最終確認:2026年11月3日
電験三種の電力で、送電線そのものの性質を4つの論点にまとめた辞書です。線路定数とフェランチ効果、地絡(ちらく)に備える中性点接地(ちゅうせいてんせっち)、直流送電、送電電力と安定度の順に確かめます。
電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性
線路定数とフェランチ効果 ── 軽負荷では進み電流で受電端の電圧が送電端を超える

| 線路定数 | 何から生じるか | 覚える向き |
|---|---|---|
| 抵抗(ていこう) | 電線の材料・長さ・太さ | 温度が上がると大きい。交流では表皮効果(ひょうひこうか)で直流より大きい |
| 作用インダクタンス(さよういんだくたんす) | 電線を流れる交流がつくる磁束(じそく) | 線間距離と電線の半径の比が大きいほど大きい |
| 作用静電容量(さようせいでんようりょう) | 電線どうし・電線と大地の間のコンデンサ | 線間距離と電線の半径の比が大きいほど小さい |
| 漏れコンダクタンス | 塩害やコロナで、がいしの表面を流れる漏れ電流(もれでんりゅう) | とても小さいので、ふつうは省く |
軽い負荷では、静電容量の進んだ充電電流が勝ち、受電端の電圧が送電端より高くなります。これがフェランチ効果(ふぇらんちこうか)で、分路リアクトル(ぶんろりあくとる)を入れて抑えます。
言葉の式 受電端電圧 = 送電端電圧 ÷(1 − B × X ÷ 2)
Er:受電端の相電圧〔V〕 Es:送電端の相電圧〔V〕 B:線路全体のサセプタンス(π形では B/2 ずつ両端)〔S〕 X:線路のリアクタンス〔Ω〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| フェランチ効果は、負荷が重いときに起きやすい | 起きやすいのは無負荷・軽負荷のとき。重いと、遅れの負荷電流が進みを打ち消す |
| フェランチ効果のとき、線路の電流は電圧より遅れている | 進んでいる。進んだ電流が線路のリアクタンスを流れて、受電端が上がる |
| 線間距離と半径の比が大きいほど、作用静電容量は大きくなる | 小さくなる。大きくなるのは作用インダクタンスで、向きが逆 |
| 表皮効果で、直流のほうが抵抗が大きくなる | 交流のほうが大きい。周波数が高いほど表皮効果は大きい |
- 線路定数は、電線の種類・断面積・配置で決まります。電圧や電流では、ほとんど変わりません。
- 表皮効果は、交流で電線の中心に電流が流れにくくなり、実質の断面積が減る現象です。
- 作用インダクタンスは、1本の電線が持つインダクタンスです。正しくは、1線の中性点に対する値です。
- 作用静電容量は、対地静電容量(たいちせいでんようりょう)と線間静電容量(せんかんせいでんようりょう)から求めます。線間静電容量を中性点に対する値に直してから、対地静電容量に足します。
- 三相では、線間静電容量を中性点に対する値に直すと、3倍の値になります。2つをそのまま足すのではありません。
- 参考書には「対地静電容量と線間静電容量の和」とだけ書くものもあります。線間の分は、3倍に直してから足すと読みます。
- 多導体(たどうたい)は、同じ断面積の単導体より等価半径が大きいので、インダクタンスが小さくなります。
線路定数の式と、フェランチ効果のしくみ
言葉の式 抵抗 = 抵抗率 × こう長 ÷ 断面積
R:電線の抵抗〔Ω〕 ρ:抵抗率〔Ω·mm²/m〕 ℓ:こう長(電線の長さ)〔m〕 A:電線の断面積〔mm²〕
言葉の式 作用インダクタンス = 0.05 + 0.4605 × log₁₀(線間距離 ÷ 電線の半径)[mH/km]
L:電線1本・1 kmあたりの作用インダクタンス〔mH/km〕 D:電線間の距離〔m〕 r:電線の半径〔m〕
言葉の式 作用静電容量 = 0.02413 ÷ log₁₀(線間距離 ÷ 電線の半径)[μF/km]
C:電線1本・1 kmあたりの作用静電容量〔μF/km〕 D:電線間の距離〔m〕 r:電線の半径〔m〕
- 抵抗の式の例は、アルミ部分の断面積が410 mm²の電線です。
- こう長は4 km、抵抗率は0.0286 Ω·mm²/mで、抵抗は約0.279 Ωです。
