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電験三種 電力 送電の特性|フェランチ効果・中性点接地・直流送電・安定度

電験三種 電力 送電の特性|フェランチ効果・中性点接地・直流送電・安定度

最終確認:2026年11月3日

電験三種の電力で、送電線そのものの性質を4つの論点にまとめた辞書です。線路定数とフェランチ効果、地絡(ちらく)に備える中性点接地(ちゅうせいてんせっち)、直流送電、送電電力と安定度の順に確かめます。

電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性

線路定数とフェランチ効果 ── 軽負荷では進み電流で受電端の電圧が送電端を超える

フェランチ現象:軽い負荷では進み電流のため受電端の電圧が送電端より高くなり(棒も受電端が上)、分路リアクトルで戻し、静電容量がない短距離では起きない
線路定数何から生じるか覚える向き
抵抗(ていこう)電線の材料・長さ・太さ温度が上がると大きい。交流では表皮効果(ひょうひこうか)で直流より大きい
作用インダクタンス(さよういんだくたんす)電線を流れる交流がつくる磁束(じそく)線間距離と電線の半径の比が大きいほど大きい
作用静電容量(さようせいでんようりょう)電線どうし・電線と大地の間のコンデンサ線間距離と電線の半径の比が大きいほど小さい
漏れコンダクタンス塩害やコロナで、がいしの表面を流れる漏れ電流(もれでんりゅう)とても小さいので、ふつうは省く

軽い負荷では、静電容量の進んだ充電電流が勝ち、受電端の電圧が送電端より高くなります。これがフェランチ効果(ふぇらんちこうか)で、分路リアクトル(ぶんろりあくとる)を入れて抑えます。

言葉の式 受電端電圧 = 送電端電圧 ÷(1 − B × X ÷ 2)

Er=Es1−BX2

Er:受電端の相電圧〔V〕 Es:送電端の相電圧〔V〕 B:線路全体のサセプタンス(π形では B/2 ずつ両端)〔S〕 X:線路のリアクタンス〔Ω〕

よくある誤り正しくは
フェランチ効果は、負荷が重いときに起きやすい起きやすいのは無負荷・軽負荷のとき。重いと、遅れの負荷電流が進みを打ち消す
フェランチ効果のとき、線路の電流は電圧より遅れている進んでいる。進んだ電流が線路のリアクタンスを流れて、受電端が上がる
線間距離と半径の比が大きいほど、作用静電容量は大きくなる小さくなる。大きくなるのは作用インダクタンスで、向きが逆
表皮効果で、直流のほうが抵抗が大きくなる交流のほうが大きい。周波数が高いほど表皮効果は大きい
  • 線路定数は、電線の種類・断面積・配置で決まります。電圧や電流では、ほとんど変わりません。
  • 表皮効果は、交流で電線の中心に電流が流れにくくなり、実質の断面積が減る現象です。
  • 作用インダクタンスは、1本の電線が持つインダクタンスです。正しくは、1線の中性点に対する値です。
  • 作用静電容量は、対地静電容量(たいちせいでんようりょう)と線間静電容量(せんかんせいでんようりょう)から求めます。線間静電容量を中性点に対する値に直してから、対地静電容量に足します。
  • 三相では、線間静電容量を中性点に対する値に直すと、3倍の値になります。2つをそのまま足すのではありません。
  • 参考書には「対地静電容量と線間静電容量の和」とだけ書くものもあります。線間の分は、3倍に直してから足すと読みます。
  • 多導体(たどうたい)は、同じ断面積の単導体より等価半径が大きいので、インダクタンスが小さくなります。

線路定数の式と、フェランチ効果のしくみ

言葉の式 抵抗 = 抵抗率 × こう長 ÷ 断面積

R=ρ×ℓA

R:電線の抵抗〔Ω〕 ρ:抵抗率〔Ω·mm²/m〕 ℓ:こう長(電線の長さ)〔m〕 A:電線の断面積〔mm²〕

言葉の式 作用インダクタンス = 0.05 + 0.4605 × log₁₀(線間距離 ÷ 電線の半径)[mH/km]

