最終確認:2026年11月3日
電験三種の電力で、火力発電の計算と比較の4つの論点をまとめた辞書です。汽力発電所の効率と所内率(しょないりつ)、燃料の量と CO₂、排ガスの環境対策、ガスタービンとコンバインドサイクルの順に確かめます。
電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電
汽力発電所の効率 ── 発電端は各段の効率の積、送電端は所内率の分だけ低い

| 効率の名前 | 分母(入力) | 分子(出力) |
|---|---|---|
| ボイラ効率 | 燃料の熱(燃料消費量×発熱量) | 蒸気が受け取った熱 |
| タービン効率 | 蒸気がタービンの中で渡した熱 | タービンの機械的出力 |
| タービン室効率 | ボイラで蒸気に与えた熱(復水器で捨てる熱も含む) | タービンの機械的出力 |
| 発電機効率 | タービンの機械的出力 | 発電端電力 |
| 発電端熱効率(はつでんたんねつこうりつ) | 燃料の熱 | 発電端電力 |
| 送電端熱効率(そうでんたんねつこうりつ) | 燃料の熱 | 送電端電力(発電端電力−所内電力) |
発電端熱効率はボイラ効率×タービン室効率×発電機効率で、送電端熱効率はそれに(1−所内率)を掛けた値です。前の段の出力が次の段の入力になるので、効率は掛けます。所内率は % で表し、(1−所内率)に入れるときは小数にします。
言葉の式 効率 = 出力 ÷ 入力 = 出力 ÷(出力 + 損失)(%で表すときは × 100)
η:効率〔(比)または %〕 出力:出力(得られたもの)〔kW など〕 入力:入力(入れたもの)〔kW など〕 損失:損失(入力と出力の差)〔kW など〕
言葉の式 発電端熱効率[%] = 3 600 × 発電端電力[kW]÷(燃料消費量[kg/h] × 燃料発熱量[kJ/kg])× 100
ηP:発電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW(=kJ/s)〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
言葉の式 発電端熱効率 = ボイラ効率 × タービン室効率 × 発電機効率(各効率は小数で掛ける)
ηP:発電端熱効率〔(比)〕 ηB:ボイラ効率〔(比)〕 ηT:タービン室効率〔(比)〕 ηG:発電機効率〔(比)〕
言葉の式 所内率[%] = 所内電力[kW]÷ 発電端電力[kW]× 100(P_S = P_G(1 − L) などに入れるときは 100 で割って小数にする)
L:所内率〔%〕 PL:所内電力〔kW〕 PG:発電端電力〔kW〕
言葉の式 送電端電力[kW] = 発電端電力[kW] ×(1 − 所内率)(所内率 L は小数。5 % なら 0.05)
PS:送電端電力〔kW〕 PG:発電端電力〔kW〕 L:所内率〔(小数)〕
言葉の式 送電端熱効率 = 発電端熱効率 ×(1 − 所内率)(効率も所内率 L も小数。5 % なら 0.05)
ηS:送電端熱効率〔(比)〕 ηP:発電端熱効率〔(比)〕 L:所内率〔(小数)〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 発電端熱効率は、3つの機器の効率の平均で表す | 次の段の効率は、前の段で残った分にかかる。だから平均ではなく積で表す |
| タービン室効率は、タービン効率より大きい | タービン室効率は、復水器で捨てる熱も分母に入る。比べる熱が大きいので、タービン効率より小さい |
| 所内率は、送電端電力に対する所内電力の割合 | 発電端電力に対する割合。送電端から発電端に戻すときは(1−所内率)で割る。(1+所内率)を掛けるのは誤り |
| 発電端熱効率も、所内率を引いた送電端の電力量で出す | 発電端熱効率は、所内率を引く前の発電端電力量で出す。所内率を使うのは送電端を問われたときだけ |
- 発電端電力は発電機で発電した電力、送電端電力は外へ送り出す電力です。差の所内電力は、ポンプなど発電所の中の補機で使います。
- 所内率は % で表しますが、(1−所内率)に入れるときは小数にします。5% なら 1−0.05=0.95 を掛けます。1−5 として計算しないように注意します。
- 汽力発電で最も大きく目減りするのは、復水器で冷却水に捨てる熱です。タービン室効率が半分ほどにとどまるのは、このためです(復水器)。
- 式の 3 600 は、1時間を秒に直した数です。kW(=kJ/s)を kJ/h にそろえるために掛けます。
言葉の式 電力量〔kW·h〕× 3 600 = 熱量〔kJ〕(1 W×3 600 s=3 600 J)
W:電力量〔kW·h〕
