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カスケード制御|なぜ調節計を2つ重ねるのか、炉の温度と燃料流量で見る、どちらを手動にするか

カスケード制御のアイキャッチ

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カスケード制御は、1つ目の調節計の出力を、2つ目の調節計の設定値にするつなぎ方です。炉の温度調節計(一次)が「燃料をこれだけ流せ」と流量調節計(二次)に指示し、流量調節計が弁を動かします。

なぜ温度調節計が直接弁を動かさないのか。燃料の圧力が変わると、同じ弁開度でも流量が変わってしまうからです。温度が変わってから直すのでは遅いので、流量の段階で素早く直す役目を二次側に持たせます。

この記事では、カスケードが要る理由、一次と二次の役割、二次側が速くなければならない理由、DCS のモード表示(CAS)と手動にするときの注意を説明します。

この記事の結論

  • カスケード制御は 一次調節計の出力 → 二次調節計の設定値。一次は「目的」、二次は「手段」を制御する
  • 目的は、二次側に入る外乱(燃料圧力の変動など)を、一次の測定値に影響が出る前に消すこと
  • 二次側の応答は一次側より十分に速くなければならない。遅いと2つの調節計が干渉して乱れる
  • 二次側は流量制御であることが多い。温度→流量、液面→流量、分析→流量の組み合わせが定番
  • 調節弁には 1〜2% 程度の不感帯 があるが、二次側の流量調節計がその影響も修正する
  • 二次側を手動にすると一次側は効かなくなる。どちらを手動にしたかを必ず確認する

1. 温度調節計が直接弁を動かすと何が起きるか

炉の温度を燃料の弁で制御する、単純なループを考えます。温度調節計 TIC の出力が、そのまま燃料弁に行きます。

燃料圧力が上がったときの炉温
燃料圧力が上がったときの炉温

ここで、燃料ポンプの圧力が変わったとします。計装の教科書は「1台の燃料ポンプで複数の炉に燃料を供給している場合、炉の運転状況により燃料圧力が変動する」と実例を挙げています。圧力が上がれば、弁開度が同じでも燃料流量が増え、炉温が上がります。

温度調節計はこれに気づいて弁を閉めますが、炉の温度は熱容量が大きくてゆっくり変わるので、気づくまでに時間がかかり、直し終わるまでにも時間がかかります。教科書の図では、燃料圧力がステップ状に変わると、燃料流量が跳ね、炉温が山を描いてから戻る「影響あり」の応答になっています。

2. 流量調節計を間に入れる

そこで、燃料配管に流量計と流量調節計 FIC を置き、温度調節計の出力を「弁への信号」ではなく「流量調節計の設定値」にします。

カスケード制御の2段ループ
カスケード制御の2段ループ
調節計別名測るもの出力の行き先役割
一次(TIC)マスタ、主調節計炉の温度二次の設定値目的(温度)を守る
二次(FIC)スレーブ、副調節計燃料流量調節弁手段(流量)を指示どおりに保つ

燃料圧力が変動しても、流量調節計が流量を一定に保つので、炉温にはほとんど影響が出ません。教科書の図でも、同じ圧力変動に対して流量は一瞬乱れるだけで、炉温は「ほとんど影響なし」です。

高圧ガス保安技術の教科書は、熱交換器の出口温度制御で同じ説明をしています。加熱流体の圧力変動→流量変化→熱量変化→出口温度が変わるまで時間がかかるので、温度調節計の修正は遅れる。流量調節計を付加して温度調節計の出力で流量の目標値を設定すれば、流量の応答は温度応答より十分早いので、圧力変動という外乱を補正してくれる、というものです。

