最終確認:2026年11月3日
電験三種の電力で、汽力発電所の設備とサイクルを扱う5つの論点をまとめた辞書です。ランキンサイクル、ボイラ、蒸気タービンと保護装置、復水器、発電機の回転子(円筒形(えんとうけい)と突極形(とっきょくけい))の順に確かめます。
電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性
ランキンサイクル ── 入口を高温高圧に、復水器を高真空にするほど効率が上がる

| 過程 | 機器と水の変化 | 熱の出入り |
|---|---|---|
| ①→② 断熱圧縮 | 給水ポンプで水に圧力をかけ、ボイラへ送る | 無い。エントロピーは変わらない |
| ②→③ 等圧受熱 | ボイラで水を沸騰させ、過熱器(かねつき)で過熱蒸気にする | 受け取る。エントロピーが増える |
| ③→④ 断熱膨張 | 高温・高圧の蒸気がタービンの中で膨張し、仕事をする | 無い。エントロピーは変わらない |
| ④→① 等圧放熱 | 復水器で冷やされて、水に戻る | 捨てる。エントロピーが減る |
タービン入口の蒸気を高温・高圧にし、復水器の真空度を高めるほど、熱効率は上がります。T-s線図では、サイクルが囲む面積がタービンで取り出す仕事で、下の線から0 Kまでの面積が復水器で捨てる熱です。
言葉の式 ランキンサイクルの効率[%] = タービンでの消費熱量 ÷ ボイラでの吸収熱量 × 100 =(h₁ − h₂)÷(h₁ − h₃)× 100
η:ランキンサイクルの熱効率〔%〕 h1:ボイラ出口蒸気(タービン入口)の比エンタルピー〔kJ/kg〕 h2:タービン排気の比エンタルピー〔kJ/kg〕 h3:給水ポンプ入口給水の比エンタルピー〔kJ/kg〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 復水器の真空度を低くすると、蒸気がタービンの中でよく膨張する | 真空度が低いと復水器の中の圧力が高く、蒸気は十分に膨張できない。真空度は高くする |
| 再生サイクル(さいせいさいくる)の給水加熱器では、抽気の温度を上げる | 上げるのは給水の温度。抽気の熱で給水を温め、復水器に捨てる熱を減らす |
| 再熱サイクル(さいねつさいくる)では、高圧タービンを出た湿り蒸気を過熱器で温める | 温め直すのはボイラの再熱器(さいねつき)。乾いた蒸気にして、低圧タービンへ送る |
| 給水ポンプで水を押し込む過程は、断熱膨張 | 外と熱をやりとりせずに圧力を上げるので、断熱圧縮 |
- 汽力発電は、高温・高圧の蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して、発電機で電気にする方法です。
- 熱の出入りが無い(断熱の)過程は、給水ポンプとタービンの2つです。
- 熱効率を上げる工夫は、高温・高圧の蒸気、復水器の高い真空度、再熱、再生、節炭器(せったんき)で排ガスの熱を拾うことの5つです。
- 節炭器を置くと、排ガスの温度は下がります。「節炭器で排ガスの温度を上げる」は逆の向きです。
| サイクル | すること | 効き目 |
|---|---|---|
| 再熱サイクル | 高圧タービンで仕事をして温度の下がった湿り蒸気を、ボイラの再熱器で温め直し、低圧タービンへ送る | 熱効率が上がる。タービンの後ろの段の湿りが減り、羽根の腐食を防ぐ |
| 再生サイクル | タービンの途中から蒸気の一部を抜き出し(抽気)、給水加熱器で給水を温める | 復水器で捨てる熱が減る。抽気する蒸気の圧力・温度が高いほど、効果は大きい |
| 再熱再生サイクル | 再熱と再生を組み合わせる | 最も効率がよく、大容量の汽力発電所で使われる |
