動画解説はこちら|YouTube

ベローズ・伸縮継手・フレキシブルホース|柔らかい部品の落とし穴

ベローズ・伸縮継手・フレキシブルホースのアイキャッチ

※本記事の参考文献には、Amazonアソシエイトのリンク(アフィリエイト広告)を含みます。

高温配管の熱伸びや機器間の相対変位を吸収するため、ベローズ形伸縮継手やフレキシブルホースを使うことがあります。短い面間で大きな柔らかさを得られる一方、単純に挿入するだけでは問題を解決できません。

ベローズは配管の軸方向剛性を小さくするため、内圧による力を外部へ伝える「圧力推力」が問題になります。フレキシブルホースも、直線的に引っ張って伸縮させる部品ではなく、曲げ配置と最小曲げ半径、ねじり防止が寿命を左右します。

この記事では、吸収する変位の整理、形式の選び方、圧力推力の受け方、アンカー・ガイド、疲労寿命、据付・試運転・点検までを一続きで説明します。

1. まず結論:柔らかい部品ほど周囲の設計が重要

伸縮継手を検討するときは、製品カタログから形式を選ぶ前に、次の順序で考えます。

  1. 冷間から熱間まで、どの位置がどの方向へ何mm動くかを求める
  2. 軸方向、軸直角方向、角変位、ねじりを分ける
  3. 内圧推力をタイロッド、ヒンジ、ジンバル、圧力バランス機構、外部アンカーのどこで受けるか決める
  4. アンカー、ガイド、支持点を含む配管系全体を応力解析する
  5. 圧力、温度、材質、複合変位、要求サイクル数をメーカーへ提示する
  6. 据付状態、輸送金具、運転時位置、損傷を現場で確認する

伸縮継手は、熱伸びを消す部品ではありません。熱伸びを局部の変形へ集め、その変形と荷重を管理する部品です。

選定対象最初に確認すること見落としたときの代表的な問題
ベローズ形伸縮継手変位方向、圧力推力、サイクル数アンカー過負荷、座屈、疲労割れ
圧力バランス形変位方向、バランス機構、残留荷重想定外の拘束、機器ノズル反力
フレキシブルホース曲げ方、最小曲げ半径、ねじり編組破損、継手根元の割れ、早期漏えい

配管ループやオフセットで必要な柔らかさを確保できるなら、まずその方法を比較します。スペース、流体の固着、相対変位、振動絶縁などの理由で伸縮継手を採用する場合も、ルートと支持を含む系全体で成立させます。

2. 伸縮継手は変位方向で形式を選ぶ

先に変位方向を決める

変位は一つの数字だけで管理せず、配管軸を基準に成分へ分けます。

  • 軸方向変位:継手の中心軸に沿った伸び・縮み
  • 軸直角方向変位:両端面を平行に保ったまま横へずれる動き
  • 角変位:両端面が互いに角度を持つ動き
  • ねじり変位:中心軸まわりの回転

金属ベローズは一般に、ねじりを許容変位として使いません。 配管の立体ルートや機器の相対移動でねじりが生じないか、変位ベクトルと支持条件を確認します。

代表形式と役割は次のとおりです。

形式主に吸収する変位圧力推力の受け方重要な制約
単式・非拘束形軸方向、角変位、少量の軸直角方向外部の主アンカー配管軸をガイドし、座屈や蛇行を防ぐ
タイロッド付きユニバーサル形軸直角方向、構成により一平面の角変位タイロッドの内力タイロッドが軸方向変位を拘束する
ヒンジ形一平面内の角変位ヒンジとピン原則として軸方向変位を吸収しない
ジンバル形任意平面内の角変位ジンバル機構複数個の組合せと配管ルートが必要
圧力バランス形製品構造に応じた軸方向または軸直角方向追加ベローズとタイロッドで釣り合わせる構造が複雑で、残るばね力や重量を別に評価する

同じ「ユニバーサル形」でも、タイロッドの本数、端部の球面座、中央管の長さ、取付方向で許容する動きが変わります。形式名だけで判断せず、製作図の自由度と荷重伝達を確認します。

