熱Ⅳの自動制御のうち、フィードバック制御の構成と、オンオフ・比例・積分・微分の各動作の論点を、表と例題で並べました。
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フィードバック制御の構成とブロック線図 ── ずれが出てから直す仕組み

| 用語 | 温水加熱タンクの温度制御では | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 制御量 | タンク内の水の温度 | 検出部で測定値に変えてから比べる |
| 目標値 | 保ちたい水温 | 一定なら定値制御、時々刻々変わるなら追値制御(追従制御) |
| 偏差 | 目標値−測定値 | ブロック線図の加え合わせ点で、目標値に+、測定値に− |
| 操作量 | 蒸気調節弁の開度(蒸気の流量) | 偏差がなくなる向きに動かす |
| 外乱 | タンクに入る水の流量・温度の変化 | 制御系の状態を乱す外からの作用 |
| 制御装置 | 検出部・比較部・制御演算部・操作部 | 調節計は比較部と制御演算部を受け持つ |
| 閉ループの伝達関数 | Y(s)=G(s)/{1+G(s)·H(s)}·X(s) | 負帰還なので分母は 1+GH。G·H を一巡伝達関数という |
なぜ:偏差は「目標値−測定値」なので、外乱が入っても測定値が動くまでは偏差が生まれず、調節計は何もできません。ずれが出てから輪を一周して直すので、遅れは原理的に残ります。その代わり、外乱の原因を知らなくても、結果のずれだけで直せます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| フィードバック制御では、外乱の影響が測定値に現れてから修正が始まるので、いくらかの遅れはやむを得ない | ○ | 結果を見てから直す。先回りはフィードフォワード |
| 偏差は「測定値−目標値」で定義する | × | 目標値−測定値 |
| 目標値を一定に保つ制御を、追値制御と呼ぶ | × | 定値制御。追値制御は動く目標値を追う |
| 前向き G、帰還 H の負帰還系の閉ループ伝達関数は G/(1−GH) | × | 出力を引いて偏差をつくるので G/(1+GH) |
| 前向き 4、帰還 0.5(どちらも定数)の負帰還系では、出力は入力の 4/3 倍 | ○ | 4/(1+4×0.5)=1.33 |
例題
前向きの伝達関数が定数 G=8、帰還側が H=0.5 の負帰還系があります。全体のゲイン(出力÷入力)を求め、G が 48 に増えたときと比べます。
①式:Y/X=G/(1+GH)。
②G=8:8/(1+8×0.5)=8/5=1.6。
③G=48:48/(1+48×0.5)=48/25=1.92。
④確かめる:G を6倍にしても、全体は 1.6 から 1.92 へ。G を大きくしても全体のゲインは 1/H=2 に近づくだけで、2 を超えない。
- シーケンス制御は、決めた順序で各段階を進める制御(家庭用の洗濯機など)。目標値もフィードバックの輪もないので、制御量を一定に保つことはできない。
- フィードフォワード制御は、外乱を測って結果に出る前に操作量を変える。単独では一定に保てる保証がないので、フィードバックと併用する。
- 直列につながった要素は、伝達関数を掛け合わせる。調節計から見たプロセスは、調節弁・配管・タンク・検出部の積になる。
- 自動制御の計器は、検出部・調節計・操作部(調節弁など)に分かれる。
関連:比率制御とフィードフォワード制御/フィードバック制御のしくみ
オンオフ動作 ── 目標の上下を行き来し続ける

| 比べる点 | オンオフ動作 | 比例動作 |
|---|---|---|
| 弁の動き | 全開か全閉の2つだけ | 偏差に比例した中間の開度 |
| 水温が目標値より低いとき | 全開にして蒸気を流す | 偏差に応じて開く |
| 水温が目標値より高いとき | 全閉にして蒸気を止める | 偏差に応じて閉じる |
| 測定値の動き | 目標値の上下を波を打つように変動し続ける | 変動は小刻みになり、比例帯が広ければ波打たない |
| 両者の関係 | 比例帯 0% の比例動作と同じ | 比例帯を狭くするほどオンオフに近づく |
| 使われ方 | 昔の調節計の多く。今もごく簡単な調節計 | 市販の調節計のほとんどは PID 動作で、オンオフ・P・PI・PID を切り替えられるものが多い |
