動画解説はこちら|YouTube

電験三種 電力 火力発電②|熱効率・燃料と二酸化炭素・環境対策・コンバインド

電験三種 電力 火力発電②|熱効率・燃料と二酸化炭素・環境対策・コンバインド

最終確認:2026年11月3日

電験三種の電力で、火力発電の計算と比較の4つの論点をまとめた辞書です。汽力発電所の効率と所内率(しょないりつ)、燃料の量と CO₂、排ガスの環境対策、ガスタービンとコンバインドサイクルの順に確かめます。

電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電

汽力発電所の効率 ── 発電端は各段の効率の積、送電端は所内率の分だけ低い

汽力発電所の効率:燃料の熱1 000 MWにボイラ効率90%・タービン効率50%・発電機効率98%を掛けると発電端441 MW(44.1%)になり、所内の5%を引いた残りが送電端419 MW
効率の名前分母(入力)分子(出力)
ボイラ効率燃料の熱(燃料消費量×発熱量)蒸気が受け取った熱
タービン効率蒸気がタービンの中で渡した熱タービンの機械的出力
タービン室効率ボイラで蒸気に与えた熱(復水器で捨てる熱も含む)タービンの機械的出力
発電機効率タービンの機械的出力発電端電力
発電端熱効率(はつでんたんねつこうりつ)燃料の熱発電端電力
送電端熱効率(そうでんたんねつこうりつ)燃料の熱送電端電力(発電端電力−所内電力)

発電端熱効率はボイラ効率×タービン室効率×発電機効率で、送電端熱効率はそれに(1−所内率)を掛けた値です。前の段の出力が次の段の入力になるので、効率は掛けます。所内率は % で表し、(1−所内率)に入れるときは小数にします。

言葉の式 効率 = 出力 ÷ 入力 = 出力 ÷(出力 + 損失)(%で表すときは × 100)

η=出力入力=出力出力+損失

η:効率〔(比)または %〕 出力:出力(得られたもの)〔kW など〕 入力:入力(入れたもの)〔kW など〕 損失:損失(入力と出力の差)〔kW など〕

言葉の式 発電端熱効率[%] = 3 600 × 発電端電力[kW]÷(燃料消費量[kg/h] × 燃料発熱量[kJ/kg])× 100

ηP=3600PGBH×100

ηP:発電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW(=kJ/s)〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

言葉の式 発電端熱効率 = ボイラ効率 × タービン室効率 × 発電機効率(各効率は小数で掛ける)

ηP=ηBηTηG

ηP:発電端熱効率〔(比)〕 ηB:ボイラ効率〔(比)〕 ηT:タービン室効率〔(比)〕 ηG:発電機効率〔(比)〕

言葉の式 所内率[%] = 所内電力[kW]÷ 発電端電力[kW]× 100(P_S = P_G(1 − L) などに入れるときは 100 で割って小数にする)

L=PLPG×100

L:所内率〔%〕 PL:所内電力〔kW〕 PG:発電端電力〔kW〕

言葉の式 送電端電力[kW] = 発電端電力[kW] ×(1 − 所内率)(所内率 L は小数。5 % なら 0.05)

PS=PG(1−L)

PS:送電端電力〔kW〕 PG:発電端電力〔kW〕 L:所内率〔(小数)〕

言葉の式 送電端熱効率 = 発電端熱効率 ×(1 − 所内率)(効率も所内率 L も小数。5 % なら 0.05)

ηS=ηP(1−L)

