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「気体の公式が多く、どれを使うのか分からない」
「質量パーセント濃度とモル濃度の分母を間違える」
「比熱、融解熱、蒸発熱を一つの式へ入れてしまう」
そんな疑問を解決します。
ボイル・シャルルの法則、状態方程式、分圧の使い分け
3種類の濃度を分母から見分ける方法
溶解度と冷却による析出量の計算手順
比熱、潜熱、熱収支、反応熱の整理
試験で間違えやすい12項目
先に結論を言うと、この範囲は公式の数より「問題文のどこを見るか」が重要です。
- 気体はP・V・T・nのうち、何が変化し、何が一定かを見る
- 濃度は分子より先に、分母が溶液か溶媒か、質量か体積かを見る
- 熱量は温度変化と状態変化を別の区間へ分ける
式を選んだら、温度をKへ直し、圧力・体積・質量の単位をそろえます。最後に、圧力や濃度、必要熱量の増減が常識と合うかを確認してください。
化学反応式、モル、燃焼計算が不安な人は、先に危険物取扱者甲種の化学反応式と燃焼計算攻略|モル・酸素量を型で解くを確認してください。
3分野は「条件・分母・区間」で整理する
気体、濃度、熱量の計算は、次の三つの入口へ分けられます。
| 分野 | 最初に見るもの | 式を選ぶ基準 | 最後の確認 |
|---|---|---|---|
| 気体 | P・V・T・n | 同じ気体の前後比較か、物質量を含む一状態か、混合気体か | 温度はKか、単位は対応しているか |
| 濃度 | 溶質・溶媒・溶液 | 分母が溶液の質量、溶液の体積、溶媒の質量のどれか | g、L、kgを取り違えていないか |
| 熱量 | 物質の状態と温度範囲 | 温度変化か、融解・蒸発などの状態変化か | 通過した全区間を足したか |
計算を始める前に、問題文へP、V、T、n、溶質、溶媒、溶液、比熱、潜熱の記号を書き込むだけでも、式の取り違えを減らせます。
本記事では、この順序を気体、濃度、熱量の順に固めます。
気体計算はP・V・T・nを確認する
気体問題では、圧力P、体積V、絶対温度T、物質量nの四つを探します。そのうえで、同じ気体を二つの状態で比べるのか、一つの状態から物質量を含めて計算するのか、複数の気体を混ぜるのかを判定します。

| 問題の形 | 使う関係 | 条件 |
|---|---|---|
| 温度一定で圧力と体積が変わる | P₁V₁=P₂V₂ | 同じ量の気体 |
| 圧力一定で温度と体積が変わる | V₁/T₁=V₂/T₂ | 同じ量の気体、TはK |
| 圧力・体積・温度がすべて変わる | P₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂ | 同じ量の気体、TはK |
| P・V・T・nの一状態を扱う | PV=nRT | 理想気体として扱う |
| 複数の気体を混合する | P=P₁+P₂+… | 各気体の分圧の和 |
式へ代入する前に「同じ量の気体か」を確認してください。気体が反応したり、漏れたり、追加されたりして物質量nが変わる場合、前後をそのままボイル・シャルルの式で結べません。
セ氏温度は絶対温度へ直す
気体の体積と温度の比例関係で使うTは絶対温度です。
T[K]=t[℃]+273
たとえば27℃は300K、127℃は400Kです。27と127をそのまま比にすると、絶対零度を基準にしていないため誤答になります。
選択肢を読む段階でも、加熱して圧力が一定なら体積は増え、圧縮して温度が一定なら圧力は上がる、という方向を先に確認してください。計算結果の桁違いに気づきやすくなります。
ボイル・シャルルと状態方程式を使い分ける
同じ量の気体を状態1から状態2へ変える問題では、ボイル・シャルルの関係を使います。
P₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂
温度一定ならTを消してP₁V₁=P₂V₂、圧力一定ならPを消してV₁/T₁=V₂/T₂です。別々の公式として暗記するより、共通式から一定の量を消すと安定します。
一方、物質量nが与えられ、一つの状態のP、V、Tを求める問題では理想気体の状態方程式を使います。
PV=nRT
ここでRは気体定数です。Rの数値は、圧力と体積の単位系に合わせます。問題文がPaとm³を使うのか、atmとLを使うのかを確認し、異なる単位系のRを混ぜないでください。
標準状態のモル体積を使えるのは、その条件が成立する場合です。「気体1 molは常に22.4L」と覚えるのではなく、温度と圧力の条件を確認します。
分圧は各気体を同じ容器へ広げて考える
混合気体の全圧は、各成分気体の分圧の和です。これがドルトンの分圧の法則です。
P全=P₁+P₂+…
温度が一定で、もとの気体を体積V₀の容器から混合後の体積Vへ移す場合、各気体についてP₀V₀=pVを使えば分圧pを求められます。
p=P₀V₀/V
重要なのは、最初から元の圧力を足さないことです。各気体は混合後の同じ容器全体へ広がるため、まずそれぞれの分圧へ換算し、その後で合計します。
また、水上置換で集めた気体の問題では、全圧に水蒸気圧が含まれることがあります。乾燥した気体の圧力を求めるなら、問題文で与えられた水蒸気圧を全圧から差し引きます。
公式公開例題を2段階で解く
一般財団法人消防試験研究センターの甲種公開問題には、温度一定の30L容器へ、6atm・10Lの酸素と1atm・60Lの窒素を入れる分圧計算が掲載されています。
1. 各気体の分圧を求める
酸素の分圧は、6atm×10Lを30Lへ広げるため2atmです。
窒素の分圧は、1atm×60Lを30Lへ広げるため2atmです。
2. 分圧を足す
全圧=2atm+2atm=4atm
公開解答では4atmの選択肢が正解です。
この問題の要点は、6atmと1atmをそのまま足さないことです。元の体積が異なるため、両方を最終容器30Lでの分圧へ直してから足します。
濃度計算は分母を先に決める
濃度問題では、最初に分母へ線を引いてください。三つの濃度は、分子より分母の違いが重要です。

| 名称 | 分子 | 分母 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 質量パーセント濃度 | 溶質の質量 | 溶液の質量 | % |
| モル濃度 | 溶質の物質量 | 溶液の体積 | mol/L |
| 質量モル濃度 | 溶質の物質量 | 溶媒の質量 | mol/kg |
質量パーセント濃度では、溶液の質量=溶媒の質量+溶質の質量です。水80gへ溶質20gを溶かした場合、分母は80gではなく100gになります。
モル濃度の分母は完成した溶液の体積です。「1Lの水へ溶かす」と「水へ溶かして全量を1Lにする」は同じではありません。前者は溶解後の体積が1Lを超える可能性があります。
質量モル濃度だけは、分母が溶液ではなく溶媒の質量です。さらに単位はkgなので、溶媒500gなら0.500kgへ直します。
溶解度は溶媒100g基準で整理する
固体の溶解度は、一定温度で溶媒100gに溶ける溶質の最大質量として扱います。飽和水溶液100g中の溶質量ではありません。
たとえば、高温での溶解度をS高、低温での溶解度をS低とすると、溶媒100g当たりの析出量は次の差です。
析出量=S高−S低
ただし、与えられた量が「飽和水溶液の質量」の場合は、そのまま差を掛けません。まず高温での飽和水溶液を、溶媒100gと溶質S高g、合計100+S高gの比へ分けます。
手順は次のとおりです。
- 溶解度の基準が溶媒100gであることを確認する
- 高温の飽和水溶液から溶媒量を求める