- 長さはメートルに直して入れます。キロメートルのまま入れると、1 000分の1の値になります。
- インダクタンスと静電容量の式は、覚えなくて構いません。線間距離と半径の比に対して、向きが逆になることを覚えます。
| 線路の長さ | 等価回路 | 静電容量の扱い |
|---|---|---|
| 短距離 | 抵抗とリアクタンスを直列にした回路 | 小さいので省く |
| 中距離(π形) | アドミタンス(あどみたんす)を半分ずつ、送電端と受電端に置く | 2か所にまとめる(集中定数回路) |
| 中距離(T形) | 直列のインピーダンスを2つに分け、真ん中にアドミタンスを置く | 1か所にまとめる(集中定数回路) |
| 長距離 | 分布定数回路(四端子定数) | 線路全体に一様に広がっているとする |
- π(パイ)形は両端の2か所、T形は真ん中の1か所にまとめます。
- 静電容量をまとめる回路は「集中定数回路」です。「分布定数回路」と取り違えないようにします。
- 線路定数の4つ目は「漏れ」コンダクタンスです。「伝達」コンダクタンスとする文は誤りです。

- 交流では、負荷をつながない無負荷でも、電線と大地の間の静電容量に充電電流が流れ続けます。
- 受電端を出ていく線路の電流は、負荷電流と充電電流(じゅうでんでんりゅう)の和です。向きも含めた和(ベクトルの和)です。
- 負荷の力率(りきりつ)はふつう遅れなので、負荷電流は遅れます。充電電流は、受電端の電圧より90°進みます。
- 負荷が重いと遅れの負荷電流が勝ち、線路の電流は遅れます。軽いと、進みの充電電流が勝ちます。
- 受電端の電圧に、抵抗の降下 RI とリアクタンスの降下 XI を足したものが、送電端の電圧です。
- XI は電流より90°進んだ向きです。電流が進むと XI が反対側を向き、受電端のほうが長くなります。
- 充電電流は、静電容量・周波数・電圧に比例します。静電容量が大きいほど、フェランチ効果が起きやすくなります。
| 起きやすい条件・対策 | 理由 |
|---|---|
| 無負荷・極軽負荷、休日・夜間 | 遅れの負荷電流が小さく、進みの充電電流の影響が大きい |
| 静電容量が大きい、こう長が長い、地中電線路 | 充電電流が大きい。地中ケーブルは架空線より静電容量が大きい |
| 対策:分路リアクトルを入れる | 線路の電流の遅れの成分を増やし、進みを打ち消す |
| 対策:軽負荷のときに電力用コンデンサ(でんりょくようこんでんさ)を外す | 進みの電流を減らす |
- 分路リアクトルは、受電端に近い所で入れます。送電端の近くでは、途中の線路の進み電流を打ち消せません。
- 線路電圧が高く、こう長が長いほど、フェランチ効果は著しくなります。
- 長い送電線につないだ同期発電機が、進み電流で端子電圧を上げるのは自己励磁現象(じこれいじげんしょう)です。電圧が上がる点は同じでも、別の現象です。
解き方:π形とT形の回路
- ① 最初の一手は、1相分にして、π形の片側の静電容量が全体の半分だと確かめることです。
- ② 無負荷では、リアクタンスを流れるのは受電端側の充電電流だけです。受電端の電圧は、上の式で出します。
- ③ 送電端の電流は、送電端側と受電端側の、2つの静電容量の電流の和です。電圧は相電圧(そうでんあつ)で入れます。
- ④ 受電端と送電端の電圧の比は、線間電圧にもそのまま使えます。
例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問17)。1相分のπ形で、リアクタンスは200 Ω、アドミタンスは全体で0.800 mS(ミリジーメンス)です。送電端の線間電圧は66.0 kVで、受電端は無負荷です。
言葉の式 線間電圧 = √3 × 相電圧(相回転 a→b→c のとき、線間電圧は相電圧より位相が π/6 進む)
V:線間電圧〔V〕 Ep:相電圧〔V〕
- 送電端の相電圧は、66.0 kV÷√3≒38.1 kVです。
- 受電端の相電圧は約41.4 kVで、線間電圧に直すと約71.7 kVです。送電端の66.0 kVより高くなります。
- 片側の0.4 mSを全体の0.8 mSと取り違えると、66.0÷0.84≒78.6 kVになり、外れます。
Is:送電端電流〔A〕 B:線路全体のサセプタンス〔S〕 Es:送電端の相電圧〔V〕 Er:受電端の相電圧〔V〕
