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計器の精度・誤差・校正|「±0.5%」は何の 0.5% か、ゼロ点とスパン、いつ校正するか

計器の精度・誤差・校正のアイキャッチ

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伝送器のカタログにある「精度 ±0.5%」は、たいてい測定範囲(スパン)に対する 0.5% です。読んでいる値に対する 0.5% ではありません。

だから、範囲の広い計器を低い値で使うと、読み値に対する誤差の割合は大きくなります。スパンの 0.5% の計器で 50% の値を読むと、読み値に対しては 1% の誤差になります。

この記事では、精度の読み方、複数の計器を通ったときの誤差の合わせ方、ゼロ点とスパンのずれの違い、校正をいつ・どこで・どうやるかを、現場の目線で説明します。

この記事の結論

  • 「精度 ±0.5%」は原則 スパンの 0.5%。読み値が小さいほど、読み値に対する誤差は大きくなる
  • 複数の誤差要因は足し算ではなく 2乗平均で合わせる。0.1% と 0.2% なら ±0.22%
  • 調節弁側の誤差(ポジショナの位置決めやヒステリシス)は、ループの総合誤差に足さない。制御が修正するから
  • ゼロ点のずれは全体が平行に動き、スパンのずれは傾きが変わる。校正では両方を見る
  • 定期点検の目安は 監視用 2 年に 1 回、制御用 1 年に 1 回。重要度・法規・冗長度で決める
  • 校正には「現場で行う」と「取り外して計器室で行う」があり、測定機器のトレーサビリティが前提

1. 「±0.5%」は何に対する 0.5% か

計器の精度表示には、何を 100% とするかが必ず付いています。代表は次の2つです。

スパン誤差と読み値の誤差
スパン誤差と読み値の誤差
表し方意味例
% of span(スパンの %)測定範囲の幅に対する割合。伝送器・変換器はこれが普通0〜1 MPa の伝送器で ±0.5% → どの値でも ±5 kPa
% of reading(読み値の %)そのとき読んでいる値に対する割合500 kPa を読んでいるとき ±0.5% → ±2.5 kPa

同じ「0.5%」でも、スパン基準では低い値ほど読み値に対する誤差が膨らみます。教科書の数値例では、スパンの 0.5% の精度を持つ計器で 50% の信号を測ると、読み値に対して 1% の誤差になります。25% なら 2%、10% なら 5% です。

だから、測定範囲は「大は小を兼ねる」ではありません。普段使う値が範囲の中ほどから上に来るように測定範囲を決めます。範囲を広く取りすぎた計器は、低流量や低圧のときに信用できなくなります。

2. 誤差は足し算ではなく 2 乗平均で合わせる

1つの計器にも、基本精度のほかに周囲温度の影響や電源の影響など複数の誤差要因があります。これらは同時に最悪の方向へ出るとは限らないので、単純に足さず、それぞれを 2 乗して足し、平方根を取る方法で合わせます。

教科書の例では、精度 0.1% of span、温度の影響 ±0.2%/10℃ の変換カードで、周囲温度が 10℃ 変わったときの誤差は、0.1 の 2 乗と 0.2 の 2 乗を足して平方根を取り、±0.22% of span になります。単純に足した 0.3% より小さい値です。

検出器・変換器・演算器・調節計と信号が通る機器が複数あるときも、同じ 2 乗平均でループの総合誤差を出します。ただし、デジタル式の場合は演算や調節の内部誤差が無視できるので、検出器と変換部の誤差だけで考えれば十分です。

ここで大事な例外があります。調節弁側の誤差はループの総合誤差に加えません。 ポジショナの位置決め誤差、弁の動作遅れ、ヒステリシスは、調節計から見れば設定値と測定値の偏差として現れ、制御動作で修正されるからです。計器の精度を議論するときは、「測る側」と「動かす側」を分けて考えます。

3. ゼロ点のずれとスパンのずれは別物

校正で見るのは、主に次の2つです。

  • ゼロ点のずれ:入力がゼロなのに出力がゼロにならない。入力と出力の関係が全体に平行移動する
  • スパンのずれ:ゼロは合っているが、100% 入力で 100% にならない。関係の傾きが変わる

どちらも現場で起きますが、原因が違います。ゼロ点のずれは、差圧伝送器の導圧管に液が溜まった、取り付け姿勢が変わった、といった設置側の理由で起きることが多く、スパンのずれは計器の内部の劣化を疑います。

