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CSTRとPFRはどちらが小さいか|同じ反応率に必要な体積を面積で読む

R-07 cstr-vs-pfr

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同じ反応を、同じ反応率まで進めたい。CSTRとPFR、どちらが小さく済むか。

答えはほとんどの場合PFRですが、大事なのは「どれくらい違うか」と「例外はどこか」です。1次反応・反応率90%で約3.9倍、2次反応ならちょうど10倍の差がつきます。

この記事の結論

  • 縦軸 CA0/(−rA)・横軸 xA の面積で読むと、PFR=曲線の下、CSTR=長方形
  • 反応率が上がるほど、次数が高いほどCSTRの不利が効く
  • 2次反応の体積比はちょうど 1/(1−xA)
  • ただし自触媒反応では逆転しうる。速度が極大を持つ系がその例外

1. 面積で比べる|1枚の図で決着する

必要な大きさは面積で読める

前の記事で出した2つの設計方程式を並べます。

PFR:τp = ∫0xAf {CA0/(−rA)} dxA

CSTR:τm = {CA0/(−rA)}出口 × xAf

ここで縦軸に CA0/(−rA)、横軸に xA をとったグラフを描いてみてください。すると2つの式が、どちらも面積として読めます。

反応器グラフ上での意味
PFR(と回分)曲線の下の面積。0から xAf まで積分する
CSTR出口の高さ × xAf の長方形

反応が進むほど濃度が下がって反応速度が落ちる——つまり CA0/(−rA) は右上がりの曲線になります。このとき、出口の高さで長方形を作れば、曲線の下の面積より必ず大きくなる

これがCSTRのほうが大きくなる理由です。式をこねる必要はなく、グラフの形だけで説明がつきます

物理的に言い直すとこうです。CSTRは入れた瞬間に出口濃度まで薄まるので、器内はずっと「いちばん反応が遅い状態」。PFRは入口の濃い状態から徐々に薄まっていくので、途中まで速い速度で反応できる。その差が体積の差になっています。

2. 数字で見る|どれくらい違うのか

同じ反応率に必要な大きさ CSTR ÷ PFR

1次反応と2次反応について、同じ反応率に必要な空間時間の比を計算しました。

反応率 xA1次反応2次反応
0.501.44倍2.00倍
0.802.49倍5.00倍
0.903.91倍10.0倍
0.956.34倍20.0倍
0.9921.5倍100倍

※ CSTR ÷ PFR の比。速度定数も初濃度も約分されて消えるので、この比は反応率と次数だけで決まります

読み取れることが3つあります。

  • 反応率が上がるほど差が開く。50%なら1.4倍で済むが、99%だと21倍
  • 次数が高いほど差が開く。濃度依存性が強いぶん、薄まる不利が効く
  • 2次反応の比はちょうど 1/(1−xA)。覚えやすい。xA=0.9 なら10倍、0.99なら100倍

3つ目はきれいなので、当たりを付けるのに便利です。「高い反応率を狙うならCSTRは選ばない」という判断が、この式1本で正当化できます。

3. それでもCSTRが選ばれる理由

面積で読むと1枚で決着する

体積で4倍から10倍も不利なのに、CSTRは現実に多く使われています。体積以外の物差しがあるからです。

CSTRの利点中身
温度が均一完全混合なのでホットスポットができない。発熱反応で決定的
除熱しやすい撹拌で伝熱係数が稼げる。ジャケット・コイル・外部循環が使える
固体を扱えるスラリーや懸濁系でも詰まらない。管型だと閉塞する
滞留時間が長く取れる反応が遅い液相反応に向く。管型だと管が長くなりすぎる
運転が安定入口が振れても薄まって均される(自己平衡性がある)

とくに発熱反応の温度制御が効きます。PFRは入口付近で反応が速いので、そこに発熱が集中してホットスポットができる。CSTRなら発熱が器内に均される。

つまり選定はこうなります。

  • 気相・触媒・高い反応率 → PFR(固定層)
  • 液相・発熱・固体を含む・反応が遅い → CSTR

体積の差は、温度制御性を買うための代金だと考えると腑に落ちます。

4. 例外|自触媒反応では逆転する

ここまでの話には前提がありました。文献の図にもはっきり但し書きが付いています。

「反応速度が反応率 xA の増大に伴い単調に減少する場合」

裏を返せば、単調に減少しない反応があるということです。文献はこう書いています。

反応速度は反応率の減少関数であるとは限らない。自触媒反応のように極大値をもつ場合も起こりうる。そのような挙動を示す場合の CA0/(−rA) 対 xA の曲線は単調増加関数ではなく、最小値をもつ曲線になる。

自触媒反応とは、生成物が触媒として働く反応です。反応が進んで生成物が増えるほど速くなる。

  • 反応の初期:生成物がないので遅い
  • 反応の中盤:反応物も生成物もあるので最も速い
  • 反応の終盤:反応物が尽きて遅くなる

グラフでいうと CA0/(−rA) がU字型になります。左端(xA=0)で高く、中盤で最小、右端でまた高い。

このとき何が起きるか。PFRは左端の「遅い区間」を必ず通らなければならないので、そこで大きな面積を食います。一方CSTRはいきなり中盤の速い状態にできる——入れた瞬間に薄まる(=生成物が混ざる)という性質が、ここでは有利に働く。

結果として、低い反応率の範囲では自触媒反応はCSTRのほうが小さくなります。

実務での例は微生物の培養です。菌体が増えるほど基質の消費が速くなるので、典型的な自触媒型。だから発酵槽は槽型が主流で、管型ではありません。

最適解は「CSTRで中盤まで一気に進めて、そのあとPFRで仕上げる」という組み合わせになります。速度曲線の形を見れば、どこで切り替えるべきかも図から読めます。

5. 判断の順序

  1. 速度式を xA の関数にして、CA0/(−rA) のグラフを描く。まずこれ
  2. 単調増加なら体積はPFR有利。差は上の表で当たりを付ける
  3. 最小値を持つなら自触媒型。CSTRを先に置く構成を検討する
  4. 発熱・固体・遅い反応なら、体積が不利でもCSTRを選ぶ理由になる
  5. CSTRの体積が気になるなら、槽を直列にするという中間解がある

1番目が肝心です。グラフを1枚描けば、体積比も、例外かどうかも、切り替え点も全部読める。手を動かす価値があります。

まとめ

縦軸 CA0/(−rA)・横軸 xA のグラフで、PFRは曲線の下の面積、CSTRは出口の高さの長方形になります。反応速度が単調に減少する系では長方形のほうが必ず大きく、1次反応・反応率90%で約3.9倍、2次反応ではちょうど 1/(1−xA) 倍の差がつきます。それでもCSTRが選ばれるのは温度の均一性・除熱・固体の扱いやすさゆえで、体積差はその代金です。そして自触媒反応のように速度が極大を持つ系では、この関係が逆転します。

次の記事:空間時間・空間速度・平均滞留時間|混同しやすい3つ

参考文献

  • 橋本健治『反応工学 改訂版』培風館, 第3章 図3・3「反応器の性能の比較」(面積による比較、単調減少の前提、自触媒反応では曲線が最小値をもつこと)、第5章「反応装置の設計と操作」 Amazonで見る
  • 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』丸善 最新版をAmazonで見る
  • 小宮山宏『反応工学 反応装置から地球まで』 Amazonで見る

※ 本文中の体積比は、設計方程式だけを使って筆者が計算したものです(1次・2次反応、定容系)。特定の実機のデータではありません。