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ポンプの試運転と性能試験|出荷試験と現地の違い・立会い確認

ポンプの試運転と性能試験|出荷試験と現地の違い・立会い確認

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ポンプメーカーから「性能試験は合格しています」と説明されても、それだけで現地運転まで問題がないとは限りません。工場では管理された試験設備と試験液を使ってポンプ単体の性能を確認しますが、現地では配管、タンク、弁、ストレーナ、計装、電源、制御、取扱液が一つのシステムとして動きます。

工場試験の成績表と現地の圧力計・流量計・電流値を、そのまま比較して異常と判断するのも危険です。試験液の密度や粘度、温度、吸込圧力、回転速度、計器位置が違えば、同じポンプでも表示値は変わります。

この記事では、主に遠心ポンプを対象に、工場の性能試験で何を測るのか、立会いで何を見るのか、清水試験と現地条件の差をどう扱うのか、現地試運転で何を確認して引き取るのかを整理します。

この記事の結論

  • 工場性能試験はポンプ単体の性能確認、現地試運転は据付けを含むポンプシステムの機能確認であり、目的が違う
  • 試験前に、適用規格、試験液、回転速度、保証点、判定方法、立会区分を合意する
  • 性能試験では、流量、吸込・吐出圧力、回転速度、軸動力または入力、温度などを同じ安定状態で記録する
  • 成績表は測定値だけでなく、基準条件への換算方法と合否判定を含めて読む
  • 工場の常温清水と現地の取扱液では、密度、粘度、温度、吸込条件、配管抵抗が違う
  • 引取り時は、性能曲線だけでなく、機能試験、未解決事項、校正記録、現地の基準値を残す

1. 工場検査・性能試験・現地試運転を分ける

ポンプの品質確認は、一度の運転試験だけではありません。材料の受入れから製作、工場試験、据付け、現地試運転まで、確認対象が段階的に変わります。

段階主な目的主な確認対象
材料・製作検査設計どおりに作られているか材料証明、非破壊検査、寸法、耐圧部、回転体の釣合い
工場性能試験ポンプ単体が要求性能を満たすか流量、全揚程、効率、軸動力、回転速度、必要に応じてNPSH
工場機能試験運転中の機械状態に問題がないか振動、騒音、軸受温度、軸封漏れ、潤滑、補助系統
現地試運転据付け後のシステムとして運転できるか配管、弁、ストレーナ、吸込条件、回転方向、インターロック、実液条件

工場性能試験で合格しても、配管荷重、芯ずれ、空気だまり、ストレーナ詰まり、誤結線などの現地要因までは証明できません。一方、現地で流量が不足していても、すぐにポンプ本体の性能不足とは限りません。

2. 工場性能試験は何を証明するのか

性能試験は、契約で定めた条件と判定方法に基づき、製作したポンプが要求性能を満たすか確認する試験です。代表性能だけで選定した標準ポンプと、個別に保証性能を定めたポンプでは、必要な試験の範囲が異なります。

一般的な性能項目は次のとおりです。

  • 吐出し量と全揚程の関係であるQ-H性能
  • ポンプ効率
  • 軸動力または入力から求める動力性能
  • 試験時の回転速度
  • 必要に応じたNPSH性能

合否は、記事に書かれた一つの万能な許容率では決められません。適用規格の版、ポンプの種類、契約上の保証点、試験等級、当事者間の合意を確認します。

3. 清水性能試験設備の測定点

典型的な清水試験設備は、試験水槽、吸込配管、供試ポンプ、吐出配管、流量調節弁、流量計、戻り配管で循環系を構成します。

試験水槽、吸込圧力、供試ポンプ、吐出圧力、流量、流量調節弁、回転速度、動力の測定順序を示した図
(一次資料を参考に当サイト作成)

測定の中心は次の5つです。

  1. 吐出し量を流量計で測る
  2. 吸込側の圧力またはヘッドを測る
  3. 吐出側の圧力またはヘッドを測る
  4. 回転速度を測る
  5. トルクと回転速度、または規定された電気入力から動力を求める

全揚程は、吸込・吐出の圧力計の差だけを読むものではありません。測定位置、高さ、配管径による速度ヘッドなど、採用した試験方法に従って整理します。

試験点を変えるときは吐出側の調節弁などで流量を変え、各点で流量、圧力、回転速度、動力、試験液温度が安定してから同時性を意識して記録します。

4. 常温清水試験と現地運転は条件が違う

多くのポンプは工場で常温清水を使って試験されます。現地の取扱液が水と異なる場合は、契約で決めた方法により、清水試験結果を仕様液条件へ換算して判定します。

工場の常温清水試験と現地の取扱液運転について液質、温度、吸込条件、配管、回転速度の違いを比較した図
(一次資料を参考に当サイト作成)
条件工場試験で多い状態現地で起こる違い主な影響
液密度清水の密度軽液・重液圧力表示、軸動力、モータ負荷
粘度低粘度の清水高粘度液流量、全揚程、効率、軸動力
温度管理された水温高温・低温・季節変動粘度、蒸気圧、すき間、軸封、NPSH
吸込条件試験水槽と短い配管タンク圧力、液面、長い配管、ストレーナNPSHA、空気混入、キャビテーション
配管系試験装置の抵抗実配管・調節弁・熱交換器運転点
回転速度試験設備の速度周波数、すべり、インバータ設定流量、揚程、動力

