止めて取り入れる、高さの低いダム
取水口川の水を取り入れて、水路に導く入口
導水路取水口から水槽までの、水の通り道
水槽流量を調整する。水路の形で2種類ある
水圧管水槽から水車(発電所)まで、水を落とす管
水路の種類水の満ち方流速を決めるもの
開きょ上が開いた溝。土砂や落ち葉が入るこう配
無圧トンネル水が満ちていない(上に空間がある)こう配
圧力トンネル水が満ちている水圧の差(こう配は関係ない)
  • トンネルは山の中を進むので、川沿いに回り道をしなくて済みます。土砂や落ち葉も入りません。
  • 水槽には、ヘッドタンクとサージタンクがあります。無圧の水路の先がヘッドタンク、圧力トンネルの先がサージタンクです(水力発電②で扱います)。
ダム支え方・つくり向く所
重力ダムコンクリートの重さで水圧に耐える。構造が簡単で安定し、国内で最も多い—
アーチダム薄いアーチ形で、水圧を両岸の岩盤に伝える。コンクリートを節約できる両岸の幅が狭く、岩盤が丈夫な谷
ロックフィルダム水を通さない粘土のコアを砂利で守り、岩石で支える。非常に大きくなる近くに岩石や砂利が多い所
アースダム砂・砂利・粘土を混ぜた土が主な材料柔軟な基礎の上。かんがい用の池
  • ダムの種類は出題が少なめですが、正誤問題では、向く所(谷の幅・基礎の固さ)の取り違えが問われます。

水力発電の特徴と位置づけ

見る所中身
運転短時間で起動・停止でき、ピークの需要に合わせて動かせる
設備耐用年数が長く、エネルギーを変える効率が高い
国内の発電電力量に占める割合近年は10%未満(揚水を含む2020年度で7.8%)。1975年ごろまでは20%以上だった
いまの役割ピーク対応で盛んに使われ、温室効果ガスの排出も少ない。役割が失われたわけではない

関連:揚水発電と調整池の運用|水力発電所の出力|水車の種類

ベルヌーイの定理と水頭 ── 高さ・圧力・速さの水頭の合計は流れに沿って一定

ベルヌーイの定理:細い所では速度水頭が増えた分だけ圧力水頭が減り、速度・圧力・位置の3つの水頭の合計は一定
水頭表すもの求め方
位置水頭(いちすいとう)基準面からの高さ高さそのもの
圧力水頭(あつりょくすいとう)水の圧力を、水柱の高さに直した分圧力÷(密度×重力加速度)
速度水頭(そくどすいとう)流れる速さを、高さに直した分流速の2乗÷(2×重力加速度)

損失の無い流れでは、同じ流れの線に沿って、3つの水頭の合計(全水頭)が変わりません。同じ高さで管が細くなると、流速が上がって速度水頭が増え、その分だけ圧力が下がります。

言葉の式 位置水頭 + 圧力水頭 + 速度水頭 = 一定(2か所で等しい)

h1+p1ρg+v122g=h2+p2ρg+v222g

h1:地点1の位置水頭(基準面からの高さ)〔m〕 p1:地点1の水圧〔Pa〕 v1:地点1の流速〔m/s〕 h2:地点2の位置水頭〔m〕 p2:地点2の水圧〔Pa〕 v2:地点2の流速〔m/s〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕

言葉の式 管のどの断面でも、流量(=断面積 × 流速)は同じ

A1v1=A2v2

Q:流量(1秒間に通る水の量)〔m³/s〕 A1:断面1の断面積〔m²〕 v1:断面1の流速〔m/s〕 A2:断面2の断面積〔m²〕 v2:断面2の流速〔m/s〕

