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工業用分析計の基礎|pH・導電率・酸素・ガス分析計、サンプリング系が遅れの原因

工業用分析計の基礎のアイキャッチ

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分析計の値が、温度や流量より何分も遅れて動く。その遅れの大半は分析計そのものではなく、プロセスから試料(サンプル)を採って、運んで、整えて、分析計に届けるまでの「サンプリング系」で生まれています。

運ぶ時間は、おおよそ 配管の長さ ÷ 流速 です。60 m の配管を 0.5 m/s で運べば、それだけで 2 分遅れます。この遅れは制御にとって「むだ時間」になり、分析計の値で直接制御するループを難しくします。

この記事では、工業用分析計とは何か、pH計・導電率計・酸素計・ガスクロマトグラフの原理と注意点、サンプリング系の4つの部分、遅れの計算と短くする方法、そして分析計の値がおかしいときに現場で見る場所を説明します。

この記事の結論

  • 工業用分析計は、現場で連続的にガスや液の組成・性質を測る計器。分析計単体ではなく、サンプリング系と組み合わせた「分析システム」として働く
  • pH計は2本の電極の電位差、導電率計は交流で流れる電流、ジルコニア式酸素計は酸素の濃淡電池、ガスクロマトグラフは成分が分離管を出てくる時間の差で測る
  • サンプリング系は 採取 → 移送 → 前処理 → 分析計 → 排出(戻し)。遅れは主に移送で生まれ、前処理のよどみ(デッドボリューム)も効く
  • 移送時間 = 配管の長さ ÷ 流速。短くするには配管を短く、流速を上げる。採取点が遠いときは主管からバイパスラインを分析計の近くまで引く
  • むだ時間が時定数より大きいループは PID では制御が難しい。分析計の遅れは、そのむだ時間に丸ごと足される
  • 値がおかしいときは、分析計より先にサンプルが流れているか、フィルタ、トレース、排出側を見る

1. 工業用分析計とは|連続で組成を測る

計装の教科書は、工業用分析計を「製造現場に設置し、連続的に製造工程のガス、液体(まれに固体)の組成や性質などを測定する分析計」と定義し、実験室用の分析計と区別しています。そして、分析計はサンプリング装置と組み合わせて分析システムを構築するもので、測定条件に合ったサンプリング装置を組み合わせることが大切だ、と書いています。

用途は、運転状態の監視と制御、製品の品質管理、排水・排ガスなどの環境測定、安全管理です。プロセス運転管理での例として、教科書は次のようなものを挙げています。

測るもの使いどころの例
pH沈殿槽の沈降を最大にする pH 制御、反応条件、原料・製品・排水の pH 調整
密度アルコール、食塩水、苛性ソーダの濃度
導電率洗浄ラインの監視、硫酸・硝酸・塩酸などの濃度
濁度苛性ソーダの品質、上下水の水質
各種成分水素・酸素・窒素中の不純物、排ガス、中間液の組成

もう一つ、数字を読むときの注意があります。濃度の「%」は、溶液なら重量比(wt%)、気体なら体積比(vol%)を略していることが多いのです。教科書の例では、空気中の酸素 21 vol% は重量比に直すと 23.2 wt% になります。分析値と計算値が合わないときは、まずどちらの % かを確かめます。

2. 液体の分析計|pH計と導電率計

pH計

工業用の液体分析計で最も多く使われているのが pH計です。薄いガラス膜を持つガラス電極と、基準になる比較電極の2本を液に浸し、その間に生じる電位差から pH を求めます。

理論上は 1 pH あたり約 59 mV 変化しますが、実際は約 58 mV 程度で、強酸性や強アルカリ性ではガラス膜の材質や液の種類によって誤差が出ます。校正には pH 標準液(フタル酸塩 4.01、中性リン酸塩 6.86、ホウ酸塩 9.18 など)を使います。

ガラス膜を介しているため検出部のインピーダンスは 10 MΩ 以上と非常に高く、変換器の入力は 1 GΩ 以上が要ります。教科書は、増幅器と電極の間に専用ケーブルを使い、端子も高絶縁形にすると書いています。端子箱の湿気や汚れは、pH計の指示を狂わせる原因になります。

導電率計

液に2本の電極を浸して一定の交流電圧をかけ、流れる電流から導電率を求めます。直流を使わない理由を、教科書は次のように説明しています。直流をかけると水が電気分解され、電極に酸素と水素の気泡が付いて有効面積が減り、時間とともに実際より低い導電率を指示するからです。

導電率は温度で変わるので、検出部にサーミスタなどを内蔵して自動温度補償をしています。ボイラ給水の水質管理や塩分の混入検知が代表的な用途です。濃度と導電率の関係を実液で取っておけば(検量線)、濃度計としても使えます。