ηS:送電端熱効率〔(比)〕 ηP:発電端熱効率〔(比)〕 L:所内率〔(小数)〕

よくある誤り正しくは
発電端熱効率は、3つの機器の効率の平均で表す次の段の効率は、前の段で残った分にかかる。だから平均ではなく積で表す
タービン室効率は、タービン効率より大きいタービン室効率は、復水器で捨てる熱も分母に入る。比べる熱が大きいので、タービン効率より小さい
所内率は、送電端電力に対する所内電力の割合発電端電力に対する割合。送電端から発電端に戻すときは(1−所内率)で割る。(1+所内率)を掛けるのは誤り
発電端熱効率も、所内率を引いた送電端の電力量で出す発電端熱効率は、所内率を引く前の発電端電力量で出す。所内率を使うのは送電端を問われたときだけ
  • 発電端電力は発電機で発電した電力、送電端電力は外へ送り出す電力です。差の所内電力は、ポンプなど発電所の中の補機で使います。
  • 所内率は % で表しますが、(1−所内率)に入れるときは小数にします。5% なら 1−0.05=0.95 を掛けます。1−5 として計算しないように注意します。
  • 汽力発電で最も大きく目減りするのは、復水器で冷却水に捨てる熱です。タービン室効率が半分ほどにとどまるのは、このためです(復水器)。
  • 式の 3 600 は、1時間を秒に直した数です。kW(=kJ/s)を kJ/h にそろえるために掛けます。

言葉の式 電力量〔kW·h〕× 3 600 = 熱量〔kJ〕(1 W×3 600 s=3 600 J)

1kW·h=3600kJ=3.6×106J

W:電力量〔kW·h〕

  • 汽力発電所の熱効率は、40%程度です。3つの積に分ける問題では、効率がボイラ・タービン・発電機の3つしか与えられないことがあります。そのときは、与えられたタービン効率をタービン室効率(復水器を含む)として掛けます。問題文に断りが無くても、そう扱います。

比エンタルピーは、蒸気 1 kg が持つ熱の量です(エンタルピー(えんたるぴー)の 1 kg あたり)。タービンの入口、タービンの出口(復水器の入口)、給水(復水器を出た水)の順に小さくなります。

言葉の式 ボイラ効率[%] = 蒸気量 × (蒸気の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)÷(燃料消費量 × 燃料発熱量)× 100

ηB=Z(hs−hw)BH×100

ηB:ボイラ効率〔%〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:ボイラ出口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 hw:給水の比エンタルピー〔kJ/kg〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

言葉の式 タービン効率[%] = 3 600 × タービン出力[kW]÷{蒸気量[kg/h] ×(入口の比エンタルピー − 出口の比エンタルピー)}× 100

ηt=3600PtZ(hs−ht)×100

ηt:タービン効率〔%〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW(=kJ/s)〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:タービン入口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 ht:タービン出口(復水器入口)の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕

言葉の式 タービン室効率[%] = 3 600 × タービン出力[kW]÷{蒸気量[kg/h] ×(入口の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)}× 100

ηT=3600PtZ(hs−hw)×100

ηT:タービン室効率〔%〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW(=kJ/s)〕 Z:蒸気量〔kg/h〕 hs:タービン入口の蒸気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 hw:給水(復水器出口)の比エンタルピー〔kJ/kg〕

言葉の式 発電機効率[%] = 発電端電力[kW]÷ タービンの機械的出力[kW]× 100

ηG=PGPt×100

ηG:発電機効率〔%〕 PG:発電端電力(発電機の出力)〔kW〕 Pt:タービンの機械的出力〔kW〕

言葉の式 送電端熱効率[%] = 3 600 ×(発電端電力 − 所内電力)[kW]÷(燃料消費量[kg/h] × 燃料発熱量[kJ/kg])× 100

ηS=3600(PG−PL)BH×100

ηS:送電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW〕 PL:所内電力〔kW〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

言葉の式 送電端電力 = 発電端電力 − 所内電力

PS=PG−PL

PS:送電端電力(外部へ送電する電力)〔kW〕 PG:発電端電力(発電機で発電された電力)〔kW〕 PL:所内電力(発電所内で使う電力)〔kW〕

問われ方最初の一手
電力量と燃料の量から効率MW·h は×3.6×10⁶ で kJ に、t は×10³ で kg に直してから割る
送電端の値から発電端の値送電端を(1−所内率)で割る
発電機出力からタービン出力発電機出力を発電機効率で割る
ボイラ効率の逆算送電端熱効率を、タービン室効率×発電機効率×(1−所内率)で割る
運転の表から電力量時間帯ごとに出力×時間を足す。皮相電力(ひそうでんりょく)なら、力率(りきりつ)を掛けて有効電力にする
日負荷率・年負荷率が与えられたとき平均の電力は、最大の電力×負荷率。1日なら 24 h、1年なら 8 760 h を掛ける
  • 設備利用率(せつびりようりつ)が与えられたら、電力量は定格出力×設備利用率×時間です(定義は水力発電所の出力の表)。
  • 熱消費率(ねつしょうひりつ)は、1 kW·h の電力を出すのに使う熱です。タービン室効率は、3 600 を熱消費率で割った値です(復水器の論点)。