- 汽力発電所の熱効率は、40%程度です。3つの積に分ける問題では、効率がボイラ・タービン・発電機の3つしか与えられないことがあります。そのときは、与えられたタービン効率をタービン室効率(復水器を含む)として掛けます。問題文に断りが無くても、そう扱います。
比エンタルピーは、蒸気 1 kg が持つ熱の量です(エンタルピー(えんたるぴー)の 1 kg あたり)。タービンの入口、タービンの出口(復水器の入口)、給水(復水器を出た水)の順に小さくなります。
言葉の式 ボイラ効率[%] = 蒸気量 × (蒸気の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)÷(燃料消費量 × 燃料発熱量)× 100
ηB:ボイラ効率〔%〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:ボイラ出口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 hw:給水の比エンタルピー〔kJ/kg〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
言葉の式 タービン効率[%] = 3 600 × タービン出力[kW]÷{蒸気量[kg/h] ×(入口の比エンタルピー − 出口の比エンタルピー)}× 100
ηt:タービン効率〔%〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW(=kJ/s)〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:タービン入口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 ht:タービン出口(復水器入口)の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕
言葉の式 タービン室効率[%] = 3 600 × タービン出力[kW]÷{蒸気量[kg/h] ×(入口の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)}× 100
ηT:タービン室効率〔%〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW(=kJ/s)〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:タービン入口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 hw:給水(復水器出口)の比エンタルピー〔kJ/kg〕
言葉の式 発電機効率[%] = 発電端電力[kW]÷ タービンの機械的出力[kW]× 100
ηG:発電機効率〔%〕 PG:発電端電力(発電機の出力)〔kW〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW〕
言葉の式 送電端熱効率[%] = 3 600 ×(発電端電力 − 所内電力)[kW]÷(燃料消費量[kg/h] × 燃料発熱量[kJ/kg])× 100
ηS:送電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW〕 PL:所内電力〔kW〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
言葉の式 送電端電力 = 発電端電力 − 所内電力
PS:送電端電力(外部へ送電する電力)〔kW〕 PG:発電端電力(発電機で発電された電力)〔kW〕 PL:所内電力(発電所内で使う電力)〔kW〕
| 問われ方 | 最初の一手 |
|---|---|
| 電力量と燃料の量から効率 | MW·h は×3.6×10⁶ で kJ に、t は×10³ で kg に直してから割る |
| 送電端の値から発電端の値 | 送電端を(1−所内率)で割る |
| 発電機出力からタービン出力 | 発電機出力を発電機効率で割る |
| ボイラ効率の逆算 | 送電端熱効率を、タービン室効率×発電機効率×(1−所内率)で割る |
| 運転の表から電力量 | 時間帯ごとに出力×時間を足す。皮相電力(ひそうでんりょく)なら、力率(りきりつ)を掛けて有効電力にする |
| 日負荷率・年負荷率が与えられたとき | 平均の電力は、最大の電力×負荷率。1日なら 24 h、1年なら 8 760 h を掛ける |
- 設備利用率(せつびりようりつ)が与えられたら、電力量は定格出力×設備利用率×時間です(定義は水力発電所の出力の表)。