- 送電端側の約15.2 Aだけ、受電端側の約16.6 Aだけで止めないようにします。2つは同じ向きなので、そのまま足せます。
- 線間電圧のまま入れると、√3倍の約55.1 Aになり、外れます。令和元年度 問16も、同じ条件の問題です。
T形の例の条件を短くまとめます(令和6年度下期 問16)。1相分で、抵抗20 Ω、リアクタンス80 Ω、真ん中のアドミタンス0.0007 Sです。受電端の電圧は150 kV、電流は400 A、力率は遅れの√3/2です。
- 受電端の電圧を基準の向きにおき、負荷電流を実部(じつぶ)と虚部(きょぶ)に分けます。
- 負荷電流の実部は400×√3/2≒346.4 A、虚部は遅れの400×1/2=200 Aです。
- 片側のインピーダンスは、抵抗10 Ωとリアクタンス40 Ωです。
- 受電端側の電圧降下(でんあつこうか)の実部は、10×346.4+40×200=11 464 Vです。虚部は、40×346.4−10×200=11 856 Vです。
- 真ん中の電圧は、実部161 464 V・虚部11 856 Vで、大きさは約161.9 kVです。
- 真ん中の静電容量の電流は、実部が−8.3 A、虚部が進みの113.0 Aです。
- 送電端側の電流は、実部338.1 A、虚部は遅れの87.0 Aです。電流は受電端の400 Aのままではありません。
- 送電端側の降下の実部は、10×338.1+40×87.0≒6 861 Vです。虚部は、40×338.1−10×87.0≒12 654 Vです。
- 送電端の電圧は、実部168 325 V・虚部24 510 Vで、大きさは約170.1 kVです。実部と虚部を別々に足してから、大きさを出します。
関連:中性点接地方式|直流送電|フェーザ表示|記号法|平衡三相回路の計算|複素数
中性点接地方式 ── 直接接地は地絡電流が大きく、非接地は健全相の電圧が上がる

| 方式 | 1線地絡のとき | 健全相の対地電圧 |
|---|---|---|
| 直接接地方式(ちょくせつせっちほうしき) | 地絡電流は大。継電器は確実に働き、誘導障害は大 | ほとんど上がらない(小) |
| 抵抗接地方式(ていこうせっちほうしき) | 地絡電流は中。継電器は確実に働き、誘導障害は中 | 中くらい上がる(中) |
| 非接地方式(ひせっちほうしき) | 地絡電流は小。継電器は働きにくく、誘導障害は小 | 約√3倍に上がる(大) |
| 消弧リアクトル接地方式(しょうこりあくとるせっちほうしき) | 地絡電流はほぼ0(微小)。継電器は働きにくく、誘導障害は微小 | 約√3倍に上がる(大) |
| 方式 | 中性点のつなぎ方 | 使われる電圧の目安 |
|---|---|---|
| 非接地 | 大地につながない | 6.6 kV以下(33 kV以下の送配電線路にも) |
| 直接接地 | 導線で直接、大地につなぐ | 187 kV以上の超高圧 |
| 抵抗接地 | 100〜1 000 Ω程度の抵抗を通してつなぐ | 22〜154 kV |
| 消弧リアクトル(しょうこりあくとる)接地 | 消弧リアクトルを通してつなぐ | 66 kVか77 kV |
地絡電流を大きく流す方式ほど健全相の電圧は上がらず、小さく抑える方式ほど√3倍まで上がります。直接接地と非接地が両端で、抵抗接地はその間です。
言葉の式 地絡電流 =(線間電圧 ÷ √3)÷(中性点接地抵抗 + 地絡点の抵抗)
Ig:地絡電流〔A〕 V:線間電圧〔V〕 Rn:中性点接地抵抗〔Ω〕 Rg:地絡点の抵抗〔Ω〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 非接地方式の地絡電流は、直接接地方式より大きい | 小さい。流れるのは、健全相の対地静電容量を通る電流だけ |
| 直接接地方式は、地絡電流が小さく、誘導障害も小さい | 地絡電流は最も大きく、誘導障害も大きい。長所は健全相の電圧が上がりにくいこと |
| 消弧リアクトルは、対地静電容量と直列共振させる | 並列共振。リアクトルの遅れの電流と、静電容量の進みの電流が打ち消し合う |
| 非接地方式では、こう長が長いほど地絡電流は小さい | 大きい。対地静電容量はこう長に比例する |
