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送風機のダクトとシステムエフェクト|吸込・吐出しの曲がりで性能が落ちる理由

送風機のダクトとシステムエフェクトを、吸込・吐出しの曲がりによる性能低下から解説するBL-08のアイキャッチ

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送風機をメーカーの性能曲線で選定したのに、現場では風量も圧力も足りない。そこで回転速度を上げれば不足を補える場合はありますが、電力、騒音、振動、機器への負担も増えます。このようなときは、送風機の能力不足だけでなく、吸込・吐出しダクトによるシステムエフェクトを疑う必要があります。

システムエフェクトとは、ファン近傍の偏った流れ、旋回流、障害物、吐出直後の未発達な流れなどによって、試験室で得た性能を実機で発揮できなくなる現象です。単なるダクトの摩擦損失やエルボの局部損失だけではありません。

この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、カタログ性能と現場性能がずれる理由、吸込・吐出し側で起こること、設計時の見込み方、風量不足を切り分ける手順を整理します。

この記事の結論

  • カタログ性能は、ファン入口の流れが均一で、旋回や大きな乱れがない試験条件で得られます。
  • システムエフェクトは、通常のダクト摩擦・局部損失とは別に、ファン近傍の流れの質が悪いために生じる性能低下です。
  • 吸込直前のエルボは偏流や予旋回を作り、圧力、軸動力、効率を変えます。影響は曲がり方向と羽根車の回転方向でも変わります。
  • 吐出直後は流速分布が偏っているため、流れが整う前の曲がりや急な断面変化は静圧回復を妨げます。
  • 風量不足を回転速度で補う前に、測定基準、ガス密度、設備抵抗、汚れ、ファン前後の配管形状を切り分けます。

1. システムエフェクトは「試験条件と実機配管の差」

送風機の性能試験は、入口へ均一で旋回の少ない流れが入り、規定された出口条件で測定できるように行われます。メーカーの性能曲線は、この試験条件で得られた風量、圧力、軸動力、効率の関係です。

一方、実機では設置スペース、既設設備、建屋、支持構造の制約から、吸込口や吐出し口の直前・直後にエルボ、ダンパ、レジューサ、分岐、壁、フィルタなどが置かれます。これらが流れを片寄らせたり旋回させたりすると、羽根車へ設計どおりに気体が入りません。吐出側でも、偏った流速分布が整う前に曲げると静圧回復を妨げます。

同じ送風機でも、試験室の均一で旋回のない流れと、現場の近接エルボによる偏流・旋回では性能が変わることを示す図
(一次資料を参考に当サイト作成)

このようなファン近傍の悪い流れによる性能低下を、システムエフェクトとして扱います。送風機曲線と抵抗曲線の基本は送風機の性能曲線と運転点で確認してください。

2. 通常のダクト損失とシステムエフェクトを分ける

通常のダクト損失とシステムエフェクトは、どちらも送風機へ余分な圧力を要求しますが、発生理由と対策が違います。

比較通常のダクト損失システムエフェクト
主な原因直管摩擦、エルボ、分岐、ダンパ、入口・出口などの抵抗ファン近傍の非一様流、旋回流、障害物、吐出流速分布の未発達
一般的な見積り摩擦係数、局部抵抗係数、相当長などで積算ファン形式、入口・出口配置、曲がり方向、有効直管長、流速などを基にSEFとして評価
主な対策口径拡大、短縮、曲がり削減、低抵抗機器の採用エルボを離す、直管を確保する、曲がり方向を変える、整流する、入口形状を改善する
見落としたとき必要圧力の不足、風量不足カタログ曲線と合わない、効率低下、騒音・振動、軸動力の想定外変化

エルボ自体の局部抵抗を計算していても、エルボをファン吸込口へ直結したために生じる偏流まで自動的に評価できるとは限りません。配管系全体の抵抗計算と、ファン前後の接続状態の確認を別々に行います。

3. システムエフェクトは送風機の故障とは限らない

現場性能がカタログより低いとき、羽根の摩耗、付着、逆回転、ベルト滑り、回転速度不足など送風機側の問題も候補です。しかし、送風機単体が正常でも、入口条件が試験時と違えば性能は低下します。

次の現象が同時にあるときは、近傍配管を優先して確認します。

  • 据付直後から風量・圧力が計画値へ届かない
  • ファン吸込または吐出しのすぐ近くにエルボやダンパがある
  • ダクト断面内で風速を測る位置により値が大きく違う
  • ファン入口で旋回する流れや片寄った流れが見られる
  • 回転速度を上げると電力・騒音・振動が急に増える
  • 同型機でも配管配置が違う系統だけ性能が低い