また、各方向の許容変位を独立に全量使えるとは限りません。軸方向と軸直角方向が同時に生じる場合は、メーカーの複合変位評価で許容範囲を確認します。

3. ベローズを入れると圧力推力の受け先が必要になる

圧力推力はどこで受けるか

内圧を受ける通常の直管では、管壁が連続しているため、軸方向の圧力による力は配管内部で釣り合います。途中へ軸方向に柔らかいベローズを入れると、その力学的な連続が切れ、圧力による軸方向力が外力として現れます。

概念的な圧力推力は次式で表せます。

F = P × Ae

ここで、

  • F:圧力推力
  • P:内外圧差
  • Ae:ベローズの有効面積

です。

有効面積は単純に配管内径の断面積と同じとは限りません。ベローズ平均径、構造、圧力バランス部の面積で変わるため、メーカー強度計算書の有効面積と推力を使います。

単式非拘束形では、推力を外部の主アンカーで受けます。タイロッド付きユニバーサル形では、ベローズ両側の剛体部をロッドで連結し、圧力推力をロッドの引張内力として閉じます。この方式は主アンカーへ伝わる圧力推力を抑えられますが、タイロッドが両端間距離を保つため、軸方向変位は拘束されます。

圧力バランス形は、追加のベローズが反対向きの推力をつくるよう有効面積を設計し、外部へ出る推力を釣り合わせます。ただし、圧力推力を釣り合わせても、ベローズばね力、ガイド摩擦、重量、流体力、地震・風・過渡荷重までゼロになるわけではありません。

4. アンカーとガイドで「動く方向」をつくる

単式非拘束形を直管部へ入れる場合、主アンカーは配管区間の端で圧力推力と他荷重を受け、ガイドは配管中心軸を保ちながら軸方向移動を案内します。ガイドをアンカーの代用にしたり、重量支持だけで軸方向推力を受けたりしてはいけません。

アンカー設計では、少なくとも次の荷重を組み合わせます。

  • 内外圧差と有効面積による圧力推力
  • ベローズのばね定数と変位によるばね反力
  • ガイド、シュー、支持面の摩擦力
  • エルボやレジューサなどで生じる流体力
  • 配管・流体・保温・弁類の重量
  • 風、地震、ウォータハンマ、圧力脈動などの動的荷重

第1ガイドは伸縮継手の近くに置くのが基本です。ガイドの間隔と第1ガイド位置の寸法は、ベローズ形式、口径、圧力、配管剛性、対象規格、メーカー指示で決めます。「伸縮継手の近くを何となく固定する」のではなく、どの荷重をどの部材へ流すかをサポート図へ示します。

一つの直管区間に複数の単式ベローズを配置すると、各ベローズへ変位が均等に分かれるとは限りません。ばね定数や摩擦のわずかな差で、柔らかい一台へ変位が集中することがあります。必要なら中間アンカーで区間を分けるか、変位配分を制御する構造を採用します。

5. ベローズ寿命は変位量とサイクル数を一組で決める

ベローズは薄い金属板を波形に成形し、山と谷の曲げ変形で柔らかさを得ます。運転・停止を繰り返すたびにベローズも往復変形するため、設計寿命は「何mm動けるか」だけでは決まりません。

一つの運転サイクルは、据付・冷間位置から運転位置へ変位し、再び元の位置へ戻る往復として扱います。要求サイクル数が多いほど、一般に一サイクル当たり許容できる変位は小さくなります。

選定時は、次をメーカーへ渡します。

  • 冷間位置、通常運転位置、起動停止中の中間状態
  • 軸方向、二つの軸直角方向、角変位の大きさと符号
  • 各変位が同時に発生するか、別ケースか
  • 通常運転、起動停止、洗浄、再生、バッチ切替えなどの予定回数
  • 定常振動、圧力脈動、地震、地盤沈下など熱変位以外の動き
  • 設計圧力・温度、内外圧差、流体、腐食条件

