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二重管・スパイラル・その他の熱交換器【スラリー・高粘度・極低温への解】

二重管・スパイラル・その他の熱交換器【スラリー・高粘度・極低温への解】

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困っている人
困っている人

多管式でもプレート式でもない形式ってどんなものがある?

スラリーや高粘度液はどう扱う?

そんな悩みを解決します。

この記事の内容

・二重管式・スパイラル式・プレートフィン式などの特徴

・スラリー・高粘度・極低温といったニッチ条件での選択肢

・反応器のジャケットとコイル

私の仕事は化学プラントの設計です。
主要2形式で解けないときの選択肢を整理します。

熱交換器の大半は多管式かプレート式で解決します。しかし、条件によってはどちらも成立しないことがあります。

スラリーで流路が詰まる。粘度が高すぎて層流から抜けられない。容量が小さすぎて多管式では過剰になる。極低温で多数の流体を同時に熱交換したい──こうした場合に選ぶ形式を整理します。

この記事の結論

二重管式:小容量・高圧・純向流。最も単純で、増設も容易。

スパイラル式:スラリー・高粘度・汚れる流体に強い。自己洗浄性がある。

プレートフィン式:極低温・多流体・接近温度差1〜2 K。空気分離やLNGで使われる。

掻面式:結晶が析出する、極端に粘度が高い流体。

ジャケット・コイル:反応器の温度制御。バッチプロセスの基本。

二重管式熱交換器

管の中にもう1本細い管を通し、内管と外管の環状部にそれぞれ流体を流す、最も単純な構造です。

項目内容
構造内管+外管。ヘアピン状に曲げて複数連結することが多い
伝熱面積1ユニットあたり数 m2 程度。連結して増やす
長所構造が単純で安価。完全な向流にできる(F = 1)。高圧に対応可。増設が容易
短所面積あたりのコストが高い。大容量には不向き。設置スペースが細長くなる

使いどころ

・小容量(数 m2 〜 数十 m2)の加熱・冷却

・温度クロスが大きく、純向流が必要な場合

・高圧流体(内管に流す)

・少量多品種で、頻繁に条件が変わる(ユニット数で調整できる)

外管側にフィンを付けた「フィン付き二重管」もあります。片側が気体や高粘度液の場合に、環状部の伝熱を補強する構造です。

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スパイラル式熱交換器

2枚の金属板を渦巻き状に巻き、隣り合う流路に2つの流体を流す構造です。

項目内容
流路断面が長方形の単一流路。分岐がない
長所自己洗浄性がある。閉塞しにくい。ほぼ純向流。コンパクト。高粘度に強い
短所高圧に不向き(〜2 MPa程度)。修理が難しい。ガスケット部の制約

なぜ詰まりにくいのか

スパイラル式の流路は分岐がなく、断面が一定です。どこか一部が汚れて狭くなると、その部分の流速が上がり、付着物が剥がされます。これが自己洗浄性です。

多管式では、1本のチューブが詰まると、その管には流体が流れなくなり、汚れが加速します。詰まりが詰まりを呼ぶ構造です。スパイラル式ではこれが起きません。

スラリー、繊維分を含む液、汚泥、パルプ廃液など、他の形式では詰まってしまう流体に対する定番の選択肢です。

高粘度にも強い

流路が曲がっているため二次流れ(ディーン渦)が発生し、層流域でも熱伝達が促進されます。高粘度液で、プレート式が使えず(固形分がある)、多管式では層流に入ってしまう、という場合の解になります。

プレートフィン式熱交換器

薄い仕切板とコルゲート状のフィンを交互に積層し、ろう付け(ブレージング)で一体化した構造です。材質はアルミが主流です。

項目内容
伝熱面積密度1,000 m2/m3 以上。極めてコンパクト
接近温度差1 〜 2 Kまで詰められる
流体数3流体以上を1台で同時に熱交換できる
長所超コンパクト。極低温に強い(アルミは低温脆性がない)
短所閉塞に極めて弱い(流路が非常に狭い)。修理不可。圧力・温度に制約