- 熱消費率(ねつしょうひりつ)は、1 kW·h の電力を出すのに使う熱です。タービン室効率は、3 600 を熱消費率で割った値です(復水器の論点)。
解き方:電力量と燃料の量から熱効率
- ① 最初の一手は、出した電力量と燃やした燃料の熱を、どちらも kJ にそろえることです。
- ② 電力量は、1 kW·h=3 600 kJ で直します。燃料の熱は、燃料の量〔kg〕×発熱量です。
- ③ 電力量の熱を燃料の熱で割ると、熱効率です。発電端か送電端かを確かめます。
例の条件を短くまとめます(令和7年度下期 問15(a))。重油専焼の発電所が 45 000 MW·h を発生し、重油 9.1×10³ t を使いました。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg です。
Q:燃料の総発熱量(燃料の熱量)〔kJ〕 B:燃料消費量〔kg〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
- 1.62×10¹¹ を 4.004×10¹¹ で割ると約 0.405 で、発電端熱効率は約 40.5%です。問題文では、発電端効率とも書きます。t を kg に直し忘れると、桁が3つずれます。
次の例の条件です(令和3年度 問15)。定格 350 MW の発電機を、所内率 2%で1日運転しました。
- 出力は、0〜7時と20〜24時が 130 MW です。7〜12時と13〜20時が 350 MW、12〜13時が 200 MW です。
- 発電端電力量は、130×7+350×5+200×1+350×7+130×4=5 830 MW·h です。
- 送電端電力量は、5 830×0.98=5 713.4 で、約 5 710 MW·h です。
- この間に、発熱量 54.70 MJ/kg の LNG を 770 t 使ったときの発電端熱効率です。
- 2.099×10¹⁰ を 4.212×10¹⁰ で割ると約 0.498 で、約 50%です。送電端の 5 713.4 MW·h で割ると約 48.8%になり、外れます。
解き方:機器の効率をたどる
- ① 最初の一手は、発電機出力を発電機効率で割って、タービン出力に戻すことです。
- ② 蒸気量は、タービン効率の式に kg/h のまま入れます。1時間あたりの t の値を 3.6 で割ると、kg/s になります。
- ③ 送電端の値が与えられたら、先に(1−所内率)で割って発電端に戻します。
例の条件を短くまとめます(令和4年度上期 問3)。発電機出力 19 MW、発電機効率 95%で、使用蒸気量は1時間に 80 t です。比エンタルピーは、タービン入口 3 550 kJ/kg、復水器入口 2 500 kJ/kg です。
- タービン出力は、19÷0.95=20 MW です。
- タービン効率は約 86%です。発電機出力 19 MW のまま入れると約 81%になり、外れます。
逆に蒸気量を求める例です(令和7年度上期 問2)。タービン出力 175 MW、タービン効率 92%です。入口と復水器入口の比エンタルピーの差は、1 700 kJ/kg です。
- 蒸気 1 kg が出力に変わる熱は、0.92×1 700=1 564 kJ/kg です。
- 175 000 kJ/s を 1 564 で割ると、約 111.9 kg/s です。
- 1時間あたりの t にするには 3.6 を掛け、1時間に約 403 t です。kg/s の 112 のまま選ぶと外れます。
次の例の条件です(平成28年度 問15(b))。送電端電力 16 MW、所内率 5%、タービン出力 18 MW です。
- 発電端電力は、16÷0.95≒16.84 MW です。
- 発電機効率は約 93.6%です。送電端の 16 MW のまま割ると約 88.9%になり、外れます。
関連:燃料消費量と CO2|ランキンサイクル|復水器|力・仕事・電力
燃料消費量と CO2 ── 燃料は熱÷発熱量、CO2 は炭素の44/12倍

| 求めるもの | 手順 | つまずきやすい所 |
|---|---|---|
| 要る燃料の熱 | 出力を発電端熱効率で割る | 効率を掛けてしまう |
| 燃料の量 | 燃料の熱を発熱量で割る | 秒・時間・1日の単位をそろえ忘れる |
| CO₂ の量 | 燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛ける | 燃料の全量や水素の分にも掛けてしまう |
| 理論空気量 | 要る酸素の体積を 0.21 で割る | 水素に要る酸素を半分にし忘れる |
CO₂ の重さは、燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛けた値です。炭素 12 に空気の酸素 32 がつくので、CO₂ は燃えた炭素より重くなります。
