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ポンプの流量調節|吐出し弁の絞りとインバータを性能曲線で比較

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

遠心ポンプの流量を下げる方法は、大きく2つあります。吐出し弁を絞って配管抵抗を増やす方法と、インバータで回転数を下げる方法です。

どちらも流量計の表示は下がります。しかし性能曲線で見ると、動かしているものが違います。弁絞りは配管側の曲線を変え、インバータはポンプ側の曲線を変えます。この違いが、消費動力、最低流量、制御範囲、設備の安定性に表れます。

この記事の結論

  • 吐出し弁の絞りはシステムカーブを急にする。余った揚程を弁の圧力損失として捨てる
  • インバータはポンプのQ-H曲線を低い回転数の曲線へ移す。弁で捨てていた余分な揚程を、はじめから出さずに済む
  • 同じポンプの相似状態では、流量は回転数、揚程は回転数の2乗、軸動力は回転数の3乗に比例する
  • ただし三乗則はそのまま電気料金の削減率にはならない。静揚程、効率、最低流量、NPSH、電動機・インバータ損失がある
  • 吸込弁を絞って流量調節してはいけない。吸込圧力を下げ、NPSHaを失う
  • 正解は「常にインバータ」ではない。必要流量の範囲、運転時間、静揚程、設備重要度、保守性で決める

1. 弁絞りとインバータは、何を変えているのか

弁絞りとインバータの違い:弁絞りはシステムカーブを急にして余った揚程を弁で捨て、インバータはポンプ曲線を下げて同じ流量に合わせる

遠心ポンプの運転点は、ポンプ性能曲線とシステムカーブの交点です。

  • ポンプ性能曲線:その回転数で、ポンプが流量ごとにどれだけの揚程を出せるか
  • システムカーブ:配管系が、その流量を通すのにどれだけの揚程を必要とするか

吐出し弁を絞ると、同じ流量を通すために必要な圧力損失が増えます。システムカーブが急になり、交点は低流量側へ移ります。ポンプは同じ回転数のままなので、出した揚程の一部を弁で消費しています。

インバータで回転数を下げると、ポンプ性能曲線が全体に下へ移ります(締切揚程は回転数の2乗で下がります)。配管の抵抗は増やさずに、ポンプが出す揚程を下げて交点を移します。

弁絞りでは、ポンプが出した揚程のうちシステムカーブを超える分を弁で捨てています。回転数制御では、その分をはじめから出しません。

2. 吐出し弁を絞ると何が起きるか

吐出し弁を絞ると、弁前後の差圧が大きくなります。流量は下がりますが、ポンプが発生したエネルギーの一部を弁で熱・乱れ・音へ変えています。

それでも絞り制御が広く使われるのは、利点があるからです。

  • 構成が単純で、既設ポンプにも適用しやすい
  • 調節弁と流量計があれば自動制御しやすい
  • 一定回転数なので、低速時の電動機冷却や共振域を考えなくてよい
  • 小さな調整幅、短時間運転、予備系では投資回収を考えると合理的なことがある

一方、絞りすぎると小流量運転になります。締切側へ寄るほど、内部循環、温度上昇、振動、ラジアルスラストの問題が強くなります。調節弁の開度だけを見ず、ポンプ流量が許容最小流量を下回っていないかを確認します。

また、調節弁で大きな差圧を連続的に落とすと、弁のキャビテーション、騒音、振動、エロージョンが問題になることがあります。弁の絞り部で圧力が液の蒸気圧近くまで下がるためで、羽根車入口で起きるポンプのキャビテーションと場所は違いますが、仕組みは同じです。

弁絞りとインバータで失うエネルギーの違い:同じ流量で、弁絞りは軸動力のうち余分な揚程の分を弁で捨て、インバータは回転数を下げてその分をはじめから出さない
弁絞りとインバータで失うエネルギーの違い

3. インバータ制御とポンプの相似則

同じポンプで回転数だけを変え、流れが相似とみなせる範囲では、次の関係が成り立ちます。

Q₂ / Q₁ = N₂ / N₁

H₂ / H₁ = (N₂ / N₁)2

P₂ / P₁ = (N₂ / N₁)3

Qは流量、Hは揚程、Pは軸動力、Nは回転数です。たとえば回転数を80%にすると、理想的な相似関係では次のようになります。

項目回転数100%回転数80%
流量100%80%
揚程100%64%
軸動力100%約51%

この表だけを見ると、インバータは非常に大きな省エネに見えます。ただし、これはポンプ単体を相似運転した理想関係です。実際の電力は、システムカーブとの交点、ポンプ効率、モータ効率、インバータ損失で決まります。

同じ流量で比べる弁絞りと回転数制御:弁で絞ると100%回転のまま余分な揚程を弁で捨て、回転数を下げると同じシステムカーブ上で運転でき軸動力が大きく下がる

静揚程のある系統で回転数を下げたとき、または弁を絞ったときに運転点がどこへ動くかは、iPhoneアプリポンプ 3D図鑑の運転点の計算で、性能曲線と抵抗曲線を重ねて確かめられます(紹介ページ)。