解き方:電力量と燃料の量から熱効率

  • ① 最初の一手は、出した電力量と燃やした燃料の熱を、どちらも kJ にそろえることです。
  • ② 電力量は、1 kW·h=3 600 kJ で直します。燃料の熱は、燃料の量〔kg〕×発熱量です。
  • ③ 電力量の熱を燃料の熱で割ると、熱効率です。発電端か送電端かを確かめます。

例の条件を短くまとめます(令和7年度下期 問15(a))。重油専焼の発電所が 45 000 MW·h を発生し、重油 9.1×10³ t を使いました。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg です。

Q=1.62×1011 kJ
Q=9.1×106 kg×44000 kJ/kg=4.004×1011 kJ

Q:燃料の総発熱量(燃料の熱量)〔kJ〕 B:燃料消費量〔kg〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

  • 1.62×10¹¹ を 4.004×10¹¹ で割ると約 0.405 で、発電端熱効率は約 40.5%です。問題文では、発電端効率とも書きます。t を kg に直し忘れると、桁が3つずれます。

次の例の条件です(令和3年度 問15)。定格 350 MW の発電機を、所内率 2%で1日運転しました。

  • 出力は、0〜7時と20〜24時が 130 MW です。7〜12時と13〜20時が 350 MW、12〜13時が 200 MW です。
  • 発電端電力量は、130×7+350×5+200×1+350×7+130×4=5 830 MW·h です。
  • 送電端電力量は、5 830×0.98=5 713.4 で、約 5 710 MW·h です。
  • この間に、発熱量 54.70 MJ/kg の LNG を 770 t 使ったときの発電端熱効率です。
Q=2.099×1010 kJ
Q=7.7×105 kg×54700 kJ/kg=4.212×1010 kJ
  • 2.099×10¹⁰ を 4.212×10¹⁰ で割ると約 0.498 で、約 50%です。送電端の 5 713.4 MW·h で割ると約 48.8%になり、外れます。

解き方:機器の効率をたどる

  • ① 最初の一手は、発電機出力を発電機効率で割って、タービン出力に戻すことです。
  • ② 蒸気量は、タービン効率の式に kg/h のまま入れます。1時間あたりの t の値を 3.6 で割ると、kg/s になります。
  • ③ 送電端の値が与えられたら、先に(1−所内率)で割って発電端に戻します。

例の条件を短くまとめます(令和4年度上期 問3)。発電機出力 19 MW、発電機効率 95%で、使用蒸気量は1時間に 80 t です。比エンタルピーは、タービン入口 3 550 kJ/kg、復水器入口 2 500 kJ/kg です。

  • タービン出力は、19÷0.95=20 MW です。
ηt=3600×20 MW8×104 kg/h×(3550 kJ/kg−2500 kJ/kg)×100=85.71 %
  • タービン効率は約 86%です。発電機出力 19 MW のまま入れると約 81%になり、外れます。

逆に蒸気量を求める例です(令和7年度上期 問2)。タービン出力 175 MW、タービン効率 92%です。入口と復水器入口の比エンタルピーの差は、1 700 kJ/kg です。

  • 蒸気 1 kg が出力に変わる熱は、0.92×1 700=1 564 kJ/kg です。
  • 175 000 kJ/s を 1 564 で割ると、約 111.9 kg/s です。
  • 1時間あたりの t にするには 3.6 を掛け、1時間に約 403 t です。kg/s の 112 のまま選ぶと外れます。

次の例の条件です(平成28年度 問15(b))。送電端電力 16 MW、所内率 5%、タービン出力 18 MW です。

  • 発電端電力は、16÷0.95≒16.84 MW です。
ηG=16.84 MW18 MW×100=93.56 %
  • 発電機効率は約 93.6%です。送電端の 16 MW のまま割ると約 88.9%になり、外れます。

