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ポンプの並列運転と直列運転|2台で流量・揚程が2倍にならない理由

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

ポンプを2台並べれば流量は2倍、直列につなげば揚程は2倍——これは合成曲線の作り方としては正しいのですが、実際の運転点の流量・揚程は2倍になりません。

並列では「同じ揚程で流量を足す」、直列では「同じ流量で揚程を足す」。しかし実際に出る流量と揚程は、合成したポンプ曲線とシステムカーブの交点で決まります。さらに、個体差、逆止弁、NPSH、モータ容量、ケーシング・軸封の許容圧力が効きます。

この記事の結論

  • 並列運転は同じ揚程で各ポンプの流量を横に足す。主に流量を増やす方法
  • 直列運転は同じ流量で各ポンプの揚程を縦に足す。主に揚程を増やす方法
  • 並列2台でも流量は通常2倍にならない。流量増加で配管損失が増え、新しい交点で止まる
  • 特性が違うポンプを並列にすると流量分担が偏り、弱いポンプが締切付近になったり流せなかったりする
  • 並列では停止機への逆流を防ぐ逆止弁、直列では後段ポンプ・軸封・配管の許容圧力が重要
  • 1台運転と2台運転の両方で、BEPからのずれ、NPSH、軸動力、最小流量を確認する

1. 並列運転とは|同じ揚程で流量を足す

並列運転は、複数のポンプが共通の吸込ヘッダーから吸い、共通の吐出しヘッダーへ送る接続です。各ポンプの入口圧力と出口圧力がほぼ共通なので、各ポンプが受け持つ揚程は同じになります。

並列接続と直列接続の系統:並列は共通吸込ヘッダーから各ポンプが吸い、逆止弁と吐出し弁を経て共通吐出しヘッダーへ送り、直列は前段の吐出しを後段の吸込へつなぐ
並列接続と直列接続

合成曲線は、同じ揚程 H における各ポンプの流量を足して作ります。

Qtotal = QA + QB

同じ性能のポンプ2台なら、ある揚程での合成流量は単機の2倍です。しかし、それは合成曲線上の話です。実際の運転点は、その合成曲線とシステムカーブの交点になります。

並列は横、直列は縦に足す:並列は同じ揚程で流量を、直列は同じ流量で揚程を足し、実際の運転点は合成曲線とシステムカーブの交点で決まる

2. なぜ2台で流量が2倍にならないのか

配管の摩擦損失は、おおむね流量の2乗に比例して増えます。1台から2台へ切り替えて流量が増えると、配管・弁・熱交換器などの圧力損失も大きくなります。

その結果、2台合成曲線とシステムカーブは、単機流量の2倍より手前で交わります。配管抵抗が大きい系統ほど増加幅は小さくなります。正確な値は実際の曲線で求めます。

同じポンプ2台の並列運転:合成運転点Bの総流量は単独運転Aの2倍に届かず、Bと同じ揚程で見る1台分の点CはAより小流量側になる

増えた総流量を2台で分けるので、配管抵抗がある限り、同一ポンプの1台あたりの流量は単機運転時より小さくなります。2台並列にすると、各ポンプの運転点は単機運転時より左(小流量側)へ移ります。逆に1台を止めると、残る1台の流量と軸動力は増えます。

ここから2つの確認が必要になります。

  • 2台時:各ポンプが許容最小流量を下回らないか、低流量振動が出ないか
  • 1台時:単機流量が増えてモータ過負荷やNPSH不足にならないか

「2台にした方が各ポンプが楽」とは限りません。1台・2台の両方の運転点を見ます。

同じポンプを2〜3台つないだときの合成曲線と、1台だけのとき・1台あたりの運転点は、iPhoneアプリポンプ 3D図鑑の並列運転・直列運転の計算で、メーカーの性能曲線から読んだ3点を入れて描けます(紹介ページ)。

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3. 特性が違うポンプを並列にするとどうなるか

実機には製作差、摩耗、羽根車径、回転数、弁開度の違いがあります。性能曲線が異なるポンプを並列運転すると、同じヘッダー圧力でも流量分担は均等になりません。

特に問題になるのは、運転中の系統圧力が、弱いポンプの締切揚程より高い場合です。弱いポンプを始動しても吐出し逆止弁を押し開けられず、ポンプは締切付近にとどまります。

特性の違うポンプの並列運転:吐出しを絞ってシステムカーブがⅡになると系統の揚程が弱いポンプ2の締切揚程を超え、ポンプ2はほとんど流せなくなる

外から見ると、次のような状態になります。

  • モータは定格回転している
  • 吐出し圧力はヘッダー圧力を示す
  • しかしそのポンプの流量はほとんど増えない

このまま続けると、締切運転と同じく内部の液温が上がり、振動・損傷へ進みます。

「起動したから並列になった」と判断せず、各ポンプの流量、逆止弁が開いて流れが出ているか、吐出し弁前後の圧力を確認します。

流量分担を合わせるために強いポンプの吐出し弁を絞る方法はありますが、絞り損失と低流量側への移動を伴います。恒久対策なら、羽根車径、回転数、ポンプ選定、配管抵抗の見直しを含めて検討します。

