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配管を切らずに流量を測れるか。答えは「測れる」です。超音波流量計のクランプオン型は、配管の外側に送受波器を取り付けるだけで、中を流れる液の流量を測れます。
ただし、クランプオン型の精度はよくてもフルスケールの 2〜3% 止まりで、配管の肉厚やライニングの設定がずれていれば、最初から誤差を抱えたまま測ることになります。そして超音波流量計の最大の弱点は気泡です。わずかな気泡で音が遮られ、流量が出なくなります。
この記事では、時間差式とドップラー式の原理、クランプオン型と接液型の精度の違い、長い直管長が要る理由、気泡に弱い理由、そして送受波器を取り付けるときの注意を説明します。
この記事の結論
- 主流は伝搬時間差式。流れに乗る音は速く、逆らう音は遅い。その時間差から流速を求める
- ドップラー式は液中の気泡やごみに当たって返る音の周波数の変化を使う。濁った水に使えるが、精度はフルスケールの 5〜10% 程度
- 配管の外に付けるクランプオン型は精度がフルスケールの 2〜3% 止まり。管内に開口する接液型は、測線を増やすと指示値の 0.5% まで出る
- 超音波は1本の線の上の平均流速しか測らないので、流速分布が乱れると誤差になる。直管は上流 10D・下流 5D 程度、ポンプや弁の下流では 30D 以上が要ることもある
- 気泡は音を遮る。最も多いトラブルは気泡混入による指示不良。送受波器は水平配管の管頂と管底に付けない
- クランプオン型は、管の外径・肉厚・ライニング・付着物の設定が誤差の元になる
1. 原理|流れに乗る音と、逆らう音の時間差
超音波は、人の耳に聞こえない高い周波数の音です。超音波流量計では 1 MHz 程度の周波数を使います。1960 年代に実用化され、いくつかの原理の製品がありますが、現在の主流は伝搬時間差式(以下、時間差式)です。

原理は、川を往復する船にたとえると分かりやすくなります。水に対して同じ速さで進む船は、川下に向かうときは流れに押されて早く着き、川上に向かうときは流れに逆らって遅く着きます。この往復の時間差から、川の流速が分かります。
配管では、管壁に一対の送受波器を斜めに向かい合わせて付けます。2つの送受波器を結ぶ音の通り道を測線と呼びます。上流側から下流側へ、下流側から上流側へと交互に超音波パルスを送り、届くまでの時間を測ります。流れに乗る向きの音は速く、逆らう向きの音は遅く届きます。
流速を求める式は、流量計の手引きに次の形で載っています。
V = C² × Δt ÷(2 × L × cosθ)
V は管軸方向の流速、C は液中の音速、Δt は上りと下りの時間差、L は測線の長さ、θ は測線と管軸のなす角です。
数値で見てみます。口径 100 mm の水配管で、測線を管軸に対して 45° に張ると、L × cosθ は管径と同じ 0.1 m です。水の音速を約 1,500 m/s、流速を 1 m/s とすると、時間差は Δt = 2 × 0.1 × 1 ÷ 1,500² ≒ 0.000000089 秒、つまり約 0.09 マイクロ秒です。片道にかかる時間(約 94 マイクロ秒)の 1000 分の 1 ほどの差を読み取っていることになります。
式に音速 C の2乗が入っているので、液温が変わって音速が変わると、そのままでは測定に影響します。上りと下りの時間の和からは液が止まっているときの伝搬時間が分かるので、それを使って式から音速を消去すれば、液温による音速の変化の影響を取り除けます。
2. ドップラー式|濁りを味方にする
時間差式は、音の通り道にごみや気泡が多いと測れなくなります。これと対照的に、ごみや気泡を積極的に利用するのがドップラー式です。
ドップラー効果は、踏切で近づく列車の警笛が高く、遠ざかると低く聞こえる現象です。ドップラー式では、管壁に送波器と受波器を一体にした検出器を付け、液中の気泡や固形物に超音波を当てます。流れに乗って動く粒子から返ってくる音は周波数が変わるので、その変化から流速を求めます。
ただし、ドップラー式が捉えるのは管の中の一部分で散乱した音です。その場所の流速は管全体の平均ではないので、流量に換算するときの誤差が大きくなります。連載記事は精度をフルスケールの 5〜10% 程度としています。
| 項目 | 時間差式 | ドップラー式 |
