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反応器には回分式・連続槽型(CSTR)・管型(PFR)の3つの基本形があります。それぞれに設計方程式があり、教科書では別々の式として並んでいます。
暗記する必要はありません。3つとも、たった1本の物質収支式から出てきます。違いは「時間で変わるか」と「中が混ざっているか」の2点だけです。
この記事の結論
- 出発点は「入る − 出る + 生成 = 溜まる」の1本だけ
- 回分は入る・出るがゼロ。CSTRは溜まるがゼロで中が均一。PFRは溜まるがゼロで微小区間ごとに収支
- 3つとも積分形は ∫dxA/(−rA) の形になる
- 0次反応には場合分けがある。式を機械的に使わない
1. 3つの基本形


| 型式 | 操作 | 中の状態 | 使いどころ |
| 回分反応器 | 仕込んで、反応させて、抜く | 時間とともに濃度が変わる。空間的には均一 | 多品種少量、医薬・特殊化学品 |
| 連続槽型(CSTR) | 連続で入れて、連続で抜く | 完全混合。器内の濃度=出口の濃度 | 液相、大量生産、温度制御が要る系 |
| 管型(PFR) | 連続で入れて、連続で抜く | 押し出し流れ。入口から出口へ濃度が変化 | 気相、触媒充填、高い反応率が要る系 |
CSTRの「器内の濃度は出口流体のそれに等しい」という前提が、あとで効いてきます。入れた瞬間に薄まるということだからです。
PFRは逆で、流れに乗った流体が混ざらずに押し出されていくと考えます。管の断面ごとに濃度が違う。回分反応器を横に倒して、時間軸を距離軸に置き換えたものだと考えると分かりやすい。
2. 出発点は1本の物質収支

反応器の中の成分 j について、こう書きます。
(入ってくる量)−(出ていく量)+(反応で生成する量)=(溜まる量)
これだけです。あとは型式ごとに、ゼロになる項を消していきます。
| 型式 | 入る | 出る | 生成 | 溜まる |
| 回分 | 0 | 0 | rjV | d(nj)/dt |
| CSTR(定常) | Fj0 | Fj | rjV | 0 |
| PFR(定常) | Fj | Fj+dFj | rjdV | 0 |
回分は「入る・出る」を消し、連続系は「溜まる」を消す。消す場所が違うだけで、書いている式は同じです。
3. 回分反応器|時間を積分する
体積が変わらない系(液相はほぼこれ)では、収支式はこうなります。
dCj/dt = rj
限定反応成分Aについて、消失速度を −rA(正の値)とし、反応率 xA で書き直すと
CA0(dxA/dt) = −rA
変数分離して積分すれば、必要な反応時間が出ます。
t = CA0 ∫0xA dxA /(−rA)
これが回分反応器の設計方程式です。「どこまで反応させたいか」を入れると「何時間かかるか」が出る。
気相反応で体積が変わる場合(定圧回分)は、モル数の変化で体積が V = V0(1+εAxA) と動くので、その分だけ式が複雑になります。εA は反応でモル数がどれだけ増えるかを表す係数で、液相なら0、気相の分解反応では正になります。
4. よく使う積分形の一覧
単純な速度式なら手で積分できます。定容回分反応器についてまとめると、こうなります。
| 反応速度式 | 積分形 |
| −rA = k(0次) | CA0xA = kt (t < CA0/k のとき) CA = 0 (t ≧ CA0/k のとき) |
| −rA = kCA(1次) | −ln(1 − xA) = kt |
| −rA = kCAn | CA01−n[(1 − xA)1−n − 1] = (n − 1)kt |
| A+bB→C、−rA = kCACB | ln{(θB − bxA)/(θB(1 − xA))} = CA0(θB − b)kt (θB=CB0/CA0) |
| A ⇌ C(可逆1次) | ln[(1 − θC/Kc)/{(1 − θC/Kc) − (1 + 1/Kc)xA}] = k(1 + 1/Kc)t |
1行目に注目してください。0次反応だけ場合分けがあります。
0次反応は「濃度によらず一定速度で減る」ので、そのまま計算すると濃度がマイナスになってしまいます。実際には反応物が尽きた時点(t = CA0/k)で止まる。だから場合分けが要る。