関連:燃料消費量と CO2|ランキンサイクル|復水器|力・仕事・電力

燃料消費量と CO2 ── 燃料は熱÷発熱量、CO2 は炭素の44/12倍

重油の燃焼とCO₂の量:発電端440 MWを効率40%で割った燃料の熱1 100 MWから重油90 t/hが決まり、炭素85%に44/12を掛けてCO₂ 280.5 t/h、水素に9を掛けて水121.5 t/hになる
求めるもの手順つまずきやすい所
要る燃料の熱出力を発電端熱効率で割る効率を掛けてしまう
燃料の量燃料の熱を発熱量で割る秒・時間・1日の単位をそろえ忘れる
CO₂ の量燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛ける燃料の全量や水素の分にも掛けてしまう
理論空気量要る酸素の体積を 0.21 で割る水素に要る酸素を半分にし忘れる

CO₂ の重さは、燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛けた値です。炭素 12 に空気の酸素 32 がつくので、CO₂ は燃えた炭素より重くなります。

言葉の式 総発熱量[kJ] = 燃料消費量[kg] × 燃料発熱量[kJ/kg]

Q=B×H

Q:燃料の総発熱量(燃料の熱量)〔kJ〕 B:燃料消費量〔kg〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

言葉の式 CO₂ の質量 = 燃料の質量 × 炭素の割合 × 44 ÷ 12(C + O₂ → CO₂ :12 + 16×2 = 44)

mCO₂=m燃料×xC×4412

mCO₂:発生する二酸化炭素の質量〔t〕 m燃料:燃料の質量〔t〕 xC:燃料中の炭素の割合〔(小数)〕

言葉の式 モル数[mol] = 質量[g]÷ 原子量(分子量)

n=mM

n:モル数(物質量)〔mol〕 m:質量〔g〕 M:原子量(分子のときは分子量)〔g/mol〕

言葉の式 必要な酸素のモル数 = 炭素のモル数 + 水素(H₂)のモル数 × 1/2

nO₂=nC+nH₂×12

nO₂:必要な酸素分子のモル数〔mol〕 nC:炭素のモル数〔mol〕 nH₂:水素分子のモル数〔mol〕

言葉の式 理論空気量[m³] = 酸素のモル数 × 22.4×10⁻³[m³/mol]÷ 0.21(空気中の酸素濃度)

V空気=nO₂×22.4×10−30.21

V空気:理論空気量(標準状態)〔m³〕 nO₂:必要な酸素分子のモル数〔mol〕

よくある誤り正しくは
水素も燃えると CO₂ になるので、燃料の全量に 44/12 を掛ける水素は燃えると水になる。CO₂ の計算に使うのは、燃料の中の炭素の重さだけ
炭素の重さに 12/44 を掛けると、CO₂ の重さになるCO₂ は炭素より重く、炭素の 44/12(約 3.7)倍。逆に掛けると、答えが小さくなりすぎる
発電端熱効率が上がると、同じ出力に要る燃料は増える燃料の熱は出力÷効率なので、効率が上がると燃料も CO₂ も減る
水素 H₂ 1 mol を燃やすのに、酸素 O₂ も 1 mol 要る2H₂+O₂→2H₂O なので、H₂ 1 mol に O₂ は 0.5 mol
  • 炭素が燃えるとき、炭素原子1個に酸素原子2個が結びつき、CO₂ の分子1個になります(C+O₂→CO₂)。
  • 燃料 1 kg を完全に燃やしたときに出る熱を、発熱量〔kJ/kg〕と呼びます。燃料をすべて完全に燃やしたときの熱が総発熱量で、燃料の量×発熱量です。
  • 問題文に「潜熱(せんねつ)は無視」とあれば、与えられた発熱量をそのまま使います。MJ/kg で与えられたら、×1 000 で kJ/kg に直します。
  • 重油の発熱量は、1 L あたりの kJ で与えられることもあります。そのときは、熱を発熱量で割った答えが L になります。1 kL=1 000 L です。
  • 例は令和5年度下期 問15(b) です。汽力が1年に出す 356.6 GW·h は、×3.6×10⁶ で約 1.284×10¹² kJ です。
  • これを効率 0.4 で割り、1 L あたり 39 100 kJ で割ります。約 8.21×10⁷ L で、約 82 000 kL です。356.6 GW·h は、最大 100 MW・年負荷率 60%の1年の電力量から、水力の分を引いた値です。
  • 原子量は原子の重さを表す数で、炭素 12、酸素 16、水素 1 です。値は、ふつう問題文で与えられます。
  • 原子を 6.02×10²³ 個集めたひと山が 1 mol です。1 mol の質量(しつりょう)は、炭素 12 g、酸素 16 g、水素 1 g です。
  • 酸素の分子 O₂ は 1 mol で 32 g、水素の分子 H₂ は 2 g です。水素のモル数は、H₂ の 2 で割って数えます。
  • 理論空気量は、燃料を完全に燃やすのに要る最小限の空気の量(標準状態の体積)です。気体 1 mol は標準状態で 22.4 L で、空気の酸素は 21%とします。
  • 工場・現場では、燃料の流量と成分から、排ガスの CO₂ と燃焼に要る空気の量を出す物質収支と同じ計算です。