- 同じ溶媒量に低温で溶け残る溶質量を求める
- 高温時の溶質量から低温時の溶質量を引く
公論出版の例題では、80℃で水100gに50g、20℃で水100gに35g溶ける条件を使い、高温の飽和水溶液150g当たり15gが析出します。飽和水溶液200gなら比例して20gです。
気体の溶解度は、一般に温度が高くなると小さくなり、圧力が高くなると大きくなる傾向があります。固体の溶解度と同じ温度変化だと思い込まないでください。
熱量計算は区間へ分ける
熱量問題は、温度が変わる区間と、融解・沸騰など状態が変わる区間を分けます。

温度が変わる区間
状態が変わらず、温度だけが変わる場合は次の式です。
Q=mcΔT
Qは熱量、mは質量、cは比熱、ΔTは温度差です。温度差は℃でもKでも同じ大きさですが、比熱の質量単位とmをそろえる必要があります。
状態が変わる区間
融解、凝固、蒸発、凝縮の間は、基本問題では温度が一定のまま熱が出入りします。
Q=mL
Lは単位質量当たりの潜熱です。問題文に融解熱や蒸発熱が与えられたら、比熱の式へ入れず、別区間として計算します。
たとえば、液体を加熱して沸点へ到達させ、さらに全部を気体にする問題なら、必要熱量は次の和です。
全熱量=液体の温度上昇に必要な熱量+蒸発に必要な熱量
氷を低温から水蒸気まで加熱するような問題では、固体の昇温、融解、液体の昇温、蒸発、気体の昇温のうち、問題で通過する区間だけを足します。
熱収支は失った熱量と受け取った熱量をそろえる
異なる温度の物体を接触させる問題では、外部へ熱が逃げない理想条件なら、高温側が失った熱量と低温側が受け取った熱量が等しくなります。
高温側が失った熱量=低温側が受け取った熱量
両側についてQ=mcΔTを書き、最終温度を共通の未知数にします。
注意する点は、ΔTを正の大きさとして扱うことです。高温側は「初期温度−最終温度」、低温側は「最終温度−初期温度」と書けば、不要な負号の混乱を避けられます。
容器や熱量計の熱容量が与えられている場合は、その物体が受け取る熱量も加えます。問題文で「容器の熱容量は無視する」とあるなら入れません。
反応熱とヘスの法則は式の向きに注意する
化学反応に伴って熱を放出するのが発熱反応、周囲から熱を吸収するのが吸熱反応です。試験教材の熱化学方程式では、発生する熱量を生成物側へ加えて表す形式が使われることがあります。
一方、反応エンタルピーΔHで表す場合は、発熱反応をΔH<0、吸熱反応をΔH>0とします。どちらの表記を使う問題かを確認し、同じ計算の途中で混ぜないでください。
ヘスの法則は、反応物と生成物が同じなら、反応経路が違っても全体の反応熱は同じという関係です。式を組み合わせるときは次の二点を守ります。
- 反応式を逆向きにすると、熱量またはΔHの符号を逆にする
- 反応式の係数を何倍かすると、熱量またはΔHも同じ倍率にする
中間物質が左右で消え、求めたい全体反応だけが残るように式を足します。計算前に「残したい物質」と「消したい中間物質」へ印を付けると、式の向きを決めやすくなります。
燃焼熱、生成熱、中和熱、溶解熱、融解熱、蒸発熱は、何を1mol基準としているか、物質の状態が固体・液体・気体のどれかを確認してください。水が液体か気体かで反応熱は異なります。
試験で間違えやすい12項目
気体の温度へ℃をそのまま入れる
ボイル・シャルルや状態方程式のTは絶対温度Kです。t+273へ直します。
気体の物質量が変わっても前後を同じ式で結ぶ
ボイル・シャルルの前後比較は、同じ量の気体が前提です。反応、追加、漏れを確認します。
気体定数Rの単位系を混ぜる
圧力と体積の単位に合うRを使います。Pa・m³とatm・Lを途中で混ぜません。
混合前の圧力をそのまま足す
元の体積が異なる場合は、最終容器での各分圧へ直してから足します。
質量パーセント濃度の分母を溶媒だけにする