これは「式を機械的に使わない」ことの分かりやすい例です。式には成立範囲がある。反応速度式の導出そのものは反応速度式の積分で扱っています。
5. CSTR|積分が消える
定常状態のCSTRでは「溜まる」がゼロなので、収支式は代数式になります。
FA0 − FA = (−rA)V
反応率で書き直して、空間時間 τ = V/v0(次々回で扱います)を使うと
τ = CA0 xA /(−rA)
積分記号がありません。これがCSTRの最大の特徴です。
理由は「完全混合」にあります。器内はどこも同じ濃度=出口濃度なので、反応速度も器内で一定。積分する必要がない。計算が一番簡単なのがCSTRです。
ただし、この「出口濃度で反応している」というのはいちばん反応が遅い状態でずっと反応しているということでもあります。ここがCSTRの体積が大きくなる理由につながります。
6. PFR|回分と同じ形になる
PFRでは、管の微小区間 dV で収支をとります。定常なので「溜まる」はゼロ。
FA0 dxA = (−rA) dV
積分すると
τ = CA0 ∫0xA dxA /(−rA)
回分反応器の式とまったく同じ形です。t が τ に変わっただけ。
これは偶然ではありません。押し出し流れでは、流体の一塊が混ざらずに管を進んでいく。その一塊から見れば、回分反応器に入れられて時間が経っているのと同じです。距離が時間に対応している。
実務的な意味はこうです。ラボの回分実験のデータが、そのままPFRの設計に使える。反応時間 t を空間時間 τ に読み替えればよい。CSTRだとこの読み替えができません。
7. 触媒を充填した管型反応器
固体触媒を詰めた管型反応器では、反応が起きる場所は触媒の上です。だから反応器の体積ではなく触媒の質量を基準にするほうが素直になります。
触媒質量基準の反応速度 −rAm[mol/(kg-触媒·s)]を使うと
W / FA0 = ∫0xA dxA /(−rAm)
W は触媒質量、FA0 は原料のモル流量です。W/FA0 が空間時間の触媒版になっている。単位は[kg-触媒·s/mol]で、「原料1モルあたり触媒何kgぶん通したか」を表します。
触媒反応の論文やカタログで W/F という量がよく出てくるのはこのためです。触媒の性能を比べるときの共通のものさしになります。
8. 3つを並べて見る
| 型式 | 設計方程式 | 性格 |
| 回分 | t = CA0∫dxA/(−rA) | 積分形。時間を求める |
| CSTR | τ = CA0xA/(−rA) | 代数式。積分がない |
| PFR | τ = CA0∫dxA/(−rA) | 回分と同じ形 |
| 触媒充填PFR | W/FA0 = ∫dxA/(−rAm) | 体積の代わりに触媒質量 |
CSTRだけ形が違うのが目立ちます。この「積分か掛け算か」の差が、そのまま必要な体積の差になります。
次の記事で、同じ反応率に必要な体積を数字で比べます。1次反応・反応率90%で、CSTRはPFRの約4倍——という結果になります。
まとめ
3つの反応器の設計方程式は「入る − 出る + 生成 = 溜まる」という1本の物質収支から出てきます。回分は入る・出るを消し、連続系は溜まるを消すだけ。回分とPFRは同じ積分形になり、ラボの回分データがPFRの設計にそのまま使えます。CSTRだけは完全混合のおかげで積分が消え、代数式になる——ただしそれは「いちばん遅い状態で反応している」ということでもあります。触媒充填層では体積の代わりに触媒質量を使い、W/FA0 が空間時間の役割を果たします。
次の記事:CSTRとPFRはどちらが小さいか|同じ反応率に必要な体積
参考文献
- 橋本健治『反応工学 改訂版』培風館, 第3章「反応器設計の基礎式」(反応器の物質収支式、回分・連続槽型・管型の設計方程式、定容回分反応器に対する基礎式の積分形、触媒質量基準の設計方程式) Amazonで見る
- 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善, 第3章「化学反応速度」 最新版をAmazonで見る
- 『プロセス設計シリーズ4 反応・吸収を中心とする設計』化学工業社
化学プラント大全 