L=0.05+0.4605log10Dr[mH/km]

L:電線1本・1 kmあたりの作用インダクタンス〔mH/km〕 D:電線間の距離〔m〕 r:電線の半径〔m〕

言葉の式 作用静電容量 = 0.02413 ÷ log₁₀(線間距離 ÷ 電線の半径)[μF/km]

C=0.02413log10Dr[μF/km]

C:電線1本・1 kmあたりの作用静電容量〔μF/km〕 D:電線間の距離〔m〕 r:電線の半径〔m〕

  • 抵抗の式の例は、アルミ部分の断面積が410 mm²の電線です。
  • こう長は4 km、抵抗率は0.0286 Ω·mm²/mで、抵抗は約0.279 Ωです。
  • 長さはメートルに直して入れます。キロメートルのまま入れると、1 000分の1の値になります。
  • インダクタンスと静電容量の式は、覚えなくて構いません。線間距離と半径の比に対して、向きが逆になることを覚えます。
線路の長さ等価回路静電容量の扱い
短距離抵抗とリアクタンスを直列にした回路小さいので省く
中距離(π形)アドミタンス(あどみたんす)を半分ずつ、送電端と受電端に置く2か所にまとめる(集中定数回路)
中距離(T形)直列のインピーダンスを2つに分け、真ん中にアドミタンスを置く1か所にまとめる(集中定数回路)
長距離分布定数回路(四端子定数)線路全体に一様に広がっているとする
  • π(パイ)形は両端の2か所、T形は真ん中の1か所にまとめます。
  • 静電容量をまとめる回路は「集中定数回路」です。「分布定数回路」と取り違えないようにします。
  • 線路定数の4つ目は「漏れ」コンダクタンスです。「伝達」コンダクタンスとする文は誤りです。
進み電流と電圧:進み電流が流れるとXIの矢印が受電端の矢印の先から左へ向いて、送電端の矢印のほうが受電端の矢印より短くなり、受電端が送電端より高い
  • 交流では、負荷をつながない無負荷でも、電線と大地の間の静電容量に充電電流が流れ続けます。
  • 受電端を出ていく線路の電流は、負荷電流と充電電流(じゅうでんでんりゅう)の和です。向きも含めた和(ベクトルの和)です。
  • 負荷の力率(りきりつ)はふつう遅れなので、負荷電流は遅れます。充電電流は、受電端の電圧より90°進みます。
  • 負荷が重いと遅れの負荷電流が勝ち、線路の電流は遅れます。軽いと、進みの充電電流が勝ちます。
  • 受電端の電圧に、抵抗の降下 RI とリアクタンスの降下 XI を足したものが、送電端の電圧です。
  • XI は電流より90°進んだ向きです。電流が進むと XI が反対側を向き、受電端のほうが長くなります。
  • 充電電流は、静電容量・周波数・電圧に比例します。静電容量が大きいほど、フェランチ効果が起きやすくなります。
起きやすい条件・対策理由
無負荷・極軽負荷、休日・夜間遅れの負荷電流が小さく、進みの充電電流の影響が大きい
静電容量が大きい、こう長が長い、地中電線路充電電流が大きい。地中ケーブルは架空線より静電容量が大きい
対策:分路リアクトルを入れる線路の電流の遅れの成分を増やし、進みを打ち消す
対策:軽負荷のときに電力用コンデンサ(でんりょくようこんでんさ)を外す進みの電流を減らす
  • 分路リアクトルは、受電端に近い所で入れます。送電端の近くでは、途中の線路の進み電流を打ち消せません。
  • 線路電圧が高く、こう長が長いほど、フェランチ効果は著しくなります。
  • 長い送電線につないだ同期発電機が、進み電流で端子電圧を上げるのは自己励磁現象(じこれいじげんしょう)です。電圧が上がる点は同じでも、別の現象です。