- 中性点接地は、変圧器の二次側(Y結線)の中性点(ちゅうせいてん)を、直接か抵抗・リアクトルを通して大地につなぐことです。
- 目的の1つ目は、地絡のときの健全相の対地電圧の上昇を抑え、機器の絶縁を軽くすることです。
- 2つ目は、地絡電流の大きさを整えて地絡継電器(ちらくけいでんき)を確実に働かせ、地絡した所を切り離すことです。3つ目は、消弧リアクトル接地で地絡電流を自然に消すことです。
- 使われる電圧の目安は、資料によって少し違います。抵抗接地を「主に154 kV以下」と書く資料もあります。
- 地絡電流が大きいほど、通信線への電磁誘導障害が大きくなります。直接接地は、77 kV以下の系統には使いません。
- 現場では、構内の6.6 kVの高圧系統の多くが非接地です。地絡電流が小さいので、零相変流器(れいそうへんりゅうき)と地絡方向継電器(ちらくほうこうけいでんき)で地絡を見分けます。
健全相の電圧と消弧リアクトルのしくみ
- 非接地で c相が地絡すると、c相は大地と同じ0 Vになります。c相の対地静電容量には電流が流れません。
- 大地の電位が c相へ移るので、a相の対地電圧は相電圧から線間電圧に変わります。大きさは√3倍です。
- 地絡電流は、a相とb相の対地静電容量を通る電流の和です。中性点の対地電圧より90°進みます。
言葉の式 地絡電流 = jω × 対地静電容量 ×(Vac + Vbc)= j3ω × 対地静電容量 × 中性点の対地電圧
Ig:地絡電流〔A〕 ω:交流の角周波数〔rad/s〕 C0:各相の対地静電容量〔F〕 En:中性点の対地電圧(大きさは相電圧 E に等しい)〔V〕
- 対地静電容量はとても小さいので、地絡電流も小さくなります。だから継電器で見つけにくくなります。
- 非接地では、がいしの表面で間欠的なアーク(消えたりついたりするアーク)が出て、過電圧が出るおそれがあります。
- 通信線の誘導障害は、地絡電流が小さいので、抵抗接地方式より小さくなります。

- 消弧リアクトルにも中性点の対地電圧がかかり、それより90°遅れた電流が流れます。静電容量の電流と向きが反対です。
言葉の式 消弧リアクトルのインダクタンス = 1 ÷(3 × 角周波数² × 対地静電容量)
L:消弧リアクトルのインダクタンス〔H〕 ω:交流の角周波数〔rad/s〕 C0:各相の対地静電容量〔F〕
- このインダクタンスにすると、理論上は地絡電流が0になり、遮断器(しゃだんき)によらずにアークが消えます。調整が手間なので、新しく採る例は多くありません。
- 直接接地では、中性点と大地がつながっているので、中性点は0 Vのままです。健全相は相電圧のままか、わずかに上がるだけです。
- だから直接接地は、機器の絶縁を軽くでき、設備費が安くなります。非接地と消弧リアクトル接地は、健全相が√3倍に上がるので、絶縁を軽くできません。
- 直接接地の地絡電流は、相電圧を地絡点までの線路のインピーダンスで割った値です。インピーダンスが小さいので、大きくなります。
- 抵抗接地の地絡電流は、中性点の抵抗の電流と、健全相の対地静電容量の電流の和です。
- 抵抗接地では、抵抗の値で、継電器が働き誘導障害が出ない程度に地絡電流を抑えます。地絡継電器の検出が弱まるので、対応策が要ることもあります。
解き方:抵抗接地の地絡電流
- ① 最初の一手は、線間電圧を√3で割って、相電圧にすることです。
- ② 中性点の接地抵抗と地絡点の抵抗は、直列につながります。2つを足します。
- ③ 相電圧を、抵抗の和で割ります。
例の条件を短くまとめます(平成28年度 問16)。公称電圧66 kVの送電線で、中性点の接地抵抗は300 Ωです。100 Ωの抵抗を介して1線地絡し、ほかのインピーダンスは無視します。
- 約95 Aです。線間電圧のまま割ると165 Aに、地絡点の100 Ωを落とすと約127 Aになり、外れます。
- 同じ問の三相短絡電流には、中性点の300 Ωは関わりません。三相短絡は、地絡とは別の回路です。
- 3線を一括して大地との間に相電圧を加え、流れた全部の充電電流から1相のアドミタンスを出す型もあります。
- 1相のアドミタンスは、全部の充電電流を、相電圧の3倍で割った値です。地絡電流を0にするリアクトルのアドミタンスは、その3倍です。
