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燃焼の基礎現象の論点|着火と消炎・熱解離・可燃範囲・燃焼速度・拡散炎・微粒化・輝炎【エネ管・熱Ⅲ】

燃焼の基礎現象の論点

熱Ⅲの燃焼の基礎現象の論点(着火と消炎、熱解離、可燃範囲、予混合と拡散、噴霧、すすと輝炎)を、表と例題で並べました。燃料そのものの性状と試験法は燃料の種類と試験法の論点の記事にあります。

着火と消炎 ── 発熱が放熱に勝てば着火、狭い隙間では消える

着火と消炎:火炎は壁ぎわの死領域と壁への放熱・活性種の消滅で冷やされるので、隙間が消炎距離まで狭まると通れず消える。円管の消炎直径は平板の消炎距離の約1.5倍(0.65)
用語意味目安
着火温度(発火温度)点火源なしで燃え始める最低温度水素 580〜600℃、メタン 650〜750℃
引火点点火源を与えて燃え始める最低温度A・B 重油は 60℃以上(JIS)
死領域(無炎領域)壁ぎわで火炎が消える層大気圧で 1 mm 以下
平板消炎距離 dpc2枚の平板の間を火炎が通れなくなる間隔常温・常圧で 1 mm 前後
円管消炎距離 dtc円管の中を火炎が通れなくなる最小内径dpc/dtc=0.65

反応の発熱は温度が上がると急に増え、周りへの放熱は温度差にほぼ比例して増えます。発熱が放熱を上回り続ければ、温度が上がり続けて着火します。狭い隙間では壁による冷却と活性な化学種の消滅が中央まで及ぶので、火炎は進めずに消えます。

問われる形正誤ポイント
着火するかどうかは、反応の発熱の速さと周囲への放熱の速さの大小で決まる○発熱が放熱を上回り続ければ着火
着火温度は、点火源を近づけたときに燃え始める最低温度×それは引火点。着火温度は点火源なし
平板消炎距離は、円管消炎距離より大きい×dpc=0.65 dtc で小さい
圧力が高く層流燃焼速度が大きいほど、消炎距離は小さい○常温・常圧で 1 mm 前後
  • 体積あたりの壁の面積は、直径 d の円管で 4/d、間隔 d の平板で 2/d。円管のほうが冷やされやすいので、同じ火炎なら円管の消炎距離のほうが大きい。
  • 火花点火機関から出る未燃炭化水素のかなりの部分は、壁ぎわの死領域でできるといわれる。
  • 固体燃料の着火温度は、褐炭 250〜300℃、無煙炭 400〜500℃ と石炭化が進むほど高い。

関連:引火点・燃焼点・発火点の違い

燃焼温度と熱解離 ── 高温では熱解離で温度が上がりきらない

燃焼温度と熱解離:完全燃焼ガスだけで計算した温度と熱解離を入れた温度は、低い温度では同じだが、高温になるとCO₂→CO+½O₂、H₂O→H₂+½O₂の分解が熱を吸い始め、温度が高いほど差が開いて低くなる(模式)
条件を変える燃焼温度式のどこが効くか
空気比を大きくする下がる分母の燃焼ガス量 G が増える
燃焼用空気に酸素を加える上がる窒素が減って G が減る
燃焼用空気を予熱する上がる分子の空気の保有熱 QA が増える
炉の壁などへ熱が逃げる下がる分子から熱損失 ql が引かれる
約1,600℃を超える高温(1,700℃以上で顕著)計算より低いCO₂・H₂O が分解(熱解離)して熱を吸う

燃焼温度は tg=(ηHl+QA−ql)/(G·cpm) で表します(η:燃焼効率、cpm:燃焼ガスの平均定圧比熱)。

理論空気で完全燃焼し、放熱がないとした上限が理論燃焼温度 tth=Hl/(G0·cpm) です。実際の高温の燃焼ガスでは CO₂→CO+½O₂、H₂O→H₂+½O₂ のような分解(熱解離)が起きます。この分解が熱を吸う分だけ、温度は計算より低くなります。

問われる形正誤ポイント
放熱がなくても理論燃焼温度まで上がらないのは、高温で燃焼生成物が分解して熱を吸うから○熱解離
空気比を大きくすると燃焼ガスが増えるので、理論燃焼温度は上がる×分母が増えて下がる
燃焼用空気に酸素を足すと燃焼温度が上がるのは、窒素が減って燃焼ガス量が減るから○分母が小さくなる
理論燃焼温度は、低発熱量を「理論空気量×平均定圧比熱」で割って求める×理論燃焼ガス量 G0 で割る
空気比1以上で燃やしても、高温の燃焼ガスには CO・H₂・OH などがわずかに含まれる○熱解離の平衡

