法令の基準日:2026年4月1日
最終確認:2026年10月16日
電験三種の法規で問われる、電気事業法の保安の決まりを6つの論点に分けた辞書です。保安規程(ほあんきてい)、電気主任技術者(でんきしゅにんぎじゅつしゃ)の選び方、工事計画、事故報告、国の立入検査の順に確かめます。
法規の論点:電気事業法①|電気事業法②|関係法規|電技の総則・絶縁|接地工事
保護と発変電所|電線路|分散型電源|電気使用場所|施設管理の計算|受電設備と自家発
保安規程 ── 設置者が定め、使用開始前に届け出る
| 自家用の記載事項 | 一言で | すり替えの形 |
|---|---|---|
| 業務を管理する者の職務及び組織 | 誰が管理するか | 権限及び義務 |
| 従事する者に対する保安教育 | 誰に教えるか | 勤務体制 |
| 保安のための巡視、点検及び検査 | 何を点検するか | 整備、補修 |
| 運転又は操作 | どう動かすか | — |
| 運転を相当期間停止する場合の保全の方法 | 止めておくとき | 大規模な事業者だけの事項 |
| 災害その他非常の場合に採るべき措置 | 非常時にどうするか | 指揮命令 |
| 保安についての記録 | 何を残すか | 届出 |
保安規程は、設置者が自分の設備の保安のやり方を定め、使い始める前に国へ届けるものです。設置者も従業者も、これを守ります。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 保安規程は、使用を始めた後に遅滞なく届け出ればよい | × | 届けるのは使用の開始前。変更したときが遅滞なく |
| 非常時に採るべき「指揮命令」を定める | × | 定めるのは、非常時に採るべき「措置」 |
| 運転を長く止めるときの保全の方法は、大規模な発電事業者だけが書く | × | 自家用の記載事項にもある |
| 高圧で受電する工場の構内にある出力40 kWの太陽電池も、工場の保安規程に含める | ○ | 構内でつながった設備は、まとめて自家用 |
- 保安規程が要るのは、事業用電気工作物(じぎょうようでんきこうさくぶつ)のうち小規模事業用電気工作物(しょうきぼじぎょうようでんきこうさくぶつ)を除くものです。保安を一体で確保する組織ごとに定めます。
- 自主検査を伴う工事では、工事の開始前に届け出ます。国は、保安のために必要なら変更を命じられます。
- 接続最大電力の合計が200万(沖縄10万) kWを超える大規模な発電事業者は、記載事項が増えます。保安規程の定期的な点検と改善や、発電の保安を計画的に行って改善する仕組みなどです。
- 工場・現場では:点検の種類と頻度、停電作業の手順、事故のときの連絡の流れを保安規程に書きます。年次点検や保安教育は、それに沿って行います。
主任技術者の選び方 ── 小さな設備ほど外部委託や許可選任で代えられる

| 選び方 | 国への手続き | 使える主な場合 |
|---|---|---|
| 免状のある者を選任する | 届出(遅滞なく) | すべての事業場の原則 |
| 免状の無い者を選任する(許可選任) | 許可 | 自家用だけ。国の内規では最大電力500 kW未満の需要設備など |
| 外部に委託して選任しない(外部委託) | 承認 | 受電電圧が7000 V以下の需要設備など |
| 1人に2つ以上を受け持たせる(兼任) | 承認 | 原則は禁止。承認を受けた場合だけ(国の内規では、兼任させる事業場は7,000 V以下で連系するもの) |
選任は届出、許可選任は許可、外部委託と兼任は承認です。小さな設備ほど、免状のある者を自社で置く以外の道が選べます。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 6600 Vで受電する需要設備は、承認を受けて外部委託できる | ○ | 需要設備は受電電圧だけで決まる |
| 出力3000 kWの水力発電所(送電は6600 V)は、外部委託できる | × | 水力は出力も2000 kW未満に限る |
| 22000 Vで連系する出力2000 kWの内燃力発電所は、外部委託できる | × | 電圧と出力の両方が外れている |
| 許可選任の者なら、承認なしに別の事業場を兼任できる | × | 兼任には承認が要る |
- 外部委託(がいぶいたく)で選任を省くには、電気管理技術者(でんきかんりぎじゅつしゃ)か電気保安法人(でんきほあんほうじん)と委託の契約を結び、承認を受けます。
- 外部委託できる発電所は、電圧7,000 V以下で連系するものに限ります。
