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検査会社の見積りにRTとUTが並んでいるが、どちらを選ぶべきか判断できない。
「この欠陥はPTでは見つからない」と言われたが、その理由が分からない。
そんな悩みを解決します。
表面か内部か、面状か体積状かで使う手法が決まる
PTは表面開口のみ/MTは強磁性体のみ
RTは体積欠陥、UTはき裂が得意
供用中の検査はUT厚み測定とAEが中心

検査計画の妥当性を判断し、報告書を正しく読むための整理です。
現場で、非破壊検査はどこで要るか
| 場面 | 目的 | 主な手法 |
|---|---|---|
| 製作時の溶接部検査 | 溶接欠陥の有無 | RT・UT・PT・MT |
| 定期検査(開放時) | き裂・減肉の有無 | UT・PT・MT |
| 供用中検査(OSI) | 減肉の進行 | UT厚み測定 |
| 熱交換器チューブ | 減肉・き裂 | ET(渦電流) |
| 耐圧試験の代替 | き裂の進展監視 | AE |
| 事故解析 | 破壊の起点を探す | 破面観察+各種NDT |
検査は「見つけたい欠陥に合わせて選ぶ」もの。逆に言えば、想定する劣化モードが分かっていないと選べません。
6つの手法 ── 一覧で押さえる
| 手法 | 略号 | 検出できる位置 | 得意な欠陥 | 制約 |
|---|---|---|---|---|
| 放射線透過試験 | RT | 内部 | 体積状(ブローホール・スラグ) | 面状(き裂)に弱い/被ばく管理 |
| 超音波探傷試験 | UT | 内部 | 面状(き裂)/厚さ測定 | 熟練が要る/形状の制約 |
| 磁粉探傷試験 | MT | 表面+表面直下 | 表面のき裂 | 強磁性体のみ |
| 浸透探傷試験 | PT | 表面に開口したもののみ | 表面のき裂・ピンホール | 内部は不可/多孔質材は不可 |
| 渦電流探傷試験 | ET | 表面・表面近傍 | 細管の減肉・き裂 | 導体のみ(非磁性体でも可) |
| アコースティックエミッション | AE | 全体 | き裂の進展(動的) | 位置特定が難しい/ノイズに弱い |

表面か内部か
表面の欠陥を探す → PT・MT・ET
内部の欠陥を探す → RT・UT
表面探傷のほうが簡便で安価です。まず表面から見るのが基本。
実際、多くの破壊は表面から始まります。 応力集中も腐食もSCCも表面から。
PT(浸透探傷試験)── 最も簡便、ただし表面だけ
毛細管現象で浸透液が欠陥に染み込む
→ 表面の余剰液を拭き取る
→ 現像剤で欠陥内の液を吸い出す
→ 拡大されて目視できる
手順(5ステップ)
| 工程 | 注意点 | |
|---|---|---|
| ① | 前処理(脱脂・洗浄) | 油脂が残ると浸透しない |
| ② | 浸透処理 | 所定の時間(5〜20分)保持する |
| ③ | 余剰浸透液の除去 | 洗いすぎると欠陥内の液も抜ける |
| ④ | 現像処理 | 薄く均一に。厚すぎると見えない |
| ⑤ | 観察 | 現像後、所定時間内に観察する |
染色浸透と蛍光浸透
| 染色浸透探傷 | 蛍光浸透探傷 | |
|---|---|---|
| 浸透液 | 赤色の染料 | 蛍光物質 |
| 観察 | 白色光(明るい場所) | 紫外線(ブラックライト)+暗所 |
| 感度 | 標準 | 高い |
| 適用 | 現場で手軽に | 工場・高感度が必要なとき |
蛍光は紫外線です。赤外線ではありません(試験でも2回すり替えられています)。
PTの限界
表面に開口していない欠陥(内部欠陥・表面直下)
多孔質材料(全面が染まる)
開口部が塞がっている(塗装・スケール・研磨で潰れた)
非常に狭い開口(浸透液が入らない)
ブラスト処理やグラインダで表面を潰すと、欠陥の開口が塞がって見えなくなります。
だから前処理では「削らない」洗浄を選びます。
オーステナイト系ステンレスにはPTが標準です(MTが使えないため)。