使いどころ

空気分離装置(酸素・窒素製造)、LNG液化・気化、水素・ヘリウムの液化といった極低温プロセスの中核機器です。

極低温プロセスでは、わずかな温度差の損失が冷凍動力に直結します。接近温度差を1〜2 Kまで詰められることが決定的な価値を持ちます。

また、多流体を同時に熱交換できるため、複雑な冷凍サイクルを1台に集約できます。

流体は徹底的に清浄化(フィルタ、乾燥、脱炭酸)してから通します。閉塞すると修理できないためです。汚れる可能性のある流体には使えません。

掻面式熱交換器

伝熱面を回転するブレードで常時掻き取りながら熱交換する構造です。

項目内容
長所伝熱面に付着物が固着しない。結晶析出極端な高粘度に対応できる
短所高価。可動部があり保守が要る。容量が小さい。動力が大きい

使いどころ

・冷却によって結晶が析出する液(晶析プロセス)

・冷却するとワックス分が固化する油

・極端に粘度が高い液(ポリマー、樹脂、食品ペースト)

・熱に敏感で、伝熱面に長く滞留させたくない液

通常の熱交換器なら伝熱面に固着して即座に閉塞するような流体でも、掻面式なら連続運転できます。高価ですが、他に手段がない場面で選ばれます。

反応器のジャケットとコイル

バッチプロセスでは、反応器そのものが熱交換器を兼ねます。

ジャケット

方式特徴
単純ジャケット容器外側に空間を設ける。構造が単純だが、熱媒の流速が稼げず伝熱が悪い
スパイラルバッフル付きジャケット内に螺旋の仕切りを入れ、熱媒を旋回させて流速を上げる
ハーフパイプジャケット半割管を外面に溶接。流速を高くでき、高圧にも対応。伝熱性能が高い
ディンプルジャケット板を点付け溶接。軽量で安価。中圧まで

内部コイル

反応器内部に伝熱コイルを設置する方式です。ジャケットより大きな伝熱面積が取れますが、内部に構造物が増えるため、洗浄が難しくなり、撹拌の妨げにもなります。

多品種を切り替えて製造する反応器では、洗浄性を優先してコイルを避け、ジャケットのみとすることが多くあります。

反応器の除熱能力は安全に直結します。発熱反応では、除熱能力が反応熱を下回った時点で暴走反応に向かいます。ジャケットの伝熱面積は容積の2/3乗でしか増えないため、スケールアップ時に除熱が追いつかなくなる点に注意が必要です。

形式選択の早見表

条件第1候補第2候補
標準的な液 ─ 液多管式プレート式
高温・高圧多管式二重管式
高価な材料が必要プレート式スパイラル式
小容量(〜20 m2二重管式多管式
スラリー・繊維分スパイラル式多管式(チューブ側)
極端な高粘度スパイラル式掻面式
結晶析出掻面式
極低温・多流体プレートフィン式多管式
冷却水が使えない空冷式
接近温度差を詰めたいプレート式プレートフィン式
バッチ反応の温度制御ジャケット内部コイル

まとめ

・二重管式は小容量・高圧・純向流。単純で安価、増設も容易です。

・スパイラル式は流路に分岐がなく自己洗浄性がある。スラリーや繊維分を含む液の定番です。

・プレートフィン式は接近温度差1〜2 K、多流体対応。極低温プロセスの中核ですが閉塞に極めて弱い。

・掻面式は結晶析出や極端な高粘度に対応できます。高価ですが代替手段がありません。

・反応器のジャケット・コイルは除熱能力が安全に直結します。スケールアップ時の面積不足に注意。

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参考文献

  • 吉田邦夫・吉田英生 監修『熱交換器ハンドブック』省エネルギーセンター、2005年、II編2「コンパクト熱交換器」2.1 プレートフィン熱交換器、II編4「特殊構造熱交換器」、II編5「充填層・流動層熱交換器」 Amazonで見る
  • 尾花英朗『熱交換器設計ハンドブック(増訂版)』工学図書、1974年(1994年 2版6刷)、第4部 第13章「渦巻板式熱交換器の設計法」、第15章「二重管式熱交換器の設計法」、第20章「掻面式熱交換器の設計法」、第23章「タンク・コイル式」、第24章「タンク・ジャケット式」、第29章「プレートフィン式」 Amazonで見る