密度条件をそろえずにカタログと比較しても正しい判断はできません。温度、絶対圧力、湿度・組成による補正は送風機の風量・圧力・軸動力と密度補正で説明しています。

4. 吸込直前のエルボは羽根車へ偏った流れを入れる

軸方向へ吸い込む遠心ファンや軸流ファンの直前にエルボがあると、エルボ出口の流速分布が均一に戻る前に気体がファンへ入ります。『ファン・ブロワ 改訂版』では、この状態で圧力が低下し、軸動力が上昇する例が示されています。

問題は、エルボの通常の圧力損失だけではありません。羽根車の片側へ多く流れ、反対側へ少なく流れるため、羽根入口の負荷が不均一になります。性能低下に加え、騒音、振動、圧力変動が増えることがあります。

送風機の吸込口へエルボを直結した悪い例と、エルボを離して直管で流れを整える改善例を比較する図
(一次資料を参考に当サイト作成)

設計時は、吸込エルボをファンから離し、流れが整う直管部を確保します。やむを得ず近接する場合は、曲がり半径、分割数、整流羽根、入口ボックス、ファンメーカーが許容する接続形状を確認します。「何Dあれば必ずよい」と一律に決めず、ファン形式と現行の設計資料を優先してください。

5. 軸直角方向吸込では曲がり方向が予旋回を決める

吸込軸に対して直角方向から曲げて入れる遠心送風機では、曲がりが羽根車入口へ予旋回を与えます。予旋回の方向と羽根車の回転方向の関係で、圧力と軸動力の変化が異なります。

吸込旋回『ファン・ブロワ 改訂版』に示された代表傾向実務上の注意
羽根車と同方向吸込ベーンで予旋回を与えた状態に近く、圧力と軸動力が低下。効率低下は比較的小さい必要圧力・風量が不足する場合がある
羽根車と逆方向軸動力が増え、圧力はほとんど変わらず、効率が大きく低下電流増加、騒音・振動、モータ余裕を確認する
羽根車の回転方向を同じに保ち、入口の予旋回が同方向の場合と逆方向の場合で圧力・軸動力・効率の傾向を比較する図
(一次資料を参考に当サイト作成)

この傾向は、すべての機種で同じ量だけ変化するという意味ではありません。吸込ケーシング、羽根形状、流速、曲がり半径、直管長で変わります。配管ルートだけで決めず、ファンの回転方向を図面へ入れてメーカーと照合します。

6. 両吸込ファンは左右へ均等に流入させる

両吸込形送風機では、主軸に平行な一方向のダクトから回り込ませると、左右の吸込口へ入る風量が不均等になりやすくなります。片側だけ流量が小さくなると、両吸込形として期待した性能を発揮できません。

『ファン・ブロワ 改訂版』には、吸込部へチャンバを設け、一度流速を落として左右へ分配する対策例があります。ただし、チャンバを設ければ必ず均一になるわけではありません。チャンバ内にも死水域、偏流、急拡大損失が生じ得るため、確実な対策は計画段階で非対称な流入を避けることです。

両吸込ファンの共通入口から左右吸込口への非対称分岐と、吸込チャンバで減速して左右へ分配する改善例を示す図
(一次資料を参考に当サイト作成)

既設改造では、左右吸込側の静圧、風速分布、ダンパ開度、フィルタ差圧を比較します。片側だけ汚れや閉塞がある場合は、配管形状を直す前に抵抗差を取り除きます。

7. 吐出直後は流速分布がまだ整っていない

遠心ファンの吐出し口では、ケーシングの舌部や渦巻き形状の影響で、断面内の流速分布が偏っています。軸流ファンでも、羽根後流や旋回が残ります。十分な直管があると、下流へ進むにつれて流速分布が整い、動圧の一部が静圧として回復します。

この流れが整う前にエルボ、急拡大、急縮小、分岐、ダンパを置くと、圧力回復が妨げられ、追加の性能低下が生じます。吐出エルボの位置と曲がり方向も影響します。

遠心ファンの吐出直後に偏った流速分布が下流で整う様子と、流れが整う前後でエルボを置いた例を比較する図
(一次資料を参考に当サイト作成)

旧資料では、流速に応じた「有効ダクト長」を用いる方法が示されています。一方、AMCA公式情報では、AMCA Publication 201-23が旧201-02(R2011)を置き換え、吐出側システムエフェクトの定義が改訂されています。したがって、旧図表の直管長や係数を固定値として転用せず、AMCA Publication 201-23の公式情報、メーカーの接続条件、対象設備の設計基準を確認してください。