- リアクトルのインピーダンスは、そのアドミタンスの逆数です。
- 自作の値で確かめます。相電圧20 kVで全部の充電電流が48 Aなら、1相は48÷(3×20 000)=0.0008 Sです。
- リアクトルのアドミタンスは3倍の0.0024 Sで、インピーダンスは1÷0.0024≒417 Ωです。
関連:線路定数とフェランチ効果|Y結線|共振
直流送電 ── 長いケーブルや周波数の違う系統に向くが、遮断が難しい

| 長所 | 理由 |
|---|---|
| 長い海底ケーブルでも、送れる電力が減らない | 一度充電すれば充電電流が流れない。フェランチ効果も誘電損(ゆうでんそん)も無い |
| 周波数の違う系統をつなげる(非同期連系) | 直流には周波数が無い。短絡容量を増やさずにつなげる |
| 安定度の問題が無く、長距離・大電力に向く | 直流ではリアクタンスの影響が無い |
| 絶縁を低くできる | 同じ公称電圧なら、直流の最大値は交流の1/√2 |
| 電圧降下・電力損失が少なく、導体が2条で済む | 無効電力が無い。三相の交流は3条が要るので、直流は送電線路の建設費が安い |
| 短所 | 理由 |
|---|---|
| 両端に高価な交直変換設備が要る | 送電側で交流を直流に、受電側で直流を交流に変える |
| 高調波を除くフィルタが要る | 変換装置は、順変換・逆変換のどちらでも高調波(こうちょうは)を出す |
| 無効電力供給設備(調相設備)が要る | 直流では無効電力(むこうでんりょく)を送れない |
| 高電圧・大電流の遮断が難しい | 電流の零点が無い。遮断器は交流側に置く |
| 変圧器で電圧を変えられない | 変圧器は交流でしか働かない |
直流は向きが変わらないので、充電電流も周波数も無く、長いケーブルや周波数の違う系統の連系に向きます。その代わり、両端の変換所が要り、遮断が難しくなります。
言葉の式 実効値 = 最大値 ÷ √2
V:実効値〔V〕 Vm:最大値〔V〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 直流の高電圧・大電流の遮断は、交流より容易 | 難しい。交流は1周期に2回電流が0になるが、直流には零点が無い |
| 直流の最大値は同じ実効値(じっこうち)の交流より高く、絶縁を増す | 最大値が実効値の√2倍になるのは交流。直流は絶縁を1/√2に低くできる |
| 他励(たれい)式の変換装置なら、フィルタも調相設備も要らない | 形式を問わず、どちらも要る。他励式のほうが大規模になる |
| 直流でも、ケーブルの充電電流の補償が要る | 要らない。一度充電すれば、充電電流は流れない |
- 直流(ちょくりゅう)送電は、交流を直流に変えて送り、受電側で再び交流(こうりゅう)に戻す方式です。電力系統のほとんどは交流です。
- 交流を直流に変えるのが順変換、直流を交流に戻すのが逆変換です。両端に交直変換所を置きます。
- 東日本は50 Hz(ヘルツ)です。西日本は60 Hzです。
- 周波数変換所では、いったん直流にしてから、別の周波数の交流にします。こうして東と西で電力を融通します。
- 北海道と本州の間は、津軽海峡の海底ケーブルを使う直流送電で電力を融通しています。
- 変換装置には自励(じれい)式と他励式があり、どちらでもフィルタと調相設備が要ります。
- 素子のうち、自己消弧(じこしょうこ)形(ゲートターンオフサイリスタなど)は自分で電流を切れます。ふつうのサイリスタは、自分では切れません。
- 大地を帰り道にする方式では、地中の金属の電食や、地磁気の測定への影響に気をつけます。
- 直流の地絡電流は交流より小さいので、がいしが強ければ、アークホーンを省けることがあります。
直流で充電電流が流れない理由と、遮断の難しさ
- ケーブルの電線と外側の間には静電容量があり、コンデンサとみなせます。コンデンサには、電圧が変わるときだけ電流が流れます。
- 交流は電圧が変わり続けるので、充電と放電がくり返され、充電電流が流れ続けます。ケーブルが長いほど大きく、そのぶん送れる電力が減ります。
- 直流は電圧が変わらないので、はじめに一度充電すれば、充電電流は流れなくなります。
- 交流の電圧は、実効値の√2倍の最大値まで上がります。絶縁は最大値で決まるので、同じ公称電圧なら直流は絶縁を1/√2にできます。

