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フランジから漏れたとき、ガスケットだけを交換したり、ボルトを強く締めたりしても、原因が残っていれば再発します。漏れない継手は、ガスケット単体ではなく、左右のフランジ、座面、ボルト・ナット、締付け作業を一つの系としてつくります。
とくに危険なのが、漏れている加圧フランジへ近づき、その場で増し締めする対応です。片締め、ボルトの過伸び、ガスケット損傷によって漏れを増やし、作業者が噴出流体へばく露するおそれがあります。漏えいが発生した継手は、隔離・減圧・排液またはパージ・冷却を行ってから点検するのが基本です。
この記事では、ガスケットの種類を暗記するのではなく、選定、組立て、締付け、運転後の管理を一つの手順として説明します。
1. ガスケットだけでは密封できない
ガスケットは、フランジ座面の微小な凹凸やうねりを埋める静的シールです。しかし、置くだけでは密封できません。ボルト軸力でガスケットを圧縮し、運転中も漏れを防げる面圧を残す必要があります。

締付け前後の関係は、次のように整理できます。
- ボルトを締め、ガスケットを座面へ密着させる
- 内圧がかかると、フランジを引き離す力が生じる
- ボルトがわずかに伸び、ガスケット面圧は初期値から低下する
- それでも必要面圧以上が残れば密封を維持できる
必要なのは「締付けトルクを入れた事実」ではなく、運転中に必要なガスケット面圧が均一に残ることです。低すぎれば漏れ、高すぎればガスケットの過圧縮、ボルトの過負荷、フランジの回転・塑性変形を招きます。
継手の密封性は、少なくとも次の要素で決まります。
- ガスケットの材料、構造、寸法、厚さ
- フランジ座面の形式、表面仕上げ、傷、腐食、うねり
- ボルト・ナットの材料、寸法、状態、潤滑条件
- 初期軸力の大きさとボルト間のばらつき
- 内圧、温度変化、配管荷重、振動
- ガスケットのなじみ、クリープ、応力緩和
2. ガスケットは使用条件から絞る
「低圧だからシート、高圧だからうず巻形」という一条件だけの選び方は不十分です。流体、設計圧力・温度、フランジ規格と座面、必要な密封性、締付け可能なボルト荷重を同時に確認します。

流体
接液材料の耐薬品性だけでなく、ガス透過、酸素サービス、火災時要求、毒性・可燃性流体の漏えい許容度、異種金属接触やすきま腐食も確認します。
圧力・温度
通常運転だけでなく、起動停止、蒸気洗浄、再生、異常時、耐圧・気密試験を含めます。温度が上がるほど材料が軟化・劣化する場合があり、熱サイクルではガスケットとボルトの緩和が問題になります。
フランジ規格・呼び径・座面
JISとASMEを混同せず、相手フランジと規格、呼び径、呼び圧力またはClass、FF・RF・RJ、ガスケット内外径を一致させます。フランジ仕様の確認は「フランジの規格と呼び圧力」で詳しく説明しています。
ガスケットの構造
| 大分類 | 代表例 | 選定で確認すること |
|---|---|---|
| 非金属平形 | 圧縮繊維、ゴム、PTFE、膨張黒鉛など | 流体適合性、温度、クリープ、厚さ、必要面圧、吹出し防止 |
| セミメタリック | うず巻形、カンプロファイル、メタルジャケットなど | フィラー・金属材、内外輪、座面、必要軸力、熱サイクル |
| メタリック | リングジョイント、平形金属など | 対応する溝・リング番号、材質・硬さ、座面仕上げ、必要軸力 |
この表は選定の入口です。最終的な使用可否は、採用製品のメーカー資料、適用規格、設計コード、会社標準で確認します。同じ「PTFE」や「うず巻形」でも構造、補強材、フィラー、厚さによって特性は異なります。
JIS B 2404:2018は、JIS管フランジへ用いるガスケットの種類と寸法を規定しますが、材料と使用基準までは規定しません。ASME B16.20-2023も金属リング、うず巻形、メタルジャケットなどの材料・寸法・公差・表示を扱う規格です。寸法規格に合うことと、使用条件へ適合することは別の確認です。
3. 組立て前に座面・芯・部品を確認する
適切なガスケットを選んでも、座面やフランジ配置が悪ければ密封できません。組立て前に次を確認します。