言葉の式 水圧 = 密度 × 重力加速度 × 水柱の高さ(高さ = 水圧 ÷ (密度×重力加速度))

p=ρgh

p:水圧〔Pa〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水柱の高さ(水頭)〔m〕

よくある誤り正しくは
同じ高さで管が細くなると、細い所の水の圧力は高くなる流速が上がって速度水頭が増え、その分だけ圧力水頭が下がる
流速は、管の内径に反比例して変わる流速は断面積に反比例する。円い管では、内径の比の2乗で変わる
管の位置が下がると、全水頭も同じだけ下がる損失が無ければ全水頭は変わらない。下がった位置水頭の分は、圧力水頭か速度水頭に移る
流れに沿ってエネルギーの和が一定という定理を、パスカルの原理と呼ぶベルヌーイの定理と呼ぶ。1 m³あたりの運動エネルギーは、½×密度×流速の2乗(密度は2乗しない)

3つのエネルギーから水頭へ

管の中を流れる水は、位置・圧力・運動の3つのエネルギー〔J〕を持っています。位置エネルギーは、高さが下がると運動エネルギーと圧力エネルギーに変わります。

言葉の式 位置エネルギー = 質量 × 重力加速度 × 高さ(g=9.8 m/s²)

mgh=9.8mh

m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕

言葉の式 圧力エネルギー = 水圧 × 体積 = 質量 × 水圧 ÷ 密度

pV=mpρ

p:水圧〔Pa〕 V:水の体積〔m³〕 m:水の質量〔kg〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕

言葉の式 運動エネルギー = ½ × 質量 × 速さ²

Wk=12mv2

Wk:運動エネルギー〔J〕 m:質量〔kg〕 v:速さ〔m/s〕

  • 3つを、どれも質量×重力加速度(mg)で割ると、単位がJからmに変わり、位置水頭・圧力水頭・速度水頭になります。
  • 高校の物理の「位置エネルギー+運動エネルギー=一定」に、流れる水では圧力エネルギーが加わります。両辺をmgで割ったものが、ベルヌーイの定理です。
  • この定理は、粘り気(粘性)が無く、圧力をかけても縮まない理想の流れ(完全流体)で成り立ちます。エネルギー保存の法則に基づく定理です。
  • 水圧は、水柱の重さを底の面積で割った値です。水では水頭1 mが約9.8 kPaにあたり、深さ10 mの底は約98 kPaです。
  • 実際の管では、摩擦で失う分(損失水頭(そんしつすいとう))だけ、全水頭は下流ほど下がります。発電所では、2つの水面の差(総落差(そうらくさ))から損失水頭を引いた有効落差(ゆうこうらくさ)で出力を考えます。
  • 水車の入口で損失が無視でき、高さの基準を水車の中心にとれば、そこの圧力水頭と速度水頭の和が、そのまま有効落差になります。

解き方:細くなった所の流速と水圧

  • ① 最初の一手は、連続の定理で、細い所の流速を出すことです。流速に、内径の比の2乗を掛けます。
  • ② ベルヌーイの定理に、2か所の高さ・圧力・流速を入れます。
  • ③ 圧力はPaで計算し、最後にkPaに直します。

例の条件を短くまとめます(令和3年度 問2)。水が満ちて流れる水圧管で、断面Aは内径2.2 m、流速3 m/s、圧力24 kPaです。Aより30 m低い断面Bは、内径2 mです。

  • 内径の比は2.2÷2=1.1です。Bの流速は3×1.1×1.1=3.63 m/sで、約3.6 m/sです。
  • Bの水圧は、Bを高さの基準にして、ベルヌーイの定理から出します。
30 m+24 kPa1000 kg/m³×g+(3 m/s)22g=0 m+p21000 kg/m³×g+(3.63 m/s)22gp2=3.159×105 Pa
  • 約316 kPaです。高さの分で294 kPa増え、速くなった分で約2 kPa減ります。
  • 流速を3 m/sのまま入れると318 kPaになり、外れます。

関連:水力発電所の出力|キャビテーションと水撃作用|力・仕事・電力

水力発電所の出力 ── 出力は流量と有効落差に比例し、効率の分だけ減る

水力発電所の出力:流量10 m³/sで総落差から損失水頭を引いた有効落差から理論水力9 800 kWが決まり、水車出力8 820 kW、発電機出力8 467 kWと効率の分だけ小さくなる
量表すもの単位
総落差貯水池の水面と、放水面の高さの差m
損失水頭水路や水圧管の摩擦で失う分を、高さで表したもの(損失落差とも言う)m
有効落差総落差から損失水頭を引いた、出力に結びつく落差m
理論水力有効落差を落ちる水が、1秒間にする仕事。効率を掛ける前の値kW
水車出力・発電機出力理論水力に水車効率を掛け、さらに発電機効率を掛けた値kW
年間発電電力量発電機出力に、設備利用率(せつびりようりつ)と1年の時間を掛けた値kW·h

