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温度の指示がいきなり上限(または下限)に振り切れたら、まず断線を疑います。熱電対や測温抵抗体の変換器は、線が切れたとき指示をどちらかへ振り切らせる「バーンアウト」の機能を持っていて、プロセスの温度が本当に振り切れることはめったにありません。
厄介なのは、振り切れずに「それらしい値」のままずれるトラブルです。補償導線の種類違いや極性の逆、測温抵抗体の端子の緩み、ノイズや端子箱への浸水は、どれも温度計そのものは正常なまま指示を狂わせます。
この記事では、温度指示の異常を4つの形に分け、それぞれ配線のどこを疑えばよいかを、断線、補償導線、3線式、ノイズと接地、水と熱と雷の順に説明します。温度計の種類と原理は温度計の種類と選び方で扱いました。
この記事の結論
- 温度指示の異常は 振り切れる・一定にずれる・気温につれて動く・ひげ状に揺れる の4つの形で現れる。形で疑う場所が決まる
- 振り切れたら 断線。上限か下限かは変換器の設定次第。温度が下がる向きが安全なループは上限(アップスケール)に設定する
- 補償導線は 熱電対と同じ種類・正しい極性でつなぐ。逆につなぐと、端子箱と計器室の温度差に応じてずれ、気づきにくい
- 測温抵抗体の3線式は 3本の導線が同じ抵抗であることが前提。1本だけ端子が緩む・腐食すると打ち消しが崩れてずれる
- 信号線は動力線から離し、より線とシールド、シールドは 1点で接地。先端接地形の熱電対なら現場側で接地する
- 端子箱の 水の侵入、配線の 高温、雷 も指示を狂わせる
1. 温度指示の異常は4つの形で現れる
温度のトレンドを見れば、どこを疑えばよいかのおおよその見当が付きます。

| 形 | 典型的な原因 | まず見る所 |
| 急に上限か下限へ振り切れる | 断線(バーンアウトの動作)、端子の外れ | 端子箱と中継箱の端子、ケーブルの損傷 |
| 一定の値だけずれる | 補償導線の種類違い、変換器の熱電対の種類やレンジの設定違い | 補償導線の種類表示、変換器の設定 |
| 気温や日射につれて動く | 補償導線の極性の逆、端子の緩み・腐食(測温抵抗体) | 端子箱の中の接続、導線の本数 |
| ひげ状に揺れる、跳ぶ | ノイズ、接地の不良、端子箱への浸水 | 近くの動力線、シールドの接地、端子箱の水 |
ずれるトラブルは、同じ場所の現場温度計や、隣り合う温度計の値と比べて初めて分かります。1本の温度計だけを見ていると、ずれに気づけません。 計器全体の切り分け手順は計器のトラブルはなぜ起こるにまとめています。
2. 振り切れたら断線|バーンアウトの向き
熱電対の変換器には、バーンアウト回路があります。計装の教科書の回路図では、変換器の入力にごく小さな電流を流すしかけがあり、熱電対がつながっていればその影響はほとんどありません。線が切れると入力が片側へ引っ張られ、伝送信号が最大(アップスケール)か最小(ダウンスケール)になります。どちらにするかは変換器で選びます。測温抵抗体の変換器にもバーンアウト回路があります。

向きの選び方は、断線したとき制御やインターロックがどう動くと安全かで決めます。計装の教科書は、熱電対用変換器のバーンアウトは「通常温度を下げる方向が安全サイドなので、アップスケールを選ぶ」と書いています。
加熱炉の温度制御で考えます。断線で指示が下限へ振り切れると、コントローラは「温度が低すぎる」と判断して燃料を増やします。上限へ振り切れれば燃料を絞ります。だから加熱のループはアップスケールです。
ただし、アップスケールには別の面もあります。高温でプラントを止めるインターロックに同じ温度計を使っていると、断線しただけでインターロックが働いてプラントが止まることがあります。プロセス設計の教科書は、断線でただちに止める設計と、運転を続ける設計の2つの考え方を挙げ、続けるなら断線を検出する仕組み(バーンアウト機構など)や警報を完備して、真の異常のときだけ止まるようにすべきだとしています。
