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送風機を絞っていくと、ある風量から「息をつく」ような音が出て、圧力計の指示やダクトが周期的に揺れることがあります。これは単なる機械振動ではなく、送風機と配管を含む系全体が不安定になったサージングの可能性があります。
また、風量を増やすために2台を並列運転しても、風量が単純に2倍になるとは限りません。特性が異なる送風機を組み合わせたり、共通ヘッダーの圧力が高いまま後発機を投入したりすると、片方の逆流やサージングを招くことがあります。
この記事では、現場オペレーターと化学メーカーのエンジニア向けに、サージングが起きる仕組み、現場での見分け方、並列・直列運転の性能曲線、運転前に確認すべき条件を整理します。
この記事の結論
- サージングは、ターボ形送風機と配管を含む系全体に生じる、自励的な圧力・風量変動です。
- 「吐出側が閉塞した状態」そのものをサージングとは呼びません。ルーツ形の吐出閉塞では、主に差圧・温度・軸動力の急上昇が問題です。
- 右上がり特性は不安定化しやすい領域ですが、実際の限界は機種、回転速度、配管容積、弁位置、制御方式で変わります。メーカーのサージラインと許容運転範囲を優先します。
- 並列運転は同じ圧力で風量を足し、直列運転は同じ風量で圧力を足します。ただし実際の運転点は抵抗曲線との交点なので、風量・圧力は単純な2倍になりません。
- 異特性機の並列運転と、共通ヘッダーへ後発機を投入する操作では、流量偏り、逆流、サージ余裕を必ず確認します。
1. サージングは「送風機と配管を含む系全体の振動」
サージングは、遠心送風機や軸流送風機などのターボ形で、低風量側の不安定領域へ入ったときに生じる現象です。送風機単体の羽根車だけが振動するのではなく、配管内の圧縮性を持つ気体、配管・槽の容積、抵抗、制御弁を含む系全体で、圧力と風量が周期的に変動します。
代表的な現れ方は次のとおりです。
| 現れ方 | サージングを疑う観察点 |
| 音 | 息をつく、うなる、周期的に強弱が変わる |
| 圧力 | 吐出圧力が周期的に揺れ、設備条件によって吸込圧力にも変動が現れる |
| 風量 | 指示値が周期的に増減し、条件によっては瞬間的な逆流を伴う |
| 電流・電力 | 空力負荷の変化に合わせて揺れることがある(補助的な観察値) |
| 機械・配管 | ケーシング、ダクト、支持部の振動や揺れが増える |
圧力が高く動力が大きい機械ほど、サージング時の振動・荷重変動が大きくなりやすく、長時間運転は羽根車、軸受、配管、支持部の損傷につながります。異常を認めたら、さらに絞って様子を見続けず、設備の手順とメーカーの許容範囲に従って安定領域へ戻します。
2. 右上がり特性でなぜ不安定になるのか
送風機の風量―圧力曲線は、通常運転側では風量が増えるほど発生圧力が下がる右下がりです。しかし機種によっては、小風量側に「風量が増えると圧力も上がる」右上がり部分があります。
右下がり側では、風量が減ると送風機の発生圧力が上がるため、一般に安定した運転範囲を取りやすくなります。これに対して右上がり側では、風量が減ると発生圧力も下がり、下流側の圧力に対抗しにくくなります。配管・槽にある気体の圧縮性や容積、抵抗、弁・制御の応答が組み合わさると、系全体で圧力と風量の周期変動が持続することがあります。


ただし、送風機曲線の傾きだけで、ある運転点が必ず安定または不安定になると断定はできません。サージングは送風機と管路系を合わせた現象です。
また、性能曲線の最高圧力点だけを見て、そこから左をすべて同じサージ限界と決めることはできません。一次資料でも、送風機形式、圧力、吸込・吐出口から弁までの管路長、回転速度、配管状態によって範囲が変わるとされています。実務では、メーカーが示すサージライン、最低連続運転風量、制御方式ごとの許容範囲を使います。
送風機曲線と抵抗曲線の基本は送風機の性能曲線と運転点で確認できます。
3. サージングと別の振動を混同しない
「振動が増えた」だけではサージングと断定できません。アンバランス、芯ずれ、軸受損傷、羽根通過振動、配管共振、旋回失速などでも振動は増えます。
| 比較 | サージング | 機械振動・局部的な流れの異常 |
| 主な変動 | 系全体の圧力・風量が周期的に大きく変動 | 回転数成分、羽根通過成分、軸受成分などが目立つ |
| 見やすい記録 | 圧力・風量の生波形と時刻同期トレンド | 振動の周波数スペクトル、位相、方向別振動 |
| 発生条件 | 小風量側、抵抗増加、台数変更、制御操作など | 汚れ・摩耗、芯ずれ、軸受、支持、共振など |
| 切り分け | 圧力と風量が共通周期で揺れるか | 回転速度に同期する周波数が卓越するか |
サージングの一次確認では、振動の周波数スペクトルだけを見るよりも、圧力と風量の生波形を同じ時間軸で見る方が分かりやすいです。両者に共通する周期的な変動があるかを確認し、電流・電力のトレンドを補助的に照合します。そのうえで振動スペクトルを使い、アンバランス、芯ずれ、軸受など機械起因の成分が重なっていないか調べます。