8. SEFは装置必要圧力へ加えて選定する

システムエフェクトを見込む基本手順は次のとおりです。

  1. ファン形式、入口・出口寸法、回転方向を確認する
  2. 吸込・吐出し側のエルボ、直管長、曲がり半径、断面変化、ダンパ、障害物を整理する
  3. 各接続条件に対応するSEFを現行資料またはメーカー資料から求める
  4. 吸込側と吐出側のSEFを通常の装置必要圧力へ加える
  5. ガス密度、温度、絶対圧力の基準をそろえて性能曲線と比較する
  6. モータ動力、効率、騒音、振動、許容回転速度を確認する

『ファン・ブロワ』の計算例では、基礎となる静圧518 Paへ、吸込側SEF 132 Paと吐出側SEF 168 Paを加え、さらに密度補正を行って必要静圧852 Paとしています。

必要静圧の例 =(518+132+168)×1.20÷1.152 = 852 Pa

これは同書に示された特定条件の例であり、132 Paや168 Paを別の設備へ流用してはいけません。重要なのは、通常の装置抵抗だけでなく、吸込・吐出し側のSEFも選定圧力へ加える考え方です。

9. 回転速度を上げて帳尻を合わせない

風量不足を回転速度だけで補うと、必要圧力と軸動力が増えます。システムエフェクトを残したまま速度を上げれば、非効率な流れへさらにエネルギーを与えることになります。モータ過負荷、騒音、振動、軸受負荷、羽根応力も確認が必要です。

『ファン・ブロワ 改訂版』には、現地で工場試験より全圧が410 Pa低かった例があり、配管状態を調べ、コーナーベーンや整流装置、曲がり管改造を省エネ対策として検討しています。まず流れを改善し、それでも不足する分についてファン能力を見直します。

回転数制御と固定抵抗、年間電力量の関係は送風機の風量制御と省エネで確認してください。

10. 現場で風量不足を切り分ける手順

  1. 銘板、羽根形式、回転方向、実回転速度を確認する
  2. 風量、吸込・吐出し静圧または全圧、電流・電力、温度を同時に記録する
  3. カタログと現場で、風量基準、静圧・全圧、ガス密度、回転速度をそろえる
  4. フィルタ、ダクト、ダンパ、熱交換器、スクラバーの通常抵抗を確認する
  5. ファン吸込・吐出し近傍のエルボ、断面変化、障害物、直管長、曲がり方向を確認する
  6. 断面内の複数点で風速を測り、偏流や旋回がないか確認する
  7. 現行のSEF資料またはメーカー評価と照合する
  8. 改造前後を同じ測定点・同じガス条件で比較する
風量不足を測定条件、通常抵抗、ファン前後配管、SEF照合、改造前後測定の順で切り分ける手順図
(一次資料を参考に当サイト作成)

風量計測点がエルボ直後やファン吐出し直後にあると、偏った流速分布のため平均風速を正しく求めにくくなります。計器一つの指示だけで判断せず、トラバース測定、圧力、電力、回転速度を組み合わせます。

11. 改善策は配管ルート変更から順に比較する

改善策狙い注意点
エルボをファンから離す流速分布と旋回を整える距離を確保必要長はファン形式・流速・現行資料で確認
曲がり半径を大きくするはく離と偏流を減らす設置スペース、支持、局部損失
曲がり方向を変える予旋回と吐出流れの干渉を減らす羽根車回転方向を図面へ反映
コーナーベーン・整流羽根曲がり内の流れを案内するベーン自体の抵抗、汚れ、腐食、摩耗
吸込チャンバ・入口ボックスを改善両吸込側へ均等に分配死水域、急拡大、点検性、ドレン
ダンパ・障害物を移設ファン直前直後の流れを乱さない制御性、安全隔離、保守スペース
ファン形式・向きを変更配管ルートと機械の流れ方向を合わせる基礎、モータ、保守、初期費用

整流器を追加すれば必ず省エネになるとは限りません。追加抵抗より、偏流改善による性能回復が大きいかを改造前後の測定で確認します。

12. まとめ

システムエフェクトは、ファン近傍の偏流、旋回、障害物、吐出直後の未発達な流れによって、試験室の性能を実機で発揮できなくなる現象です。通常のダクト摩擦・局部損失とは分けて評価します。

吸込側では、エルボの近さ、曲がり方向、予旋回、両吸込形の左右不均一が重要です。吐出側では、偏った流速分布が整う前の曲がりや断面変化が静圧回復を妨げます。風量不足を回転速度だけで補う前に、測定基準と密度をそろえ、通常抵抗とシステムエフェクトを切り分けてください。

旧AMCA図表は考え方を学ぶ資料として有用ですが、最終設計にはAMCA Publication 201-23、メーカー資料、対象設備の設計基準を使います。送風機記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。

参考文献