- 効率は、ランキンサイクルが最も低く、再熱サイクルと再生サイクルはその中間です。
- 節炭器と給水加熱器は、どちらも給水を温めます。節炭器は燃焼ガスの排熱で、給水加熱器はタービンからの抽気で温めます。
蒸気の状態と線図
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 飽和温度(沸点) | 液体が沸騰する温度。圧力が高いほど高く、低いほど低い。ふつうの圧力では100 ℃ |
| 飽和水 | 飽和温度にある水。これ以上熱すると沸騰が始まる |
| 湿り蒸気 | 沸騰している間の、飽和水と蒸気がまじった状態。細かな水滴を含み、温度は飽和温度のまま |
| 乾き飽和蒸気 | 水滴がすべて蒸発した所の蒸気。温度はまだ飽和温度で、試験の文では飽和蒸気とも書く |
| 過熱蒸気 | 乾き飽和蒸気をさらに熱し、飽和温度より高くした蒸気。過熱器でつくり、タービンへ送る |
| 顕熱(けんねつ)と潜熱(せんねつ) | 温度を上げる熱と、水を蒸気に変える熱。圧力を上げると、潜熱は小さくなる |
| 臨界圧力 | 潜熱が0になる圧力で、水は22.12 MPa・374.1 ℃。これを超える超臨界圧では、沸騰を経ずに蒸気になる |
| 量・図 | 意味 | 線図での見え方 |
|---|---|---|
| エントロピー(えんとろぴー) | 受け取った熱を、そのときの絶対温度で割って足していった量 | T-s線図の横軸。熱を受け取ると右へ進み、断熱の過程は縦の線 |
| エンタルピー(えんたるぴー) | 物質が持つ熱の量。1 kgあたりの値を比エンタルピー〔kJ/kg〕と呼ぶ | 2つの点の比エンタルピーの差が、その間に出入りした熱 |
| 過程 | P-V線図(縦に圧力、横に体積) | T-s線図(縦に温度、横にエントロピー) |
|---|---|---|
| ①→② 給水ポンプ | 圧力が上がり、体積はほぼ変わらない(縦の線) | 温度はわずかに上がり、エントロピーは変わらない |
| ②→③ ボイラ・過熱器 | 圧力は同じで、体積が増える(横の線) | 温度が上がり、沸騰の間は横ばい。過熱でまた上がり、エントロピーは増える |
| ③→④ タービン | 体積が増え、圧力が下がる(右下がりの曲線) | 温度が下がり、エントロピーは変わらない(縦の線) |
| ④→① 復水器 | 圧力は同じで、体積が減る(横の線) | 温度はほぼ同じで、エントロピーが減る(横の線) |
- 5つの点(A〜E)で描いたT-s線図では、B→Cが水を温めて沸騰させ、乾き飽和蒸気にする所です。沸騰の間は温度が横ばいになります。
- C→Dが過熱器で過熱蒸気にする所で、A→Bは給水ポンプ、D→Eはタービン、E→Aは復水器です。
- 乾き飽和蒸気と過熱蒸気をまとめて「乾き蒸気」と呼ぶこともありますが、試験の文は2つを分けて書きます。
- 絶対温度は、セルシウス温度に273を足した温度です。単位はK(ケルビン)で、20 ℃は293 Kです。
- ボイラでつくった蒸気が湿ったままだと、水滴でタービンの羽根がさびて腐食します。過熱器で過熱蒸気にしてから送ります。
- T-s線図の縦軸は0 Kから描きます。熱を受け取る線の下の面積が、受け取った熱です(グラフの面積)。
- 高い温度で受け取った熱ほど、仕事になる割合が大きくなります。復水器の温度を下げると、捨てる熱の割合が減ります。
- 汽力発電の基本のサイクルはランキンサイクルです。ガスタービンのサイクルはブレイトンサイクルと呼び、別のものです。
解き方:比エンタルピーからサイクルの効率
- ① 最初の一手は、比エンタルピーを、タービン入口・タービン出口・給水ポンプ入口の3点に当てはめることです。
- ② ボイラで受け取る熱は、タービン入口から給水ポンプ入口を引いた差です。