なぜ:弁には全開と全閉しかないので、全開では蒸気が入りすぎて目標値を超え、全閉では冷めて目標値を下回ります。中間の開度がないので、行きすぎと不足を交互に繰り返すしかありません。弁の開度を偏差に連続的に比例させて、この弱点を消したのが比例動作です。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| オンオフ動作で水温が波を打ち続けるのは、弁に全開と全閉の2通りしかないから | ○ | 中間の開度がない |
| 温水加熱のオンオフ動作では、水温が目標値より高いときに弁を全開にする | × | 低いときに全開、高くなったら全閉 |
| 比例動作の比例帯を 0% まで狭めると、オンオフ動作と同じになる | ○ | Kp=100/PB が無限大 |
| 市販の調節計の大半は、オンオフ動作で作られている | × | 大半は PID 動作 |
- ヒータの電流をリレーで入り切りする温度制御でも、単なるオンオフでは良い制御にならない。オン時間の割合を PID の演算値に比例させる時間比例出力を使う。
- 積分時間を 0 にした場合も、理屈の上ではオンオフ動作になる。ただし市販の調節計では、積分時間 0 の目盛を「積分動作なし」の意味に使うことが多い(積分動作の論点)。
- オンオフ動作の調節計は仕組みが簡単だが、水温は一定にならない。
比例動作とオフセット ── 比例動作だけではオフセットが残る

| 項目 | 式・関係 | 読み方 |
|---|---|---|
| 比例動作の出力 | mv=mv₀+Kp·e | mv₀ は偏差 0 のときの出力 |
| 偏差 e〔%〕 | 偏差〔℃など〕÷測定スパン×100 | ℃ のまま Kp を掛けない |
| 比例帯 PB〔%〕 | 出力が 0→100% 動くのに要る偏差の幅 | 市販の調節計は比例ゲインの代わりに使う |
| 比例ゲイン | Kp=100/PB | 比例帯が広いほどゲインは小さい(逆数) |
| 比例帯を狭く | 動きが速いが、測定値が波を打つ | 0% でオンオフ動作 |
| 比例帯を広く | 波打たないが、動きがゆっくり | 最後に偏差(オフセット)が残り、広いほど大きい |
| 手動リセット | mv₀ を修正して出力特性を平行に動かす | 比例帯(傾き)は変えない |
なぜ:最後の水温は、2本の線の交点で決まります。「蒸気を増やすと水温が上がる」静特性と、「水温が上がると出力を減らす」比例動作の出力特性です。出力が mv₀ と違う値で釣り合うには、その差を Kp で割った分の偏差が残らないといけません。交点が目標値に来るのは、mv₀ がちょうど釣り合いの出力に等しいときだけです。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 比例動作の出力は、偏差 0 のときの出力に、比例ゲインと偏差の積を足したもの | ○ | mv=mv₀+Kp·e |
| 比例帯 PB〔%〕と比例ゲインの関係は Kp=PB/100 | × | Kp=100/PB(逆数の関係) |
| 測定スパン 200℃・比例帯 40% の調節計に 10℃ の偏差が出ると、出力は 12.5% 動く | ○ | 偏差 5%×Kp 2.5 |
| 比例動作だけなら、比例帯を狭くするほどオフセットは大きくなる | × | 比例帯が広いほど大きい |
| 手動リセットは、比例帯を変えてオフセットをなくす操作 | × | mv₀ を修正する。比例帯は変えない |
例題
測定スパン 0〜500℃、比例帯 50% の比例動作の調節計があります。水温が目標値より 15℃ 低くなったときの出力の変化を求めます。
①偏差を % に直す:15÷500×100=3%。
②比例ゲイン:Kp=100/50=2。
③出力の変化:Kp·e=2×3=6%。mv₀ が 50% なら出力は 56%。
④確かめる:比例帯 50% は、250℃ の幅で出力が 0→100% 動くということ。15℃ はその幅の 6% なので、出力も 6% 動く。℃ のまま 2×15=30% としない。
- 加熱の例では、測定値が目標値より低い(偏差が正)ときに出力を増やす。偏差の符号の約束を逆にすると、出力の向きも逆になる。
- 市販の比例動作の調節計には、ふつう手動リセットの機能が付いている。
- オフセットの大きさは、水の流量や温度など制御対象の条件で変わる。条件が変わるたびに手で直す代わりに、調節計に自動でやらせるのが積分動作。
積分動作 ── 積分動作がオフセットを消す