- 出力の上限は、太陽電池発電所と蓄電所が5000 kW未満です。水力・火力・風力は2000 kW未満です。その他は1000 kW未満です。
- 国の内規では、許可選任(きょかせんにん)で選べるのは第一種電気工事士などです。兼任(けんにん)させる者は、電気主任技術者の免状を受けている必要があります。
免状の範囲と義務 ── 第三種は5万V未満、従事者はその指示に従う
| 免状 | 監督できる電圧 | 範囲から除かれるもの |
|---|---|---|
| 第一種 | すべて | なし |
| 第二種 | 17万 V未満 | なし |
| 第三種 | 5万 V未満 | 出力5000 kW以上の発電所又は蓄電所 |
第三種の範囲は電圧で決まり、出力の上限がかかるのは発電所と蓄電所だけです。主任技術者は保安の監督を誠実に行い、従事者はその指示に従います。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 第三種の範囲は、電圧3万 V未満の事業用電気工作物 | × | 正しくは5万 V未満 |
| 受電電圧33 kV・最大電力12000 kWの需要設備に、第三種を選任できる | ○ | 需要設備は最大電力にかかわらず電圧で決まる |
| 主任技術者は、保安の作業や検査を誠実に行う | × | 誠実に行うのは、保安の「監督」 |
| 主任技術者の指示に従うのは、設置者 | × | 従うのは、工事・維持・運用に従事する者 |
- 66000 Vの送電線路と連系する発電所は、第三種の範囲を超えます。第二種以上の電気主任技術者を選任します。
- 選任や解任をしたら、遅滞なく届け出ます。許可を受けて選任した場合は、この届出は要りません。
- 第三種の範囲から除くものには、発電所と並んで蓄電所が入っています。「発電所」だけを挙げる文に気をつけます。
関連:主任技術者の選び方
工事計画と使用前検査 ── 重い工事は認可、次は届出、完成後は自主検査

| 手続き | 主な対象 | 誰が何をするか |
|---|---|---|
| 工事計画の認可 | 公共の安全の確保上特に重要な工事(原子力など) | 着工前に国が審査して認める |
| 工事計画の届出 | 受電電圧1万 V以上の需要設備、出力2000 kW以上の太陽電池発電所など | 受理から30 日経過後でなければ着工できない |
| 使用前自主検査 | 届出をして工事したもの | 設置者が検査し、結果を記録して残す |
| 使用前安全管理審査 | 使用前自主検査の体制 | 需要設備や太陽電池は、登録安全管理審査機関が審査する |
| 使用前自己確認 | 出力10以上2000未満 kWの太陽電池発電所など | 設置者が適合を確かめ、使用前に結果を届け出る |
需要設備に工事計画の届出が要るかは、受電電圧が1万 V以上かで決まります。最大電力の大きさでは決まりません。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 受電電圧6600 V・最大電力2000 kWの需要設備の設置は、届出の対象 | × | 受電電圧が1万 V以上ではない |
| 受電電圧22000 Vの需要設備で、受電用遮断器(しゃだんき)を取り替える | ○ | 電圧1万 V以上の受電用遮断器は、取替えも届出 |
| 22000 Vの需要設備で、5000 kV·Aの変圧器を同じ容量に取り替える | × | 機器の取替えは容量1万kV·A以上が対象 |
| 使用前自主検査の体制の審査は、「自己確認」を旨とする | × | 「安全管理」を旨として、組織・検査の方法・工程管理を見る |
- 出力2000 kW以上の太陽電池発電所は、認可ではなく届出です。それより小さい出力10以上2000未満 kWの範囲が、使用前自己確認(しようまえじこかくにん)の対象です。
- 使用前自主検査(しようまえじしゅけんさ)では、届け出た計画どおりに工事したことと、技術基準に適合することを確かめます。
- 受電用遮断器の遮断電流を20%以上変える改造も、届出の対象です。対象になる受電用遮断器は、電圧1万 V以上のものだけです。
- 風力発電所は、出力によっては環境影響評価の手続きも要ります。
関連:高圧受電設備の構成
事故報告 ── 24時間以内に速報、30日以内に報告書

| 報告する事故 | 報告になる線 | 線に届かない例 |
|---|---|---|
| 感電や誤操作による死傷 | 死亡か、病院・診療所に入院 | 通院で治療しただけ |
| 電気火災事故 | 建物などの工作物が半焼以上焼けた | — |