センサの種類によっても、ゼロ点の安定性は違います。教科書は、測定対象のエネルギーで動く「受動形」センサ(ブルドン管、オリフィス、渦流量計、面積式、熱電対など)は本質的にゼロ点が安定し、外部から電気や機械のエネルギーを与えて測る「能動形」センサ(圧力伝送器、差圧伝送器、電磁流量計、測温抵抗体など)はゼロ点が不安定になりやすい、と整理しています。現場でゼロ点を定期的に確認すべきなのは、主に能動形です。

4. 校正はいつやるか|監視用 2 年、制御用 1 年が目安

計器メーカーの実務書は、定期点検の周期を運転上の重要度・法規上の要求・冗長度・使用条件で決めるとしたうえで、一般に監視用は 2 年に 1 回、制御用は 1 年に 1 回を目安に挙げています。

定期点検の中身は次の3つです。

  1. 外観構造の点検:腐食、発錆、変形、傷
  2. 校正と調整:実際の入力を与えてゼロ点とスパンを校正し、結果に応じて調整する
  3. ループチェック:伝送器のゼロ調整を回して出力電流を変え、計器室側の受信値と比べる。ハンドヘルドの通信器で定電流を出せば簡単にできる

日常点検は別にあり、配管部の漏れ、導圧管のドレンやガス抜き、ゼロ点の確認、締め込みの4項目です(現場計器の日常点検の記事で扱います)。

5. 校正はどこでやるか|現場か、計器室か

校正と調整には2つの方法があります。

方法目的注意
現場で行う故障の有無、動作の確認、ループとしての動作点検設置したままなので簡単。細かい精度は出しにくい
取り外して計器室で行う校正台で精度を確認し、調整する現場と設置姿勢・入力圧力・使用条件が違う。計器の使用状況と履歴を整備しておく

どちらの場合も、校正に使う測定機器自体の精度が管理されていることが前提です。校正用の圧力計や分銅は、国家標準から照合用標準器、校正用標準器へとたどれる「トレーサビリティ」の体系の中にあります。現場で「基準にした圧力計が狂っていた」という失敗は珍しくありません。校正記録には、使った基準器の管理番号を残します。

6. 現場で見る場所|精度を疑う前に

DCS の値と現場の値が合わないとき、いきなり「精度が悪い」と考える前に、次を見ます。

  1. 範囲のどのあたりで使っているか:スパンの下のほうで使っていれば、読み値に対する誤差は大きくて当然
  2. ゼロ点かスパンか:ゼロ入力(導圧管を締めて均圧するなど)で出力が 4 mA になるか。ならなければゼロ点、なれば スパンか設置側
  3. 周囲温度:直射日光、蒸気配管の近く、冬の冷え込み。温度の影響は精度と別に効く
  4. 最後に校正した日と、そのときの基準器:記録が残っていなければ、校正から始める

7. 先輩に聞かれたら答えられる3問

  1. スパンの 0.5% の精度の計器で、範囲の 25% の値を読むと、読み値に対する誤差は何%ですか。
  2. 精度 0.1%、温度影響 0.2% の 2 つの誤差を合わせると何%ですか。
  3. 制御用の計器の定期点検は、目安として何年に 1 回ですか。

答えは順に、2%、約 0.22%、1 年に 1 回です。

まとめ

計器の「±0.5%」は原則としてスパンに対する割合で、低い値で使うほど読み値に対する誤差は大きくなります。複数の誤差は 2 乗平均で合わせ、調節弁側の誤差はループの総合誤差に含めません。

校正ではゼロ点のずれとスパンのずれを分けて見ます。ゼロ点は設置側、スパンは計器内部を疑うのが順序です。定期点検は監視用 2 年・制御用 1 年を目安に、外観・校正と調整・ループチェックを行い、校正に使う基準器のトレーサビリティを記録に残します。

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参考文献

  • 川村貞夫・石川洋次郎『メーカーの技術者が書いた やさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎』工業技術社, 7.3「総合精度」  Amazonで見る
  • 横河電機編『計装メーカが書いた フィールド機器・虎の巻』工業技術社, Ⅱ 9「保守と点検」、10「校正と調整」
  • 『流量計ガイド』, 1.4「流量測定で使われる共通用語」(精度と不確かさ)
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