- 対象系を隔離し、減圧、排液またはパージ、冷却、ロックアウト・タグアウトを行う
- 旧ガスケットと付着物を除去し、座面を傷つけない方法で清掃する
- 座面の放射状傷、打痕、腐食、うねり、仕上げ状態を確認する
- 二つのフランジが同軸で、互いに平行か確認する
- ボルト・スタッド、ナット、座金の材質、長さ、ねじ、腐食、かじりを確認する
- ガスケットの規格、寸法、材質、表示、損傷を確認し、座面中央へ置く
配管の芯ずれをボルトで引き寄せて矯正してはいけません。先に配管・支持・フランジの芯を直し、座面が自然に平行となる状態で組み立てます。
ガスケットは交換を基本とし、再使用可否を現場判断で決めません。再使用が明示的に許可される特殊構造では、規格・メーカー・社内手順に従います。また、複数枚を重ねて隙間を埋める方法は、面圧分布と吹出しリスクが変わるため行いません。
旧稿ではガスケット面へシール剤を一般的に塗るとしていましたが、これは一律の手順にできません。接着剤、グリース、焼付き防止剤などをガスケットへ塗るのは、ガスケットメーカーと設計者が明示的に認めた場合だけです。製品によっては早期破損や滑り、面圧低下の原因になります。
4. ボルト締付けは「対角・段階・均一」が基本
締付けの目的は、全ボルトへ同じトルク値を示すことではなく、ガスケットへ必要な面圧をできるだけ均一に与えることです。

一般的な管理の骨格は次のとおりです。
- ナットが座るまで手で均等に締める
- 指定された対角順序で、目標値の一部ずつ段階的に締める
- 段階を上げるたびに、同じ指定順序を繰り返す
- 最終目標値へ到達後、円周方向に確認締めする
- 締付け条件、工具、潤滑剤、作業者、完了値を記録する
具体的な順序、各段階の割合、周回回数は、最新版規格と承認済み施工要領を使います。図3は原理を示すもので、個別フランジの締付け番号表ではありません。
JIS B 2251:2024は、一般産業用圧力設備のガスケット付き鋼製フランジ継手について、トルク法による締付け方法を規定しています。適用範囲には条件があり、あらゆるフランジ・ガスケットへ同じ手順を流用できるわけではありません。ASME系ではPCC-1-2022が、圧力境界ボルテッドフランジ継手の組立て手順、教育、トラブルシュートを扱います。
トルク値とボルト軸力は同じではない
トルク法では、入力の多くがねじ面・ナット座面の摩擦に消費されます。潤滑剤、表面処理、錆、ねじ損傷、座金、工具、作業方法が変わると、同じトルクでも軸力は変わります。
トルク表は、ボルト材質、ガスケット、フランジ、潤滑条件、摩擦係数を含む一組の施工条件です。別の潤滑剤へ替えたり、乾燥ねじへ同じ値を使ったりしません。
| 管理方法 | 何を管理するか | 主な注意点 |
|---|---|---|
| トルク法 | ナットへ与える回転トルク | 摩擦条件のばらつきが軸力へ影響する |
| 回転角法 | 着座後のナット回転角 | 着座点、部材剛性、手順の定義が必要 |
| テンショナ法 | 油圧などでボルトへ直接引張力を与える | 荷重移行、工具スペース、残留軸力を考慮する |
| 伸び測定法 | ボルト伸びから軸力を評価する | 初期長さ、測定精度、材質特性を管理する |
重要継手では、必要な精度、口径、作業空間、リスクに応じて方法を選びます。
5. 漏れの原因を「ガスケット不良」だけにしない
フランジ漏れは、次の三群に分けると切り分けやすくなります。
| 原因群 | 代表例 | 点検の方向 |
|---|---|---|
| フランジ・座面 | 傷、腐食、付着物、うねり、非平行、芯ずれ、過大変形 | 清掃、計測、面修正、配管・支持の修正 |
| ボルト締付け | 軸力不足、片締め、摩擦差、ボルト緩和、工具・手順不良 | 締付け記録、ねじ・潤滑、軸力分布、施工要領の確認 |
| ガスケット | 材料・寸法不適合、中心ずれ、過圧縮、クリープ、熱劣化、損傷 | 製品表示、使用条件、圧痕、破損形態、メーカー評価 |
運転側では、圧力・温度の急変、熱サイクル、振動、配管荷重、屋外の急冷なども面圧を変化させます。交換したガスケットの破損状態と座面の当たりを記録し、次回選定と締付け条件へ戻すことが再発防止になります。
