動画解説はこちら|YouTube

危険物取扱者甲種の有機化学攻略|炭化水素・官能基・反応

危険物取扱者甲種の炭化水素、官能基、有機反応を解説する記事のアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

困っている人
困っている人

「アルカン、アルケン、アルキンの違いが曖昧」

「官能基と化合物名を結びつけられない」

「付加、置換、酸化のどれが起こるのか判断できない」

そんな疑問を解決します。

この記事の内容

炭化水素を骨格と結合で分類する方法

主要な官能基と化合物の種類

アルコールの級数と酸化生成物

付加反応とベンゼンの置換反応の違い

試験で間違えやすい12項目

先に結論を言うと、甲種の有機化学は物質名を一つずつ暗記するより、次の三段階で判定すると得点しやすくなります。

  • 骨格を見る:鎖式か環式か、ベンゼン環があるか
  • 結合を見る:単結合、二重結合、三重結合のどれか
  • 官能基を見る:-OH、-CHO、>C=O、-COOHなどの特徴部分は何か

周期表、炎色反応、代表気体を復習する人は、先に危険物取扱者甲種の無機化学攻略|周期表・炎色反応・気体の性質を確認してください。

有機化学は「骨格・官能基・反応」で整理する

有機化合物は、炭素原子を骨格とする化合物です。ただし、一酸化炭素CO、二酸化炭素CO₂、炭酸塩など、炭素を含んでも無機化合物として扱う例外があります。

有機化合物は構成元素の種類が比較的少ない一方、炭素の結びつき方によって多くの化合物が生まれます。一般に共有結合からなる分子が多く、可燃性のもの、水に溶けにくく有機溶媒に溶けやすいもの、非電解質のものが多いという傾向があります。

ただし、これは「一般的な傾向」です。低級アルコールやアセトンのように水へ溶けやすい物質もあるため、すべての有機化合物へ機械的に当てはめないでください。

見る順序判定するもの問題での使い方
1. 骨格鎖式・環式・ベンゼン環炭化水素の大分類を決める
2. 結合単結合・二重結合・三重結合飽和・不飽和、付加反応の有無を決める
3. 官能基-OH、-CHO、>C=O、-COOHなど化合物の種類と代表的な性質を決める
4. 反応前後原子団が加わる・置き換わる・酸化される付加・置換・酸化を判定する

炭化水素は鎖・環と結合の種類で分類する

炭素と水素だけからなる化合物を炭化水素といいます。分類では、最初に炭素骨格が鎖状か環状かを見ます。

炭化水素を鎖式・環式、飽和・不飽和、アルカン・アルケン・アルキン・芳香族に分類した図
炭化水素を骨格と結合の種類で分類(一次資料を参考に当サイト作成)

炭化水素

  • 鎖式炭化水素:炭素原子が鎖状につながる
  • 飽和炭化水素:炭素間がすべて単結合。代表はアルカン
  • 不飽和炭化水素:二重結合または三重結合を含む。代表はアルケン、アルキン
  • 環式炭化水素:炭素骨格に環を含む
  • 脂環式炭化水素:シクロアルカンなど
  • 芳香族炭化水素:ベンゼン環をもつ

「環式=芳香族」ではありません。シクロヘキサンは環状ですがベンゼン環をもたない脂環式炭化水素です。ベンゼンは六員環をもち、芳香族炭化水素に分類されます。

アルカン・アルケン・アルキンを見分ける

鎖式炭化水素では、炭素原子間の結合を見れば名称を判定できます。

種類炭素間結合分類代表例反応の要点
アルカンすべて単結合飽和炭化水素メタンCH₄、エタンC₂H₆比較的安定。条件により置換反応
アルケン二重結合を1個含む不飽和炭化水素エチレンC₂H₄二重結合部分で付加反応
アルキン三重結合を1個含む不飽和炭化水素アセチレンC₂H₂三重結合部分で付加反応

一般式まで問われる場合は、鎖式で該当する結合を1個もつものについて、アルカンCnH₂n+2、アルケンCnH₂n、アルキンCnH₂n-2と整理します。

一般式だけでなく構造式も確認してください。たとえばアルケンはC=C、アルキンはC≡Cを探します。名称を忘れても、結合の本数から飽和・不飽和と付加反応の起こりやすさを判断できます。

官能基から化合物名と性質を判定する

炭化水素の水素原子を別の原子または原子団で置き換えた有機化合物では、性質を特徴づける部分を官能基といいます。

ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、エーテル結合、エステル結合を化合物の種類と対応させた図
主要な官能基と化合物の種類(一次資料を参考に当サイト作成)
官能基・結合表し方化合物の種類代表例
ヒドロキシ基-OHアルコール、フェノール類エタノール、フェノール
アルデヒド基-CHOアルデヒドアセトアルデヒド
カルボニル基>C=Oケトンなどアセトン
カルボキシ基-COOHカルボン酸酢酸
エーテル結合-O-エーテルジエチルエーテル
エステル結合-COO-エステル酢酸エチル
アミノ基-NH₂アミンアニリン
ニトロ基-NO₂ニトロ化合物ニトロベンゼン
スルホ基-SO₃Hスルホン酸ベンゼンスルホン酸