- ③ タービンで使う熱は、タービン入口から出口を引いた差です。②で割って、100を掛けます。
例の条件を短くまとめます(平成28年度 問15)。P-V線図の4点の比エンタルピーが与えられています。給水ポンプ入口140、ボイラ入口150、タービン入口3 380、出口2 560 kJ/kgです。
- この問で問われたのはタービン効率です。ここでは、同じ値でサイクルの効率を確かめます。
- 約25%です。分母をタービン入口の3 380だけにすると約24%、出口の2 560にすると約32%になり、外れます。
- 給水ポンプで上がる比エンタルピー(140から150)はわずかなので、この式では無視しています。
- タービン効率や、燃料から見た効率は、汽力発電所の効率で扱います。
関連:ボイラと付属設備|復水器|ガスタービンとコンバインドサイクル
ボイラと付属設備 ── 熱いガスで蒸気を熱し、余熱で給水と空気を温める

| 設備 | 働き |
|---|---|
| 火炉(燃焼室) | 燃料を燃やし、高温の燃焼ガスをつくる |
| ドラム | 水と飽和蒸気を分け、蒸発管へ水を送る。貫流ボイラには無い |
| 過熱器 | ドラムなどで発生した飽和蒸気を、さらに熱して過熱蒸気にする |
| 再熱器 | 高圧タービンで一度仕事をした蒸気をボイラに戻し、温め直す |
| 節炭器 | 煙道を通る燃焼ガスの余熱で、ボイラへの給水を温める |
| 空気予熱器(くうきよねつき) | 煙道を通る燃焼ガスの余熱で、燃焼用の空気を温める |
| 安全弁 | 蒸気の圧力が決まった値を超えると蒸気を外へ出し、機器の破損を防ぐ |
燃焼ガスは、熱いうちに過熱器と再熱器で蒸気を熱し、冷めてきた所で節炭器と空気予熱器に余熱を渡します。節炭器は給水を、空気予熱器は燃焼用の空気を温め、どちらもボイラ効率を高めます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 燃焼ガスは、節炭器、電気集じん装置、空気予熱器の順に通る | 節炭器の次は空気予熱器で、電気集じん装置はその後ろ |
| 節炭器は、ボイラでできた蒸気を使い、給水を飽和温度以上に熱する | 煙道の燃焼ガスの余熱で、沸騰しない温度まで温めるだけ。沸騰させるのは蒸発管 |
| 再熱器で温め直した蒸気は、再び高圧タービンで仕事をする | 送る先は、次の段の中圧・低圧タービン |
| 空気予熱器は、燃焼ガスの余熱でボイラの給水を温める | 空気予熱器が温めるのは燃焼用の空気。給水を温めるのは節炭器 |
- 熱は、温度の高い物から低い物へ移ります。すでに熱い蒸気をさらに熱くするには、もっと熱いガスが要ります。
- まだ冷たい給水と空気なら、冷めてきたガスの余熱でも温められます。煙突から捨てる前に、ガスの熱を拾います。
- 節炭器(エコノマイザ)は、「石炭を節約する設備」という意味の名前です。ボイラの壁と給水の温度の差を小さくして、熱応力を減らす働きもあります。
- 空気予熱器で燃焼用の空気を温めると、よく燃えて、すすも少なくなります。
- 工場・現場では:廃熱ボイラの節炭器や空気予熱器も、冷めた排ガスで給水と空気を温める同じしくみです。
水・蒸気・燃焼ガス・空気の通る順
| 流れ | 通る順(代表的な順) |
|---|---|
| 水 | 給水ポンプ → 節炭器 → ドラム → 降水管 → 蒸発管 → ドラム |
| 蒸気 | ドラム → 過熱器 → 高圧タービン → 再熱器 → 中圧・低圧タービン → 復水器 |
| 燃焼ガス | 火炉 → 過熱器 → 再熱器 → 節炭器 → 空気予熱器 → 電気集じん装置 → 煙突 |
| 空気 | 押込通風機 → 空気予熱器 → 火炉 |