| 項目 | 式・性質 | 読み方 |
|---|---|---|
| 働き | 偏差を時間で積分して出力に加える | ふつう比例動作に付けて、比例積分(PI)動作で使う |
| 出力が止まる条件 | 偏差が 0 になったときだけ | 手動リセットを自動でやる=自動リセット |
| 比例積分の出力 | mv=mv₀+(100/PB){e+(1/TI)∫e dt} | 偏差が一定なら積分分は時間に比例して増える |
| 積分時間 TI | ステップ状の偏差で、積分分の出力が比例分に追いつくまでの時間 | TI 後に合計は比例分の2倍 |
| 強さ | TI が短いほど強い | 長いと出力がゆっくり変わり、弱い |
| 短くしすぎ | 測定値が波を打つ(積分性のハンチング) | 振動の周期は比較的ゆっくり |
| TI=0 の扱い | 理屈の上ではオンオフ動作になる | 市販の調節計では、0 の目盛を「積分動作カット」の意味に使うことが多い |
なぜ:積分した値は、偏差が少しでも残っている間は増え(減り)続けるので、出力も動き続けます。出力が止まるのは偏差が 0 のときだけなので、止まった位置が、そのときの条件に合った mv₀ になっています。条件が変わってオフセットの大きさが変わっても、自動で消えます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 積分動作でオフセットが消えるのは、偏差が 0 になるまで出力が変わり続けるから | ○ | 自動リセット |
| 積分時間を長くするほど、積分動作は強く効く | × | 短いほど強い。長いと弱い |
| 積分時間を短くすると、オフセットは速く消えるが応答は振動的になり、その周期は比較的長い | ○ | 積分性のハンチング |
| 積分動作は、測定値の変化の速さに比例した出力を加える | × | それは微分動作。積分は偏差を時間で積分 |
| 積分時間 5分の PI 調節計に一定の偏差を加えると、5分後の出力変化は直後の3倍 | × | 2倍。3倍は 10分後 |
例題
比例帯 50%(Kp=2)、積分時間 4分の PI 調節計に、3% の偏差をステップ状に加えて保ちます。出力の変化(mv−mv₀)を時間ごとに求めます。
①直後(比例分だけ):2×3=6%。
②積分分は 6%×t/TI。4分後に 6% で比例分と並び、合計 12%(直後の2倍)。
③6分後:6×(1+6/4)=15%(2.5倍)。
④12分後:6×(1+12/4)=24%(4倍)。
⑤確かめる:t が TI の n 倍なら、合計は (1+n) 倍。積分時間は「積分分が比例分に追いつくまでの時間」で、短いほど速く積み上がる。
- 積分動作は、オフセットを手動リセットでいちいち直す代わりに、調節計自体にやらせるために作られた。
- 積分の出力が変わる速さは偏差の大きさに比例する。偏差が大きいほど速く動く。
- 市販の調節計で積分時間を 0 に合わせると、多くは積分なし(比例動作だけ)になる。理屈の上の極限(オンオフ)と取り違えない。
関連:積分飽和とハンチング
微分動作 ── 変化の速さに応じて先回りして動かす

| 項目 | 式・性質 | 読み方 |
|---|---|---|
| 働き | 偏差(または測定値)の変化の速さに比例した出力を加える | 主に外乱の影響を速くなくすための動作 |
| 単独で使えるか | 使えない。比例動作か比例積分動作に組み合わせる | 偏差が一定なら微分の出力は 0 |
| 比例微分の出力 | mv=mv₀+(100/PB){e+TD·de/dt} | |
| 微分時間 TD | 長いほど強い(積分時間と逆) | 0 では微分動作は働かない |
| 偏差が一定の速さで変わるとき | 比例分に Kp·TD·de/dt が上乗せされる | TD だけ先の偏差に対する比例出力と同じ |
| 偏差がステップ状に変わるとき | 理屈の上では幅 0・高さ無限大のパルス | 実現できず操作部にも有害なので、出力をやや鈍らせた不完全微分を使う |
| 長くしすぎ | 短い周期の振動。速い外乱で出力のふれが大きい | 適度なら振動を抑え、比例帯を狭くできる |
なぜ:比例動作の出力は偏差の大きさで決まるので、急変の始まりで偏差がまだ小さいうちは大きく動けません。変化の速さに比例した出力を足せば、偏差が小さいうちから大きく動けます。回復が速くなり、行きすぎにもブレーキがかかります。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 外乱で測定値が急に動くと、微分動作は比例動作だけのときより大きな出力を出して回復を速める | ○ | 変化の速さに比例した出力 |