理論水力は9.8×流量×有効落差で、出力は流量にも有効落差にも比例します。水の位置エネルギーを水車が回る力に、発電機が電気に変えるので、効率を2回掛けます。

言葉の式 有効落差 = 総落差 − 損失水頭

H=Ha−hg

H:有効落差〔m〕 Ha:総落差〔m〕 hg:損失水頭〔m〕

言葉の式 理論水力 = 9.8 × 流量 × 有効落差

P0=9.8QH

P0:理論水力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕

言葉の式 水車出力 = 理論水力 × 水車効率

Pw=9.8QHηw=P0ηw

Pw:水車出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率

言葉の式 発電機出力 = 理論水力 × 水車効率 × 発電機効率(水車と発電機の総合効率が1つで与えられたらそれを掛ける)

Pg=9.8QHηwηg=P0ηwηg

Pg:発電機出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率 ηg:発電機効率

言葉の式 年間発電電力量 = 発電機出力 × 設備利用率 × 8 760 時間(=24 h×365 日)

W=Pg×設備利用率×8760

W:年間発電電力量〔kW·h〕 Pg:発電機出力(最大出力)〔kW〕 設備利用率:設備利用率(小数)

よくある誤り正しくは
理論水力は、損失水頭を引く前の総落差で計算する有効落差(総落差−損失水頭)で計算する。理論水力は、損失水頭を引いた後で、効率を掛ける前の値
流量を2倍にすると、理論水力は4倍になる理論水力は流量に比例するので、2倍になる
9.8×流量×有効落差の単位は、kJ1秒あたりの仕事なので、kW。kJは仕事(エネルギー)の単位
損失水頭を引いた高さを実効落差、総落差を基準落差や自然落差と呼ぶ有効落差・総落差と呼ぶ。「自然落差」「基準落差」「実効落差」は正しい呼び名ではない
  • 1 m³の水は1 000 kgで、9.8 kNの重力がかかります。この水が有効落差を落ちると、9.8×有効落差〔kJ〕の仕事をします。
  • 単位を組み立てると、kg/m³・m/s²・m³/s・mは(kg·m/s²)・m/sです。kg·m/s²は力の単位N、N·mは仕事の単位J、J/sは仕事率の単位Wです。
  • 密度の1 000がk(キロ)にあたるので、kWで表せます。Wで書くと、9.8×流量×有効落差×効率×10³〔W〕です。
  • 水車と発電機の総合効率が1つの値で与えられたら、2つの効率の積の代わりに、その値を掛けます。
  • 工場・現場では、ポンプの水動力も9.8×流量×全揚程(ぜんようてい)〔kW〕の同じ形です。ポンプは水へ動力を入れ、水車は水から動力を取り出します。
場面考え方
設備利用率ある期間の発電電力量を、同じ期間に定格出力で運転したときの電力量で割った割合。参考書の式では「利用率」とだけ書くこともある
利用率を掛ける所出力は流量に比例するので、出力に掛けても、流量に掛けても同じ答えになる
定格出力と負荷定格出力は100%負荷のこと。80%負荷なら、出力は定格の0.8倍
流量を求める出力を、9.8×有効落差×効率で割る
出力が下がった原因流量・有効落差・効率のどれが下がったかを考える。出力は流量で決まるので、電圧や励磁の変化は原因の外
  • 水路式で、出力が下がり、水車の流量が減ったのに、上部水槽の水位が上がったとします。水槽までは水が来ているので、原因は水槽より下流(水圧管・水車)と考えます。