- 間の機器を省いた並びも、順が合っていれば正しい並びです。例は、火炉 → 過熱器 → 節炭器や、再熱器 → 低圧タービン → 復水器です。
- 実際のボイラは、過熱器を分けて置くなど、配置がいろいろあります。
- 電気集じん装置は、燃焼ガスの中のばいじんを取り除く装置です(火力発電の環境対策)。
- 通風装置は、燃焼に要る空気を送り、燃焼ガスを外へ出します。煙突だけによる自然通風と、送風機を使う強制通風があります。
- 安全弁は、ドラム(ボイラ胴)・過熱器・再熱器などに付けます。
ボイラの種類
| 種類 | 水の回し方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自然循環ボイラ | 降水管の冷たく重い水と、蒸発管で温められた軽い水と蒸気の、比重の差で回る | 高い圧力には向かない。ボイラの背を高くする必要がある |
| 強制循環ボイラ | 降水管の途中の循環ポンプで回す | 高い圧力に向く。背を高くしなくてよく、始動・停止が速い。管を細く薄くでき、小形にできる |
| 貫流ボイラ | 給水ポンプで圧力をかけ、節炭器 → 蒸発管 → 過熱器と一度で通す。循環は無い | ドラムも循環ポンプも要らず軽い。亜臨界圧・超臨界圧に向き、始動が速い。給水の処理に注意が要る |
- 圧力が高いと、圧縮された蒸気は重くなり、100 ℃を超えて熱くなった水は膨張して軽くなります。比重の差が小さくなり、自然には回りにくくなります。
- 圧力が臨界圧力を超えると、水は沸騰せずに直接蒸気になります。水と蒸気を分けなくてよいので、貫流ボイラにはドラムがありません。
- 超臨界圧は臨界圧力を超える圧力、亜臨界圧は臨界圧力を超えない圧力です。
- ドラムの中の汽水分離器は、蒸発管から来た水と飽和蒸気を分けます。
関連:ランキンサイクル|蒸気タービンと保護装置|火力発電の環境対策
蒸気タービンと保護装置 ── 異常ごとに守る装置が決まり、圧力を逃がすのは安全弁

| 起きること | 働く装置 | すること |
|---|---|---|
| 回転速度が定格を超えて上がりすぎる | 非常調速機(非常調速装置) | 蒸気止弁を閉じて、タービンを止める |
| ボイラの蒸気圧力が限度を超える | 安全弁 | 蒸気を外へ逃がし、機器の破損を防ぐ |
| 軸受の油圧が異常に下がる | トリップ装置 | タービンを止める |
| ボイラ水の循環が悪くなる | 燃料遮断装置(燃料遮断弁) | 燃料を止めてバーナを消し、水管の焼損を防ぐ |
| 発電機の固定子巻線の中で短絡(たんらく)する | 比率差動継電器(ひりつさどうけいでんき) | 内部の短絡を見つけて保護する |
| 負荷が変わり、回転速度が少し動く | 調速装置 | 蒸気加減弁で蒸気の量を加減し、回転速度を保つ |
蒸気を外へ逃がすのは安全弁、量を加減するのは蒸気加減弁、道を閉じて止めるのは蒸気止弁です。異常ごとに働く装置が決まっていて、非常調速機は回転速度が上がりすぎたときに働きます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| ボイラの蒸気圧力が限度を超えたとき、蒸気加減弁が蒸気を放出する | 放出するのは安全弁。蒸気加減弁は、タービンへ入る蒸気の量を加減する弁 |
| 非常調速装置は、回転速度が定格より下がると働く | 定格を超える一定の値以上に上がると働き、タービンを止める |
| 反動タービン(はんどうたーびん)は、固定羽根で蒸気の圧力を上げる | 固定羽根でも回転羽根でも、蒸気は膨張して圧力が下がる |
| 衝動タービン(しょうどうたーびん)は中低圧の蒸気に、反動タービンは高圧の蒸気に向く | 逆。衝動タービンが高圧、反動タービンが中低圧に向く |