熱サイクル用に選んだベローズへ高頻度の振動を重ねると、想定よりはるかに多い繰返しを受けます。 回転機械の振動絶縁は、変位量だけでなく振動方向、周波数、振幅、配管質量、支持剛性を含めて別途評価します。

流速が高い、乱流が強い、固体粒子を含むなどの条件では、内筒を設けてベローズを流体から保護する場合があります。内筒には流れ方向があり、逆向きや過大な軸直角変位ではベローズと接触するおそれがあります。外部カバーも、落下物、溶接スパッタ、人の接触からベローズを守りますが、断熱材やカバーが動きを拘束してはいけません。

6. フレキシブルホースは引っ張らずに曲げて使う

フレキは引っ張らず、曲げて使う

金属フレキシブルホースは、コルゲート状の薄肉チューブの外側を編組ブレードで覆い、両端へ継手を取り付けたものです。内管が流体を保持し、ブレードが内圧による推力を負担するとともに内管を保護します。

ブレードは軸方向へほとんど伸びないため、ホースを直線のまま引っ張って大きな軸方向変位を吸収させることはできません。U字や適切なオフセットへたわませ、端部の移動をホースの曲げへ変換します。

良い使い方避ける使い方
メーカー指定以上の曲げ半径を確保する継手直後を急に折る
同一平面内で滑らかに曲げる中心軸まわりにねじる
変位方向に合う長さと取付姿勢にする直線状態で軸方向へ引っ張る・押し縮める
周囲や他ホースとの接触を避ける稼働中に鋼材・床・配管へこすらせる
動的用途の許容曲げ半径と寿命を確認する静的曲げ半径を繰返し運動へそのまま使う

最小曲げ半径は、口径だけでなくホース形式、ブレード、圧力、温度、静的・動的用途で変わります。カタログの一つの数字だけを流用せず、対象製品と運動条件で確認します。

7. 据付時は「外す部品」と「残す部品」を区別する

外すロッドと残すロッド

ベローズ形伸縮継手には、外観が似たボルトやロッドが付くことがあります。名称と機能を製作図で照合せず、すべてを輸送金具と判断して外すのは危険です。

部品役割運転前の扱い
シッピングボルト・輸送金具輸送・据付中に製作時の面間を保持するメーカー手順と据付要領で指定された時期に解除・撤去する
セットボルトプリセット量または据付長を保持する製品ごとの指示に従う。圧力推力保持用と決めつけない
タイロッド圧力推力を受け、両端間距離を保つ原則として残す。勝手に緩めたり外したりしない
リミットロッド所定のすき間内では動かし、過大変位を制限する残す。ナットすき間を製作図と照合する
コントロールロッド複数ベローズへの変位集中を抑える残す。調整値を変更しない

「ボルトが付いたままだから動かない」と「外したため推力を受けられない」は、どちらも重大な不具合です。 部品タグ、製作図、メーカー取扱説明書、現場の解除記録を一致させます。

8. 据付・試運転・運転中の点検

据付前

  • ベローズのへこみ、山のつぶれ、傷、腐食、溶接部損傷がないか確認する
  • ホースの編組切れ、局部的な膨らみ、折れ、端金具の損傷がないか確認する
  • 型式、流れ方向、据付長、プリセット方向、変位矢印を製作図と照合する
  • アンカー、ガイド、支持鋼材の強度と施工順序を確認する

据付中・耐圧試験前

  • 配管を無理に引き寄せ、伸縮継手で芯ずれを矯正しない
  • ベローズやホースへ溶接スパッタ、アーク、研削粉を当てない
  • 内筒の流れ方向と、軸直角変位時の接触余裕を確認する
  • アンカーとガイドを機能させてから、指定された輸送金具を解除する
  • タイロッド、リミットロッド、ヒンジ、ジンバルを仮設材として外さない
  • 試験圧力時の圧力推力と一時荷重を、アンカー・ロッド・仮設材が受けられるか確認する