例題

低発熱量 36.0 MJ/m³N の燃料ガスを理論空気で燃やします(値は仮のもの)。理論燃焼ガス量は 10.5 m³N/m³N、平均定圧比熱は 1.60 kJ/(m³N·K) とします。

①式に入れる:tth=Hl/(G0·cpm)=36,000/(10.5×1.60)。

②分母:10.5×1.60=16.8 kJ/K。36,000/16.8=2,143 K だけ、燃焼前の温度から上がる計算になる。

③空気比1.2(理論空気量 9.5 m³N/m³N):G=10.5+0.2×9.5=12.4 m³N/m³N。36,000/(12.4×1.60)=1,815 K に下がる。

④桁を確かめる:理論空気では 2,000℃ を超える計算で、熱解離が効く温度域にある。実際の火炎はこれより低い。

  • 理論燃焼温度は空気比1で最も高い。空気比を1より小さくしても、燃え残りが出て下がる。
  • 熱解離まで入れた温度(平衡燃焼ガス温度)との差は、実用的な熱管理では大きな誤りにならない。完全燃焼ガスで計算した温度で十分に役立つ。
  • 平均定圧比熱は温度で変わるので、厳密には温度を仮定して繰り返し計算する。

関連:燃焼前後の熱収支と理論燃焼ガス温度・断熱火炎温度の計算

可燃範囲 ── 燃える濃度には下限と上限がある

可燃範囲:空気中の燃料の体積%で、水素4.0〜75.0と一酸化炭素12.5〜74.0が広く、メタン5.3〜15.0、エタン3.0〜12.5、プロパン2.2〜9.5、n-ブタン1.9〜8.5と炭素が多いほど下限が低い。薄すぎても濃すぎても燃え広がらない
ガス(空気中)可燃範囲〔%〕量論混合気中のガス〔%〕
水素4.0〜75.029.5
一酸化炭素12.5〜74.029.5
メタン5.3〜15.09.47
エタン3.0〜12.55.64
プロパン2.2〜9.54.02
n-ブタン1.9〜8.53.12

炎が燃え広がるには、燃えている層の発熱で隣の未燃の層を温め続ける必要があります。燃料が薄すぎても濃すぎても燃える量が減るので、発熱が周りへ逃げる熱を補えなくなり、火炎が伝わらなくなると考えられます。この境目が下限と上限です。

問われる形正誤ポイント
燃料が濃い側の可燃限界を、希薄可燃限界(下限)という×薄い側が希薄(下限)、濃い側が過濃(上限)
空気中の可燃範囲は、水素のほうがメタンよりずっと広い○4.0〜75.0% と 5.3〜15.0%
メタン・エタン・プロパン・n-ブタンの順に、可燃範囲の下限は高くなる×低くなる(5.3→1.9%)
濃すぎても薄すぎても燃え広がらないのは、発熱が放熱を補えなくなるため○着火と同じ熱の収支
  • 量論混合気は可燃範囲の中にあり、炭化水素では下限寄りにある。
  • 炭素数の多い炭化水素ほど、1分子が多くの酸素を使うので、量論混合気の濃さが低い。下限もこれにそろって低くなる。
  • 一酸化炭素は、水素か水蒸気がないとほとんど燃えない。少しでも加えるとよく燃えるようになる。

関連:予混合燃焼と燃焼速度

予混合燃焼と燃焼速度 ── 炎は燃焼速度と流速のつり合いで止まる

予混合燃焼と燃焼速度:内炎の斜面で流速vの斜面に垂直な成分v sinαが燃焼速度V_fと等しくなる角度で炎が止まる。燃焼速度40 cm/sなら、流速80 cm/sでα30°、160 cm/sでα約14.5°と細く高くなる
混合気の流れ炎はどうなる理由
流速が燃焼速度より小さい逆火(バーナの中へ戻る)炎が流れに逆らって進める
流速が適度内炎の斜面で止まる斜面に垂直な流速の成分=燃焼速度
流速が過大吹き飛び(消炎)炎が押し流される
層流から乱流へ燃焼速度が大きくなる火炎面が凸凹になり面積が増える
混合気の温度が高い(予熱)逆火しやすい燃焼速度が上がる

予混合炎は、未燃の混合気へ向かって決まった速さ(燃焼速度)で燃え進みます。混合気がそれと同じ速さで炎へ向かってくれば、炎はその場に止まります。内炎は斜めに立つので、斜面に垂直な流速の成分 v sinα が燃焼速度と等しくなる角度で落ち着きます。

