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送風機のダンパを絞ると、風量は減ります。しかし、圧力計や電流計がどう動くかは、ダンパ開度だけでは決まりません。送風機の性能曲線と、ダクト・フィルタ・熱交換器・装置が作る抵抗曲線の交点が移動した結果として決まります。
この記事では、初めて性能曲線を見る人でも、現場の風量・圧力・電流の変化を曲線と結び付けられるように説明します。対象は主にターボ形の遠心・軸流送風機です。ルーツブロワーなどの容積形は挙動が異なるため、同じ読み方をそのまま当てはめません。
この記事の結論
- 実際の運転点は、送風機の圧力曲線とプラントの抵抗曲線が交わる点です。
- 吐出ダンパを絞ると抵抗曲線が立ち、運転点は一般に小風量・高発生圧力側へ移ります。
- ダンパ開度と風量は比例しません。圧力損失、固定抵抗、送風機曲線を合わせて判断します。
- 軸動力の変化は機種で異なります。多翼、後向き、軸流を同じ感覚で扱わず、メーカーの軸動力曲線と電流を確認します。
- 現場では、風量、吸込・吐出圧力、電流または電力、ダンパ開度、回転速度、気温・気圧を同じ時刻に記録します。
1. 性能曲線は横軸と測定条件から読む
ターボ形送風機のカタログでは、横軸に風量を取り、圧力、効率、軸動力をそれぞれ曲線で示すのが基本です。最初に曲線の形を見るのではなく、次の条件を確認します。
| 確認項目 | 見落とすと起きること |
| 風量の基準 | 吸込状態のm³/hと基準状態のNm³/hを混同し、同じ風量だと思って比較してしまう |
| 圧力の種類 | 静圧曲線と全圧曲線を混ぜ、送風機とプラントの必要圧力を別の基準で比較してしまう |
| ガス条件 | 温度、絶対圧力、湿度、組成が違い、密度差による圧力・動力の変化を見落とす |
| 回転速度 | 異なる回転速度の曲線へ実測点を置き、能力不足または過大能力と誤判断する |
| 羽根・ベーン条件 | 翼角、吸込ベーン、段数などが違う曲線を同一機の曲線として扱ってしまう |
低圧の送風機では静圧が使われることがありますが、全圧は静圧と動圧の和です。送風機曲線が全圧なら、プラント側の抵抗も全圧基準でそろえます。静圧と全圧を同じ縦軸へ混在させないことが出発点です。
風量表示、密度、温度補正の詳しい扱いは風量・圧力・軸動力の記事へ集約します。
2. 運転点は送風機とプラントが一緒に決める
送風機の圧力曲線は「その回転速度・ガス条件で、各風量に対して送風機がどれだけ圧力を上げられるか」を表します。一方、抵抗曲線は「その風量を流すために、ダクトや装置がどれだけ圧力を必要とするか」を表します。

実際の運転点は、この2本が交わる点です。交点より風量が多い側ではプラントが必要とする圧力に送風機が届かず、交点より少ない側では送風機の圧力が抵抗を上回るため、最終的に圧力が釣り合う交点へ落ち着きます。
したがって、銘板に記載された風量やメーカー曲線上の定格点が、配管へ接続した後も自動的に実現するわけではありません。送風機が同じでも、ダクト径、フィルタ、熱交換器、ダンパ、装置内圧が変われば運転点は変わります。
3. 抵抗曲線は「固定分+風量で増える分」
プラント側の必要圧力は、大きく固定抵抗と変動抵抗に分けられます。概念的には次のように表せます。
プラントの必要圧力 = 固定抵抗 + K×風量²
| 抵抗 | 風量との関係 | 代表例 |
| 固定抵抗 | 風量がゼロでも必要 | 加圧槽へ送り込む圧力、曝気槽の水深、装置内外の圧力差 |
| 変動抵抗 | 乱流域ではおおむね風量の二乗で増える | 直管、曲がり、分岐、フィルタ、熱交換器、ダンパ、ノズル |