火力発電の燃料は、固体の石炭、液体の石油(重油・原油)、気体の LNG(液化天然ガス)です。

燃料同じ熱を出すときの CO₂環境・値段
石炭いちばん多い(天然ガスの 1.8〜2 倍ほど)環境性は悪いが、安い
石油中くらい(天然ガスの 1.4 倍ほど)環境性は普通で、高い
LNGいちばん少ない環境性がよく、値段は普通
  • 汽力どうしの発電効率を同じとして、発電電力量あたりの CO₂ を比べます。原子力<LNG のコンバインドサイクル<重油の汽力<石炭の汽力の順に多くなります。原子力は、発電のときに CO₂ を出しません。
  • コンバインドサイクルは熱効率が高いので、同じ電力量に燃やす燃料が少なく、CO₂ も減ります(ガスタービンとコンバインドサイクル)。

解き方:出力と効率から燃料と CO₂

  • ① 最初の一手は、出力を効率で割って、燃料の熱を出すことです。
  • ② 燃料の熱〔kJ/s〕を発熱量で割ると、1秒あたりの燃料〔kg/s〕です。1時間は×3 600、1日は×86 400 で直します。
  • ③ 燃料に炭素の割合を掛け、44/12 を掛けて CO₂ にします。

例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問15)。重油専焼で出力 1 000 MW、発電端熱効率 41%です。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg、成分は炭素 85%・水素 15%です。

  • 燃料の熱は 1 000÷0.41≒2 439 MW で、2.439×10⁶ kJ/s です。
  • 重油は 2.439×10⁶÷44 000≒55.4 kg/s です。1時間では約 1.996×10⁵ kg で、約 200 t です。
  • 1日の重油は 199.6×24≒4 789 t です。
mCO₂=4789 t×0.85×4412=14926 t
  • 約 1.49×10⁴ t で、15.0×10³ t にあたります。重油の全量に 44/12 を掛けると 17.6×10³ t になり、外れます。

燃料の量から効率を出す、逆向きの例です(令和5年度上期 問15)。定格 600 MW で、石炭を1時間に 150 t 使います。発熱量は 34 300 kJ/kg、成分は炭素 70%・水素 5%です。

ηP=3600×600 MW1.5×105 kg/h×34300 kJ/kg×100=41.98 %

ηP:発電端熱効率〔%〕 PG:発電端電力〔kW(=kJ/s)〕 B:燃料消費量〔kg/h〕 H:燃料発熱量〔kJ/kg〕

  • 発電端熱効率は約 42.0%です。t を kg にする×10³ を忘れると、桁が合いません。
mCO₂=150 t×0.7×4412=385 t
  • 1時間の CO₂ は 385 t で、1日では 385×24=9 240 t、約 9.2×10³ t です。水素の 5%は使いません。

解き方:理論空気量

  • ① 最初の一手は、燃料の中の炭素と水素の重さを g にして、モル数を出すことです。
  • ② 酸素のモル数は、炭素のモル数+水素 H₂ のモル数×1/2 です。
  • ③ 酸素のモル数に 22.4×10⁻³ m³ を掛けて体積にし、0.21 で割ります。