解き方:π形とT形の回路

  • ① 最初の一手は、1相分にして、π形の片側の静電容量が全体の半分だと確かめることです。
  • ② 無負荷では、リアクタンスを流れるのは受電端側の充電電流だけです。受電端の電圧は、上の式で出します。
  • ③ 送電端の電流は、送電端側と受電端側の、2つの静電容量の電流の和です。電圧は相電圧(そうでんあつ)で入れます。
  • ④ 受電端と送電端の電圧の比は、線間電圧にもそのまま使えます。

例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問17)。1相分のπ形で、リアクタンスは200 Ω、アドミタンスは全体で0.800 mS(ミリジーメンス)です。送電端の線間電圧は66.0 kVで、受電端は無負荷です。

言葉の式 線間電圧 = √3 × 相電圧(相回転 a→b→c のとき、線間電圧は相電圧より位相が π/6 進む)

V=3Ep

V:線間電圧〔V〕 Ep:相電圧〔V〕

  • 送電端の相電圧は、66.0 kV÷√3≒38.1 kVです。
Er=38105 V1−0.8 mS×200 Ω2=41418 V
  • 受電端の相電圧は約41.4 kVで、線間電圧に直すと約71.7 kVです。送電端の66.0 kVより高くなります。
  • 片側の0.4 mSを全体の0.8 mSと取り違えると、66.0÷0.84≒78.6 kVになり、外れます。
Is=0.8 mS2(38105 V+41418 V)=31.809 A

Is:送電端電流〔A〕 B:線路全体のサセプタンス〔S〕 Es:送電端の相電圧〔V〕 Er:受電端の相電圧〔V〕

  • 送電端側の約15.2 Aだけ、受電端側の約16.6 Aだけで止めないようにします。2つは同じ向きなので、そのまま足せます。
  • 線間電圧のまま入れると、√3倍の約55.1 Aになり、外れます。令和元年度 問16も、同じ条件の問題です。

T形の例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問16)。1相分で、抵抗20 Ω、リアクタンス80 Ω、真ん中のアドミタンス0.0007 Sです。受電端の電圧は150 kV、電流は400 A、力率は遅れの√3/2です。

  • 受電端の電圧を基準の向きにおき、負荷電流を実部(じつぶ)と虚部(きょぶ)に分けます。
  • 負荷電流の実部は400×√3/2≒346.4 A、虚部は遅れの400×1/2=200 Aです。
  • 片側のインピーダンスは、抵抗10 Ωとリアクタンス40 Ωです。
  • 受電端側の電圧降下(でんあつこうか)の実部は、10×346.4+40×200=11 464 Vです。虚部は、40×346.4−10×200=11 856 Vです。
  • 真ん中の電圧は、実部161 464 V・虚部11 856 Vで、大きさは約161.9 kVです。
  • 真ん中の静電容量の電流は、実部が−8.3 A、虚部が進みの113.0 Aです。
  • 送電端側の電流は、実部338.1 A、虚部は遅れの87.0 Aです。電流は受電端の400 Aのままではありません。
  • 送電端側の降下の実部は、10×338.1+40×87.0≒6 861 Vです。虚部は、40×338.1−10×87.0≒12 654 Vです。
  • 送電端の電圧は、実部168 325 V・虚部24 510 Vで、大きさは約170.1 kVです。実部と虚部を別々に足してから、大きさを出します。