MT(磁粉探傷試験)── 強磁性体だけ、ただし直下も見える
試験体を磁化する
→ 欠陥があると漏れ磁束が発生する
→ そこに磁粉が吸着して模様(磁粉模様)になる
PTとの違い
| PT | MT | |
|---|---|---|
| 検出範囲 | 表面開口のみ | 表面+表面直下(数mm) |
| 適用材料 | 非多孔質なら何でも | 強磁性体のみ |
| 感度 | 標準 | PTより高い(微細なき裂) |
| 前処理 | 厳密(脱脂) | 比較的緩い |
| 後処理 | 現像剤の除去 | 脱磁が必要なことがある |
ただしオーステナイト系ステンレス・アルミ・銅には使えません。 磁化できないから。
磁化方向が重要
磁束の方向と平行なき裂は漏れ磁束が出ない → 検出できない
→ 方向を変えて2回以上磁化する(直交する2方向)
「1方向しか磁化していない検査」は不十分です。報告書で確認すべき点。
脱磁は、残留磁気が溶接や計測に悪影響を与える場合に行います。
RTとUT ── 内部欠陥の2大手法
| RT(放射線透過) | UT(超音波探傷) | |
|---|---|---|
| 原理 | 透過した放射線の強さの差をフィルムに記録 | 反射したエコーを検出 |
| 得意な欠陥 | 体積状(ブローホール・スラグ巻込み) | 面状(き裂・融合不良) |
| 不得意 | き裂(放射線と平行だと写らない) | 形状が複雑/粗大粒(ステンレス鋳造材) |
| 記録性 | フィルムが残る(客観的) | その場の判定(記録装置があれば残る) |
| 厚さの制約 | 厚いと透過しにくい | 厚くても可 |
| 安全 | 被ばく管理・立入制限 | 安全 |
| 片面から | 両面必要(線源と検出器) | 片面で可 |
なぜRTはき裂に弱いのか
RTは放射線が通る距離の差を見ている
→ き裂の幅は数μmと極めて狭い
→ 放射線の方向とき裂の面が平行なら大きな差が出る
→ しかし直交していると、ほとんど差が出ない
だから「き裂が写らなかった」=「き裂がない」ではありません。
供用中に発生するき裂(疲労・SCC)の検査はUTが標準です。
UTの方式
| 方式 | 用途 |
|---|---|
| 垂直探傷 | 厚さ測定/板内部の欠陥 |
| 斜角探傷 | 溶接部の欠陥(斜めから入射) |
| TOFD | き裂の深さを高精度に測定 |
| フェーズドアレイ(PAUT) | 画像化/広範囲を高速に |
近年はPAUTがRTを代替することが増えています。被ばくがなく、画像で記録も残る。
ただし規格上RTが要求される場合があるので、適用可否は仕様を確認してください。
UT厚み測定 ── 供用中検査の主役
運転中に配管・容器の肉厚を測る
→ 過去のデータと比べて腐食速度を算出
→ 余寿命を予測する
これがRBI(リスクベース検査)の基礎データになります。
同じ点を繰り返し測ることが重要です。位置がずれると比較になりません。
ETとAE ── 特定用途で強い
ET(渦電流探傷試験)
コイルに交流を流して渦電流を発生させる
→ 欠陥があると渦電流が乱れる
→ コイルのインピーダンス変化を検出
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 非接触(カプラント不要) | 表面近傍のみ(表皮効果) |
| 高速 | 形状の影響を受けやすい |
| 非磁性体でも可(導体なら) | 強磁性体は感度が落ちる |
| 細管の全長検査ができる | 解釈に熟練が要る |
チューブの中にプローブを通して引き抜くだけで、全長の減肉・き裂が分かります。
UTでは1本ずつ手作業になるので、本数が多いとET一択です。
AE(アコースティックエミッション)
材料が変形・き裂進展すると弾性波(音)が出る
→ センサで検出する
→ 複数のセンサで到達時間差から位置を推定
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 全体を一度に監視できる | 位置の特定精度が低い |