言葉の式 総発熱量[kJ] = 燃料消費量[kg] × 燃料発熱量[kJ/kg]
Q:燃料の総発熱量(燃料の熱量)〔kJ〕 B:燃料消費量〔kg〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
言葉の式 CO₂ の質量 = 燃料の質量 × 炭素の割合 × 44 ÷ 12(C + O₂ → CO₂ :12 + 16×2 = 44)
mCO₂:発生する二酸化炭素の質量〔t〕 m燃料:燃料の質量〔t〕 xC:燃料中の炭素の割合〔(小数)〕
言葉の式 モル数[mol] = 質量[g]÷ 原子量(分子量)
n:モル数(物質量)〔mol〕 m:質量〔g〕 M:原子量(分子のときは分子量)〔g/mol〕
言葉の式 必要な酸素のモル数 = 炭素のモル数 + 水素(H₂)のモル数 × 1/2
nO₂:必要な酸素分子のモル数〔mol〕 nC:炭素のモル数〔mol〕 nH₂:水素分子のモル数〔mol〕
言葉の式 理論空気量[m³] = 酸素のモル数 × 22.4×10⁻³[m³/mol]÷ 0.21(空気中の酸素濃度)
V空気:理論空気量(標準状態)〔m³〕 nO₂:必要な酸素分子のモル数〔mol〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 水素も燃えると CO₂ になるので、燃料の全量に 44/12 を掛ける | 水素は燃えると水になる。CO₂ の計算に使うのは、燃料の中の炭素の重さだけ |
| 炭素の重さに 12/44 を掛けると、CO₂ の重さになる | CO₂ は炭素より重く、炭素の 44/12(約 3.7)倍。逆に掛けると、答えが小さくなりすぎる |
| 発電端熱効率が上がると、同じ出力に要る燃料は増える | 燃料の熱は出力÷効率なので、効率が上がると燃料も CO₂ も減る |
| 水素 H₂ 1 mol を燃やすのに、酸素 O₂ も 1 mol 要る | 2H₂+O₂→2H₂O なので、H₂ 1 mol に O₂ は 0.5 mol |
- 炭素が燃えるとき、炭素原子1個に酸素原子2個が結びつき、CO₂ の分子1個になります(C+O₂→CO₂)。
- 燃料 1 kg を完全に燃やしたときに出る熱を、発熱量〔kJ/kg〕と呼びます。燃料をすべて完全に燃やしたときの熱が総発熱量で、燃料の量×発熱量です。
- 問題文に「潜熱(せんねつ)は無視」とあれば、与えられた発熱量をそのまま使います。MJ/kg で与えられたら、×1 000 で kJ/kg に直します。
- 重油の発熱量は、1 L あたりの kJ で与えられることもあります。そのときは、熱を発熱量で割った答えが L になります。1 kL=1 000 L です。
- 例は令和5年度下期 問15(b) です。汽力が1年に出す 356.6 GW·h は、×3.6×10⁶ で約 1.284×10¹² kJ です。
- これを効率 0.4 で割り、1 L あたり 39 100 kJ で割ります。約 8.21×10⁷ L で、約 82 000 kL です。356.6 GW·h は、最大 100 MW・年負荷率 60%の1年の電力量から、水力の分を引いた値です。
- 原子量は原子の重さを表す数で、炭素 12、酸素 16、水素 1 です。値は、ふつう問題文で与えられます。
- 原子を 6.02×10²³ 個集めたひと山が 1 mol です。1 mol の質量(しつりょう)は、炭素 12 g、酸素 16 g、水素 1 g です。
- 酸素の分子 O₂ は 1 mol で 32 g、水素の分子 H₂ は 2 g です。水素のモル数は、H₂ の 2 で割って数えます。
- 理論空気量は、燃料を完全に燃やすのに要る最小限の空気の量(標準状態の体積)です。気体 1 mol は標準状態で 22.4 L で、空気の酸素は 21%とします。
- 工場・現場では、燃料の流量と成分から、排ガスの CO₂ と燃焼に要る空気の量を出す物質収支と同じ計算です。
火力発電の燃料は、固体の石炭、液体の石油(重油・原油)、気体の LNG(液化天然ガス)です。
| 燃料 | 同じ熱を出すときの CO₂ | 環境・値段 |
|---|---|---|
| 石炭 | いちばん多い(天然ガスの 1.8〜2 倍ほど) | 環境性は悪いが、安い |
| 石油 | 中くらい(天然ガスの 1.4 倍ほど) | 環境性は普通で、高い |
| LNG | いちばん少ない | 環境性がよく、値段は普通 |
- 汽力どうしの発電効率を同じとして、発電電力量あたりの CO₂ を比べます。原子力<LNG のコンバインドサイクル<重油の汽力<石炭の汽力の順に多くなります。原子力は、発電のときに CO₂ を出しません。