- 調速装置は、蒸気加減弁を動かす装置に信号を送り、蒸気の流量を変えて回転速度を制御します。水車の自動調速機(じどうちょうそくき)と同じ働きです。
- 非常調速装置は、エマージェンシートリップ装置とも呼びます。働く回転速度は、定格の111%以下の値に決めておきます。
- ターニング装置は、止めている間に高温のロータ(回る軸と羽根)が曲がらないよう、ゆっくり回し続ける装置です。
- 安全弁の出口は、ボイラの外へ開いています。蒸気止弁と蒸気加減弁はボイラからタービンへの道の途中にあり、外へ逃がす出口がありません。
衝動タービンと反動タービン

| 比べる所 | 衝動タービン | 反動タービン |
|---|---|---|
| 蒸気が膨張する所 | 固定羽根のノズルだけ | 固定羽根と回転羽根の両方 |
| 回転羽根の前後の圧力 | 等しい(通り道の断面積が一様) | 下がる(通り道が出口へ向かって細い) |
| 羽根を回す力 | 蒸気がぶつかる力(衝動力) | 衝動力と、出ていく蒸気の反動力 |
| 向く蒸気 | 高圧 | 中低圧 |
- 蒸気タービンは、高温・高圧の蒸気が持つ熱エネルギーを、回転の機械エネルギーに変えます。
- ノズルを通る間に蒸気は膨張して圧力が下がり、そのぶん速くなって吹き出します。
- 衝動・反動は、蒸気の作用による分け方です。下の表の復水・背圧などは、蒸気の使い方(機能・用途)による分け方です。
蒸気の使い方による分け方
| タービン | 蒸気の使い方 |
|---|---|
| 復水タービン(ふくすいたーびん) | 排気を復水器で水に戻して高い真空にし、蒸気をごく低い圧力まで膨張させる。発電所のふつうのタービン |
| 再熱タービン | 高圧タービンで使った蒸気を再熱器で温め、低圧タービンで使う |
| 再生タービン | 途中から蒸気を抜き出し、給水加熱器で給水を温める |
| 背圧タービン(はいあつたーびん) | 出口の蒸気を復水器に入れず、工場などでそのまま使う。出口の蒸気の圧力を背圧と呼ぶ |
| 抽気タービン(ちゅうきたーびん) | 途中から蒸気を抜き出して工場などで使い、残りは復水器へ送る |
| 混圧タービン | 圧力の違う蒸気を、同じタービンに入れて仕事をさせる |
- 再生タービンが抜き出すのは、給水を温めるためです。抜き出した蒸気を温め直して低圧の段へ戻すのは、再熱の説明です。
- 背圧タービンと抽気タービンは、工場に蒸気を送りながら発電する使い方です。
復水器 ── 真空度を高く保って効率を上げ、捨てる熱は冷却水が運び去る

| 見る所 | 中身 |
|---|---|
| 冷やす物 | タービンで仕事を終えた排気。途中から抜き出す抽気ではない |
| しくみ | 冷却水(海水)を通す多くの管の外側に排気をふれさせて凝縮させる、表面復水器が一般的 |
| 真空 | 蒸気が水になると体積がとても小さくなり、中は真空に近い低い圧力になる |
| 真空度を高くすると | 排気の圧力が下がり、入口との圧力差(熱落差)が大きくなって、熱効率が上がる |
| 冷却水の温度 | 低いほど、真空度は高くなる |
| 損失 | 冷却水が持ち去る熱は、熱サイクルの中で最も大きな損失。燃料のエネルギーの約50%にあたる |
| 補機 | 復水器の中にたまる空気を、外へ出す装置がある |
復水器の真空度を高く保つほど熱効率は上がり、冷却水が持ち去る熱が汽力発電で最も大きな損失です。持ち去る熱は、冷却水の流量・密度・比熱・温度上昇を掛けて求めます。
言葉の式 冷却水が持ち去る熱量[kJ/s] = 流量[m³/s] × 比熱[kJ/(kg·K)] × 密度[kg/m³] × 冷却水の温度上昇[K]