| 他の物件の損傷 | 他人の物を壊した、又はその機能を損なった | — |
| 波及事故 | 電圧3000 V以上の自家用が、一般送配電事業者などに供給支障を出した | — |
| 主要電気工作物の破損事故 | 需要設備では受電電圧が1万 V以上 | 受電電圧6.6 kVの遮断器の損傷 |
速報は、事故を知った時から24 時間以内に電話等で行います。報告書は、知った日から数えて30 日以内に出します。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 電圧100 Vの配線の漏電で、建物が半焼した | ○ | 電気火災は、電圧でなく焼け方で決まる |
| 落雷で波及事故が起きた。自然現象なので報告は要らない | × | 速報は要る。省けるのは報告書だけ |
| 誤操作で高圧の電動機を壊した(ほかへの被害は無い) | × | 死傷・他の物件・供給支障のどれにも当たらない |
| 報告の対象は、公共の財産に損傷を与えた事故 | × | 条文は「他の物件」。私有の物も入る |
- 自家用電気工作物(じかようでんきこうさくぶつ)の事故は、設置者が報告します。報告先は、多くの場合は産業保安監督部長です。
- 速報(そくほう)は電話等で行い、詳報(しょうほう)は報告書で出します。
- 電気火災事故の原因は、漏電、短絡(たんらく)、せん絡などの電気的な要因です。せん絡は、絶縁物の表面や空気中を電気が飛ぶ放電です。
- 破損事故は、機能が落ちて直ちに運転が止まるなどしたものです。供給支障事故(きょうきゅうししょうじこ)には、操作を誤った場合と操作しなかった場合が入ります。
- 事故でなくても報告するものがあります。発電所などの出力や線路の電圧を変えたとき、事業場や線路を廃止したときは、遅滞なく報告します。
関連:保護協調とSOG
立入検査と報告の徴収 ── 法の施行に必要な限度で行う
| 決まり | 国がすること | 条文の決まり文句 |
|---|---|---|
| 報告の徴収 | 自家用の設置者などに、報告や資料を出させる | この法律の施行に必要な限度において |
| 立入検査 | 職員が事業場に入り、電気工作物や帳簿を検査する | この法律の施行に必要な限度において |
| 職員の義務 | 身分を示す証明書を携帯する | 関係人の請求があれば提示する |
| 権限の読み方 | 立入検査の権限の性質を決める | 犯罪捜査のためと解釈してはならない |
国の報告の徴収(ほうこくのちょうしゅう)と立入検査(たちいりけんさ)は、この法律の施行に必要な限度で認められています。緊急時かどうかは条件ではありません。
| 問われる形 | ○× | ポイント |
|---|---|---|
| 立入検査は、緊急時に必要な限度で行える | × | 条件は「この法律の施行に必要な限度」 |
| 職員は、請求があれば身分を示す証明書を見せる | ○ | 示すのは「理由」ではなく「身分」 |
| 立入検査の権限は、行政処分のためと解釈してはならない | × | 解釈してはならないのは「犯罪捜査」のため |
- 立入りの先は、電気事業者(でんきじぎょうしゃ)の事業場や、自家用の設置者・保守点検をした事業者の事業場などです。
- 一般用電気工作物の検査で住まいに入れるのは、小規模発電設備がある場合だけです。そのときも、あらかじめ居住者の承諾を得ます。
- 立入検査の結果をもとにした命令などの行政処分は、法の中で予定されています。だから「行政処分」は消す言葉になります。
関連:技術基準の適合維持
まとめ
保安規程は設置者が定めて使用開始前に届け、主任技術者は届出・許可・承認の道で置きます。
工事計画は重要なものが認可、次が届出で、完成後は設置者が使用前自主検査をします。
事故は知った時から24 時間以内に速報し、国の立入検査は法の施行に必要な限度で行います。
次に読む
- 前:電気事業法①の論点
- 次:関係法規の論点
- 関連:受電設備と自家発の論点
参考文献
- 電気事業法 第42条・第43条・第47条・第48条・第51条・第51条の2・第106条・第107条
- 電気事業法施行規則 第50条・第52条・第56条・第65条・第74条・別表第二・別表第六
- 電気関係報告規則 第1条・第3条・第5条
- 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)(経済産業省) 2.(許可選任の基準)・6.(兼任の承認の基準)の節
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