分母は溶液の質量、つまり溶媒と溶質の合計です。
モル濃度で1Lの水を使う
分母は完成した溶液の体積です。「水へ溶かして1Lにする」と読み分けます。
質量モル濃度の分母を溶液の質量にする
分母は溶媒の質量kgです。溶液ではありません。
溶解度を飽和水溶液100g当たりと考える
基本の定義は溶媒100g当たりです。飽和水溶液の質量が与えられたら比で分解します。
固体と気体の溶解度の温度変化を同じにする
気体は一般に温度上昇で溶けにくくなります。固体の典型的傾向と区別します。
融解中や沸騰中にもQ=mcΔTを使う
状態変化の区間は潜熱Q=mLとして分けます。
熱収支で温度差の向きを逆にする
高温側は初期−最終、低温側は最終−初期として、両方を正の大きさで置きます。
反応式を逆にしても熱量の符号を変えない
反応を逆向きにしたら熱の出入りも逆になります。係数を倍にしたら熱量も倍です。
5段階の解答手順
計算問題は、次の順番で処理します。
- 気体、濃度・溶解度、熱量・反応熱のどれかへ分類する
- 与えられた値へP・V・T・n、溶質・溶媒・溶液、比熱・潜熱の記号を書く
- 一定条件、分母、通過する状態変化を確認して式を一つずつ選ぶ
- K、Paまたはatm、Lまたはm³、gまたはkgの単位をそろえて計算する
- 圧縮なら圧力上昇、希釈なら濃度低下、加熱なら必要熱量が正になるなど、結果の方向を確認する
途中式には単位を残してください。数値だけを並べるより、Lとm³、gとkg、℃とKの混在に早く気づけます。
複合問題では、一つの巨大な式を作らず、分圧を個別に求める、溶媒量を先に求める、熱量を区間ごとに求める、という小さな計算へ分けます。
30秒セルフテスト
次の十問に答えてください。
- 27℃は何Kか
- 同じ量の気体を二状態で比べる基本式は何か
- 混合気体の全圧は何の和か
- 質量パーセント濃度の分母は何か
- モル濃度の分母は何か
- 質量モル濃度の分母は何か
- 固体の溶解度は基本的に溶媒何g当たりか
- 温度だけが変わる区間の熱量式は何か
- 状態変化の区間の熱量式は何か
- 反応式を2倍、逆向きにすると反応熱はどうなるか
答えは、300K、P₁V₁/T₁=P₂V₂/T₂、各気体の分圧、溶液の質量、溶液の体積、溶媒の質量、100g、Q=mcΔT、Q=mL、絶対値は2倍で符号が逆、です。
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まとめ
危険物取扱者甲種の気体、濃度、溶解度、熱量、反応熱の計算を、式を選ぶ入口から整理しました。
- 気体はP・V・T・nと一定条件を確認する
- 気体の温度は絶対温度Kへ直す
- 同じ気体の前後比較、状態方程式、分圧を使い分ける
- 混合気体は各成分の分圧を求めてから足す
- 濃度は分母が溶液か溶媒か、質量か体積かを先に決める
- 溶解度は溶媒100gを基準にする
- 熱量は温度変化と状態変化を別区間へ分ける
- 熱収支では失った熱量と受け取った熱量をそろえる
- ヘスの法則では、式の逆転と倍率を熱量にも反映する
迷ったら、気体は条件、濃度は分母、熱量は区間へ戻ってください。計算式を思い出す前に入口を決めれば、似た公式を取り違えにくくなります。
参考文献
- 工藤政孝『わかりやすい!甲種危険物取扱者試験』弘文社、気体、熱量、反応熱、溶解度、濃度(PDF p.161、p.165-169、p.198、p.202-205) Amazonで見る
- 公論出版『甲種危険物取扱者試験 令和8年版』熱量、気体、濃度・溶解度、熱化学方程式(PDF p.242-248、p.264-275) Amazonで見る
- 一般財団法人消防試験研究センター「過去に出題された問題」(2026年8月27日閲覧、甲種の分圧計算問題と解答を確認)
化学プラント大全 