- 遮断器が接点を開くと、接点の間にアークが出て、電流がしばらく流れ続けます。
- 交流は向きが変わるので、1周期に2回、電流が0になります。そこでアークが消えやすく、電流が切れます。
- 直流は向きも大きさも一定で、0になる点がありません。そのため、遮断器は交直変換所の交流側に置きます。
関連:線路定数とフェランチ効果|送電電力と安定度|実効値と平均値|スイッチ直後と定常
送電電力と安定度 ── リアクタンスを小さくすると、送れる電力と安定度が上がる

| 記号 | 意味 |
|---|---|
| Vs・Vr | 送電端・受電端の線間電圧(せんかんでんあつ) |
| X | 電線1線あたりのリアクタンス(線路の抵抗は無視する) |
| δ | 相差角(そうさかく)。送電端と受電端の電圧の位相(いそう)の差で、送る電力が大きいほど大きい |
| 最大の電力 | δ が90°のとき。送電端と受電端の電圧の積を、リアクタンスで割った値 |
送れる電力は相差角の sin に比例し、最大は電圧の積をリアクタンスで割った値です。Xを小さくすると最大が上がり、同じ電力を小さいδ(デルタ)で送れて、安定度が上がります。
言葉の式 送電電力 = 送電端線間電圧 × 受電端線間電圧 ÷ リアクタンス × sin(相差角)
P:三相の送電電力(受電端の有効電力)〔W〕 Vs:送電端の線間電圧〔V〕 Vr:受電端の線間電圧〔V〕 X:電線1線あたりのリアクタンス〔Ω〕 δ:送電端電圧と受電端電圧の位相差(相差角)〔°〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 三相の送電電力は、上の式にさらに√3を掛ける | 線間電圧で書くと√3は付かない。相電圧の積を3倍すると、√3が消える |
| 送電電力は、負荷の力率角(りきりつかく)θの cos に比例する | 相差角δの sin に比例する。θ と δ は別の角 |
| δを大きくするほど、送電電力は限りなく大きくなる | 90°で最大になり、それを超えると減る |
| 多導体にするとインダクタンスが増え、送電容量が下がる | インダクタンスが減るので、送電容量が増え、安定度が上がる |
- 安定度(同期安定度)は、多くの発電機が周波数を保って並行運転を続けられる度合いです。事故や急な負荷の変化でも、同期を保てるほど高くなります。
- 負荷をゆっくり増やしても安定に運転できる度合いを、定態安定度(ていたいあんていど)と呼びます。
- 安定度を上げるには、リアクタンスを小さくするか、電圧を高くします。送れる電力の最大が、どちらでも大きくなります。
- 直列コンデンサは、送電線に直列に入れて、線路のリアクタンスを打ち消します。負荷と並列につなぐ電力用コンデンサとは目的が違います。
- 多導体は、1相を2〜8条の電線に分けてスペーサで間を保つ方式です。線路のインダクタンスが減り、送電容量が増えます。
- 送電電圧を上げると、送れる電力の最大は電圧の2乗に比例して大きくなります。
- 発電機の同期リアクタンスを小さくする(短絡比を大きくする)ことでも、安定度は上がります。
- 送電容量は、電線の電流容量や安定度の制約で決まります。中性点の接地方式を変えても、送電容量は増えません。
- 直流送電には、リアクタンスによる安定度の制約がありません。
式の導き方

- 1相分では、送電端の相電圧 Es は、受電端の相電圧 Er にリアクタンスの降下 jXI を足したものです。
- jXI は電流と直角です。ベクトル図で Es の先の高さは Es sin δ で、XI cos θ(シータ)にも等しくなります。
- 1相の受電端の電力は Er I cos θ です。この I cos θ は、Es sin δ を X で割った値に置きかえられます。
- 置きかえると、1相の電力は、Es と Er の積に sin δ を掛けて X で割った値です。
- 三相はその3倍です。相電圧を線間電圧÷√3にすると、3×(Vs Vr÷3)で、√3が消えます。
- 式を選ぶ問(令和4年度下期 問9)は、この順で選べます。
解き方:%X と送電電力
- ① 最初の一手は、%X の基準を、三相の基準容量と線間電圧にそろえることです。
- ② %X は、下の式で出します。