Q:復水器の冷却水が持ち去る熱量〔kJ/s〕 V:冷却水の流量(体積)〔m³/s〕 c:冷却水(海水)の比熱〔kJ/(kg·K)〕 ρ:冷却水の密度〔kg/m³〕 ΔT:冷却水の温度上昇〔K〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 復水器が冷やして凝縮させるのは、抽気蒸気 | タービンで仕事を終えた排気蒸気。抽気は給水を温めるのに使う |
| 復水器の真空度を高くすると、発電所の熱効率は下がる | 熱落差が大きくなり、熱効率は上がる |
| 真空度を保つのは、回転速度を上げるため(入口と出口の温度差を大きくするため) | 入口と出口の圧力差を大きくして、タービンの効率を上げるため |
| 持ち去る熱は、流量〔m³/s〕に比熱と温度上昇を掛けて出し、密度は使わない | 比熱は1 kgあたりの値。体積の流量に密度を掛け、kg/sにしてから掛ける |
- 蒸気は、温度に応じた圧力を持ちます。低い温度で凝縮させるほど出口の圧力が下がり、同じ蒸気でより多くの仕事をさせられます。
- 温度の差は、Kで表しても℃で表しても同じ数です。7 ℃の上昇は、7 Kの上昇です。
- 1 kWは、1秒あたり1 kJです。熱をkJ/sで出せば、そのままkWとして電力と比べられます(力・仕事・電力)。
- 捨てる熱が同じなら、冷却水の温度上昇は冷却水量に反比例(はんぴれい)します。冷却水量が2倍なら、温度上昇は半分です。
- 熱消費率(ねつしょうひりつ)は、1 kW·hの出力を得るのに使う熱〔kJ〕です。小さいほど、少ない熱で同じ出力を出せます。
- ほかの損失を考えなければ、タービン室(タービンと復水器)に入る熱は、タービン出力と冷却水が持ち去る熱の和です。
言葉の式 タービン熱消費量 = タービン出力(kW を kJ/h や kJ/s に直したもの) + 復水器冷却水が受け取る熱量(単位をそろえる)
Qin:タービン熱消費量(タービン室に入る熱)〔kJ/h(または kJ/s)〕 Pt:タービン出力(熱の単位に直したもの。kW で与えられたら 3 600P_t[kJ/h]にしてから足す)〔kJ/h(または kJ/s)〕 Qc:復水器冷却水が受け取る熱量〔kJ/h(または kJ/s)〕
解き方:冷却水が持ち去る熱とタービン室効率
- ① 最初の一手は、体積の流量に密度を掛けて、1秒あたりの質量(kg/s)にすることです。
- ② 比熱と温度上昇を掛けて、持ち去る熱をkJ/sで出します。
- ③ 発電機の出力は、発電機効率で割ってタービン出力に直します。
- ④ タービン室効率は、タービン出力を「タービン出力+持ち去る熱」で割ります。
例の条件を短くまとめます(令和4年度下期 問15)。出力600 MW、冷却水量24 m³/s、温度上昇7 ℃です。海水の比熱は4.02 kJ/(kg·K)、密度は1.02×10³ kg/m³、発電機効率は98%です。
- 約6.89×10⁵ kJ/sです。密度を掛け忘れると、約1 000分の1になります。
- 600 MWは発電機の出力です。タービン出力は600÷0.98≒612.2 MWで、6.122×10⁵ kWです。
言葉の式 効率 = 出力 ÷ 入力 = 出力 ÷(出力 + 損失)(%で表すときは × 100)
η:効率〔(比)または %〕 出力:出力(得られたもの)〔kW など〕 入力:入力(入れたもの)〔kW など〕 損失:損失(入力と出力の差)〔kW など〕
- 出力はタービン出力、損失は持ち去る熱です。6.122×10⁵÷(6.122×10⁵+6.889×10⁵)≒0.4705で、タービン室効率は約47.0%です。
- タービン出力の代わりに、発電機の出力600 MWをそのまま使うと約46.5%になり、外れます。
解き方:熱消費率から出力と温度上昇
- ① 最初の一手は、熱消費率を「1 kW·hの出力に使う熱」と読むことです。1 kW·hは3 600 kJです。