4. 現場でサージングを確認する手順
- 異音、圧力変動、ダクトの揺れを認めた時刻と操作を記録する
- 直前に動かした吐出ダンパ、吸込ダンパ、吸込ベーン、回転速度、台数を確認する
- 吸込・吐出圧力と風量の生波形を同じ時間軸で確認し、電流・電力を補助的に照合する
- 実回転速度、ガス温度・密度、フィルタや処理装置の差圧を確認する
- 現在の運転点をメーカー曲線へ置き、サージラインと許容範囲を照合する
- 並列運転中なら、各機の吐出圧力、流量、弁・ダンパ・逆止弁の状態を個別に確認する
- 運転手順に従って安定側へ戻し、同じ計測値が安定したか確認する
圧力計の指針やトレンドが揺れていても、計装配管の詰まり、導圧管の液溜まり、ダンピング設定、流量計の設置条件が原因の場合があります。計器一つで決めず、複数の値と現場現象を対応させます。
5. サージング対策は「最低流量を保つ」だけではない
対策の目的は、運転点をサージラインから十分に離し、過渡状態でも不安定域へ入れないことです。方式は機械とプロセスに合わせて選びます。
| 対策 | 仕組み | 主な注意 |
| 放風 | 吐出ガスの一部を外部へ逃がし、送風機通過流量を保つ | エネルギー損失、騒音、可燃・有毒・高温ガスの放出可否 |
| バイパス・リサイクル | 吐出ガスの一部を吸込側へ戻す | 圧縮熱の蓄積、吸込温度上昇、ガス組成、安全性、冷却器 |
| 吸込絞り | 吸込圧を下げ、特性とサージ限界を変える | 吸込負圧、漏れ込み、調整範囲、効率 |
| 吸込ベーン・翼角 | 予旋回や翼角で性能曲線を変える | 開度・角度ごとのメーカー曲線、機構の固着・がた |
| 回転速度 | 回転速度ごとに性能曲線とサージラインを移す | 固定抵抗、最低速度、共振、モータ冷却、制御応答 |
| アンチサージ制御 | 流量・圧力からサージ余裕を監視し、放風・リサイクル弁を操作 | 計器精度、応答速度、弁容量、フェイル動作、積分飽和 |
すべての送風機に最低流量ブローオフが常に必要という意味ではありません。低圧ファンでは別方式が合理的なこともあり、容積形のルーツブロワーはターボ形のサージとは異なる保護を要します。必要な保護は、機種、ガス、圧力、配管、制御、停止時の安全性を含めて決めます。
風量制御方式と省エネの比較は送風機の風量制御と省エネで詳しく説明しています。
6. 並列運転は「同じ圧力で風量を足す」
並列運転では、複数の送風機が共通の吸込・吐出ヘッダーへ接続されます。同一性能の2台なら、同じ圧力における各機の風量を横方向へ足したものが並列特性です。

しかし、実際の運転点は並列特性と抵抗曲線の交点です。風量が増えるとダクト抵抗も増えるため、2台運転時の総風量は、通常、1台運転時の風量の2倍より小さくなります。風量の増加に対して圧力損失の増加が大きく、抵抗曲線が立っている系ほど、並列化による風量増加は小さくなります。なお、槽内圧などの固定圧力差は抵抗曲線を上下に移す要素であり、曲線の傾きとは分けて考えます。
また、1台を停止すると残った1台の運転点は大風量側へ移ります。羽根形式によっては軸動力が増え、過負荷になる場合があります。台数を減らす操作では、総風量だけでなく、残存機の電流・電力と最大許容風量を確認します。
7. 並列運転で不安定になりやすい条件
次の条件では、各機の流量が均等にならず、片方のサージングや逆流を招くことがあります。
- 送風機の形式、羽根径、回転速度、性能曲線が大きく異なる
- 片方の曲線に深い谷やS字特性があり、同じ圧力に複数の風量が対応する
- 吸込・吐出配管やダンパ開度が不均等で、各機の抵抗が違う
- 既設機の共通ヘッダー圧力に対して、後発機の締切圧力が不足する
- 逆止弁、吐出弁、吸込ダンパ、バイパスの作動順序が実機特性と合っていない
後発機は定格回転速度へ達する前は昇圧力が低いため、吸込側を早く開くと共通ヘッダー側から後発機を通って吸込側へ逆流することがあります。一次資料の構成例では、後発機の吐出弁を閉じ、吐出から吸込へ戻るバイパスを開いて始動します。所定回転速度到達後に吸込を全開とし、吐出弁を開きながらバイパスを徐々に閉じて共通ヘッダーへ移します。これは一つの構成例であり、具体的な弁順序は設備ごとのP&ID、逆止弁の配置、インターロック、メーカー手順を優先してください。放風を採用する設備では、バイパス戻しとは別系統として、放出先と安全性を確認します。