3. 二次側は速くなければならない

カスケードが成り立つ条件は、二次側のプロセス応答が一次側より速いことです。「カスケード」は小滝の意味で、上から下へ順に流れ落ちる速さの違いを表しています。

二次ループは一次より十分速く
二次ループは一次より十分速く

プロセス設計の教科書は、副調節系の応答が主調節計より十分速くないと、両調節計のあいだに干渉が生じて制御が乱れる、と注意しています。だから二次側は、応答の速い流量制御であることがほとんどです。カスケードと同じく調節計のつなぎ方で工夫する方法には、比率制御・フィードフォワード・オーバライドがあります(比率制御・フィードフォワード・オーバライド)。

一次(遅い)二次(速い)典型的な場面
温度流量炉・熱交換器・反応器ジャケットの加熱媒体
液面流量タンクの流出流量
分析(濃度)流量中和剤、添加剤
圧力流量気体の供給

二次側にはもう1つ利点があります。調節弁には 1〜2% 程度の不感帯(信号を少し変えても動かない範囲)がありますが、流量調節計が流量を見て修正するので、弁の癖が一次側に伝わりません。

4. DCS のモード表示|CAS・AUTO・MAN

カスケードのループでは、二次側の調節計に3つのモードがあります。

二次側のモード設定値は誰が決めるか一次側は
CAS(カスケード)一次側の出力効いている
AUTO(自動)運転員が二次側の SV を直接入れる効いていない(出力が行き先を失う)
MAN(手動)二次側の MV を運転員が直接決める効いていない

つまり、二次側を AUTO や MAN にした時点で、一次側の温度制御は切れています。画面上は温度調節計が AUTO のままなので、「温度制御は自動だ」と思い込みやすい落とし穴です。

一次側を手動にする場合は、一次側の MV(=二次側の SV)を運転員が決めることになり、二次側の流量制御は生きたままです。「流量を一定に保ちつつ、温度は人が見る」という運転で、起動時などに使われます。

5. 手動から戻すときの順番

カスケードを戻すときは、内側(二次)から外側(一次)へ戻します。

  1. 二次側を MAN から AUTO へ。SV を今の PV に合わせてから(自動/手動の記事の手順)
  2. 二次側の流量が落ち着くのを待つ
  3. 一次側の MV を、今の二次側 SV に合わせる(DCS が自動で追従する型もある)
  4. 二次側を AUTO から CAS へ
  5. 一次側が AUTO であることを確認し、温度の応答を見張る

順番を逆にすると、一次側の出力が二次側の SV へ急に流れ込み、流量が跳ねます。

6. 現場で見る場所

  1. モードの組み合わせ:一次が AUTO でも、二次が CAS でなければ温度制御は効いていない
  2. 二次側の伝送器:流量計が壊れると、一次側がいくら出力を変えても流量が合わない。カスケードは伝送器が2つ要る分、故障点も2つ
  3. 二次側の PID:二次側は速く応答させるため比例帯が小さめ。一次側は遅い。両方を同じ値にしない
  4. 外乱の入口:燃料圧力、蒸気圧力、上流の変動。二次側が消してくれる外乱はどれかを知っておく

7. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. カスケード制御で、一次調節計の出力はどこへ行きますか。
  2. 二次側が一次側より速くなければならないのはなぜですか。
  3. 二次側を AUTO にしたとき、一次側の制御は効いていますか。

答えは順に、二次調節計の設定値へ/遅いと2つの調節計が干渉して制御が乱れるから/効いていない、です。

まとめ

カスケード制御は、一次調節計の出力を二次調節計の設定値にするつなぎ方で、二次側に入る外乱(燃料や蒸気の圧力変動)を、一次側の測定値に影響が出る前に消します。二次側は一次側より十分に速い必要があり、流量制御が定番です。

DCS では二次側が CAS でなければ一次側は効いていません。手動から戻すときは二次から一次へ、内側から順に戻してください。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 6.4.3「カスケード制御ループ」、【解説】どんな時カスケード制御が有効か  Amazonで見る
  • 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術』, 11.8.3「調節部」3) カスケード制御  最新版をAmazonで見る
  • 化学工学協会編『プロセス設計シリーズ7 プロセスの制御と計算機制御』丸善, 2・1・3「カスケード制御」
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