すべての圧力損失を無条件に「風量の二乗」と考えるのは誤りです。たとえば曝気槽では、水面下の散気位置まで気体を押し込むための圧力は固定分として残ります。そこへ配管や散気装置の流動抵抗が加わります。
また、フィルタの目詰まり、コイルやダクト内面の汚れ、ダンパ操作、設備の増設は、抵抗曲線の傾きや固定分を変えます。送風機に異常がなくても、プラント側の変化だけで風量は変わります。
4. 吐出ダンパを絞ると何が変わるか
吐出ダンパを絞る操作は、ダクトへ追加の圧力損失を入れる操作です。送風機の回転速度、羽根、ガス密度が同じなら、送風機の圧力曲線は基本的に同じままです。一方、抵抗曲線は全開時より急になります。

その結果、運転点は一般に次のように動きます。
- 風量は減る
- 送風機が発生する圧力は上がる
- 増えた圧力の一部をダンパで消費する
- 軸動力と電流は、送風機形式の軸動力曲線に沿って変化する
ここでいう「圧力が上がる」は、送風機の吸込・吐出間で生じる圧力上昇です。末端装置の圧力や各ダクト位置の静圧が一律に上がるという意味ではありません。圧力計の位置と、静圧・全圧のどちらを測っているかを確認してください。
ダンパ開度を半分にしても、風量が半分になるとは限りません。ダンパ固有の流量特性と、プラント全体の抵抗曲線、送風機曲線の新しい交点で決まります。
5. ダンパを絞っても軸動力は同じ割合では下がらない
風量が減れば電力も同じ割合で減ると思われがちですが、軸動力曲線は羽根形式によって違います。

| 形式 | 軸動力曲線の代表的な傾向 | ダンパ絞り時の注意 |
| 多翼(前向き) | 風量が増えるほど軸動力が大きくなりやすい | 絞ると軸動力は下がりやすいが、全開側で過負荷にならないか確認する |
| ラジアル | 風量増加とともに軸動力が増える傾向 | 実機曲線で電動機容量と許容範囲を確認する |
| 後向き・翼形 | 風量増加側で軸動力が増えた後、頭打ちになるリミットロード特性を持つものがある | 絞っても軸動力の低下が小さいことがある |
| 軸流 | 締切側で軸動力が大きくなる形式がある | 絞るほど負荷が増える場合がある。遠心式の感覚で電流低下を予想しない |
電流は現場で確認しやすい指標ですが、電流そのものが軸動力ではありません。電圧、力率、モータ効率、負荷率の影響を受けます。日常管理では同じ設備・同じ運転条件での傾向監視に使い、性能評価では電力または軸動力の条件をそろえます。
送風機の種類と羽根形状が分からない場合は、先に送風機の種類と特徴で実機と曲線を対応させてください。
6. 現場では操作前後を同じ条件で記録する
ダンパ操作の影響を確認するときは、圧力計だけ、または電流計だけを見ないようにします。少なくとも次の値を同じ時刻に記録します。
| 記録する値 | 確認する理由 |
| 風量または風速 | 運転点が横軸方向にどれだけ動いたかを見る |
| 吸込圧力・吐出圧力 | 送風機の圧力上昇を同じ測定基準で求める |
| 電流・電力 | 軸動力曲線に沿った負荷変化と過負荷を監視する |
| ダンパ開度 | 操作量と実際の風量変化を対応させる |
| 回転速度・周波数 | 別の性能曲線へ移っていないか確認する |
| 気温・気圧・湿度・ガス条件 | 密度変化を区別し、メーカー曲線と同じ状態へ換算する |
| 振動・音・温度 | 小風量側の不安定運転や機械異常の兆候を捉える |
測定点は可能な限り安定した直管部を選び、使用している計器・ピトー管・流量計の測定条件に従います。吸込直前や吐出直後の曲がり、偏流、旋回流が強い場所では、測定値とメーカー曲線が対応しないことがあります。
7. 計画点と実測点がずれたら「送風機側」と「プラント側」を分ける
実測点がメーカー曲線や計画点から外れている場合、送風機だけを疑うと原因を見失います。