現場でできることは2つです。
- 振り切れたら、プロセスより先に断線を疑う。同じ場所の現場温度計、関連する圧力や流量と矛盾していないかを見る
- 担当ループのバーンアウトの向きを知っておく。上下どちらへ振れる設定かは、計装担当か変換器の設定表で確かめる
3. 配線の誤りは「それらしい値」でずれる
補償導線|種類と極性
熱電対の素線は高価なので、測温点から変換器まではふつう補償導線でつなぎます。常温付近で熱電対と同じ起電力の特性を持つ、安価な線です。変換器は入力端子の温度を測り、0℃ との差に相当する電圧を足して補正します(基準接点補償)。

この仕組みは、熱電対の種類に合った補償導線を、正しい極性でつないでいることが前提です。
- 種類違い:K の熱電対に別の種類の補償導線をつなぐと、補償導線の区間で生じる電圧が合わず、ずれる
- 極性の逆:+と−を入れ替えると、補償導線の区間で生じる電圧が逆向きに加わる。ずれの大きさは端子箱と計器室の温度差で変わるので、日射や気温につれて指示が動く
- 途中で普通の銅線に替える:中継箱で銅線に替えると、その先は補償が効かない
どれも指示は「それらしい値」で出ます。計器の交換、ケーブルの引き直し、中継箱の改造のあとに温度が以前と比べてずれたと感じたら、この3つを疑います。
測温抵抗体の3線式|1本だけの抵抗増に弱い
測温抵抗体(Pt100)は、定電流を流して両端の電圧から抵抗を求めます。現場と計器室の間の導線にも抵抗があり、外気温で変わるので、2線式では導線の抵抗がそのまま誤差になります。そこで通常は3線式にし、変換器で導線の抵抗を差し引きます。
計装の教科書が示す補償回路の式では、導線の影響が消えるのは導線どうしの抵抗が等しいときです。裏を返すと、端子の緩み、端子の腐食、途中の接続不良で1本だけ抵抗が増えると、打ち消しが崩れて指示がずれます。振り切れないので、断線より見つけにくいトラブルです。
端子の緩みは振動で起き、腐食は端子箱への浸水や湿気で進みます。3本の線のうち1本だけ色が変わっている、締め付けが甘い、といった点を端子箱で見ます。
4. 揺れる・跳ぶならノイズと接地
熱電対の信号は数 mV から数十 mV と小さく、配線が拾う雑音の影響を受けやすい信号です。化学プラント建設の教科書は、雑音の入り方として、強電ケーブルから静電容量を通じて入る静電誘導、磁界から入る電磁誘導、大地との間に電圧がかかるコモンモード雑音、同じケーブル内の対線どうしの漏話を挙げ、対策を次のようにまとめています。
- 離す:信号線は強電流の電線や電源線と交差させたり、近づけたりしない
- より合わせる:電磁誘導には対よりが最も効果的。より合わせのピッチは 50 mm 程度が実際的
- シールドする:静電誘導には遮蔽が効く。シールドは1点で接地する。熱電対が先端接地されている場合は、シールドの接地を現場側で行う
- 対ごとにシールド:多芯の補償導線ケーブルを使うときは、各対ごとにシールドする。異なる種類の信号を同じケーブルに同居させない
接地の問題はもう1つあります。計装の教科書は、大電流の設備がある構内では迷走電流で接地点の間に電位差が生じ、2点で接地すると測定回路に電流が流れて影響を受けることがあると書いています。先端接地形の熱電対は原理的にセンサが接地しているのでこの影響を受けやすく、電気炉などでは、絶縁形の熱電対でも高温で絶縁用セラミックの抵抗が下がって接地状態になることを想定しなければなりません。こうした場合は、入力と出力を電気的に絶縁した変換器を使います。
モータの起動と同時に指示が跳ぶ、周期的にひげが出るときは、配線の経路と接地を疑います。信号線の延長や仮設で、動力線と同じ束にしていないかを確かめてください(配線の常識は4〜20 mA と計装信号)。