解き方:年間発電電力量

  • ① 最初の一手は、総落差から損失水頭を引いて、有効落差を出すことです。
  • ② 9.8×流量×有効落差に効率を掛けて、発電機出力を出します。
  • ③ 発電機出力に、設備利用率と1年の時間8 760 hを掛けます。
  • ④ kW·hをGW·hに直すときは、10⁶で割ります。

例の条件を短くまとめます(令和5年度下期 問15(a))。最大使用水量20 m³/s、総落差200 m、損失水頭7 mです。水車と発電機の総合効率は85%、設備利用率は60%です。

  • 有効落差は193 mです。
H=200 m−7 m=193 m
  • 総合効率0.85は、水車効率の所に0.85、発電機効率の所に1を入れて掛けます。
Pg=9.8×20 m³/s×193 m×0.85×1=32154 kW
  • 1年の電力量は、次のとおり約1.69×10⁸ kW·hで、約170 GW·hです。
W=32150 kW×0.6×8760=1.69×108 kW·h
  • 総落差200 mのまま計算すると、約175 GW·hになり、外れます。

解き方:雨の量から流量と電力量へ

  • ① 最初の一手は、面積をm²、降水量をmにそろえることです。1 km²は10⁶ m²、1 mmは10⁻³ mです。
  • ② 雨の体積に流出係数を掛け、1年の秒数で割ると平均の流量です。
  • ③ 電力量を問われたら、体積を質量にし、位置エネルギー〔J〕を出して、kW·hに直します。

例の条件を短くまとめます(令和2年度 問15(a))。流域面積15 000 km²、年間降水量750 mm、流出係数0.7です。

Q=1.5×1010 m²×0.75 m×0.7365×24×3600=249.7 m³/s

Q:年間の平均流量〔m³/s〕 A:流域面積〔m²〕 r:年間降水量〔m〕 c:流出係数

  • 平均の流量は、約250 m³/sです。

次の例の条件です(令和8年度上期 問2)。面積6 500 km²、平均海抜750 m、年間降水量1 100 mm、流出係数1です。理論的な包蔵水力を、電力量で求めます。

  • 降った雨の体積は、6.5×10⁹ m²×1.1 m=7.15×10⁹ m³です。
m=1000 kg/m³×7.15×109 m³=7.15×1012 kg

m:水の質量〔kg〕 ρ:水の密度〔kg/m³〕 V:水の体積〔m³〕

7.15×1012 kg×g×750 m=9.8×7.15×1012 kg×750 mU=5.255×1016 J

m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕

  • 電力量への換算は、次の関係を使います。

言葉の式 電力量〔kW·h〕× 3 600 = 熱量〔kJ〕(1 W×3 600 s=3 600 J)

1kW·h=3600kJ=3.6×106J

W:電力量〔kW·h〕

  • 1 TW·hは10⁹ kW·hなので、3.6×10¹⁵ Jです。5.26×10¹⁶ Jを割ると約14.6で、約15 TW·hです。

関連:ベルヌーイの定理と水頭|揚水発電と調整池の運用|10の何乗と接頭語

揚水発電と調整池の運用 ── 揚水は損失を足し、発電は引くので往復で必ず減る

揚水発電所の入力と出力:揚水では総落差に損失水頭を足した高さまで上げ、発電では総落差から損失水頭を引いた高さしか使えず、全体の効率は発電機出力を電動機入力で割って表す
比べる所揚水(発電と逆向き)発電
損失が無いとき9.8×流量×総落差9.8×流量×総落差
使う高さ総落差+損失水頭(揚程)総落差−損失水頭(有効落差)
効率の扱い水に渡す動力を、効率で割る水が出す動力に、効率を掛ける
求める電力電動機の入力発電機の出力

揚水は損失水頭を足して効率で割り、発電は損失水頭を引いて効率を掛けるので、往復すると必ず減ります。調整池は、1日に入る水をためておき、電気の多く要る時間にまとめて使う池です。

言葉の式 電動機入力 = 9.8 × 流量 × (総落差+損失水頭) ÷ (ポンプ効率 × 電動機効率)

Pm=9.8Q(Ha+hp)ηpηm

Pm:電動機入力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 Ha:総落差〔m〕 hp:揚水時の損失水頭〔m〕 ηp:ポンプ効率 ηm:電動機効率

