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ガスケット選定とボルト締付け|漏れないフランジ継手をつくる

ガスケット選定とボルト締付け|漏れないフランジ継手をつくる

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フランジから漏れたとき、ガスケットだけを交換したり、ボルトを強く締めたりしても、原因が残っていれば再発します。漏れない継手は、ガスケット単体ではなく、左右のフランジ、座面、ボルト・ナット、締付け作業を一つの系としてつくります。

とくに危険なのが、漏れている加圧フランジへ近づき、その場で増し締めする対応です。片締め、ボルトの過伸び、ガスケット損傷によって漏れを増やし、作業者が噴出流体へばく露するおそれがあります。漏えいが発生した継手は、隔離・減圧・排液またはパージ・冷却を行ってから点検するのが基本です。

この記事では、ガスケットの種類を暗記するのではなく、選定、組立て、締付け、運転後の管理を一つの手順として説明します。

1. ガスケットだけでは密封できない

ガスケットは、フランジ座面の微小な凹凸やうねりを埋める静的シールです。しかし、置くだけでは密封できません。ボルト軸力でガスケットを圧縮し、運転中も漏れを防げる面圧を残す必要があります。

ボルトの初期締付けでガスケットを圧縮し、内圧による開離力を受けても残留面圧を維持して密封するフランジ継手の断面図
ボルトの初期締付けでガスケットを圧縮し、内圧による開離力を受けても残留面圧を維持して密封するフランジ継手の断面図(一次資料を参考に当サイト作成)

締付け前後の関係は、次のように整理できます。

  1. ボルトを締め、ガスケットを座面へ密着させる
  2. 内圧がかかると、フランジを引き離す力が生じる
  3. ボルトがわずかに伸び、ガスケット面圧は初期値から低下する
  4. それでも必要面圧以上が残れば密封を維持できる

必要なのは「締付けトルクを入れた事実」ではなく、運転中に必要なガスケット面圧が均一に残ることです。低すぎれば漏れ、高すぎればガスケットの過圧縮、ボルトの過負荷、フランジの回転・塑性変形を招きます。

継手の密封性は、少なくとも次の要素で決まります。

  • ガスケットの材料、構造、寸法、厚さ
  • フランジ座面の形式、表面仕上げ、傷、腐食、うねり
  • ボルト・ナットの材料、寸法、状態、潤滑条件
  • 初期軸力の大きさとボルト間のばらつき
  • 内圧、温度変化、配管荷重、振動
  • ガスケットのなじみ、クリープ、応力緩和

2. ガスケットは使用条件から絞る

「低圧だからシート、高圧だからうず巻形」という一条件だけの選び方は不十分です。流体、設計圧力・温度、フランジ規格と座面、必要な密封性、締付け可能なボルト荷重を同時に確認します。

流体、圧力温度、フランジ、ガスケット構造、座面状態、ボルト荷重の6条件を照合して製品仕様を確定する流れ
流体、圧力温度、フランジ、ガスケット構造、座面状態、ボルト荷重の6条件を照合して製品仕様を確定する流れ(一次資料を参考に当サイト作成)

流体

接液材料の耐薬品性だけでなく、ガス透過、酸素サービス、火災時要求、毒性・可燃性流体の漏えい許容度、異種金属接触やすきま腐食も確認します。

圧力・温度

通常運転だけでなく、起動停止、蒸気洗浄、再生、異常時、耐圧・気密試験を含めます。温度が上がるほど材料が軟化・劣化する場合があり、熱サイクルではガスケットとボルトの緩和が問題になります。

フランジ規格・呼び径・座面

JISとASMEを混同せず、相手フランジと規格、呼び径、呼び圧力またはClass、FF・RF・RJ、ガスケット内外径を一致させます。フランジ仕様の確認は「フランジの規格と呼び圧力」で詳しく説明しています。

ガスケットの構造

大分類代表例選定で確認すること
非金属平形圧縮繊維、ゴム、PTFE、膨張黒鉛など流体適合性、温度、クリープ、厚さ、必要面圧、吹出し防止
セミメタリックうず巻形、カンプロファイル、メタルジャケットなどフィラー・金属材、内外輪、座面、必要軸力、熱サイクル
メタリックリングジョイント、平形金属など対応する溝・リング番号、材質・硬さ、座面仕上げ、必要軸力