- ③ 送電電力は、Ωのまま上の式に入れるか、単位法の式に基準容量を掛けて出します。
- ④ 答えの単位(MW)と、%と比(25%なら0.25)の取り違えを確かめます。
例の条件を短くまとめます(平成30年度 問17)。抵抗を無視できる1回線の短距離送電線で、1相分のリアクタンスは11 Ωです。受電端の電圧は66 kVで一定、基準容量は100 MV·Aです。
言葉の式 パーセントリアクタンス = 基準容量 × リアクタンス ÷(線間電圧)² × 100[%]
%X:パーセントリアクタンス〔%〕 PB:基準容量(三相)〔V·A〕 X:線路のリアクタンス〔Ω〕 V:基準電圧(線間電圧)〔V〕
- MV·AとkVのまま入れると、100×11÷66²×100≒25.25で、約25.3%です。選ぶ値は25%です。
- 基準インピーダンスは66²÷100=43.56 Ωです。リアクタンスとの割り算を逆にすると、約396%になります。
- 1相分の容量(約33.3 MV·A)と線間電圧を組み合わせると、約8.4%です。三相の容量と相電圧(約38.1 kV)なら、約75.8%です。
- どちらも3倍ずれます。単相の形で書くなら、1相分の容量と相電圧を組にします。
次に、送電端の電圧も66 kVで、相差角が30°のときの送電電力です。
- 上の式に kV と Ω のまま入れると、66×66÷11×0.5=198 で、答えは MW で出ます。
- 198 MWです。√3を掛けると約343 MW、sin を掛け忘れると396 MWになり、外れます。
P:三相の送電電力〔MW〕 PB:基準容量〔MV·A〕 Vs:送電端電圧(p.u.) Vr:受電端電圧(p.u.) x:パーセントリアクタンス(p.u.=%X÷100)〔p.u.〕 δ:相差角〔°〕
- 単位法でも、約198 MWで同じです。
言葉の式 線路のリアクタンス = 誘導性リアクタンス − 直列コンデンサの容量性リアクタンス
X:補償後の線路のリアクタンス〔Ω(または%)〕 XL:線路の誘導性リアクタンス〔Ω(または%)〕 XC:直列コンデンサの容量性リアクタンス〔Ω(または%)〕
言葉の式 合成リアクタンス = (X₁ × X₂)÷(X₁ + X₂)
X:2回線を並列にした合成リアクタンス〔Ω(または%)〕 X1:1つ目の回線のリアクタンス〔Ω(または%)〕 X2:2つ目の回線のリアクタンス〔Ω(または%)〕
- 2回線の片方に直列コンデンサがある型もあります。先にその回線の差をとり、次に2回線を並列に合成してから、送電電力の式に入れます。
関連:直流送電|三相電力と二電力計法|三角比とラジアン|ベクトル
まとめ
軽負荷の長い線路では、静電容量の進んだ充電電流で、受電端の電圧が送電端を超えます。
中性点の直接接地は地絡電流が大きく、非接地は健全相の電圧が√3倍に上がります。
直流送電は長いケーブルや異周波数の連系に向き、交流の送電電力はリアクタンスを小さくすると増えます。
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参考文献
- 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH06 送電の章(SEC03 充電電流、SEC04 線路定数、SEC05 送電線のさまざまな障害、SEC06 中性点接地、SEC07 直流送電)、CH10 電力計算の章(SEC04 電力と電力損失)
- 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第5章 送電
- 『First Stage シリーズ 新訂電気機器概論』千葉 明 実教出版 第7章 パワーエレクトロニクス(周波数変換設備と直流送電設備)
- 第三種電気主任技術者試験 電力 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成29年度・平成30年度・令和元年度・令和2年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度下期・令和6年度下期・令和7年度下期・令和8年度上期
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