ヒドロキシ基-OHがあっても、ベンゼン環へ直接結合していればフェノール類です。アルコールと同じものとして扱わないでください。フェノールは水溶液中でわずかに電離し、弱酸性を示します。

また、アルデヒドとケトンはいずれもカルボニル基をもちます。カルボニル基の炭素へ水素原子が結合した-CHOがアルデヒド基で、二つの炭化水素基が結合した形がケトンです。

異性体は分子式ではなく構造を見る

分子式が同じでも原子の結合順序や配置が異なり、性質も異なる化合物同士を異性体といいます。

代表例は、エタノールC₂H₆OとジメチルエーテルC₂H₆Oです。分子式は同じですが、エタノールはヒドロキシ基をもち、ジメチルエーテルはエーテル結合をもつため、性質が異なります。

同じ分子式を見たら、次の順で確認します。

  1. 炭素骨格の枝分かれが違わないか
  2. 官能基の種類または位置が違わないか
  3. ベンゼン環の置換位置が違わないか

キシレンC₆H₄(CH₃)₂は、二つのメチル基の位置によってオルト、メタ、パラの3種類の異性体があります。元素が同じ単体同士で性質が異なる「同素体」と混同しないでください。

アルコールは級数と酸化先を結ぶ

アルコールは、ヒドロキシ基-OHが結合した炭素に、ほかの炭素原子がいくつ結合しているかで第一級、第二級、第三級に分けます。

級数-OHがつく炭素に結合する炭素数酸化したとき
第一級アルコール1個アルデヒドを経てカルボン酸
第二級アルコール2個ケトン
第三級アルコール3個酸化されにくい

最重要の流れは次の二本です。

第一級アルコール → 酸化 → アルデヒド → さらに酸化 → カルボン酸

第二級アルコール → 酸化 → ケトン

「第二級アルコールを酸化するとアルデヒド」「第三級アルコールを酸化するとケトン」という選択肢は誤りです。

アルコールは親水性のヒドロキシ基と疎水性の炭化水素基をもちます。炭素数が少ないものは水に溶けやすく、同じ価数なら炭素数が多くなるにつれて水に溶けにくくなる傾向があります。

アルデヒド・ケトン・カルボン酸・エステルを整理する

アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルは、官能基と生成関係を一つの流れで覚えます。

化合物特徴部分生成・反応の要点
アルデヒド-CHO第一級アルコールの酸化で生じ、さらに酸化されてカルボン酸になる
ケトン>C=O第二級アルコールの酸化で生じ、一般に酸化されにくい
カルボン酸-COOH弱酸性を示し、アルコールと縮合してエステルを生じる
エステル-COO-カルボン酸とアルコールの縮合で生じ、加水分解で元の成分へ戻る

アルデヒドは酸化されやすく、他の物質を還元する還元性があります。ケトンは一般に酸化されにくく、還元性を示しません。この対比は正誤問題で使われます。

カルボン酸とアルコールからエステルと水が生じる反応をエステル化といいます。逆に、エステルへ水を加えて加熱し、カルボン酸とアルコールを生じる反応は加水分解です。

付加反応と置換反応を結合の種類で分ける

反応名は、反応の前後で何が変わったかを見て判定します。

不飽和結合の付加、アルコールの酸化、ベンゼン環の置換を比較した図
構造から付加・酸化・置換を見分ける(一次資料を参考に当サイト作成)
反応見分け方起こりやすい構造代表例
付加反応不飽和結合へ原子・原子団が加わるC=C、C≡Cエチレンへの水素付加
置換反応分子中の原子・原子団が別のものへ置き換わるアルカン、ベンゼン環などメタンの塩素化、ベンゼンのニトロ化
酸化反応酸素が加わる、または水素が取れる方向アルコール、アルデヒドなど第一級アルコールからアルデヒド
縮合反応二つの分子が結合し、水などの小分子が取れるカルボン酸とアルコールなどエステル化

エチレンへ水素を反応させると、二重結合部分へ水素が付加してエタンになります。アセチレンでは三重結合部分へ水素などが付加します。

一方、メタンへ光を当てながら塩素を反応させると、水素原子が塩素原子へ置き換わります。これは付加ではなく置換反応です。

ベンゼンは付加より置換が起こりやすい

ベンゼンC₆H₆は六員環のベンゼン環をもちます。構造式では単結合と二重結合を交互に描くことがありますが、炭素原子間の結合の長さはすべて等しく、ベンゼン環は安定しています。