関連:中性点接地方式|直流送電|フェーザ表示|記号法|平衡三相回路の計算|複素数

中性点接地方式 ── 直接接地は地絡電流が大きく、非接地は健全相の電圧が上がる

非接地系の1線地絡:c相が地絡するとc点の電位が0 Vになり、健全相a・bの対地電圧は相電圧の√3倍(線間電圧)になる
方式1線地絡のとき健全相の対地電圧
直接接地方式(ちょくせつせっちほうしき)地絡電流は大。継電器は確実に働き、誘導障害は大ほとんど上がらない(小)
抵抗接地方式(ていこうせっちほうしき)地絡電流は中。継電器は確実に働き、誘導障害は中中くらい上がる(中)
非接地方式(ひせっちほうしき)地絡電流は小。継電器は働きにくく、誘導障害は小約√3倍に上がる(大)
消弧リアクトル接地方式(しょうこりあくとるせっちほうしき)地絡電流はほぼ0(微小)。継電器は働きにくく、誘導障害は微小約√3倍に上がる(大)
方式中性点のつなぎ方使われる電圧の目安
非接地大地につながない6.6 kV以下(33 kV以下の送配電線路にも)
直接接地導線で直接、大地につなぐ187 kV以上の超高圧
抵抗接地100〜1 000 Ω程度の抵抗を通してつなぐ22〜154 kV
消弧リアクトル(しょうこりあくとる)接地消弧リアクトルを通してつなぐ66 kVか77 kV

地絡電流を大きく流す方式ほど健全相の電圧は上がらず、小さく抑える方式ほど√3倍まで上がります。直接接地と非接地が両端で、抵抗接地はその間です。

言葉の式 地絡電流 =(線間電圧 ÷ √3)÷(中性点接地抵抗 + 地絡点の抵抗)

Ig=V3Rn+Rg

Ig:地絡電流〔A〕 V:線間電圧〔V〕 Rn:中性点接地抵抗〔Ω〕 Rg:地絡点の抵抗〔Ω〕

よくある誤り正しくは
非接地方式の地絡電流は、直接接地方式より大きい小さい。流れるのは、健全相の対地静電容量を通る電流だけ
直接接地方式は、地絡電流が小さく、誘導障害も小さい地絡電流は最も大きく、誘導障害も大きい。長所は健全相の電圧が上がりにくいこと
消弧リアクトルは、対地静電容量と直列共振させる並列共振。リアクトルの遅れの電流と、静電容量の進みの電流が打ち消し合う
非接地方式では、こう長が長いほど地絡電流は小さい大きい。対地静電容量はこう長に比例する
  • 中性点接地は、変圧器の二次側(Y結線)の中性点(ちゅうせいてん)を、直接か抵抗・リアクトルを通して大地につなぐことです。
  • 目的の1つ目は、地絡のときの健全相の対地電圧の上昇を抑え、機器の絶縁を軽くすることです。
  • 2つ目は、地絡電流の大きさを整えて地絡継電器(ちらくけいでんき)を確実に働かせ、地絡した所を切り離すことです。3つ目は、消弧リアクトル接地で地絡電流を自然に消すことです。
  • 使われる電圧の目安は、資料によって少し違います。抵抗接地を「主に154 kV以下」と書く資料もあります。
  • 地絡電流が大きいほど、通信線への電磁誘導障害が大きくなります。直接接地は、77 kV以下の系統には使いません。
  • 現場では、構内の6.6 kVの高圧系統の多くが非接地です。地絡電流が小さいので、零相変流器(れいそうへんりゅうき)と地絡方向継電器(ちらくほうこうけいでんき)で地絡を見分けます。

健全相の電圧と消弧リアクトルのしくみ

  • 非接地で c相が地絡すると、c相は大地と同じ0 Vになります。c相の対地静電容量には電流が流れません。
  • 大地の電位が c相へ移るので、a相の対地電圧は相電圧から線間電圧に変わります。大きさは√3倍です。
  • 地絡電流は、a相とb相の対地静電容量を通る電流の和です。中性点の対地電圧より90°進みます。

言葉の式 地絡電流 = jω × 対地静電容量 ×(Vac + Vbc)= j3ω × 対地静電容量 × 中性点の対地電圧

I˙g=jωC0(V˙ac+V˙bc)=j3ωC0E˙n

Ig:地絡電流〔A〕 ω:交流の角周波数〔rad/s〕 C0:各相の対地静電容量〔F〕 En:中性点の対地電圧(大きさは相電圧 E に等しい)〔V〕

  • 対地静電容量はとても小さいので、地絡電流も小さくなります。だから継電器で見つけにくくなります。
  • 非接地では、がいしの表面で間欠的なアーク(消えたりついたりするアーク)が出て、過電圧が出るおそれがあります。
  • 通信線の誘導障害は、地絡電流が小さいので、抵抗接地方式より小さくなります。
消弧リアクトル:中性点につないだ消弧リアクトルの遅れの電流と対地静電容量の進みの電流が向きの反対で打ち消し合い、地絡電流はほぼ0になる
  • 消弧リアクトルにも中性点の対地電圧がかかり、それより90°遅れた電流が流れます。静電容量の電流と向きが反対です。