| 微分動作は、それだけで自動制御に使える | × | 比例・比例積分と組み合わせる |
| 微分時間が長いほど微分動作分の出力は小さく、動作は弱い | × | 長いほど強い |
| Kp 2・微分時間 4分で偏差が毎分 0.5% ずつ増えるとき、比例微分の出力は比例だけより 4% 大きい | ○ | 2×4×0.5 |
| 偏差がステップ状に変わると、微分動作分の理屈の上の出力は、偏差と同じ高さのステップになる | × | 幅 0・高さ無限大のパルス |
例題
比例帯 40%、微分時間 3分の比例微分調節計で、偏差が毎分 0.4% の一定の速さで増えています。微分動作で上乗せされる出力を求めます。
①比例ゲイン:Kp=100/40=2.5。
②微分動作分:Kp·TD·de/dt=2.5×3×0.4=3.0%。
③確かめる:3分先の偏差は今より 0.4×3=1.2% 大きい。その分の比例出力は 2.5×1.2=3.0% で同じ。微分動作は TD だけ先の偏差を先取りした出力。
- 目標値を変えるたびに微分が出力を大きく振るのを避けるため、偏差の代わりに測定値を微分する調節計(測定値微分型)もある。
- 流量の測定値にのる細かい脈動は微分で増幅されるので、流量制御にはふつう微分動作を使わない。
- フィードフォワード制御も「先回り」するが、測った外乱を使う制御の方式。偏差の変化の速さを使う微分動作とは別もの。
関連:PID動作と各定数の効果
PID動作と各定数の効果 ── 比例帯・積分時間・微分時間で速さと安定を調整する

| 定数(強める向き) | 強めると | 強めすぎると |
|---|---|---|
| 比例帯 PB(小さく=狭く) | 外乱・目標値変更への修正が速くなり、オフセットが減る(積分なしのとき) | 応答が振動的になる |
| 積分時間 TI(短く) | オフセットを速くなくせる | 振動的になる(周期は比較的ゆっくり) |
| 微分時間 TD(長く) | 比例動作の振動を抑え、比例帯を狭くできる | 短い周期の振動。速い外乱で出力のふれが大きい |
| 調整の手順 | 比例動作だけで始め、PB→TI→TD の順に、弱いほうから強いほうへ少しずつ | 最後に比例帯を調整し直す |
なぜ:比例・積分・微分は、それぞれ今のずれ・たまったずれ・ずれの変化の速さに応じて出力を出します。比例と積分は強めるほど速く大きく動くので、遅れのある対象では行きすぎて振動します。速さと安定は、一方を取ると他方が悪くなるので、3つの定数でその兼ね合いを決めます。
| 問われる形 | 正誤 | ポイント |
|---|---|---|
| 不完全微分の PID 調節計にステップ状の偏差を加えると、出力は微分で跳ね上がって下がり、その後は積分で直線的に増える | ○ | 比例分はその下で一定 |
| 比例帯を小さくすると、修正は速くなり、応答は振動しにくくなる | × | 振動的になる |
| PID 定数は、比例動作だけで始めて、微分時間→積分時間→比例帯の順に調整する | × | 比例帯→積分時間→微分時間 |
| 流量制御でふつう微分動作を使わないのは、測定値の小さな脈動を微分が増幅するから | ○ | 流量はふつう PI |
| ギャップ付 PID では、偏差がギャップ幅の中にある間も、出力は通常の PID と同じに変わる | × | 幅の中では出力はまったく変わらない |
- 流量:応答が速く、測定値に脈動がのるので PI 動作。圧力も流量に近い性質で PI 動作。
- レベル:ある範囲に入ればよく、出入りする流量の変動を吸収したいことが多いので P 動作。ときにギャップ付 PID 動作。
- 温度:一般に PID 動作。温度で対象の特性が変わるときは、PID 定数を複数用意して切り替える。
- 成分:むだ時間が大きく、操作出力と測定値が比例しないことが多い。通常の PID ではうまくいかないこともある(pH 制御にギャップ付 PID を使う例)。
- PID 動作の伝達関数は (100/PB){1+1/(TIs)+TDs}。
出典:エネルギー管理士試験講座 熱分野Ⅳ(省エネルギーセンター)1編4章 4.1・4.2・4.4・4.5
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