例の条件を短くまとめます(平成29年度 問15)。定格 600 MW、発電端熱効率 42%で1日運転します。重油の発熱量は 44 000 kJ/kg、成分は炭素 85%・水素 15%です。

  • 燃料の熱は 600÷0.42≒1 428.6 MW です。86 400 秒を掛けて 44 000 で割ると、重油は約 2.805×10⁶ kg(2 805 t)です。
  • 炭素は 2.805×10⁹ g の 85%で、約 2.384×10⁹ g です。水素は 15%で、約 4.2075×10⁸ g です。
n=2.384×109 g12 g/mol=1.987×108 mol
n=4.2075×108 g2 g/mol=2.1038×108 mol
nO₂=1.987×108 mol+2.104×108 mol×12=3.039×108 mol
V空気=3.039×108 mol×22.4×10−30.21=3.242×107 m³
  • 理論空気量は約 32.4×10⁶ m³ です。
  • 水素に要る酸素を半分にし忘れると、43.6×10⁶ m³ になります。0.21 で割り忘れると 6.8×10⁶ m³ で、どちらも外れます。

関連:汽力発電所の効率|核分裂と質量欠損|10の何乗と接頭語

火力発電の環境対策 ── 硫黄酸化物・窒素酸化物・ばいじんは別々の装置で除く

排煙処理:ボイラから煙突までの排ガスの通り道に脱硝装置・電気集じん装置・脱硫装置が並び、窒素酸化物を窒素と水に、ばいじんを+の極へ、硫黄酸化物を石こうにと、それぞれ決まった1種類を取り除く
汚れ発生をおさえる排ガスから取り除く
硫黄酸化物(SOx)硫黄分の少ない燃料(LNG)を使う排煙脱硫装置:石灰と水の混合液に吸収させ、石こうとして回収する
窒素酸化物(NOx)窒素分の少ない燃料を使う。燃焼温度と、燃焼用空気の酸素濃度を低くする排煙脱硝装置:アンモニアを注入し、触媒の上で窒素と水に分解する
ばいじん(煤塵)燃料と空気を正しく混ぜる電気集じん装置:粒子を−に帯電させ、+の集じん極に集める

硫黄酸化物は脱硫装置で石こうに、窒素酸化物は脱硝装置で窒素と水に、ばいじんは電気集じん装置で集めて取り除きます。どの装置も決まった1種類の汚れだけを除くので、排ガスの通り道に並べます。

よくある誤り正しくは
排ガス再循環法は、燃焼温度を上げて窒素酸化物を減らす排ガスを混ぜて、酸素濃度と燃焼温度を下げる。窒素酸化物は、温度が高いほど多くできる
電気集じん装置は、大電流のアーク放電と正イオンで粒子を帯電させる高電圧で起こすコロナ放電の負イオンで、粒子を−に帯電させる
集じん極は細い線電極で、たまった粒子は風を吹きつけて落とす集じん極は平板電極(+)、放電極が線電極(−)。粒子は、集じん極を槌でたたいて落とす
排煙脱硫装置は、アンモニアと触媒で硫黄酸化物を除くアンモニアと触媒を使うのは脱硝。脱硫は石灰と水の混合液で吸収し、石こうを回収する
電気集じん装置のしくみ:放電極(-)のまわりの放電で負に帯電したばいじんが、集じん極(+)に引き寄せられて付く
  • 硫黄酸化物(ソックス)は、SO₂・SO₃ などです。酸性雨や気管支ぜんそくの原因になります。
  • 窒素酸化物(ノックス)は、NO・NO₂ などです。呼吸器に悪い影響を与えます。窒素のもとは、空気と燃料の中の窒素です。
  • ばいじんは、燃えかすの細かい粒です。これらの物質は石炭が最も多く含み、続いて石油で、LNG は比較的きれいな燃料です。
  • 環境汚染の対策には、燃料と燃やし方で汚れを減らす「発生の抑制」と、排ガスから取り除く「排出の抑制」があります。