3. ガスの分析計|酸素計とガスクロマトグラフ

方式原理主な用途
ジルコニア式酸素計高温のジルコニア素子の両側の酸素濃度の差で起電力が出る(酸素濃淡電池)燃焼排ガス(煙道ガス)の酸素
磁気式酸素計酸素が磁気に引き寄せられる性質窒素などに含まれる酸素
赤外線ガス分析計CO、CO2、CH4 など異なる原子からなる分子が特定の波長の赤外線を吸収する燃焼排ガス、プロセスの監視
熱伝導度式気体ごとに熱伝導率が違う水素などの濃度
ガスクロマトグラフ成分ごとに分離管を通る速さが違う多成分ガスの組成

ジルコニア式は、素子を約 750℃ に加熱し、片側に測定ガス、反対側に比較用の空気を当てます。教科書は、比較用空気の酸素濃度を大気なら 20.6%、計装用空気なら 21.0% としています。大気は湿度の分だけ水蒸気で薄まっているからです。比較側に何を使っているかで、指示がわずかに変わります。

ガスクロの値は階段で動く
ガスクロの値は階段で動く

赤外線は、水素、窒素、酸素のような同じ原子からなる分子や、ヘリウム、アルゴンには吸収されません。赤外線式で測れない成分があることも覚えておきます。

ガスクロマトグラフは、サンプルを間欠的に一定量ずつサンプルバルブから押し出し、キャリアガスで分離管(カラム)に通します。成分ごとに分離管を出てくる時間が違うので、出てくる時間で成分を、検出信号の面積で濃度を決めます。検出部は、測る成分や濃度の範囲に合わせて選びます。

1回の分析が終わるまで次の値は出ないので、ガスクロマトグラフの指示は分析周期ごとに階段状に更新されます。値が段々に動くのは故障ではありません。そのうえ、1回の分析にかかる時間の分だけ、値はさらに遅れます。

4. サンプリング系の4つの部分

分析計の多くは、配管から試料を抜き出して分析計まで運びます。化学プラントの建設技術の本は、この「サンプル取出し点から分析計へ試料を移す部分と、測定に必要な状態に整える設備」をまとめてサンプリングシステムと呼び、次のように分けています。

遅れはサンプリング系で生まれる
遅れはサンプリング系で生まれる
部分役割遅れ・トラブルとの関係
採取配管のノズルやプローブから試料を取り出す大口径配管や高粘度流体で成分が不均一なら、配管の中にプローブを差し込む
移送採取点から分析計まで運ぶ分析計は保守しやすい地上に置かれることが多く、採取点から離れる。移送時間はそのまま検出の遅れ
前処理(サンプルコンディショニング)フィルタ、除湿器、気化器、圧力・温度・流量の調整器で分析計が要求する状態に整えるよどみ(デッドボリューム)があると遅れる。フィルタは交換頻度が高い
排出(戻し)分析が済んだ試料を大気、排水溝、処理設備、プロセスへ排出先の圧力変動やドラフトが分析値に効く

このほかに、ガスクロマトグラフのキャリアガス、校正用の標準ガス、スチーム・水・計装用空気などのユーティリティ配管が付きます。

分析計は試料の流量や圧力の影響を受けやすい、とも同書は書いています。たとえば赤外線分析計は、セル内の圧力変化がそのままガス分子の数の変化になり、指示に効きます。前処理部の圧力や流量が変わると、組成が変わっていなくても指示が動くということです。

5. 遅れはどこで生まれるか|移送時間の計算

遅れの主役は移送です。移送時間は次の1本で見積もれます。

バイパスで分析値の遅れを縮める
バイパスで分析値の遅れを縮める

移送時間 = 配管の長さ ÷ 流速

数値例です。採取点から分析計まで 60 m、サンプルの流速が 0.5 m/s なら、

  • 移送時間 = 60 ÷ 0.5 = 120 秒 = 2 分

プロセスの組成が変わってから 2 分間、分析計は古い試料を測り続けます。サンプルラインには外径 6 mm・内径 4 mm 程度の細いチューブがよく使われます。内径 4 mm のチューブで流速 0.5 m/s は、流量にすると毎分約 0.4 L です。

同書は、遅れを減らす方法として流速を上げるか、配管を短くすることを挙げ、採取点が離れているときはプロセスの主管からバイパスラインを分析計の近くまで引けば、採取点が近づいたことになると書いています。バイパスラインを 2 m/s で流して 55 m を運び、そこから分析計までの 5 m だけを 0.5 m/s で流すと、