問われる形正誤ポイント
ブンゼン炎の内炎の頂角が 2α なら、燃焼速度は流速 v に cosα を掛けた値×Vf=v sinα
層流のまま流速を上げると、内炎の頂角は小さくなり炎は細く尖る○sinα が小さくなる
燃焼速度が最大になるのは、量論混合比よりわずかに薄い混合気×わずかに濃い側(炭化水素は当量比1.1付近)
混合気の流速が燃焼速度より小さくなると、炎は吹き飛ぶ×逆火になる。吹き飛びは流速が過大のとき
乱流の予混合炎の燃焼速度は、層流のときより大きい○火炎面の凹凸で面積が増える

例題

燃焼速度 40 cm/s の混合気を、層流のブンゼンバーナから流速 80 cm/s で出します(値は仮のもの)。

①式から:Vf=v sinα より sinα=40/80=0.50。

②角度:α=30°、内炎の頂角 2α=60°。

③流速を 160 cm/s に倍にすると:sinα=0.25、α≒14.5°、頂角≒29° に細くなる。

④流速を 30 cm/s に落とすと:30<40 で斜面をつくれず、炎はバーナの中へ戻る(逆火)。

  • 燃焼速度は、燃料の種類・混合気の組成・温度・圧力で決まる固有の値。火炎伝播速度は、ガスの流れや火炎面の形で変わる。
  • 燃焼速度の例は水素 292、メタン 37.4、プロパン 43 cm/s。水素はメタンの約8倍で逆火しやすい。
  • 予混合燃焼は単位時間に多くの燃料を燃やせて高負荷燃焼に向く。ただし予熱で余熱を使うのは難しい。

関連:逆火と吹き飛び

拡散燃焼 ── 混ざる速さで燃え方が決まり、逆火しない

拡散燃焼:炎の長さは燃料の供給と酸素の拡散のつり合いで決まる。層流では酸素の拡散が一定なので流速に比例して長くなり、完全乱流では拡散も流速に比例して増えるので長さは流速によらずほぼ一定になる(模式)
比べる点予混合燃焼拡散燃焼
燃料と空気あらかじめ混ぜて出す別々に出し、境目で混ざりながら燃える
燃え方を決めるもの燃焼速度酸素が混ざり込む速さ
逆火流速が燃焼速度より小さいと起こる起こらない
低発熱量のガス―吹き飛びにくい
ガスの高温予熱逆火しやすく難しいできる
炎の長さ―層流は流速に比例、完全乱流はほぼ一定

拡散炎では、燃料の流れに外の空気の酸素が拡散して入り込み、薄い層で燃え切ります。化学反応は速いので、燃え方は酸素が混ざり込む速さで決まります。バーナの中では燃料と空気が出会わないので、炎が中へ戻る逆火は起こりません。

問われる形正誤ポイント
燃料と空気を別々に出してバーナ内で混ぜないので、拡散燃焼には逆火の心配がない○混ざるのはバーナの外
層流域の拡散炎は、流速を上げるほど短くなる×流速にだいたい比例して長くなる
完全乱流の拡散炎は、流速を上げても長さがほぼ変わらない○燃料の供給も乱流拡散も流速に比例
同じ燃料の乱流拡散炎なら、口径を大きくしても炎の長さ÷口径は同じ○断面が相似なら炎も相似
拡散燃焼は吹き飛びやすいので、発熱量の低いガスには向かない×低位ガスでも吹き飛びにくい
  • 層流では酸素の拡散は分子拡散で一定なので、燃料を多く送るほど燃え切るまでの距離が延びる。乱流では拡散も流速に比例して速くなるので、長さが変わらなくなる。
  • 静止した大気中の乱流拡散炎の「高さ÷ノズル径」は、燃料ごとにほぼ決まる。一酸化炭素 80、水素 140、都市ガス 130、プロパン 300 程度。
  • 炎が安定し、ガス量・空気量の調節範囲が広い。ガラス溶解炉・大型ボイラ・ガスタービン燃焼器などに使う。
  • 欠点は、開放した大気中ではごく小さい炎のほかは不完全燃焼を起こしやすいこと。

関連:ガスバーナの混合方式

液体燃料の燃焼と微粒化 ── 粒が細かいほど早く燃え切る

液体燃料の微粒化:同じ量の油を直径1/2の8粒、1/4の64粒に分けると、表面積の合計は1倍、2倍、4倍と直径に反比例して増え、表面から蒸発した蒸気が燃えるので早く燃え切る
同じ量の油の分け方粒の数表面積の合計
1粒のまま11
直径を1/2に82倍
直径を1/4に644倍
直径を1/10に1,00010倍

液体は液のままでは燃えず、表面から蒸発した蒸気が空気と混ざって燃えます。同じ量の油なら表面積の合計は粒の直径に反比例します。細かくするほど蒸発が速くなり、空気とも混ざりやすくなって短い時間で燃え切ります。