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4. 三乗則どおりに省エネにならない理由

静揚程がある

タンクから高い塔へ送る、加圧容器へ送る、といった系統には流量ゼロでも必要な静揚程があります。回転数を下げても、この固定分は消えません。

静揚程があるときの回転数制御:回転数を80%にしても運転点は相似点(流量80%)に乗らず、システムカーブとの交点で流量は約70%まで下がる

回転数を下げすぎてポンプの締切揚程が静揚程を下回ると、液は流れません。その手前でも、流量が許容最小流量を下回れば、締切運転と同じく液温が上がります。インバータの最低周波数を「流量が少ないから」と自由に下げられない理由です。

効率が変わる

相似則の軸動力三乗は、効率が大きく変わらない前提で使う近似です。運転点が最高効率点から離れれば、ポンプ効率は下がります。低速で電動機効率や冷却性能が変わることもあります。

最低流量がある

プロセス要求が小さくても、ポンプの最低流量を下回る運転はできません。最低流量バイパスを流すなら、その再循環分の動力は残ります。

NPSHと配管条件が変わる

一般に回転数を下げると必要NPSHは下がる方向ですが、実際には吸込容器の液面、温度、ストレーナ差圧、再循環による入熱も変わります。回転数だけでキャビテーション余裕を判断しません。

共振域・補助系・電動機条件がある

回転機には、連続運転を避ける回転数帯が指定されることがあります。低速ではモータ内蔵ファンの冷却能力が下がることもあります。軸封や潤滑系、最低速度、加速・減速時間もメーカー確認が必要です。

5. 吸込弁を絞ってはいけない

流量を下げたいときに、吸込弁を絞るのは原則として避けます。吸込弁で圧力損失を増やすと、ポンプ入口の圧力が下がり、NPSHaがそのまま減るからです。

起きることは次の連鎖です。

  1. 吸込弁を絞る
  2. 吸込配管の圧力損失が増える
  3. 羽根車入口の圧力が下がる
  4. キャビテーションが発生しやすくなる
  5. 音・振動・揚程低下・壊食へ進む

流量調節は吐出し側の弁か、設計された回転数制御で行います。設備固有の手順で吸込弁を操作する場合を除き、吸込弁は全開が基本です。

吸込弁を絞ると入口の圧力が蒸気圧に近づく:吐出し弁で絞れば羽根車入口の圧力は保たれるが、吸込弁で絞ると弁の損失の分だけ入口の圧力が下がりNPSHaを失う

6. どちらを選ぶか

条件吐出し弁の絞りが向くインバータが向く
流量変動小さい、まれ大きい、長時間続く
年間運転時間短い長い
静揚程大きいと差が小さくなりやすい摩擦損失の比率が大きい系で効果が出やすい
設備構成単純にしたい制御範囲と省エネを重視
既設改造弁・計装だけで済む場合があるモータ、インバータ、電源、高調波、冷却の確認が必要
重要設備故障モードが少ない方を選びやすいバイパス運転や冗長性を含めて設計する

実務では、全開・全閉の二択ではありません。インバータで大きく合わせ、調節弁で微調整する組み合わせもあります。重要なのは、年間の運転点分布を使うことです。定格点1点だけでは、省エネ量も最低流量違反も見抜けません。インバータへの信号の入り方と、調節弁との使い分けは調節弁以外の操作端で説明しています。

7. 現場で見るべき値

インバータ運転中は、周波数や回転数だけでなく次を確認します。

  • 流量、吸込圧力、吐出し圧力
  • ポンプ差圧と、その回転数で予想される揚程
  • モータ電流・電力、モータ温度
  • 振動・騒音と、禁止回転数帯の通過・滞留
  • ミニマムフロー弁の状態とポンプ総流量
  • 調節弁開度。インバータを下げながら弁も絞っているなら、制御が競合していないか

同じ流量でも、季節、液温、液密度、上流・下流圧力で必要揚程は変わります。「いつも50 Hzならこの圧力」という固定観念を持たず、運転点で見ます。

まとめ

  • 静揚程、最低流量、NPSH、共振域、モータ冷却が回転数制御の下限を決める
  • 選定は年間の運転点分布と設備重要度で行い、「インバータなら必ず得」と決めつけない

ポンプを2台使う並列運転と直列運転は「ポンプの並列運転と直列運転」で扱います。2台並列にしても流量が2倍にならない理由を、性能曲線から説明します。

ポンプの検討を、手のひらで

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計算と選定の結果は構想段階の概算で、保証計算ではありません。必要NPSHの概算や比速度からの羽根車の形は目安です。3Dは代表構造の教育用モデルで、特定の機種の寸法・形状とは一致しません。実機の選定・発注・安全判断は、メーカーの性能曲線と仕様書、適用規格で確認してください。

参考文献

  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善, 5.3.3「回転速度制御運転」  Amazonで見る
  • 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 第2章「回転速度を変えた場合の性能変化」  Amazonで見る
  • 化学工学協会関東支部編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 5・2・5「バルブによる流量の絞り調節」
  • 西野悠司『「配管設計」実用ノート』日刊工業新聞社, 第3章「ポンプ―管路系を設計する」  Amazonで見る
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