工場成績表と現地値を比べるときは、まず条件を同じ基準へそろえます。圧力計の数値だけを見て「揚程不足」、電流値だけを見て「ポンプ不良」と決めないことが大切です。

5. 立会試験の前に決めておくこと

立会当日に初めて合否条件を相談すると、測定はできても判定できません。見積仕様書、注文仕様書、検査試験計画、承認図書の段階で次を確定します。

  • 適用する試験規格と版
  • 試験を実液で行うか清水で行うか
  • 試験回転速度と基準回転速度への換算方法
  • 保証流量、保証全揚程、効率、軸動力、NPSHなどの保証項目
  • 測定点数と試験範囲
  • 合否判定の許容幅と判定方法
  • 機能試験、連続運転試験、振動・騒音・軸受温度の扱い
  • 購入者立会、書類確認、立会免除の区分
  • 不合格時の調整、再試験、記録改訂の手順

試験用モータの容量が不足する可能性や、低密度液向けポンプを清水で回すために試験条件を変える必要がある場合も、製作後ではなく計画段階で確認します。

6. 性能試験成績表の読み方

成績表では、きれいな性能曲線だけでなく、元の測定条件と換算の過程を確認します。

確認欄見ること
ポンプ識別型式、製造番号、羽根車径、段数、回転方向
試験条件試験液、液温、密度、回転速度、周波数
計器流量、圧力、動力、回転速度、温度の計器識別と校正
測定値各試験点の流量、吸込・吐出圧力、回転速度、動力
換算値基準速度・仕様液条件へ何をどの方法で換算したか
性能曲線Q-H、効率、軸動力、必要に応じてNPSH
判定保証点と許容範囲、合否、特記事項

測定値と換算値を混同しないことが重要です。回転速度や液条件を換算している場合、現場で比較するときにも同じ基準へ戻す必要があります。

7. 性能試験と機能試験は別に見る

流量と全揚程が合格しても、機械として健全とは限りません。機能試験では、次のような運転状態を確認します。

  • 軸受温度と温度上昇の推移
  • ポンプ・軸受箱・モータの振動
  • 異常音と騒音
  • メカニカルシール、グランドパッキン、ガスケットからの漏れ
  • 潤滑油の油面、油漏れ、オイルリングなどの給油状態
  • 冷却、フラッシング、シーリングなど補助系統の流れ
  • 定格点付近での連続運転中の安定性

性能曲線と機能試験記録は、目的の違う二つの記録として受け取ります。

8. 立会い当日に見る順序

立会いでは、数値を読む前に、数値を信頼できる状態か確認します。

供試ポンプ照合、試験回路、計器校正、条件安定、同時記録、機能観察、判定、変更記録の順序を示した図
(一次資料を参考に当サイト作成)
  1. 供試ポンプの製造番号、羽根車径、回転方向、試験用モータを照合する
  2. 試験回路と流れ方向、吸込・吐出測定位置、流量計、調節弁を確認する
  3. 計器番号、測定範囲、校正期限を確認する
  4. 試験液、液温、回転速度、吸込状態を確認する
  5. 配管やポンプ内の空気が抜け、安定した循環になっていることを確認する
  6. 各試験点で指示が安定してから、関連項目を同じ時刻帯で記録する
  7. 振動、音、漏れ、軸受温度、補助液の流れを観察する
  8. その場で測定値、換算条件、保証点、判定を照合する
  9. 調整や再試験を行った場合は、何を変更したか記録する

締切点を測る場合も、現地の締切運転と同じ感覚で長時間保持してはいけません。実施方法と保持時間は試験手順に従います。

9. 現地試運転前の準備

現地では、ポンプを回す前にシステム側の条件をそろえます。初期トラブルは始動直後に表れやすいため、運転しながら考えるのではなく、始動前に確認します。

  • 基礎、ベース、芯出し、カップリング、ガードが完了している
  • 配管がポンプを無理に引っ張らず、サポートが機能している
  • 配管のフラッシングが完了し、仮設ストレーナの状態を管理できる
  • 吸込・吐出弁、逆止弁、バイパス、最小流量ラインの状態が手順どおりである
  • ポンプ内が満液で、必要なベントと呼び水が完了している
  • 潤滑油、冷却水、シール液、フラッシング液が供給できる
  • モータ単独で回転方向を安全に確認している
  • 圧力、流量、温度、振動、電流、液面などの計器が使える
  • インターロック、警報、非常停止を確認している
  • 試運転手順、役割分担、連絡方法、停止基準が共有されている