5. 水・熱・雷|端子箱と配線経路の弱点
端子箱への浸水
計装の教科書は、現場計器の端子箱を開けると溜まっていた水がどっと出てくることがある、と書いています。電線管を伝って漏れこんだ雨が、端子箱に流れ込むのです。水は絶縁不良を起こし、指示の揺れや跳び、端子の腐食の原因になります。電線管の出口や端子箱に水が溜まらないよう、水抜きをするのが対策です。
配線の温度
化学プラント建設の教科書は、信号と温度計の配線経路を決めるときの注意として、なるべく最短距離にすること、強電流の電線と交差・接近させないこと、そして電線と電線管の表面が高温(原則として最高 60℃)にならないことを挙げています。塩化ビニル被覆の電線は、耐熱性が一般に 60℃ までとされます。炉や高温配管の近くを通る配線は、被覆の劣化が絶縁不良や断線の原因になります。
雷
計装の教科書は、雷で計装機器が壊れた経歴がある場合や、ケーブル長が 30 m 以上の場合は避雷器(アレスタ)の設置を検討するとし、熱電対用・測温抵抗体用の避雷器もあると書いています。原料タンクや製品タンクのように、離れた場所から計器室へ配線する温度計は誘導雷を受けやすい場所です。
6. 現場で見る場所
- トレンドの形:振り切れか、ずれか、気温との連動か、ひげか。いつから、何の作業のあとからか
- 端子箱:水の溜まり、端子の緩み・腐食、線の色の変化。補償導線の+−の向き
- 補償導線の種類表示:熱電対の種類(K など)と合っているか。中継箱で銅線に替わっていないか
- 測温抵抗体の線の本数:3本とも端子に来ているか、1本だけ締め付けが甘くないか
- 配線の経路:動力線との並走、炉や高温配管への接近、電線管の破損
- バーンアウトの向き:断線時に上下どちらへ振れる設定か。インターロックに使っているか
7. 先輩に聞かれたら答えられる3問
- 加熱炉の温度計の変換器で、バーンアウトをアップスケールに設定するのはなぜですか。
- 補償導線の+と−を逆につなぐと、指示はどうなりますか。
- 測温抵抗体の3線式で、1本の端子だけが緩むと何が起きますか。
答えは順に、断線で指示が下限へ振れると、コントローラが「低温」と判断して燃料を増やし危険だから/端子箱と計器室の温度差に応じてずれ、気温や日射につれて指示が動く/3本が同じ抵抗という前提が崩れて導線抵抗の打ち消しが効かなくなり、指示がずれる、です。
まとめ
温度指示の異常は、振り切れる、一定にずれる、気温につれて動く、ひげ状に揺れる、の4つの形で現れ、形で疑う場所が決まります。振り切れたら断線で、バーンアウトの向きは温度が下がる側が危険ならアップスケールにします。
ずれるトラブルは、補償導線の種類違い・極性の逆・銅線への置き換え、測温抵抗体の端子の緩みや腐食が原因で、指示は「それらしい値」のまま出ます。揺れや跳びはノイズと接地、端子箱への浸水を疑います。配線を触る作業のあとは、同じ場所のほかの温度計と比べて、ずれていないかを確かめてください。
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参考文献
- 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 2.1.1「熱電対」、2.1.2「測温抵抗体」(導線数と測定回路、温度変換部)、「電気的環境条件対策」(雷、アース、絶縁不良)、7.2.2「安全設計」 Amazonで見る
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.4.1「温度計」(熱電温度計の基本構成) 最新版をAmazonで見る
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