- ② タービン室効率は3 600÷熱消費率で、残りの割合が冷却水へ捨てる熱です。
- ③ 毎時の熱〔kJ/h〕は、3 600で割って毎秒〔kJ/s〕にしてから、流量・密度・比熱で割ります。
例の条件を短くまとめます(令和元年度 問15)。冷却水30 m³/sが、毎時3.1×10⁹ kJの熱を持ち去ります。比熱は4.0 kJ/(kg·K)、密度は1.1×10³ kg/m³です。
- タービンの熱消費率は8 000 kJ/(kW·h)で、ほかの損失は無視します。
ηT:タービン室効率〔%〕 熱消費率:タービン熱消費率〔kJ/(kW·h)〕
- タービン室効率は45%で、残りの55%が冷却水へ捨てる熱です。
- 出力をP〔kW〕とすると、1時間に入る熱8 000Pのうち、3 600Pが出力に、4 400Pが冷却水へ行きます。
- Pは3.1×10⁹÷4 400≒7.05×10⁵ kWで、約700 MWです。
- 毎秒の熱は、3.1×10⁹÷3 600≒8.61×10⁵ kJ/sです。
- 1 Kあたりに運べる熱は、30×1.1×10³×4.0=1.32×10⁵ kJ/sです。割ると、温度上昇は約6.5 Kです。
- 毎時の熱を3 600で割り忘れると、温度上昇が3 600倍になり、外れます。
- 冷却水の流量を求める問いでは、持ち去る熱を、密度と比熱と温度上昇の積で割ります。毎時の熱〔kJ/h〕を割ったときの答えは〔m³/h〕なので、3 600で割って〔m³/s〕にします。
- 熱消費率と出力から入る熱を出し、出力の分を引いた残りを冷却水の熱として、流量を逆に求める型もあります。
関連:ランキンサイクル|汽力発電所の効率|10の何乗と接頭語
タービン発電機と水車発電機 ── 高速は細長い円筒形、低速は多極で太短い突極形

| 比べる所 | タービン発電機 | 水車発電機 |
|---|---|---|
| 回転速度 | 速い(3 000〜3 600 min⁻¹) | 遅い(100〜1 200 min⁻¹) |
| 極数(きょくすう) | 少ない(おもに火力は2極、原子力は4極) | 多い |
| 回転子 | 円筒形。直径が小さく、軸方向に長い | 突極形。直径が大きく、軸方向に短い |
| 軸の向き | 横軸形 | おもに立て軸形 |
| 冷やし方 | 水素・空気・水 | 空気 |
| 機械の種類 | 銅機械(どうきかい)(短絡比が小さい) | 鉄機械(てつきかい)(短絡比が大きい) |
同じ周波数なら回転速度は極数に反比例するので、速く回るタービン発電機は極数が少なく、細長い円筒形です。ゆっくり回る水車発電機は、磁極を多く並べた太く短い突極形です。
言葉の式 同期速度 = 120 × 周波数 ÷ 極数
Ns:同期速度〔min⁻¹〕 f:周波数〔Hz〕 p:極数(偶数)
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| タービン発電機の回転子は、熱的な強度から突極形にし、直径を大きくする | 機械的な強度(遠心力)から円筒形にし、直径を小さく、軸方向に長くする |
| 水素は空気より比重が大きく、比熱が小さい | 比熱が大きく(冷却効率が高い)、比重が小さい(風損が小さい) |
| 水素は活性で、軸からの漏れは窒素ガスで封じる | 水素は不活性。軸受の内側を油膜で封じる |
| 鉄機械は、短絡比が小さく、同期インピーダンスが大きい | 短絡比が大きく、同期インピーダンスが小さい。電圧変動率が小さく、安定度が高い |
- タービン発電機も水車発電機も、同期発電機です。火力のタービン発電機には、2極の回転界磁形三相同期発電機が広く使われます。
- 速く回ると遠心力で壊れるおそれがあるので、直径を小さくします。出力を得るために軸方向に長くすると熱を逃がしにくくなり、冷やし方の工夫が要ります。