窒素酸化物の発生をおさえる燃やし方

方法やり方効くわけ
二段燃焼法燃焼用空気を2回に分けて入れる。1段目は空気を少なくして燃やし、2段目で残りの空気を入れる炎の温度と酸素濃度が下がる
排ガス再循環法燃焼用空気に排ガスの一部を混ぜる酸素濃度が下がり、ゆるやかに燃える
酸素濃度を下げるボイラの中の余分な空気を減らす窒素と結びつく酸素が減る
  • 窒素酸化物を減らす燃やし方は、どれも「温度を下げる」「酸素を減らす」向きです。「上げる」と書かれていたら、誤りを疑います。

電気集じん装置のしくみと装置の並び

  • 平板の集じん極(+)の間に、細い線の放電極(−)を置きます。間に、直流の高い電圧をかけます。
  • 細い放電極のまわりは電界(でんかい)が強く、コロナ放電(ころなほうでん)が起きて、空気の分子がイオンになります。
  • +のイオンはすぐ放電極に戻り、−のイオンが集じん極へ向かうので、電極の間は−のイオンで満たされます。
  • 通るばいじんに−のイオンが付いて−に帯電し、引き合う力(クーロン力)で集じん極にくっつきます。
  • 要るのは大きな電流ではなく、高い電圧です。たまった粒子は、集じん極を槌でたたいて下へ落とします。
  • 代表的な並びは、ボイラ→脱硝装置→電気集じん装置→脱硫装置→煙突です。並びは発電所によって違います。
  • 脱硝の触媒は 250〜450 ℃ほどの熱いガスでよく働くので、ボイラの出口の近くに置きます。
  • 湿式の脱硫装置は排ガスを液で洗い、ガスは 50 ℃ほどまで冷えるので、煙突の手前に置きます。

関連:燃料消費量と CO2|ガスタービンとコンバインドサイクル|復水器

ガスタービンとコンバインドサイクル ── 排気の熱でもう一度発電し効率が高い

コンバインドサイクル発電:ガスタービンの排気を排熱回収ボイラに送って蒸気をつくり蒸気タービンも回し、燃料の熱100がガスタービン35・蒸気タービン19.5・残り45.5に分かれ、効率はηg+ηs(1-ηg)で表せる
発電方式しくみ熱効率(ねつこうりつ)の目安
ガスタービン発電圧縮した空気で燃料を燃やし、燃焼ガスでタービンを回す。排気はそのまま外へ出す20〜30%ほど
汽力発電ボイラでつくった蒸気で蒸気タービンを回し、復水器で水に戻す40%ほど
コンバインドサイクル発電ガスタービンの約 600 ℃の排気で、排熱回収ボイラが蒸気をつくり、蒸気タービンも回す50%以上(最新鋭は 60%を超える)

ガスタービンで使い残した排気の熱を、蒸気タービン側でもう一度電力にするので、熱効率が高くなります。ただし出力は、ガスタービンと同じく、外気温の影響を受けやすくなります。

言葉の式 コンバインドサイクル効率 = ガスタービン効率 + 蒸気タービン効率 ×(1 − ガスタービン効率)

η=ηg+ηs(1−ηg)

η:コンバインドサイクル発電の効率〔(比)〕 ηg:ガスタービン効率〔(比)〕 ηs:蒸気タービン効率(排気の熱量に対する)〔(比)〕

よくある誤り正しくは
燃焼用の空気は、排熱回収ボイラのあと、蒸気タービンを通って煙突から出る空気と燃焼ガスは、圧縮機→燃焼器→ガスタービン→排熱回収ボイラ→煙突と通る。蒸気タービンを通るのは、ボイラで水からつくった蒸気
コンバインドサイクルは、最大出力が外気温の影響を受けにくい外気温が高いと空気の密度が下がり、吸い込む空気の重さが減って出力が下がる。影響は汽力より大きい
コンバインドサイクルは、復水器の冷却水が汽力より多く、所内率も大きい蒸気タービンの受け持ちが小さいので、冷却水(温排水)は少ない。大形の所内補機が少なく、所内率も小さい
ガスタービン 35%・蒸気側 30%なら、全体の熱効率は 65%蒸気側に入るのは、排気に残った熱 0.65 だけ。0.35+0.30×0.65=0.545 で、54.5%
汽力とコンバインドの冷却水:コンバインドは蒸気タービンの受け持ちが小さいので、同じ出力の汽力より復水器の冷却水が少なくて済む
  • ガスタービン発電は、吸入→圧縮→燃焼→発電→排気の順に動きます。空気圧縮機・タービン・発電機は、同じ軸でつながります。
  • 「ガス」は、燃料のガスではなく燃焼ガスのことです。燃料には天然ガスのほか、軽油や灯油も使います。
  • ガスタービンは起動・停止の時間が短く、設備も単純です。非常用の自家発電設備に広く使われます。
  • コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電のあとに、その排気で汽力発電を行う方式です。ここで扱うのは、排熱回収方式です。