6. ホットボルティングと漏えい時の増し締めを分ける
ホットボルティングは、温度上昇による継手各部の熱膨張差を考慮し、昇温状態で計画的に行う締付けです。コールドボルティングは、降温過程または降温後の熱収縮差を考慮した締付けです。
ただし、どの継手でも実施すべき一般作業ではありません。流体危険性、温度・圧力、ボルト材、ガスケット、工具、作業者のばく露、過去実績を評価し、対象、時点、荷重、手順、中止条件を個別に定めます。

すでに漏れている加圧フランジへ、その場で工具を掛ける行為は、計画されたホットボルティングとは別です。漏えい時は次の順に対応します。
- 人を近づけず、流体・温度・圧力・風向・着火源を確認する
- 運転手順と緊急時手順に従い、隔離・停止・減圧を行う
- 排液またはパージし、安全な温度まで冷却する
- ゼロエネルギー状態を確認してから分解する
- ガスケット、座面、ボルト、芯ずれ、配管荷重を点検する
- 原因を修正し、承認手順で再組立て・試験を行う
運転を直ちに止められない場合でも、現場判断で増し締めへ進みません。立入規制、漏えい監視、運転条件の安全側変更、計画停止などを設備管理者と安全担当が決定します。
7. 設計・発注・施工で残す情報
ガスケット仕様と締付け条件を現場任せにしないため、配管クラス、機器仕様書、施工要領へ次を残します。
- フランジ規格、呼び径、呼び圧力またはClass、座面
- ガスケット規格、形式、材料、寸法、厚さ、製品
- 設計圧力・温度、流体、異常時・洗浄条件
- ボルト・ナット・座金の規格、材料、表面処理
- 潤滑剤と適用箇所、目標軸力または目標トルク
- 締付け方法、順序、段階、工具、校正条件
- ホット/コールドボルティングの要否と承認手順
- 組立て、締付け、試験、開放時の記録様式
ガスケットとトルク値はセットで変更管理します。ガスケット銘柄、厚さ、ボルト材、潤滑剤のどれかを変えたときは、従来の締付け条件をそのまま使わず再評価します。
8. まとめ
- ガスケットは単体でなく、フランジ・座面・ボルトを含む継手として選ぶ
- 初期締付け後も、運転中に必要な残留面圧が均一に保たれることが重要
- 寸法規格への適合と、流体・圧力・温度への適合は別に確認する
- 組立て前に座面、芯、平行度、ボルト状態を点検する
- 対角・段階・周回確認の具体手順は最新版規格と承認済み施工要領による
- トルク値は潤滑・摩擦条件と一組で管理する
- 漏れている加圧フランジを現場判断で増し締めしない
- 変更と分解点検の記録を、次回の選定・施工条件へ戻す
漏れない継手をつくる本質は、ガスケットを選ぶことではなく、必要な面圧を安全に与え、運転中も維持できる接合系を管理することです。
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参考文献
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術 第21次改訂版』
- 化学工学会編『化学装置便覧 改訂二版』A編 第7章「ガスケット・パッキン材料」分冊3、B編 第16章「高圧装置」分冊5 Amazonで見る
- 『熱交換器ハンドブック』第IV編「設備保全」 Amazonで見る
- 日本規格協会「JIS B 2251:2024 フランジ継手締付け方法」
- 日本規格協会「JIS B 2404:2018 管フランジ用ガスケットの寸法」
- ASME「PCC-1-2022 Pressure Boundary Bolted Flange Joint Assembly」
- ASME「B16.20-2023 Metallic Gaskets for Pipe Flanges」
- Garlock「Gasketing Technical Manual」
※ 実作業の締付け値、順序、潤滑条件、再締付けの可否は、適用法規、最新版規格、設計コード、ガスケット・ボルトメーカー資料、事業所の承認済み施工要領に従ってください。
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