言葉の式 消弧リアクトルのインダクタンス = 1 ÷(3 × 角周波数² × 対地静電容量)

L=13ω2C0[H]

L:消弧リアクトルのインダクタンス〔H〕 ω:交流の角周波数〔rad/s〕 C0:各相の対地静電容量〔F〕

  • このインダクタンスにすると、理論上は地絡電流が0になり、遮断器(しゃだんき)によらずにアークが消えます。調整が手間なので、新しく採る例は多くありません。
  • 直接接地では、中性点と大地がつながっているので、中性点は0 Vのままです。健全相は相電圧のままか、わずかに上がるだけです。
  • だから直接接地は、機器の絶縁を軽くでき、設備費が安くなります。非接地と消弧リアクトル接地は、健全相が√3倍に上がるので、絶縁を軽くできません。
  • 直接接地の地絡電流は、相電圧を地絡点までの線路のインピーダンスで割った値です。インピーダンスが小さいので、大きくなります。
  • 抵抗接地の地絡電流は、中性点の抵抗の電流と、健全相の対地静電容量の電流の和です。
  • 抵抗接地では、抵抗の値で、継電器が働き誘導障害が出ない程度に地絡電流を抑えます。地絡継電器の検出が弱まるので、対応策が要ることもあります。

解き方:抵抗接地の地絡電流

  • ① 最初の一手は、線間電圧を√3で割って、相電圧にすることです。
  • ② 中性点の接地抵抗と地絡点の抵抗は、直列につながります。2つを足します。
  • ③ 相電圧を、抵抗の和で割ります。

例の条件を短くまとめます(平成28年度 問16)。公称電圧66 kVの送電線で、中性点の接地抵抗は300 Ωです。100 Ωの抵抗を介して1線地絡し、ほかのインピーダンスは無視します。

Ig=66 kV3300 Ω+100 Ω=95.26 A
  • 約95 Aです。線間電圧のまま割ると165 Aに、地絡点の100 Ωを落とすと約127 Aになり、外れます。
  • 同じ問の三相短絡電流には、中性点の300 Ωは関わりません。三相短絡は、地絡とは別の回路です。
  • 3線を一括して大地との間に相電圧を加え、流れた全部の充電電流から1相のアドミタンスを出す型もあります。
  • 1相のアドミタンスは、全部の充電電流を、相電圧の3倍で割った値です。地絡電流を0にするリアクトルのアドミタンスは、その3倍です。
  • リアクトルのインピーダンスは、そのアドミタンスの逆数です。
  • 自作の値で確かめます。相電圧20 kVで全部の充電電流が48 Aなら、1相は48÷(3×20 000)=0.0008 Sです。
  • リアクトルのアドミタンスは3倍の0.0024 Sで、インピーダンスは1÷0.0024≒417 Ωです。

関連:線路定数とフェランチ効果|Y結線|共振

直流送電 ── 長いケーブルや周波数の違う系統に向くが、遮断が難しい

ケーブルの長さと送れる電力:ケーブルを長くすると交流は送れる電力が減り、直流は長くても減らない
長所理由
長い海底ケーブルでも、送れる電力が減らない一度充電すれば充電電流が流れない。フェランチ効果も誘電損(ゆうでんそん)も無い
周波数の違う系統をつなげる(非同期連系)直流には周波数が無い。短絡容量を増やさずにつなげる
安定度の問題が無く、長距離・大電力に向く直流ではリアクタンスの影響が無い
絶縁を低くできる同じ公称電圧なら、直流の最大値は交流の1/√2
電圧降下・電力損失が少なく、導体が2条で済む無効電力が無い。三相の交流は3条が要るので、直流は送電線路の建設費が安い
短所理由
両端に高価な交直変換設備が要る送電側で交流を直流に、受電側で直流を交流に変える
高調波を除くフィルタが要る変換装置は、順変換・逆変換のどちらでも高調波(こうちょうは)を出す
無効電力供給設備(調相設備)が要る直流では無効電力(むこうでんりょく)を送れない
高電圧・大電流の遮断が難しい電流の零点が無い。遮断器は交流側に置く
変圧器で電圧を変えられない変圧器は交流でしか働かない