同じ出力の汽力発電と比べる

見る所コンバインドサイクルわけ
熱効率高い排気の熱をもう一度使う
起動・停止、負荷の変化への追従起動・停止が速く、追従しやすいすばやく動かせるガスタービンと、小型の蒸気タービンの組合せ
復水器の冷却水・温排水少ない蒸気タービンの受け持ちが、出力の3分の1ほど
所内率小さい大形の所内補機が少ない
単位出力あたりの排ガス量多いガスタービンは空気を大量に使う
外気温の影響受けやすい空気の密度で、吸い込む空気の重さが変わる
  • 復水器の冷却水が海へ持ち去る熱は、温排水になります。熱効率が高いほど、また蒸気タービンの受け持ちが小さいほど、温排水は少なくなります。
  • 外気温が下がると空気の密度が上がり、吸い込む空気が増えて出力は上がります。夏に出力が落ちるのは、このためです。
  • 小さな容量の機を何台も組み合わせ、運転する台数を増減して出力を合わせます。部分負荷でも、熱効率が下がりにくくなります。
  • 燃料には、LNG・LPG・灯油など良質な燃料が要ります。
  • 熱効率を上げるには、ガスタービンの入口の温度(燃焼温度)を高くし、空気圧縮機の出口と入口の圧力比を高めます。
  • 燃焼温度を高くすると、窒素酸化物が急に増え、タービンも傷みやすくなります。耐熱材料や翼の冷却、燃やし方の工夫が要ります(火力発電の環境対策)。

解き方:コンバインドサイクルの熱効率

  • ① 最初の一手は、ガスタービンで電力にならなかった熱(1−ガスタービン効率)が、蒸気側に入る熱だと置くことです。
  • ② 蒸気側の効率は、排気の持つ熱に対する割合です。燃料の熱に対する割合ではありません。
  • ③ ガスタービンの出力と蒸気タービンの出力を足します。

例として、ガスタービン効率 35%、排気の熱に対する蒸気タービン側の効率 30%とします。

η=0.35+0.3×(1−0.35)=0.545 (比)
  • 全体は 54.5%で、どちらか一方の効率より高くなります。燃料の熱 100 のうち、蒸気タービンの受け持ちは 19.5 です。
  • 全体と蒸気側の効率から、ガスタービン効率を逆に出す形もあります。全体 48%・蒸気側 20%の例で考えます。
  • 全体から蒸気側を引いた 0.28 を、1 から蒸気側を引いた 0.8 で割ると、35%です。

関連:汽力発電所の効率|火力発電の環境対策|燃料電池と電力貯蔵

まとめ

汽力発電所の発電端熱効率は機器の効率の積で、送電端熱効率は(1−所内率)を掛けた値です。

燃料の量は熱÷発熱量で出し、CO₂ は燃料の中の炭素の重さに 44/12 を掛けます。

排ガスの汚れは3つの装置で別々に除き、コンバインドサイクルは排気の熱で効率を高めます。

次に読む

参考文献

  • 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH02 火力発電の章(SEC03〜05)
  • 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第2章 汽力発電・第3章 原子力・その他の発電
  • 第三種電気主任技術者試験 電力・法規 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成29年度・令和元年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度上期・令和6年度上期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期

内容の誤りに気づいた方へ:誤りの報告フォーム

化学プラントニュース―週報と事故速報をわかりやすく紹介するnoteマガジン PLANT NEWS ON NOTE 化学プラントニュース 化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。 noteで最新ニュースを読む