| 使う現象 | 上りと下りの音の到達時間の差 | 粒子で跳ね返った音の周波数の変化 |
| 向く液 | ごみや気泡の少ない液 | 気泡や懸濁物を含む液(上下水・各種用水・排水) |
| 精度 | 接液型で指示値 0.5%〜フルスケール 2%、クランプオン型でフルスケール 2〜3% | フルスケールの 5〜10% 程度 |
| 主な使い道 | プロセスの流量測定、大口径の水配管 | 排水路などの監視、持ち運び式のモニタ |
化学プラントの流量計として使うのは、ほとんどが時間差式です。以下、特に断らない限り時間差式の話をします。
3. クランプオン型と接液型|精度はどこまで出るか
超音波は管の壁も通り抜けるので、送受波器を配管の外側に付けても、中の流速を測れます。これがクランプオン型です。これに対して、送受波器が管の内側に直接開口している形式を接液型と呼びます。接液型はメーカーが作った測定管に送受波器を組み込み、配管に挟んで使います。
| 項目 | クランプオン型 | 接液型 |
| 付け方 | 既設配管の外側に取り付け | 測定管を配管に挟み込む |
| 配管工事 | 不要。流れを止めずに付け外しできる | 配管を切る |
| 精度 | よくてもフルスケールの 2〜3% | フルスケールの 1〜2%、測線を増やした製品は指示値の 0.5% |
| 実流校正 | しないで出荷される | メーカーの設備で校正して出荷される |
| 気体 | 既設管ではほぼ無理 | 気体用・蒸気用の製品はこちら |
クランプオン型の長所は、口径が大きくなっても費用がほぼ変わらないこと、流体に完全に触れないこと、流れを止めずに修理できることです。この経済性で、大口径の電磁流量計の市場を奪ったと連載記事は書いています。
一方で、クランプオン型は管壁越しに音を通すので、配管の肉厚の推定や、管壁を通るときの音の屈折という誤差の要因が加わります。精度がフルスケールの 2〜3% 止まりなのはこのためです。
気体がクランプオン型で測りにくいのは、気体と金属の管壁とでは音の伝わりやすさがあまりに違い、音が気体側に入らず境目でほとんど跳ね返されてしまうからです。流量計の手引きは、気体の音の伝わりやすさの指標は固体や液体より 4〜5 桁小さいと説明しています。気体用・蒸気用の製品は、接液型になります。
4. 長い直管長が要る理由|測線は1本の線の平均しか見ない
管の中の流れは、中心が速く、壁に近いほど遅い流速分布を持っています。時間差式が測っているのは、測線の上に並んだ流速の平均です。管の断面全体の平均流速ではありません。

そこで変換器は、十分に長い直管の後にできる整った流速分布を仮定し、測線上の平均流速を断面の平均流速に直す補正係数を掛けて流量を出しています。補正係数は流速や液の粘り気で変わる流速分布の形に合わせて決めます。
問題は、エルボや弁の下流で流速分布が片寄ったり旋回したりしているときです。仮定した分布と実際の分布が違うので、補正係数を入れても補正しきれない誤差が残ります。しかもクランプオン型では、その誤差がどれほどか現場で確かめる手段がありません。
必要な直管長の目安は次のとおりです。
- 連載記事:上流に口径の 10 倍、下流に 5 倍程度。配管状況によってはさらに長く
- 流量計の手引き:拡大管、各種の弁、二平面にまたがるエルボ、ポンプの下流では 30D 以上が要ることがある
対策は、測線を複数にして断面のあちこちの流速を拾うことです。測線を斜めに1本張る Z 法、管壁で1回反射させる V 法、複数の測線を平行や交差に張る方法などがあります。測線を増やせば直管長は短くできますが、流速分布の影響を完全に取り除くことはできません。費用も上がります。
5. 気泡に弱い理由
液中の気泡は、超音波の通り道を遮り、音を散乱させます。わずかな気泡で動作が止まるのが超音波流量計の最大の弱点でした。ごみの多い液も、同じ理由で測れません。
最近は、何回か送った超音波パルスのうち1回でも受け取れれば流量を出す、といった信号処理の工夫で、気泡に強くなった製品もあります。それでも、気泡の量が多く、受け取れない状態が長く続けば大きな指示誤差は避けられません。
流量計の手引きは、超音波流量計でもっとも多いトラブルは気泡混入による指示不良だとしています。気泡が少ないはずのラインでも、流速が上がるとキャビテーション(圧力が下がって液の中に泡ができる現象)で気泡が混ざることがあります。