直流は向きが変わらないので、充電電流も周波数も無く、長いケーブルや周波数の違う系統の連系に向きます。その代わり、両端の変換所が要り、遮断が難しくなります。

言葉の式 実効値 = 最大値 ÷ √2

V=Vm2

V:実効値〔V〕 Vm:最大値〔V〕

よくある誤り正しくは
直流の高電圧・大電流の遮断は、交流より容易難しい。交流は1周期に2回電流が0になるが、直流には零点が無い
直流の最大値は同じ実効値(じっこうち)の交流より高く、絶縁を増す最大値が実効値の√2倍になるのは交流。直流は絶縁を1/√2に低くできる
他励(たれい)式の変換装置なら、フィルタも調相設備も要らない形式を問わず、どちらも要る。他励式のほうが大規模になる
直流でも、ケーブルの充電電流の補償が要る要らない。一度充電すれば、充電電流は流れない
  • 直流(ちょくりゅう)送電は、交流を直流に変えて送り、受電側で再び交流(こうりゅう)に戻す方式です。電力系統のほとんどは交流です。
  • 交流を直流に変えるのが順変換、直流を交流に戻すのが逆変換です。両端に交直変換所を置きます。
  • 東日本は50 Hz(ヘルツ)です。西日本は60 Hzです。
  • 周波数変換所では、いったん直流にしてから、別の周波数の交流にします。こうして東と西で電力を融通します。
  • 北海道と本州の間は、津軽海峡の海底ケーブルを使う直流送電で電力を融通しています。
  • 変換装置には自励(じれい)式と他励式があり、どちらでもフィルタと調相設備が要ります。
  • 素子のうち、自己消弧(じこしょうこ)形(ゲートターンオフサイリスタなど)は自分で電流を切れます。ふつうのサイリスタは、自分では切れません。
  • 大地を帰り道にする方式では、地中の金属の電食や、地磁気の測定への影響に気をつけます。
  • 直流の地絡電流は交流より小さいので、がいしが強ければ、アークホーンを省けることがあります。

直流で充電電流が流れない理由と、遮断の難しさ

  • ケーブルの電線と外側の間には静電容量があり、コンデンサとみなせます。コンデンサには、電圧が変わるときだけ電流が流れます。
  • 交流は電圧が変わり続けるので、充電と放電がくり返され、充電電流が流れ続けます。ケーブルが長いほど大きく、そのぶん送れる電力が減ります。
  • 直流は電圧が変わらないので、はじめに一度充電すれば、充電電流は流れなくなります。
  • 交流の電圧は、実効値の√2倍の最大値まで上がります。絶縁は最大値で決まるので、同じ公称電圧なら直流は絶縁を1/√2にできます。
交流と直流の遮断:交流は電流が0になる零点で接点のアークが消えるが、直流は0にならず接点のアークが消えにくい。直流送電の遮断器は変換所の交流側に置く
  • 遮断器が接点を開くと、接点の間にアークが出て、電流がしばらく流れ続けます。
  • 交流は向きが変わるので、1周期に2回、電流が0になります。そこでアークが消えやすく、電流が切れます。
  • 直流は向きも大きさも一定で、0になる点がありません。そのため、遮断器は交直変換所の交流側に置きます。