この表は選定の入口です。最終的な使用可否は、採用製品のメーカー資料、適用規格、設計コード、会社標準で確認します。同じ「PTFE」や「うず巻形」でも構造、補強材、フィラー、厚さによって特性は異なります。

JIS B 2404:2018は、JIS管フランジへ用いるガスケットの種類と寸法を規定しますが、材料と使用基準までは規定しません。ASME B16.20-2023も金属リング、うず巻形、メタルジャケットなどの材料・寸法・公差・表示を扱う規格です。寸法規格に合うことと、使用条件へ適合することは別の確認です。

3. 組立て前に座面・芯・部品を確認する

適切なガスケットを選んでも、座面やフランジ配置が悪ければ密封できません。組立て前に次を確認します。

  1. 対象系を隔離し、減圧、排液またはパージ、冷却、ロックアウト・タグアウトを行う
  2. 旧ガスケットと付着物を除去し、座面を傷つけない方法で清掃する
  3. 座面の放射状傷、打痕、腐食、うねり、仕上げ状態を確認する
  4. 二つのフランジが同軸で、互いに平行か確認する
  5. ボルト・スタッド、ナット、座金の材質、長さ、ねじ、腐食、かじりを確認する
  6. ガスケットの規格、寸法、材質、表示、損傷を確認し、座面中央へ置く

配管の芯ずれをボルトで引き寄せて矯正してはいけません。先に配管・支持・フランジの芯を直し、座面が自然に平行となる状態で組み立てます。

ガスケットは交換を基本とし、再使用可否を現場判断で決めません。再使用が明示的に許可される特殊構造では、規格・メーカー・社内手順に従います。また、複数枚を重ねて隙間を埋める方法は、面圧分布と吹出しリスクが変わるため行いません。

旧稿ではガスケット面へシール剤を一般的に塗るとしていましたが、これは一律の手順にできません。接着剤、グリース、焼付き防止剤などをガスケットへ塗るのは、ガスケットメーカーと設計者が明示的に認めた場合だけです。製品によっては早期破損や滑り、面圧低下の原因になります。

4. ボルト締付けは「対角・段階・均一」が基本

締付けの目的は、全ボルトへ同じトルク値を示すことではなく、ガスケットへ必要な面圧をできるだけ均一に与えることです。

一か所を一度に締める片締めと、対向位置を段階的に締めて最後に周回確認する均一締付けを比較した図
一か所を一度に締める片締めと、対向位置を段階的に締めて最後に周回確認する均一締付けを比較した図(一次資料を参考に当サイト作成)

一般的な管理の骨格は次のとおりです。

  1. ナットが座るまで手で均等に締める
  2. 指定された対角順序で、目標値の一部ずつ段階的に締める
  3. 段階を上げるたびに、同じ指定順序を繰り返す
  4. 最終目標値へ到達後、円周方向に確認締めする
  5. 締付け条件、工具、潤滑剤、作業者、完了値を記録する

具体的な順序、各段階の割合、周回回数は、最新版規格と承認済み施工要領を使います。図3は原理を示すもので、個別フランジの締付け番号表ではありません。

JIS B 2251:2024は、一般産業用圧力設備のガスケット付き鋼製フランジ継手について、トルク法による締付け方法を規定しています。適用範囲には条件があり、あらゆるフランジ・ガスケットへ同じ手順を流用できるわけではありません。ASME系ではPCC-1-2022が、圧力境界ボルテッドフランジ継手の組立て手順、教育、トラブルシュートを扱います。

トルク値とボルト軸力は同じではない

トルク法では、入力の多くがねじ面・ナット座面の摩擦に消費されます。潤滑剤、表面処理、錆、ねじ損傷、座金、工具、作業方法が変わると、同じトルクでも軸力は変わります。

トルク表は、ボルト材質、ガスケット、フランジ、潤滑条件、摩擦係数を含む一組の施工条件です。別の潤滑剤へ替えたり、乾燥ねじへ同じ値を使ったりしません。

管理方法何を管理するか主な注意点
トルク法ナットへ与える回転トルク摩擦条件のばらつきが軸力へ影響する
回転角法着座後のナット回転角着座点、部材剛性、手順の定義が必要
テンショナ法油圧などでボルトへ直接引張力を与える荷重移行、工具スペース、残留軸力を考慮する
伸び測定法ボルト伸びから軸力を評価する初期長さ、測定精度、材質特性を管理する