運転中・停止時

  • 冷間・熱間の面間、軸直角変位、角度が設計方向と一致するか記録する
  • ベローズの蛇行、局部変形、山の接触、内筒との接触、カバー干渉を確認する
  • 漏えい、にじみ、変色、腐食、割れ、異音、振動を確認する
  • ホースの最小曲げ半径、ねじれ、編組のほつれ・膨らみ、周囲とのこすれを確認する
  • アンカー、ガイド、タイロッド、ナット、溶接部に変形・緩み・割れがないか確認する

漏えいだけを劣化の始まりと考えないでください。ベローズの異常な中心ずれ、ホース編組の乱れ、ロッドの曲がり、アンカーの変形は、荷重経路が設計どおりでない兆候です。

9. 設計・発注でメーカーへ渡す情報

分類必要情報
配管・機器口径、端部接続、配管材、取付方向、機器ノズル条件
流体条件流体名、相、腐食性、固形分、流速、流れ方向
圧力・温度設計・運転・試験・負圧条件、起動停止時の組合せ
変位軸方向、二方向の軸直角方向、角変位、符号、同時性
寿命各運転ケースの予定回数、振動周波数・振幅、要求寿命
荷重許容反力、機器ノズル許容荷重、アンカー・ガイド条件
構造単式、ユニバーサル、ヒンジ、ジンバル、圧力バランスの候補
付属品タイロッド、リミットロッド、内筒、カバー、プリセット
検査適用規格、材料証明、溶接、非破壊検査、圧力・漏れ試験
現場条件据付長、公差、保温、屋外腐食、点検・交換スペース

メーカーへは最大値の一覧だけでなく、同時に起きる運転ケースを渡します。例えば、最高温度時に最高圧力と最大軸直角変位が同時に生じるのか、別々のケースなのかで設計は変わります。

10. 設計レビューで聞く5問

  1. 吸収すべき変位を軸方向・二方向の軸直角方向・角変位・ねじりへ分解したか
  2. 圧力推力、ばね力、摩擦力をどのアンカー・ロッド・機器が受けるか説明できるか
  3. タイロッドやヒンジで拘束した自由度と、実際に必要な自由度が一致しているか
  4. 複合変位、運転サイクル、振動をメーカー計算へ反映したか
  5. 据付長、プリセット、輸送金具解除、内筒方向を施工図と試運転要領へ落としたか

11. 製造・保全で確認する5点

  1. 冷間・熱間で伸縮継手が設計方向へ動き、異常な横ずれやねじれがないか
  2. シッピングボルトの解除記録と、残すべきタイロッド・リミットロッドの状態が合うか
  3. ベローズ、内筒、カバー、保温が接触していないか
  4. フレキシブルホースが最小曲げ半径を守り、ねじれや周囲とのこすれがないか
  5. アンカー、ガイド、支持鋼材に変形・浮き・緩み・割れがないか

まとめ

ベローズ形伸縮継手は、短い面間で軸方向、軸直角方向、角変位を吸収できる一方、内圧推力、ばね反力、座屈、疲労を配管系全体で管理する必要があります。単式非拘束形は外部アンカー、タイロッド付き形式はロッド内力、圧力バランス形は追加ベローズによって圧力推力へ対処します。

フレキシブルホースは軸方向へ引っ張るのではなく、十分な曲げ半径を持つ配置で変位を吸収し、ねじりを避けます。据付時は、解除するシッピングボルトと、残すタイロッド・リミットロッドを製作図で区別します。

「何mm動けるか」だけでなく、「どちらへ動くか」「推力をどこで受けるか」「何回動くか」「現場で自由に動けるか」を一組で確認することが、伸縮継手を安全に使う条件です。

関連記事

参考文献

化学プラントニュース―週報と事故速報をわかりやすく紹介するnoteマガジン PLANT NEWS ON NOTE 化学プラントニュース 化学・石油プラントの重要ニュースを、毎週の週報と事故速報でお届けします。現場で押さえたい動きを、わかりやすく整理します。 noteで最新ニュースを読む