台数追加、順次起動、交互運転、復電時再起動の詳細はBL-10へ集約します。
8. 直列運転は「同じ風量で圧力を足す」
直列運転では、1台目の吐出が2台目の吸込へ入ります。同一性能を単純化して考えると、同じ風量における各機の圧力上昇を縦方向へ足したものが直列特性です。

ただし、実際の運転点は直列特性と抵抗曲線の交点へ移るため、実運転圧力は1台運転時の圧力を単純に2倍した値とは限りません。抵抗曲線が寝ているほど風量増加へ使われ、立っているほど圧力増加の効果が現れます。
高圧ブロワーの直列運転では、1台目の圧縮熱で2台目の吸込温度が上がり、密度が低下します。その結果、2台目の昇圧能力が単純な加算から外れることがあります。さらに、2台目は入口圧力と軸封差圧が高くなるため、ケーシング・軸封の許容圧力、ガス漏れ、吐出温度を確認します。特性が大きく異なる機械の直列運転では、片方がほとんど仕事をしない運転点もあり得ます。
9. 並列・直列運転を計画するときの確認表
| 確認項目 | 並列運転 | 直列運転 |
| 合成方法 | 同じ圧力で風量を加算 | 同じ風量で圧力を加算 |
| 主目的 | 総風量を増やす、台数制御 | 総圧力を増やす |
| 単純な2倍にならない理由 | 総風量増加で系統抵抗が増える | 運転点が大風量側へ動く |
| 重点確認 | 各機流量、逆流、締切圧力、逆止弁、投入手順 | 2台目入口圧・温度・密度、軸封、ケーシング耐圧 |
| 異特性機の問題 | 流量偏り、片機サージ、片機締切 | 片機が仕事をしない、温度・圧力配分が偏る |
| 停止・切換え | 残存機の大風量側過負荷 | 各段の逆流、残圧、弁差圧 |
性能曲線はカタログの同一基準へそろえます。吸込実体積流量か標準状態流量か、静圧か全圧か、ガス密度、回転速度、翼角・ベーン条件が違う曲線をそのまま足してはいけません。
10. ルーツブロワーの吐出閉塞はサージングとは別に扱う
ルーツブロワーは容積形で、一回転ごとに一定容積の気体を送り出します。遠心送風機のような空力的サージングを基本の保護概念にせず、吐出側の閉塞や圧力上昇に対する差圧、温度、軸動力、リリーフを管理します。
吐出弁閉止や配管閉塞で流れを止めても、機械は気体を押し出そうとするため、圧力と負荷が急上昇します。これを「完全閉塞したからサージング」と表現すると、ターボ形の系統不安定現象と混同します。ルーツ形では、リリーフ弁、差圧・吐出温度・電流保護、弁とのインターロック、メーカーの始動停止手順を確認してください。
ターボ形とルーツ形の違いは送風機の種類と特徴で整理しています。
11. まとめ
サージングは、ターボ形送風機と配管を含む系全体の自励的な圧力・風量変動です。小風量側の右上がり特性は不安定化しやすいものの、実際の限界は機種、回転速度、配管容積、弁位置、制御方式で変わります。最高圧力点だけで決めず、メーカーのサージラインと許容運転範囲を使ってください。
現場で疑うときは、圧力と風量の生波形を同じ時間軸で確認し、電流・電力を補助的に照合したうえで、振動スペクトルから機械起因の成分を調べます。対策は放風、バイパス、吸込制御、翼角・ベーン、回転速度、アンチサージ制御から設備条件に合わせて選びます。
並列運転は同じ圧力で風量を、直列運転は同じ風量で圧力を加算します。しかし運転点は抵抗曲線との交点なので、単純な2倍にはなりません。異特性機、後発機の投入、2台目の吸込温度・圧力まで確認することが、逆流と不安定運転を防ぐ基本です。送風機記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』PDF p.29–33, 44–45, 130–132, 144–146 Amazonで見る
- 日本プラントメンテナンス協会『ファン・コンプレッサーの本』PDF p.52–55 Amazonで見る
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』第3章、PDF p.144–145 Amazonで見る
- 化学工学協会編『プロセス機器構造設計シリーズ6 化学プラント用ポンプ・圧縮機』PDF p.68–73
- 化学工学協会編『プロセス設計シリーズ7 プロセスの制御と計算機制御』PDF p.46–47
- 高圧ガス保安協会『高圧ガス保安技術(甲種化学・機械テキスト)』PDF p.345
化学プラント大全 