4. 並列運転で逆止弁が必要な理由

共通吐出しヘッダーでは、運転中のポンプから停止中のポンプへ液が逆流する経路ができます。逆止弁はこの逆流と逆回転を防ぎます。

逆止弁が閉まらないと停止機へ逆流する:共通吐出しヘッダーの圧力で停止中のポンプの中を吐出し口から吸込口へ逆に流れ、ポンプを逆回転させる

ただし、逆止弁を付ければ終わりではありません。

  • 固着して開かない:起動したポンプが締切状態になる
  • 異物を噛んで閉まらない:停止機へ逆流し、逆回転する
  • 閉止が遅い:逆流速度が大きくなってから急閉し、衝撃が出る
  • チャタリング:低流量で弁体が不安定になり、騒音・摩耗が進む

逆止弁は保護装置であると同時に、過渡現象を作る可動部です。音、弁前後圧力、停止時の逆回転、点検履歴を管理します。

5. 直列運転とは|同じ流量で揚程を足す

直列運転は、前段ポンプの吐出しを後段ポンプの吸込へつなぐ接続です。途中に分岐がなければ、2台を通る流量は同じです。

合成曲線は、同じ流量 Q における各ポンプの揚程を足して作ります。

Htotal = HA + HB

同じポンプ2台なら、ある流量での合成揚程は単機の2倍です。しかし実際の運転点は、直列合成曲線とシステムカーブの交点です。揚程が増えれば流量も増え、その分だけ配管損失が増えるので、単機と同じ流量のまま揚程だけが2倍になるとは限りません。流量が増えるぶん、遠心ポンプでは1台あたりの軸動力が単独運転のときより大きくなります。モータ容量も確認します。

直列運転は、高い差圧が必要な系統、長距離移送、多段昇圧などで使われます。多段遠心ポンプも、羽根車を機内で直列に並べて揚程を加える考え方です。

6. 直列運転で最も注意するのは圧力

後段ポンプの吸込側には、前段ポンプの吐出し圧力がかかります。したがって後段は、通常の低い吸込圧力を前提にしたポンプより高い圧力を受けます。

確認対象は次のとおりです。

  • 後段ポンプのケーシング許容圧力
  • 軸封・メカニカルシールの許容吸込圧力と差圧
  • 吸込・吐出しフランジ、計器、弁、配管の設計圧力
  • 後段停止時や弁閉止時の最大圧力
  • 前段・後段の始動順序とベント状態

前段ポンプを先に起動し、後段のケーシングを満液・加圧・ベントしてから後段を起動する構成があります。ただし、設備によって自動シーケンスやバイパスが異なります。直列運転の始動順序は一般論で決めず、設備SOPを使います。

7. 現場で使う確認表

確認項目並列運転直列運転
合成方法同じ揚程で流量を加算同じ流量で揚程を加算
主目的流量増加・台数制御揚程増加
各ポンプの流量特性差で偏る原則同じ
主な弁の注意各吐出し側の逆止弁中間弁・バイパス・隔離弁
主な危険弱いポンプの締切、停止機への逆流後段の吸込・ケーシング・軸封の過圧
性能確認1台時と複数台時の各運転点合成運転点、各段の圧力と軸動力

運転中は総流量だけでなく、各ポンプの吐出し圧力、電流、振動、軸受温度を比較します。同型機なのに一台だけ電流が低い、温度が高い、振動が大きいなら、流量分担、逆止弁、摩耗、吸込条件を疑います。

8. 台数を切り替えるときの注意

並列ポンプを追加するとヘッダー圧力と総流量が変わり、既運転機の運転点も同時に動きます。停止するときも同じです。切換えは単にスタートボタンとストップボタンを押す操作ではありません。

追加機を起動したら、次を確認します。

  1. 定格回転数に達したか
  2. 逆止弁が開き、追加機から流れが出ているか
  3. 各ポンプの流量・電流・振動が許容範囲か
  4. 吸込液面・吸込圧力が下がっていないか
  5. 総流量と下流設備の圧力・液面制御が安定したか

台数増加で吸込ヘッダー流量が増えると、吸込配管損失が増えて全台のNPSHaが下がります。吐出し側だけでなく、共通吸込側がボトルネックにならないかを見ます。

まとめ

  • 並列では特性差による流量偏り、弱いポンプの締切、停止機への逆流に注意する
  • 直列では後段ポンプ、軸封、弁、配管の許容圧力を確認する
  • 台数切換えでは各ポンプから流れが出ているかと、共通吸込側の圧力低下まで見る

これらの考え方を実際の操作へつなげた、ポンプの始動・停止・運転機から予備機への切換えは「ポンプの始動・停止・切換え」で扱います。

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計算と選定の結果は構想段階の概算で、保証計算ではありません。必要NPSHの概算や比速度からの羽根車の形は目安です。3Dは代表構造の教育用モデルで、特定の機種の寸法・形状とは一致しません。実機の選定・発注・安全判断は、メーカーの性能曲線と仕様書、適用規格で確認してください。

参考文献

  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善, 5.3.1「直列運転」、5.3.2「並列運転」  Amazonで見る
  • 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 第5章「ポンプの運転」  Amazonで見る
  • 西野悠司『「配管設計」実用ノート』日刊工業新聞社, 3.2「ポンプの運転」  Amazonで見る
  • 化学工学協会関東支部編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 5・2・6「ポンプの切換え」
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』学識編 11.5「圧縮機とポンプ」
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