そのため、ベンゼンは不飽和結合をもつように見えても、アルケンのような付加反応より、環についた水素原子が別の原子または原子団へ置き換わる置換反応が起こりやすい物質です。

反応名置き換わる原子団主な生成物
ハロゲン化Clなどクロロベンゼンなど
ニトロ化-NO₂ニトロベンゼン
スルホン化-SO₃Hベンゼンスルホン酸

ベンゼン環へヒドロキシ基-OHが直接結合したものはフェノール、アミノ基-NH₂が結合したものはアニリンです。ベンゼン環の存在を見落とすと、アルコールや脂肪族アミンと取り違えます。

試験で間違えやすい12項目

  1. CO、CO₂、炭酸塩などは炭素を含むが無機化合物として扱う
  2. 環式炭化水素がすべて芳香族とは限らない
  3. アルカンは単結合、アルケンは二重結合、アルキンは三重結合をもつ
  4. 二重結合・三重結合を含むものは不飽和炭化水素である
  5. エタノールとジメチルエーテルは同じ分子式でも構造異性体である
  6. ベンゼン環へ-OHが直接結合したものはアルコールではなくフェノール類である
  7. 第一級アルコールはアルデヒドを経てカルボン酸へ酸化される
  8. 第二級アルコールを酸化するとケトンになる
  9. 第三級アルコールは酸化されにくい
  10. アルデヒドは還元性を示し、ケトンは一般に還元性を示さない
  11. 不飽和結合へ原子団が加わる反応は付加反応である
  12. ベンゼンは付加反応より置換反応が起こりやすい

4段階の暗記手順

1. 炭化水素の分類図を白紙で再現する

炭化水素から鎖式・環式へ分け、さらにアルカン、アルケン、アルキン、脂環式、芳香族を配置します。

2. 官能基を見て化合物名を答える

-OH、-CHO、>C=O、-COOH、-O-、-COO-を見て、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エーテル、エステルと答えます。逆向きにも練習してください。

3. 酸化の二本線を毎回書く

第一級→アルデヒド→カルボン酸、第二級→ケトンの二本を、構造式を見なくても再現できるまで反復します。

4. 反応前の構造から付加・置換を選ぶ

C=C、C≡Cなら付加を疑い、ベンゼン環なら置換を優先して考えます。反応後に原子団が「増えた」のか「入れ替わった」のかも確認します。

30秒セルフテスト

  1. 炭素間に二重結合を1個もつ鎖式炭化水素を何というか
  2. アセチレンはアルカン、アルケン、アルキンのどれか
  3. -CHOを何というか
  4. 第一級アルコールを酸化すると、最初に何が生じるか
  5. 第二級アルコールを酸化すると何が生じるか
  6. カルボン酸とアルコールからエステルが生じる反応を何というか
  7. ベンゼンでは付加反応と置換反応のどちらが起こりやすいか

答えは、1.アルケン、2.アルキン、3.アルデヒド基、4.アルデヒド、5.ケトン、6.エステル化、7.置換反応です。

次に読む記事

周期表、炎色反応、代表気体を復習する人は、危険物取扱者甲種の無機化学攻略|周期表・炎色反応・気体の性質を確認してください。

高分子化合物へ進む人は、次に作成する「危険物取扱者甲種の高分子化学攻略」で付加重合、縮合重合、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を整理します。

物理・化学10問全体の優先順位を組み直す人は、危険物取扱者甲種の物理・化学の出題傾向|10問中6問以上を取る勉強法へ戻ってください。

危険物取扱者甲種の記事を学習順に読む人は、危険物取扱者甲種の完全攻略ロードマップを確認してください。

まとめ

危険物取扱者甲種の有機化学を、骨格、官能基、反応の三段階で整理しました。

  • 炭化水素は鎖式・環式、飽和・不飽和へ分類する
  • アルカンは単結合、アルケンは二重結合、アルキンは三重結合をもつ
  • 構造式では、まず官能基を探して化合物の種類を決める
  • 第一級アルコールはアルデヒドを経てカルボン酸へ酸化される
  • 第二級アルコールは酸化されてケトンになる
  • 不飽和結合では付加反応、ベンゼン環では置換反応を優先して考える
  • 分子式が同じでも構造が異なれば、性質の異なる異性体になる

迷ったら、骨格、結合、官能基、反応前後の順へ戻ってください。名称の丸暗記を構造判定へ変えると、初めて見る選択肢でも誤りを見抜きやすくなります。

参考文献

  • 工藤政孝『わかりやすい!甲種危険物取扱者試験』弘文社、有機化合物の分類・官能基・特徴・反応(PDF p.220-223、p.266-273) Amazonで見る
  • 公論出版『甲種危険物取扱者試験 令和8年版』有機化合物の基礎・炭化水素・アルコール・カルボニル化合物・芳香族化合物(PDF p.315-327、p.335-339) Amazonで見る