問われる形正誤ポイント
油滴を細かくすると、同じ質量でも表面積の合計が増え、早く燃え切る○表面積の合計 ∝ 1/直径
表面張力の大きい液体ほど、微粒化しやすい×小さいほどしやすい
霧化媒体の空気との相対速度が大きいほど、油滴は細かくなる○ρw²r/σ>10.7 で分裂
重質油の噴霧火炎では、酸素不足の中心部で油滴が乾留され、できたコークスが燃え残ると残炭型のすすになる○800℃以上でないと燃え進まない
残炭型のすすは、気相反応型と同じく 0.1 μm 程度の細かい粒×油滴が元で、数百 μm のものもある

例題

油 1 cm³ を、直径 100 μm の粒にしたときと 50 μm の粒にしたときの表面積の合計を比べます。

①式をつくる:球1個は体積 (π/6)d³、表面積 πd²。粒の数は V/((π/6)d³) なので、合計の表面積は 6V/d。

②100 μm=0.01 cm:6×1/0.01=600 cm²。

③50 μm=0.005 cm:6×1/0.005=1,200 cm²。直径を半分にすると2倍。

④桁を確かめる:1 cm³ を1つの球にすると直径約1.24 cm、表面積約4.8 cm²。100 μm の粒にするだけで約120倍になる。

  • 液体燃料の燃焼方式は、液面燃焼・灯心燃焼・蒸発燃焼・噴霧燃焼の4つ。工業では、数 μm〜数百 μm の油滴にする噴霧燃焼が最も多い。
  • 細かくするのに効くのは、粘度が低いこと(重質油は予熱する)、表面張力が小さいこと、空気との相対速度が大きいこと。
  • 望ましい噴霧は、粒が小さく、粒の大きさがそろい、軸に直角な面で噴霧の流量が一様なもの。

関連:油バーナの霧化方式

すすの生成と火炎の放射(輝炎) ── 光る炭素粒は放射を強め、残ればすす

すすの生成と火炎の放射:噴霧火炎の周縁・先端は高温で酸素が多く、炭素粒が光る輝炎として燃え切る。中心は酸素不足で油滴が乾留されて微粒コークスができ、先端で空気と混ざって燃えるが800℃以上が要り、大きな油滴からのコークスは燃え切れず残炭型のすすとして出る
種類できかた・性質多い燃料
輝炎熱分解でできた固体の炭素が灼熱して光る。放射が強い重油・石炭
不輝炎十分な空気で燃やした炎。放射は CO₂・水蒸気から都市ガス
気相反応型のすす(気相析出形)分解したガスが酸素不足で脱水素・重縮合を繰り返して粒になる。約0.1 μm で、ふつうは燃え切る軽質油・気体
残炭型のすす(残炭形)噴霧の中心で乾留されてできたコークスの燃え残り。数百 μm のものも重質油

酸素が足りないまま高温にさらされた燃料は、分解して炭素の粒を生みます。炎の中の炭素粒は固体なので強く光り、熱を放射で伝えます(輝炎)。燃え切れば熱だけを残しますが、温度や時間が足りずに燃え残ると、すすとして出ていきます。

問われる形正誤ポイント
重油や石炭の炎が明るく光るのは、分解してできた固体の炭素の微粒子が高温で光るから○輝炎
輝炎の熱放射が不輝炎より強いのは、比較的大きなすすが固体とほぼ同じように放射するから○不輝炎は気体の放射だけ
都市ガスを十分な空気で燃やした青い炎は、炭素粒子の放射で熱を伝える×CO₂・水蒸気の放射
すすの出やすさは、パラフィン系のほうがナフタリン系より大きい×ナフタリン系が最大、パラフィン系が最小
過剰空気で燃やした炎は還元炎で、被熱物を酸化する×それは酸化炎。還元炎は CO などの未燃分を含み、被熱物を還元する
  • 重質油を燃やしたときのばいじんの未燃分は残炭形が多く、軽質油や気体では気相析出形が多い。石炭では灰分が主。
  • 一般のバーナ噴霧の最大油粒は 300 μm 程度で、100 μm 以下なら残炭型のすすはほとんど出ない。
  • 燃料では天然ガス・LPG が最もすすを出しにくく、タールが最も出しやすい(同じ条件で燃やしたとき)。C/H 比の大きい燃料ほど出やすい。
  • 固体燃料は、熱分解で出た揮発分が炎をつくって燃え(分解燃焼)、残ったチャーやコークスは表面で燃える(表面燃焼)。

関連:ガスの放射・ばいじんと集じん

出典:エネルギー管理士試験講座(省エネルギーセンター)熱分野Ⅲ「燃料と燃焼」1編 3章・6章、2編 5章。同 熱分野Ⅱ「熱と流体の流れの基礎」3編 3章

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