| 現象 | プラント側で確認 | 送風機側で確認 |
| 風量が計画より多い | 設計時の圧力損失余裕が大きすぎないか、ダンパが想定より開いていないか、バイパスや漏れ経路がないか | 回転速度、羽根・ベーン条件、ガス密度、曲線の選択が合っているか |
| 風量が計画より少ない | フィルタ・コイル・ダクトの汚れ、ダンパ、閉塞、設備改造、固定圧力の上昇 | 回転方向、回転速度、羽根の汚れ・摩耗・損傷、吸込偏流、ベルトすべり |
| 圧力は高いが風量が少ない | 抵抗増加により運転点が左上へ移っていないか | 低風量側の許容範囲、圧力計の基準と測定位置 |
| 電流だけが想定と違う | ガス条件、ダンパ位置、設備負荷 | 羽根形式の軸動力曲線、電圧、力率、モータ・伝動部の状態 |
抵抗増加なら、同じ送風機曲線上で運転点が移ります。回転速度低下、羽根の汚れ、吸込偏流などで送風機能力が変われば、送風機曲線自体が計画曲線から外れます。この2つを分けるには、風量、圧力、回転速度、電力を一組で測ることが必要です。
8. 絞り操作中に脈動・異音・振動が出たら止めて判断する
ターボ送風機を小風量側へ寄せると、性能曲線の形と管路条件によっては流れが不安定になります。圧力や風量の周期変動、息をつくような音、振動の増加が出たときは、さらに絞って様子を見続けず、設備の運転手順とメーカーの許容運転範囲に従います。
低風量側の限界は、曲線の最高圧力点だけで一律に決められません。送風機形式、配管容積、回転速度、制御方式で変わります。サージングと許容運転範囲はBL-07で詳しく扱います。
また、軸流ファンは締切側で軸動力が大きくなる形式があります。ダンパ操作では、風量低下だけでなく電流上昇も同時に監視してください。
9. 性能曲線を現場で使う手順
- 銘板、型式、羽根形式、回転速度を確認し、該当するメーカー曲線を用意する
- 風量の基準、静圧・全圧、ガス密度、翼角・ベーン条件をそろえる
- 現在の風量、吸込・吐出圧力、電流または電力、ダンパ開度を記録する
- 実測点を性能曲線へ置き、計画点との差を確認する
- 抵抗曲線が変わったのか、送風機曲線が変わったのかを切り分ける
- ダンパを操作する場合は一度に大きく動かさず、安定後に風量・圧力・電流・振動を再確認する
- 長時間の部分負荷運転は、ダンパ損失だけでなく効率と年間電力量を評価する
ダンパ、吸込ベーン、インバータ、翼角制御の省エネルギー比較は次のBL-06で扱います。BL-04では、まず現在の運転点を正しく読めることを優先します。
10. まとめ
送風機の風量は、送風機の性能曲線とプラントの抵抗曲線の交点で決まります。吐出ダンパを絞ると、抵抗曲線が立ち、運転点は小風量・高発生圧力側へ移ります。ただし、軸動力と電流の変化は羽根形式で異なり、軸流では絞るほど負荷が増える場合があります。
現場では、風量、吸込・吐出圧力、電流または電力、ダンパ開度、回転速度、ガス条件を一組で記録してください。計画点との差が、プラント抵抗の変化なのか、送風機能力の変化なのかを切り分けることが、正しい操作とトラブル診断につながります。送風機記事群の全体像は送風機・ブロワー完全ガイドで確認できます。
参考文献
- 尾形俊輔ほか『ファン・ブロワ 改訂版』PDF p.15–18, 21–23, 29, 36–37, 154–156 Amazonで見る
- 日本プラントメンテナンス協会『ファン・コンプレッサーの本』PDF p.22, 50–53 Amazonで見る
- 高橋徹『流体のエネルギーと流体機械』第3章、PDF p.127–130, 137–139 Amazonで見る
- 化学工学会編『化学工学便覧 改訂五版』PDF p.138(リンクは改訂七版) 最新版をAmazonで見る
化学プラント大全 