- コンバインドサイクルは熱効率が高いので、同じ電力量に燃やす燃料が少なく、CO₂ も減ります(ガスタービンとコンバインドサイクル)。
解き方:出力と効率から燃料と CO₂
- ① 最初の一手は、出力を効率で割って、燃料の熱を出すことです。
- ② 燃料の熱〔kJ/s〕を発熱量で割ると、1秒あたりの燃料〔kg/s〕です。1時間は×3 600、1日は×86 400 で直します。
- ③ 燃料に炭素の割合を掛け、44/12 を掛けて CO₂ にします。
例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問15)。重油専焼で出力 1 000 MW、発電端熱効率 41%です。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg、成分は炭素 85%・水素 15%です。
- 燃料の熱は 1 000÷0.41≒2 439 MW で、2.439×10⁶ kJ/s です。
- 重油は 2.439×10⁶÷44 000≒55.4 kg/s です。1時間では約 1.996×10⁵ kg で、約 200 t です。
- 1日の重油は 199.6×24≒4 789 t です。
- 約 1.49×10⁴ t で、15.0×10³ t にあたります。重油の全量に 44/12 を掛けると 17.6×10³ t になり、外れます。
燃料の量から効率を出す、逆向きの例です(令和5年度上期 問15)。定格 600 MW で、石炭を1時間に 150 t 使います。発熱量は 34 300 kJ/kg、成分は炭素 70%・水素 5%です。
ηP:発電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW(=kJ/s)〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕
- 発電端熱効率は約 42.0%です。t を kg にする×10³ を忘れると、桁が合いません。
- 1時間の CO₂ は 385 t で、1日では 385×24=9 240 t、約 9.2×10³ t です。水素の 5%は使いません。
解き方:理論空気量
- ① 最初の一手は、燃料の中の炭素と水素の重さを g にして、モル数を出すことです。
- ② 酸素のモル数は、炭素のモル数+水素 H₂ のモル数×1/2 です。
- ③ 酸素のモル数に 22.4×10⁻³ m³ を掛けて体積にし、0.21 で割ります。
例の条件を短くまとめます(平成29年度 問15)。定格 600 MW、発電端熱効率 42%で1日運転します。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg、成分は炭素 85%・水素 15%です。
- 燃料の熱は 600÷0.42≒1 428.6 MW です。86 400 秒を掛けて 44 000 で割ると、重油は約 2.805×10⁶ kg(2 805 t)です。
- 炭素は 2.805×10⁹ g の 85%で、約 2.384×10⁹ g です。水素は 15%で、約 4.2075×10⁸ g です。
- 理論空気量は約 32.4×10⁶ m³ です。
- 水素に要る酸素を半分にし忘れると、43.6×10⁶ m³ になります。0.21 で割り忘れると 6.8×10⁶ m³ で、どちらも外れます。
関連:汽力発電所の効率|核分裂と質量欠損|10の何乗と接頭語
火力発電の環境対策 ── 硫黄酸化物・窒素酸化物・ばいじんは別々の装置で除く

| 汚れ | 発生をおさえる | 排ガスから取り除く |
|---|---|---|
| 硫黄酸化物(SOx) | 硫黄分の少ない燃料(LNG)を使う | 排煙脱硫装置:石灰と水の混合液に吸収させ、石こうとして回収する |
| 窒素酸化物(NOx) | 窒素分の少ない燃料を使う。燃焼温度と、燃焼用空気の酸素濃度を低くする | 排煙脱硝装置:アンモニアを注入し、触媒の上で窒素と水に分解する |
| ばいじん(煤塵) | 燃料と空気を正しく混ぜる | 電気集じん装置:粒子を−に帯電させ、+の集じん極に集める |
硫黄酸化物は脱硫装置で石こうに、窒素酸化物は脱硝装置で窒素と水に、ばいじんは電気集じん装置で集めて取り除きます。どの装置も決まった1種類の汚れだけを除くので、排ガスの通り道に並べます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 排ガス再循環法は、燃焼温度を上げて窒素酸化物を減らす | 排ガスを混ぜて、酸素濃度と燃焼温度を下げる。窒素酸化物は、温度が高いほど多くできる |