10. 現地試運転で記録するもの

始動後は、吐出圧力だけで合否を決めません。時刻をそろえて次の項目を記録します。

  • 吸込圧力、吐出圧力、流量、タンク液面
  • 取扱液の温度、必要に応じて密度・粘度の確認値
  • 回転速度または周波数・インバータ指令
  • モータ電流、電圧、可能なら電力
  • ポンプ、軸受箱、モータの振動
  • 軸受温度、潤滑油温度、冷却水温度
  • 軸封漏れ、冷却水、シール液、フラッシング液の状態
  • 異音、キャビテーション音、配管振動、基礎やサポートの動き
  • ストレーナ差圧または吸込圧力の時間変化

初期値は、その後の日常点検やトラブル診断の基準になります。安定運転後の値だけでなく、始動直後から安定までの変化も残します。

11. 工場値と現地値が合わないときの切り分け

差があったときは、ポンプ分解を急ぐ前に条件を順番にそろえます。

  1. 計器の単位、圧力基準、測定位置、高さを確認する
  2. 回転方向、回転速度、周波数、インバータ設定を確認する
  3. 液温、密度、粘度を確認する
  4. 吸込タンク圧力、液面、吸込配管損失、ストレーナを確認する
  5. 吐出側の弁開度、逆止弁、配管抵抗、バイパス流量を確認する
  6. 空気混入、ガス噛み、満液不足、キャビテーションを確認する
  7. 配管荷重、芯ずれ、軸封圧力、補助液条件を確認する
  8. 同じ基準条件へ換算してから工場成績表と比較する

常温清水の工場試験結果が正しくても、現地の液質や吸込圧力が仕様と違えば、電流、流量、圧力、軸封状態は変わります。現地差をポンプ本体の不良へ直結させないことが重要です。

12. 引取り時に残す記録

引取りは「一度回ったから完了」ではありません。後から同じ判断を再現できる記録をそろえます。

  • 承認された仕様書、データシート、性能曲線
  • 材料証明、非破壊検査、耐圧試験、寸法検査などの要求記録
  • 工場性能試験・機能試験の成績表
  • 使用した計器の識別と校正記録
  • 試験条件、換算方法、合否判定
  • 調整内容、再試験結果、未解決事項と期限・責任者
  • 現地試運転の手順書とチェックシート
  • 現地の安定運転時における圧力、流量、電流、振動、温度の初期値
  • メーカー取扱説明書、部品表、推奨予備品、保全要領

未解決事項は口頭で残さず、パンチリストなどで責任者と完了条件を明確にします。

13. 立会い・引取りチェックリスト

区分最低限の確認
試験前規格、保証点、許容幅、試験液、回転速度、立会区分
設備測定位置、流れ方向、計器校正、試験液温度、空気抜き
性能Q-H、効率、軸動力、回転速度、必要に応じてNPSH
機能振動、音、軸受温度、軸封漏れ、潤滑、補助系統
判定測定値と換算値、保証点、合否、変更内容、再試験
現地配管荷重、満液、回転方向、ストレーナ、インターロック
引取り成績表、校正記録、未解決事項、現地初期値、取扱説明書

まとめ

工場性能試験と現地試運転は、どちらか一方で代用できません。工場ではポンプ単体の性能と機能を管理された条件で確認し、現地では据付け、配管、計装、制御、取扱液を含むシステムとして確認します。

立会いで重要なのは、成績表の数値を眺めることではなく、試験条件、測定点、校正、換算、判定が一つの筋でつながっているかを見ることです。現地では同じ基準へ条件をそろえて比較し、安定運転時の初期値を次の保全へ引き継ぎます。

参考文献

  • 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ』日刊工業新聞社, 3-15「検査および試験」、第5章「ポンプの据付けと試運転」  Amazonで見る
  • 松村正夫『入門 新ポンプ技術』丸善出版, 第4章「ポンプの試験方法」  Amazonで見る
  • 外山幸雄『ポンプの選定とトラブル対策』日刊工業新聞社, 第5章「トラブルを減らすためのアプローチ」、第7章「ポンプよろず相談」  Amazonで見る
  • 化学工学協会編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』丸善, 第5章「化学プラント用ポンプの取扱い」
  • 化学工学協会編『化学プラント建設技術(下)』丸善, 第14章「化学プラントのスタートアップ」、第15章「化学プラントの検査点検保守」