関連:線路定数とフェランチ効果|送電電力と安定度|実効値と平均値|スイッチ直後と定常

送電電力と安定度 ── リアクタンスを小さくすると、送れる電力と安定度が上がる

送電電力と相差角:送電電力は相差角δの正弦の山で、90°で最大になり、リアクタンスXを小さくすると山が高くなる
記号意味
Vs・Vr送電端・受電端の線間電圧(せんかんでんあつ)
X電線1線あたりのリアクタンス(線路の抵抗は無視する)
δ相差角(そうさかく)。送電端と受電端の電圧の位相(いそう)の差で、送る電力が大きいほど大きい
最大の電力δ が90°のとき。送電端と受電端の電圧の積を、リアクタンスで割った値

送れる電力は相差角の sin に比例し、最大は電圧の積をリアクタンスで割った値です。Xを小さくすると最大が上がり、同じ電力を小さいδ(デルタ)で送れて、安定度が上がります。

言葉の式 送電電力 = 送電端線間電圧 × 受電端線間電圧 ÷ リアクタンス × sin(相差角)

P=VsVrXsinδ[W]

P:三相の送電電力(受電端の有効電力)〔W〕 Vs:送電端の線間電圧〔V〕 Vr:受電端の線間電圧〔V〕 X:電線1線あたりのリアクタンス〔Ω〕 δ:送電端電圧と受電端電圧の位相差(相差角)〔°〕

よくある誤り正しくは
三相の送電電力は、上の式にさらに√3を掛ける線間電圧で書くと√3は付かない。相電圧の積を3倍すると、√3が消える
送電電力は、負荷の力率角(りきりつかく)θの cos に比例する相差角δの sin に比例する。θ と δ は別の角
δを大きくするほど、送電電力は限りなく大きくなる90°で最大になり、それを超えると減る
多導体にするとインダクタンスが増え、送電容量が下がるインダクタンスが減るので、送電容量が増え、安定度が上がる
  • 安定度(同期安定度)は、多くの発電機が周波数を保って並行運転を続けられる度合いです。事故や急な負荷の変化でも、同期を保てるほど高くなります。
  • 負荷をゆっくり増やしても安定に運転できる度合いを、定態安定度(ていたいあんていど)と呼びます。
  • 安定度を上げるには、リアクタンスを小さくするか、電圧を高くします。送れる電力の最大が、どちらでも大きくなります。
  • 直列コンデンサは、送電線に直列に入れて、線路のリアクタンスを打ち消します。負荷と並列につなぐ電力用コンデンサとは目的が違います。
  • 多導体は、1相を2〜8条の電線に分けてスペーサで間を保つ方式です。線路のインダクタンスが減り、送電容量が増えます。
  • 送電電圧を上げると、送れる電力の最大は電圧の2乗に比例して大きくなります。
  • 発電機の同期リアクタンスを小さくする(短絡比を大きくする)ことでも、安定度は上がります。
  • 送電容量は、電線の電流容量や安定度の制約で決まります。中性点の接地方式を変えても、送電容量は増えません。
  • 直流送電には、リアクタンスによる安定度の制約がありません。

式の導き方

送電電力の式:送電端電圧Esと受電端電圧Er、リアクタンスjX、電流Iのベクトル図で、Esの先の高さEs sin δがXI cos θに等しい
  • 1相分では、送電端の相電圧 Es は、受電端の相電圧 Er にリアクタンスの降下 jXI を足したものです。
  • jXI は電流と直角です。ベクトル図で Es の先の高さは Es sin δ で、XI cos θ(シータ)にも等しくなります。
  • 1相の受電端の電力は Er I cos θ です。この I cos θ は、Es sin δ を X で割った値に置きかえられます。
  • 置きかえると、1相の電力は、Es と Er の積に sin δ を掛けて X で割った値です。
  • 三相はその3倍です。相電圧を線間電圧÷√3にすると、3×(Vs Vr÷3)で、√3が消えます。
  • 式を選ぶ問(令和4年度下期 問9)は、この順で選べます。