| 電気集じん装置は、大電流のアーク放電と正イオンで粒子を帯電させる | 高電圧で起こすコロナ放電の負イオンで、粒子を−に帯電させる |
| 集じん極は細い線電極で、たまった粒子は風を吹きつけて落とす | 集じん極は平板電極(+)、放電極が線電極(−)。粒子は、集じん極を槌でたたいて落とす |
| 排煙脱硫装置は、アンモニアと触媒で硫黄酸化物を除く | アンモニアと触媒を使うのは脱硝。脱硫は石灰と水の混合液で吸収し、石こうを回収する |

- 硫黄酸化物(ソックス)は、SO₂・SO₃ などです。酸性雨や気管支ぜんそくの原因になります。
- 窒素酸化物(ノックス)は、NO・NO₂ などです。呼吸器に悪い影響を与えます。窒素のもとは、空気と燃料の中の窒素です。
- ばいじんは、燃えかすの細かい粒です。これらの物質は石炭が最も多く含み、続いて石油で、LNG は比較的きれいな燃料です。
- 環境汚染の対策には、燃料と燃やし方で汚れを減らす「発生の抑制」と、排ガスから取り除く「排出の抑制」があります。
窒素酸化物の発生をおさえる燃やし方
| 方法 | やり方 | 効くわけ |
|---|---|---|
| 二段燃焼法 | 燃焼用空気を2回に分けて入れる。1段目は空気を少なくして燃やし、2段目で残りの空気を入れる | 炎の温度と酸素濃度が下がる |
| 排ガス再循環法 | 燃焼用空気に排ガスの一部を混ぜる | 酸素濃度が下がり、ゆるやかに燃える |
| 酸素濃度を下げる | ボイラの中の余分な空気を減らす | 窒素と結びつく酸素が減る |
- 窒素酸化物を減らす燃やし方は、どれも「温度を下げる」「酸素を減らす」向きです。「上げる」と書かれていたら、誤りを疑います。
電気集じん装置のしくみと装置の並び
- 平板の集じん極(+)の間に、細い線の放電極(−)を置きます。間に、直流の高い電圧をかけます。
- 細い放電極のまわりは電界(でんかい)が強く、コロナ放電(ころなほうでん)が起きて、空気の分子がイオンになります。
- +のイオンはすぐ放電極に戻り、−のイオンが集じん極へ向かうので、電極の間は−のイオンで満たされます。
- 通るばいじんに−のイオンが付いて−に帯電し、引き合う力(クーロン力)で集じん極にくっつきます。
- 要るのは大きな電流ではなく、高い電圧です。たまった粒子は、集じん極を槌でたたいて下へ落とします。
- 代表的な並びは、ボイラ→脱硝装置→電気集じん装置→脱硫装置→煙突です。並びは発電所によって違います。
- 脱硝の触媒は 250〜450 ℃ほどの熱いガスでよく働くので、ボイラの出口の近くに置きます。
- 湿式の脱硫装置は排ガスを液で洗い、ガスは 50 ℃ほどまで冷えるので、煙突の手前に置きます。
関連:燃料消費量と CO2|ガスタービンとコンバインドサイクル|復水器
ガスタービンとコンバインドサイクル ── 排気の熱でもう一度発電し効率が高い

| 発電方式 | しくみ | 熱効率(ねつこうりつ)の目安 |
|---|---|---|
| ガスタービン発電 | 圧縮した空気で燃料を燃やし、燃焼ガスでタービンを回す。排気はそのまま外へ出す | 20〜30%ほど |
| 汽力発電 | ボイラでつくった蒸気で蒸気タービンを回し、復水器で水に戻す | 40%ほど |
| コンバインドサイクル発電 | ガスタービンの約 600 ℃の排気で、排熱回収ボイラが蒸気をつくり、蒸気タービンも回す | 50%以上(最新鋭は 60%を超える) |
ガスタービンで使い残した排気の熱を、蒸気タービン側でもう一度電力にするので、熱効率が高くなります。ただし出力は、ガスタービンと同じく、外気温の影響を受けやすくなります。
言葉の式 コンバインドサイクル効率 = ガスタービン効率 + 蒸気タービン効率 ×(1 − ガスタービン効率)
η:コンバインドサイクル発電の効率〔(比)〕 ηg:ガスタービン効率〔(比)〕 ηs:蒸気タービン効率(排気の熱量に対する)〔(比)〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 燃焼用の空気は、排熱回収ボイラのあと、蒸気タービンを通って煙突から出る | 空気と燃焼ガスは、圧縮機→燃焼器→ガスタービン→排熱回収ボイラ→煙突と通る。蒸気タービンを通るのは、ボイラで水からつくった蒸気 |
| コンバインドサイクルは、最大出力が外気温の影響を受けにくい | 外気温が高いと空気の密度が下がり、吸い込む空気の重さが減って出力が下がる。影響は汽力より大きい |
| コンバインドサイクルは、復水器の冷却水が汽力より多く、所内率も大きい | 蒸気タービンの受け持ちが小さいので、冷却水(温排水)は少ない。大形の所内補機が少なく、所内率も小さい |