重要継手では、必要な精度、口径、作業空間、リスクに応じて方法を選びます。

5. 漏れの原因を「ガスケット不良」だけにしない

フランジ漏れは、次の三群に分けると切り分けやすくなります。

原因群代表例点検の方向
フランジ・座面傷、腐食、付着物、うねり、非平行、芯ずれ、過大変形清掃、計測、面修正、配管・支持の修正
ボルト締付け軸力不足、片締め、摩擦差、ボルト緩和、工具・手順不良締付け記録、ねじ・潤滑、軸力分布、施工要領の確認
ガスケット材料・寸法不適合、中心ずれ、過圧縮、クリープ、熱劣化、損傷製品表示、使用条件、圧痕、破損形態、メーカー評価

運転側では、圧力・温度の急変、熱サイクル、振動、配管荷重、屋外の急冷なども面圧を変化させます。交換したガスケットの破損状態と座面の当たりを記録し、次回選定と締付け条件へ戻すことが再発防止になります。

6. ホットボルティングと漏えい時の増し締めを分ける

ホットボルティングは、温度上昇による継手各部の熱膨張差を考慮し、昇温状態で計画的に行う締付けです。コールドボルティングは、降温過程または降温後の熱収縮差を考慮した締付けです。

ただし、どの継手でも実施すべき一般作業ではありません。流体危険性、温度・圧力、ボルト材、ガスケット、工具、作業者のばく露、過去実績を評価し、対象、時点、荷重、手順、中止条件を個別に定めます。

漏えいを検知した場合は増し締めせず隔離減圧して点検し、計画されたホットボルティングだけを承認手順で行う安全判断フロー
漏えいを検知した場合は増し締めせず隔離減圧して点検し、計画されたホットボルティングだけを承認手順で行う安全判断フロー(一次資料を参考に当サイト作成)

すでに漏れている加圧フランジへ、その場で工具を掛ける行為は、計画されたホットボルティングとは別です。漏えい時は次の順に対応します。

  1. 人を近づけず、流体・温度・圧力・風向・着火源を確認する
  2. 運転手順と緊急時手順に従い、隔離・停止・減圧を行う
  3. 排液またはパージし、安全な温度まで冷却する
  4. ゼロエネルギー状態を確認してから分解する
  5. ガスケット、座面、ボルト、芯ずれ、配管荷重を点検する
  6. 原因を修正し、承認手順で再組立て・試験を行う

運転を直ちに止められない場合でも、現場判断で増し締めへ進みません。立入規制、漏えい監視、運転条件の安全側変更、計画停止などを設備管理者と安全担当が決定します。

7. 設計・発注・施工で残す情報

ガスケット仕様と締付け条件を現場任せにしないため、配管クラス、機器仕様書、施工要領へ次を残します。

  • フランジ規格、呼び径、呼び圧力またはClass、座面
  • ガスケット規格、形式、材料、寸法、厚さ、製品
  • 設計圧力・温度、流体、異常時・洗浄条件
  • ボルト・ナット・座金の規格、材料、表面処理
  • 潤滑剤と適用箇所、目標軸力または目標トルク
  • 締付け方法、順序、段階、工具、校正条件
  • ホット/コールドボルティングの要否と承認手順
  • 組立て、締付け、試験、開放時の記録様式

ガスケットとトルク値はセットで変更管理します。ガスケット銘柄、厚さ、ボルト材、潤滑剤のどれかを変えたときは、従来の締付け条件をそのまま使わず再評価します。

8. まとめ

  • ガスケットは単体でなく、フランジ・座面・ボルトを含む継手として選ぶ
  • 初期締付け後も、運転中に必要な残留面圧が均一に保たれることが重要
  • 寸法規格への適合と、流体・圧力・温度への適合は別に確認する
  • 組立て前に座面、芯、平行度、ボルト状態を点検する
  • 対角・段階・周回確認の具体手順は最新版規格と承認済み施工要領による
  • トルク値は潤滑・摩擦条件と一組で管理する
  • 漏れている加圧フランジを現場判断で増し締めしない
  • 変更と分解点検の記録を、次回の選定・施工条件へ戻す

漏れない継手をつくる本質は、ガスケットを選ぶことではなく、必要な面圧を安全に与え、運転中も維持できる接合系を管理することです。

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参考文献

※ 実作業の締付け値、順序、潤滑条件、再締付けの可否は、適用法規、最新版規格、設計コード、ガスケット・ボルトメーカー資料、事業所の承認済み施工要領に従ってください。