  • 55 ÷ 2 + 5 ÷ 0.5 = 27.5 + 10 = 約 38 秒

になり、2 分の遅れが 3 分の 1 以下に縮みます。

分析計の置き場所には、保守のために1か所に集めるか、採取点の近くに分散させるかの選択があります。集めれば保守は楽ですがサンプルラインが長くなり、分散させればその逆です。防爆構造が作れない分析計を安全な場所まで離して置くと、その分だけ移送が長くなることも、設計の段階で天秤にかけられています。

6. 遅れが制御に効く|むだ時間と時定数

操作を変えてから測定値が動き始めるまでの時間をむだ時間、動き始めてから変化の 63.2% に達するまでの時間を時定数といいます(プロセスの特性)。計装の教科書は、むだ時間 ÷ 時定数が 1 以上(むだ時間が時定数より大きい)だと、PID 制御は難しいとしたうえで、むだ時間にはプロセスの分だけでなくセンサや操作端の分が足され、分析計の場合はサンプリング装置でむだ時間が長くならないように工夫する、と書いています。

たとえば、プロセスそのもののむだ時間が 1 分、時定数が 3 分のループなら、むだ時間 ÷ 時定数は 0.33 です。ここに分析計のサンプリング系の遅れ 2 分が加わると、むだ時間は 3 分になり、比は 1 に達します。分析計の値で直接制御しようとすると、調節計はいつも2分前の状態を見て弁を動かすことになり、行き過ぎと戻り過ぎを繰り返しやすくなります。

だから分析計のループでは、まずサンプリング系の遅れを縮めます。そのうえで、遅れの小さい流量や温度の制御を内側に置き、分析計の値で外側から設定値を少しずつ動かす、といった組み方が使われます。

7. 分析計の値を疑うとき|現場で見る場所

分析計は、一般の計器と違って保守に気を配らないと性能が出ない、と建設技術の本は書いています。値がおかしいときは、分析計本体を疑う前に、サンプリング系を上流から順に見ます。

  1. サンプルが流れているか:前処理部の流量計や流量調整器。流量がゼロなら、分析計は止まった古い試料を測っている
  2. フィルタ:詰まれば流量が落ち、遅れが延びる。交換頻度が高い部品
  3. スチームトレースと保温:冷えると凝固・凝縮する試料や、気化器の凍結防止。トレースが切れると成分が変わる
  4. 排出側:排出管の詰まり、排出先の圧力変動、大気放出口のドラフトや雨水
  5. 校正用ガスとキャリアガス:ボンベの残量、レギュレータの圧力、切替えの予備ボンベ
  6. パージや切替え弁:教科書には、パージ用の切替え弁の漏れでパージガスがエジェクタのように働き、排気側から大気中のほこりを分析計の中へ吸い込んだ例があります。対策は、排気側にフィルタを追加し、パージガスの圧力を下げることでした

分析計の点検では、試料や校正ガスに有害・可燃性のものが含まれることがあります。排出先と換気を確かめ、手順書に従って作業します。

8. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. 採取点から分析計まで 60 m、流速 0.5 m/s。移送だけで何分遅れますか。
  2. 導電率計に直流ではなく交流を使うのはなぜですか。
  3. ガスクロマトグラフの指示が階段状に動いている。故障ですか。

答えは順に、2 分/直流だと電気分解で電極に気泡が付き、実際より低く指示するから/故障ではない(サンプルを間欠的に分析し、分析周期ごとに値が更新される)、です。

まとめ

工業用分析計は、現場で連続的に組成や性質を測る計器で、サンプリング系と組み合わせた分析システムとして働きます。pH計は電極の電位差、導電率計は交流の電流、ジルコニア式酸素計は酸素の濃淡電池、ガスクロマトグラフは分離管を出る時間の差で測ります。

分析値の遅れの大半はサンプリング系、とくに移送で生まれ、移送時間は配管の長さ ÷ 流速で見積もれます。配管を短く、流速を上げ、採取点が遠ければバイパスラインで近づけます。遅れはそのまま制御のむだ時間になるので、分析計で制御するループほど、サンプリング系の遅れを先に縮めてください。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.5「工業用分析計」(pH計、電極式液体導電率計、ジルコニア式酸素計、プロセスガスクロマトグラフ)、6.5.1「制御がむずかしい要因」、2.2.5【解説】エジェクタ効果の仕組み  Amazonで見る
  • 化学工学協会編『化学プラント建設技術(下)』, 10・2・1「計器類の取付位置の検討」(7) 分析計、10・3・6「分析計の配管」
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.4.5「分析計(ガス濃度分析)」  最新版をAmazonで見る
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