- 回転子の軸と鉄心は、一体の鍛造の材料で作ります。
- 4極の機械は、原子力発電所や低圧タービンの発電機に使われ、回転速度は1 500〜1 800 min⁻¹です。
- 水車発電機は、水車の特性で低速になるので、磁極を多くとれる突極形にします。大形機は、据え付ける面積が小さく落差を有効に使える立て軸形が多いです。
- 60 Hz(ヘルツ)の2極は3 600 min⁻¹、50 Hzの2極は3 000 min⁻¹です。極数を2倍にすると、回転速度は半分になります。
鉄機械と銅機械
| 比べる所 | 鉄機械 | 銅機械 |
|---|---|---|
| 当てはまる発電機 | 水車発電機 | タービン発電機 |
| そうなる理由 | 系統の安定度と、負荷を切ったときの速度の上がりを抑えるため、大きなはずみ車効果が要る。直径が大きく、鉄が多い | 界磁巻線を置く場所が限られ、出力を得るには電機子巻線の導体(銅)を多くする |
| 短絡比(たんらくひ)と同期インピーダンス | 短絡比が大きく、同期インピーダンスが小さい | 短絡比が小さく、同期インピーダンスが大きい |
| 長所と短所 | 電圧変動率が小さく、安定度が高く、線路充電容量が大きい。大きく重く、高価 | 小さく軽く安価だが、電圧変動率が大きく、安定度が低い |
- 短絡比と同期インピーダンスは、逆数の関係です。一方が大きければ、もう一方は小さくなります。
- 鉄機械の長所に、部分負荷のときの効率は入りません。
水素冷却

| 性質 | 空気と比べて | 効く所 |
|---|---|---|
| 比熱(ひねつ) | 約14倍 | 熱をよく運び、冷却効率が高い |
| 密度(比重) | 約7% | 回転子が気体をかき回して失う風損が小さく、空気冷却の10%程度になる |
| 化学的な性質 | 不活性 | 絶縁物の劣化が少ない。圧力を高めると、コロナ放電が生じにくい |
| 空気と混ざると | 一定の濃度の範囲で爆発のおそれ | 水素の純度を90%以上に保ち、軸受の内側を油膜で封じて漏れを防ぐ |
- 大容量のタービン発電機は、水素を密封して冷やします(密封形水素冷却)。
- 冷却に効くのは比熱(大きい)で、風損に効くのは比重(小さい)です。2つを入れ替えた文に気をつけます。
まとめ
汽力発電所の水と蒸気はランキンサイクルを回り、入口を高温高圧に、復水器を高真空にするほど効率が上がります。
ボイラは熱いガスで蒸気を熱して余熱で給水と空気を温め、タービンは異常ごとに決まった装置で守ります。
冷却水が持ち去る熱が最大の損失で、タービン発電機は高速の円筒形、水車発電機は低速の突極形です。
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参考文献
- 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH02 火力発電の章(SEC01〜03)
- 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第2章 汽力発電
- 第三種電気主任技術者試験 電力 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成30年度・令和元年度・令和2年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度上期・令和5年度下期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期・令和8年度上期
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