| 進行中の損傷だけを捉える | 静止した欠陥は検出できない |
| 運転中・加圧中に監視できる | ノイズ(流体音・機械音)に弱い |
耐圧試験中にAEで監視するという使い方が典型的です。
耐圧試験の安全確保(危険な進展を検知したら中止)
大型タンクの底板(開放せずに腐食の進行を見る)
常時監視(重要設備)
「開放しないと分からない」を減らせるのがAEの価値です。
選び方の手順 ── 3ステップ
- 想定する劣化モードを決める(腐食減肉/き裂/溶接欠陥)
- 欠陥の位置を推定する(表面/内部)
- 材質と形状の制約を確認する(磁性・厚さ・アクセス)
劣化モード別の推奨
| 劣化モード | 推奨手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 全面腐食(減肉) | UT厚み測定 | 定量的に測れる/運転中可 |
| 孔食・局部腐食 | UT(走査)/内視鏡 | 点在するので走査が要る |
| SCC・疲労き裂 | PT・MT(表面)/UT(内部) | き裂はUTが得意 |
| 溶接欠陥(製作時) | RT・UT | 内部の体積欠陥・融合不良 |
| 熱交換器チューブ | ET | 本数が多い/高速 |
| タンク底板 | MFL・AE | 広面積/開放せず |
| CUI(保温材下) | 保温材を剥がしてPT・UT | 外面から見るしかない |
近年はパルス渦流(PEC)で保温材の上から減肉を推定する手法も使われます。
実務での失敗例
失敗例①:ステンレスにMTを指定してしまう
オーステナイト系は非磁性なのでMTは使えません。 PTかETを指定します。
失敗例②:溶接直後に非破壊検査する
溶接後数時間〜数十時間かけて発生する
→ 直後の検査ではまだ割れていない
→ 24〜48時間後に検査するのが標準
外観検査と寸法測定は直後でよい。非破壊試験だけ待ちます。
失敗例③:測定点を記録しない
UT厚み測定は「同じ点を繰り返し測る」ことに意味があります。
測定点の位置(図面上・現物のマーキング)
測定日・測定者・機器
測定値と、そのときの温度(温度補正が要る)
位置がずれると、減肉なのか元々の厚さの差なのか分かりません。
失敗例④:「異常なし」を過信する
検出できる最小欠陥寸法がある(手法・条件による)
検査した範囲しか分からない(サンプリング検査なら特に)
手法によって見えない欠陥がある(RTでき裂、PTで内部)
「異常なし」は「この手法で、この範囲で、この感度では見つからなかった」という意味です。
検査計画では「どの劣化モードを、どの手法で、どこまでカバーするか」を明示してください。
甲種化学ではこう出ます
国試の問15(設備の検査と診断)と検定の問14で毎年出ます。
PTは内部欠陥を検出できない
MTは非磁性体に使えない/ETは導体なら非磁性体でも可
蛍光探傷は紫外線(赤外線ではない。2回すり替えられた)
RTは透過(反射ではない)/溶接部・鋳物に広く用いる
RTはき裂に弱く、UTのほうが得意
PTの手順は浸透→除去→現像→観察
OSI=運転中の検査
解き方と過去問は保安管理技術|設備管理と非破壊検査にまとめています。
材料側は金属材料の基礎・ステンレス鋼の選び方へ。
まとめ
- 表面ならPT・MT・ET、内部ならRT・UT
- PTは表面に開口したもののみ。内部・表面直下は不可
- MTは強磁性体のみ。オーステナイト系ステンレスには使えない
- MTは表面直下も見え、PTより感度が高い(炭素鋼ならMT優位)
- 蛍光探傷は紫外線で観察する
- RTは体積欠陥、UTはき裂が得意
- RTでき裂が写らないのは原理上の限界。「異常なし」を過信しない
- ETは非磁性体でも可。熱交換器チューブの標準
- AEは進行中の損傷だけを検出する(静止した欠陥は不可)
- UT厚み測定は同じ点を繰り返し測る。記録が命
- 溶接部の非破壊検査は遅れ割れを考慮して所定時間後
材料は金属材料の基礎・ステンレス鋼の選び方、検査計画はリスクベース検査・設備健全性管理へ。
化学プラント大全 