| ガスタービン 35%・蒸気側 30%なら、全体の熱効率は 65% | 蒸気側に入るのは、排気に残った熱 0.65 だけ。0.35+0.30×0.65=0.545 で、54.5% |

- ガスタービン発電は、吸入→圧縮→燃焼→発電→排気の順に動きます。空気圧縮機・タービン・発電機は、同じ軸でつながります。
- 「ガス」は、燃料のガスではなく燃焼ガスのことです。燃料には天然ガスのほか、軽油や灯油も使います。
- ガスタービンは起動・停止の時間が短く、設備も単純です。非常用の自家発電設備に広く使われます。
- コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電のあとに、その排気で汽力発電を行う方式です。ここで扱うのは、排熱回収方式です。
同じ出力の汽力発電と比べる
| 見る所 | コンバインドサイクル | わけ |
|---|---|---|
| 熱効率 | 高い | 排気の熱をもう一度使う |
| 起動・停止、負荷の変化への追従 | 起動・停止が速く、追従しやすい | すばやく動かせるガスタービンと、小型の蒸気タービンの組合せ |
| 復水器の冷却水・温排水 | 少ない | 蒸気タービンの受け持ちが、出力の3分の1ほど |
| 所内率 | 小さい | 大形の所内補機が少ない |
| 単位出力あたりの排ガス量 | 多い | ガスタービンは空気を大量に使う |
| 外気温の影響 | 受けやすい | 空気の密度で、吸い込む空気の重さが変わる |
- 復水器の冷却水が海へ持ち去る熱は、温排水になります。熱効率が高いほど、また蒸気タービンの受け持ちが小さいほど、温排水は少なくなります。
- 外気温が下がると空気の密度が上がり、吸い込む空気が増えて出力は上がります。夏に出力が落ちるのは、このためです。
- 小さな容量の機を何台も組み合わせ、運転する台数を増減して出力を合わせます。部分負荷でも、熱効率が下がりにくくなります。
- 燃料には、LNG・LPG・灯油など良質な燃料が要ります。
- 熱効率を上げるには、ガスタービンの入口の温度(燃焼温度)を高くし、空気圧縮機の出口と入口の圧力比を高めます。
- 燃焼温度を高くすると、窒素酸化物が急に増え、タービンも傷みやすくなります。耐熱材料や翼の冷却、燃やし方の工夫が要ります(火力発電の環境対策)。
解き方:コンバインドサイクルの熱効率
- ① 最初の一手は、ガスタービンで電力にならなかった熱(1−ガスタービン効率)が、蒸気側に入る熱だと置くことです。
- ② 蒸気側の効率は、排気の持つ熱に対する割合です。燃料の熱に対する割合ではありません。
- ③ ガスタービンの出力と蒸気タービンの出力を足します。
例として、ガスタービン効率 35%、排気の熱に対する蒸気タービン側の効率 30%とします。
- 全体は 54.5%で、どちらか一方の効率より高くなります。燃料の熱 100 のうち、蒸気タービンの受け持ちは 19.5 です。
- 全体と蒸気側の効率から、ガスタービン効率を逆に出す形もあります。全体 48%・蒸気側 20%の例で考えます。
- 全体から蒸気側を引いた 0.28 を、1 から蒸気側を引いた 0.8 で割ると、35%です。
関連:汽力発電所の効率|火力発電の環境対策|燃料電池と電力貯蔵
まとめ
汽力発電所の発電端熱効率は機器の効率の積で、送電端熱効率は(1−所内率)を掛けた値です。
燃料の量は熱÷発熱量で出し、CO₂ は燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛けます。
排ガスの汚れは3つの装置で別々に除き、コンバインドサイクルは排気の熱で効率を高めます。
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参考文献
- 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH02 火力発電の章(SEC03〜05)
- 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第2章 汽力発電・第3章 原子力・その他の発電
- 第三種電気主任技術者試験 電力・法規 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成29年度・令和元年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度上期・令和6年度上期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期
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