言葉の式 総合効率 = 発電機出力 ÷ 揚水に要る電力 = (Ha−hg)/(Ha+hp) × ηp ηm ηw ηg

η=Ha−hgHa+hpηpηmηwηg

η:揚水発電所の総合効率 Ha:総落差〔m〕 hg:発電時の損失水頭〔m〕 hp:揚水時の損失水頭〔m〕 ηp:ポンプ効率 ηm:電動機効率 ηw:水車効率 ηg:発電機効率

よくある誤り正しくは
揚水するときも、総落差から損失水頭を引いた高さまで上げればよい管でこすれて失う分も余分に上げるので、損失水頭を足す
電動機の入力は、水に渡す動力に効率を掛けて出す入力は出力より大きいので、効率で割る
揚水と発電の流量が違っても、総合効率は出力の比で出す時間も違ってくるので、電力量(出力×時間)の比で出す
調整池に要る水の量は、ピークに使う流量×ピークの時間ピークの間も川の水は入るので、(使う流量−入る流量)×時間
  • 揚水式は、電気が余る深夜などに下の池の水を上の池へくみ上げ、電気が多く要る時間に落として発電します。
  • 1台のポンプ水車と発電電動機で、くみ上げと発電を切り替える発電所もあります。
  • 総合効率は、同じ量の水で、揚水に使った電力の何割を発電で取り戻せるかを表します。
  • 損失水頭を0とみなしても、ポンプ・電動機・水車・発電機の効率の分が残ります。総合効率は100%より小さくなります。
  • 揚水と発電で流量が違うときは、揚水にかかる時間を、発電で使った水の量÷揚水の流量で出します。総合効率は電力量の比です。

言葉の式 揚水所要時間 = 発電で使った水量 ÷ 揚水の流量 = (発電の流量×発電の時間) ÷ 揚水の流量

TP=QGTGQP

TP:揚水所要時間〔h〕 QG:発電時の使用流量〔m³/s〕 TG:発電時間〔h〕 QP:揚水の流量〔m³/s〕

言葉の式 総合効率 = 発電電力量 ÷ 揚水電力量 = (発電機出力×発電時間) ÷ (電動機入力×揚水時間)

η=PGTGPPTP

η:総合効率 PG:発電機出力〔kW〕 TG:発電時間〔h〕 PP:電動機入力(揚水入力)〔kW〕 TP:揚水所要時間〔h〕

  • 水の量から揚水の電力量を出すときは、位置エネルギーを効率で割ります。例は令和4年度上期 問15(a)の条件です。揚程450 m、効率は0.9×0.98=0.882、水量1 800 000 m³です。
1.8×109 kg×g×450 m=9.8×1.8×109 kg×450 mU=7.938×1012 J

m:水の質量〔kg〕 g:重力加速度(9.8)〔m/s²〕 h:水のある高さ〔m〕

  • 3.6×10⁹ Jが1 MW·hなので、約2 205 MW·hです。効率で割ると、約2 500 MW·hです。
  • 流況曲線(りゅうきょうきょくせん)は、1年の毎日の流量を、多い日から順に並べた曲線です。横軸は日数、縦軸は流量です。
  • 横軸の日数の所の流量は、1年のうちその日数は、少なくともその流量があることを表します。200日の所が14 m³/sなら、1年に200日以上は14 m³/s以上あります。
  • 355日の所の流量を渇水量と呼びます。1年のうち355日は確保できる流量です。
  • 流況曲線は、使用水量や発電電力量の計画に使います。

解き方:揚水の入力と発電の出力

  • ① 最初の一手は、揚水は「総落差+損失水頭」、発電は「総落差−損失水頭」と書き分けることです。
  • ② 揚水は9.8×流量×揚程を効率で割り、発電は9.8×流量×有効落差に効率を掛けます。
  • ③ 総合効率は、発電の出力を揚水の入力で割ります。

例の条件を短くまとめます(令和6年度上期 問2)。総落差200 m、流量は揚水・発電とも100 m³/s、損失水頭はどちらも総落差の2.5%です。ポンプと水車の効率は85%、電動機と発電機の効率は98%です。