対策は、場所と方式の2つです。
- 気泡のできやすい場所から離す:弁や拡大管の下流を避ける。配管の頂部に置かない
- 小口径なら上流に気液分離器を置く。口径 200 mm 以上では分離器も大きくなり、設置は難しい
- それでも適当な場所がなければ方式を変える:ドップラー式か、電磁流量計を検討する
もう1つ、管壁への付着物が厚くなると、音の通り道と伝わる時間が変わって誤差になります。
6. クランプオン型を付けるときの注意
「既設の配管に付けられる」という長所の裏には、「取り付けたときの設定が不十分だとトラブルになりやすい」という欠点があります。流量計の手引きは、取り付けの手順を次のように示しています。

- 設置場所を選ぶ:流速分布が十分に整った場所、気泡の生じにくい場所
- 既設管の外径と肉厚を測る
- ライニングの有無、さび・付着物の有無を調べる。あれば厚みも
- 送受波器の位置を決める:Z 法では、変換器の受信感度を見ながら最適な位置に合わせる
- 水平配管では、送受波器を管頂と管底に付けない。管頂には気泡が溜まり、管底には堆積物が溜まる
現実には、鋼管の厚みは外から測っても、ライニングは推定値で済ませ、さびや付着物は無視されることが多い、と手引きは書いています。ライニングや付着物の設定が実際と違えば、最初から管内径に誤差があるまま測定を始めることになります。年月とともにスケールが厚くなれば、それも誤差になります。
設定の誤りを避けたいなら、クランプオン型より接液型が向きます。ただし接液型でも、流速分布の整った場所、気泡のできにくい場所を選ぶ点は同じです。
7. 現場で見る場所
超音波流量計の指示がおかしいとき、次を見に行きます。
- 気泡の元:上流の近くに弁や拡大管がないか。流量計が配管の頂部にないか。流速が上がったときだけ指示が乱れるなら、キャビテーションを疑う
- 送受波器の位置:水平配管の管頂や管底に付いていないか。取付金具がずれていないか
- 設定値:変換器に入れた管の外径・肉厚・ライニング・液の種類が実際と合っているか。配管を更新したのに設定が古いままになっていないか
- 上流の直管長:エルボ、弁、ポンプからの距離は口径の何倍か
- 付着とスケール:年月とともに指示が少しずつずれていくなら、管内の付着を疑う
- 受信の強さ:変換器が受信信号の強さを表示できるなら、その値が下がっていないか
8. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 時間差式の超音波流量計は、何と何の差から流速を求めていますか。
- クランプオン型が接液型より精度が出にくいのはなぜですか。
- 水平配管にクランプオン型を付けるとき、送受波器を管頂や管底に付けないのはなぜですか。
答えは順に、流れに乗る向きと逆らう向きの超音波の到達時間の差/管壁越しに音を通すので、肉厚の推定や音の屈折の誤差が加わり、実流校正もしないで出荷されるから/管頂には気泡、管底には堆積物が溜まり、音の通り道を遮るから、です。
まとめ
超音波流量計の主流は時間差式で、流れに乗る音と逆らう音の到達時間の差から流速を求めます。ドップラー式は液中の粒子で跳ね返る音の周波数変化を使い、濁った水に使えますが精度は低めです。
クランプオン型は配管を切らずに付けられ、大口径ほど経済的ですが、精度はよくてもフルスケールの 2〜3% で、管の肉厚やライニングの設定が誤差の元になります。1本の測線の平均しか測らないので直管長を長く取り、気泡のできる場所を避けてください。指示がおかしいときは、気泡の元、送受波器の位置、変換器の設定値から確認します。
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参考文献
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第4回 超音波流量計」MS TODAY, 2001年10月号
- 黒森健一『流量計ガイド ~選択と使い方の勘どころ~』, 6「超音波流量計」
- 佐鳥聡夫「流量のお話 第11回 流量計の選び方」MS TODAY, 2002年5月号
- 西野悠司『そうか!わかった!プラント配管の原理としくみ』日刊工業新聞社, 資料2「配管技術でよく使う物性値」 Amazonで見る
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