解き方:%X と送電電力

  • ① 最初の一手は、%X の基準を、三相の基準容量と線間電圧にそろえることです。
  • ② %X は、下の式で出します。
  • ③ 送電電力は、Ωのまま上の式に入れるか、単位法の式に基準容量を掛けて出します。
  • ④ 答えの単位(MW)と、%と比(25%なら0.25)の取り違えを確かめます。

例の条件を短くまとめます(平成30年度 問17)。抵抗を無視できる1回線の短距離送電線で、1相分のリアクタンスは11 Ωです。受電端の電圧は66 kVで一定、基準容量は100 MV·Aです。

言葉の式 パーセントリアクタンス = 基準容量 × リアクタンス ÷(線間電圧)² × 100[%]

%X=PBXV2×100[%]

%X:パーセントリアクタンス〔%〕 PB:基準容量(三相)〔V·A〕 X:線路のリアクタンス〔Ω〕 V:基準電圧(線間電圧)〔V〕

  • MV·AとkVのまま入れると、100×11÷66²×100≒25.25で、約25.3%です。選ぶ値は25%です。
  • 基準インピーダンスは66²÷100=43.56 Ωです。リアクタンスとの割り算を逆にすると、約396%になります。
  • 1相分の容量(約33.3 MV·A)と線間電圧を組み合わせると、約8.4%です。三相の容量と相電圧(約38.1 kV)なら、約75.8%です。
  • どちらも3倍ずれます。単相の形で書くなら、1相分の容量と相電圧を組にします。

次に、送電端の電圧も66 kVで、相差角が30°のときの送電電力です。

  • 上の式に kV と Ω のまま入れると、66×66÷11×0.5=198 で、答えは MW で出ます。
  • 198 MWです。√3を掛けると約343 MW、sin を掛け忘れると396 MWになり、外れます。
P=100 MV·A×1 p.u.×1 p.u.0.2525 p.u.sin30 °=198 MW

P:三相の送電電力〔MW〕 PB:基準容量〔MV·A〕 Vs:送電端電圧(p.u.) Vr:受電端電圧(p.u.) x:パーセントリアクタンス(p.u.=%X÷100)〔p.u.〕 δ:相差角〔°〕

  • 単位法でも、約198 MWで同じです。

言葉の式 線路のリアクタンス = 誘導性リアクタンス − 直列コンデンサの容量性リアクタンス

X=XL−XC

X:補償後の線路のリアクタンス〔Ω(または%)〕 XL:線路の誘導性リアクタンス〔Ω(または%)〕 XC:直列コンデンサの容量性リアクタンス〔Ω(または%)〕

言葉の式 合成リアクタンス = (X₁ × X₂)÷(X₁ + X₂)

X=X1X2X1+X2

X:2回線を並列にした合成リアクタンス〔Ω(または%)〕 X1:1つ目の回線のリアクタンス〔Ω(または%)〕 X2:2つ目の回線のリアクタンス〔Ω(または%)〕

  • 2回線の片方に直列コンデンサがある型もあります。先にその回線の差をとり、次に2回線を並列に合成してから、送電電力の式に入れます。

関連:直流送電|三相電力と二電力計法|三角比とラジアン|ベクトル

まとめ

軽負荷の長い線路では、静電容量の進んだ充電電流で、受電端の電圧が送電端を超えます。

中性点の直接接地は地絡電流が大きく、非接地は健全相の電圧が√3倍に上がります。

直流送電は長いケーブルや異周波数の連系に向き、交流の送電電力はリアクタンスを小さくすると増えます。

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参考文献

  • 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH06 送電の章(SEC03 充電電流、SEC04 線路定数、SEC05 送電線のさまざまな障害、SEC06 中性点接地、SEC07 直流送電)、CH10 電力計算の章(SEC04 電力と電力損失)
  • 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第5章 送電
  • 『First Stage シリーズ 新訂電気機器概論』千葉 明 実教出版 第7章 パワーエレクトロニクス(周波数変換設備と直流送電設備)
  • 第三種電気主任技術者試験 電力 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成29年度・平成30年度・令和元年度・令和2年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度下期・令和6年度下期・令和7年度下期・令和8年度上期

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