  • 損失水頭は200×0.025=5 mです。揚程は205 m、有効落差は195 mです。
Pm=9.8×100 m³/s×(200 m+5 m)0.85×0.98=2.412×105 kW
Pg=9.8×100 m³/s×195 m×0.85×0.98=1.592×105 kW

Pg:発電機出力〔kW〕 Q:流量〔m³/s〕 H:有効落差〔m〕 ηw:水車効率 ηg:発電機効率

  • 入力は約241 MW、出力は約159 MWです。損失水頭を忘れると、235 MWと163 MWになり、外れます。
η=200 m−5 m200 m+5 m×0.85×0.98×0.85×0.98=0.66
  • 総合効率は、約66%です。
調整池の水の収支:入る流量6 m³/sに対して12 m³/sで使う時間があるとき、ためた量(2×18=36)と出した量(6×6=36)が等しい

解き方:調整池の1日の水の釣り合い

  • ① 最初の一手は、1日に入る水の量と、1日に使う水の量を等しくおくことです。
  • ② 運転する時間で1日分を使い切るなら、1日の流入量を運転の秒数で割ると、使える流量です。
  • ③ 池に要る量は、運転の間に足りない流量(使う流量−入る流量)×運転の秒数です。

例の条件を短くまとめます(令和7年度上期 問15)。流況曲線を持つ川の全流量を使う調整池式の発電所です。渇水量8 m³/sの日に、1日6時間だけ運転します。

V=8 m³/s×86400 s=6.912×105 m³

V:水の量(体積)〔m³〕 Q:流量〔m³/s〕 t:時間〔s〕

  • この691 200 m³を、6時間(21 600 s)で使い切ります。使用流量は、691 200÷21 600=32.0 m³/sです。
  • 運転しない18時間(64 800 s)に池へたまるのは、8×64 800=518 400 m³です。
  • 次に、200日以上出る流量14 m³/sの日に、32 m³/sで8時間運転するときの池の大きさです。
V=(32 m³/s−14 m³/s)×8 h×3600=5.184×105 m³

V:調整池の有効貯水量〔m³〕 QP:最大使用水量(ピーク時の使用流量)〔m³/s〕 QN:自然流量(川から取り入れる流量)〔m³/s〕 T:ピークの継続時間〔h〕

  • 518 400 m³以上の池が要ります。運転中も14 m³/sは入るので、32×8時間分は要りません。

もう1つの例です(平成30年度 問15)。自然流量6 m³/sで一定の池から、ピークに10 m³/sを6時間使います。残りの時間は一定の流量で、1日の自然流量をすべて使います。

  • 有効落差100 m、水車効率90%、発電機効率96%です。
V=(10 m³/s−6 m³/s)×6 h×3600=86400 m³
QO=6 m³/s×24−10 m³/s×6 h24−6 h=4.667 m³/s

QO:オフピーク時の使用流量〔m³/s〕 QN:自然流量(一定)〔m³/s〕 QP:最大使用水量(ピーク時の使用流量)〔m³/s〕 T:ピークの継続時間〔h〕

Pg=9.8×4.667 m³/s×100 m×0.9×0.96=3952 kW
  • 池は86 400 m³、オフピークの流量は約4.67 m³/sです。その間の発電機出力は約3 950 kWで、選ぶ値は約4 000 kWです。時間を秒に直し忘れると、桁が合いません。

関連:水力発電所の分類|水力発電所の出力|分数・比・割合

まとめ

水力発電所は、落差の作り方と流量の使い方の組合せで名前が決まります。

損失が無ければ3つの水頭の合計は一定で、出力は流量と有効落差に比例します。

揚水は損失水頭を足して効率で割り、発電は引いて掛けるので、往復で必ず減ります。

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参考文献

  • 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH01 水力発電の章(SEC01〜03)
  • 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第1章 水力発電
  • 第三種電気主任技術者試験 電力・法規 問題(電気技術者試験センター) 平成29年度・平成30年度・令和2年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度下期・令和6年度上期・令和7年度上期・令和7年度下期・令和8年度上期

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