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凝縮器の設計って何が違うの?
蒸気を冷やすときの熱伝達率はどう求める?
そんな悩みを解決します。
・膜状凝縮と滴状凝縮、設計に使うのはどちらか
・ヌセルトの理論式と、水平管群での段数補正
・ゾーン分割とドレン排出という2つの実務ポイント

私の仕事は化学プラントの設計です。
蒸留塔の塔頂コンデンサを念頭に、実務で押さえるべき点を整理します。
凝縮器(コンデンサ)は、化学プラントで最も台数の多い熱交換器のひとつです。蒸留塔の塔頂、反応器のリフラックス、蒸発器の後段──どこにでもあります。
相変化を伴うため、これまで解説してきた顕熱の熱交換とは設計の考え方が変わります。潜熱が動くので熱伝達率が桁違いに大きく、温度が一定に保たれ、そして凝縮液の排出という新しい問題が加わります。
・設計は膜状凝縮を前提にします。滴状凝縮は性能が5〜10倍良いですが、持続しないため設計値には使いません。
・凝縮側の熱伝達率は数千〜1万5千 W/(m2・K)と大きく、通常は冷却側が律速します。
・水平管群では、下段ほど凝縮液膜が厚くなり性能が落ちます(段数の−1/4乗)。
・過熱蒸気や過冷却がある場合はゾーン分割して計算します。
・凝縮液が滞留すると伝熱面が失われます。ドレン排出は性能そのものです。
膜状凝縮と滴状凝縮
蒸気が冷たい面に触れて液になるとき、その液のふるまいは2通りあります。
| 膜状凝縮 | 滴状凝縮 | |
|---|---|---|
| 凝縮液の状態 | 面全体を膜で覆う | 液滴になって転がり落ちる |
| 熱伝達率 | 数千 〜 1万5千 W/(m2・K) | その5 〜 10倍 |
| 起きる条件 | 通常の金属面(濡れ性が良い) | 面が撥液性のとき |
| 持続性 | 安定 | 持続しない |
滴状凝縮のほうが圧倒的に高性能です。液膜という熱抵抗が面全体を覆わないためです。
ところが、滴状凝縮を維持するには伝熱面を撥液性に保たなければなりません。実際には運転を続けるうちに酸化や汚れで濡れ性が変わり、膜状凝縮に移行してしまいます。
ヌセルトの理論式
膜状凝縮の熱伝達率は、ヌセルト(Nusselt)が1916年に導いた理論式で見積もれます。液膜が重力で流れ落ちる際の厚さから、熱抵抗を求めるという考え方です。
垂直面(垂直平板・垂直管の外側)
$$h_m=0.943\left[\frac{ρ_l(ρ_l−ρ_v)gλ_l^3 r}{μ_l L(T_s−T_w)}\right]^{1/4}$$
hm:平均熱伝達率[W/(m2・K)]
ρl、ρv:液・蒸気の密度[kg/m3]
g:重力加速度[m/s2]
λl:凝縮液の熱伝導率[W/(m・K)]
r:凝縮潜熱[J/kg]
μl:凝縮液の粘度[Pa・s]
L:垂直方向の長さ[m]
Ts:飽和温度、Tw:壁面温度[K]
水平単管の外側
$$h_m=0.725\left[\frac{ρ_l(ρ_l−ρ_v)gλ_l^3 r}{μ_l d(T_s−T_w)}\right]^{1/4}$$
d は管外径[m]です。垂直面の式と形は同じで、代表長さが L から d に変わり、係数が 0.943 → 0.725 になっています。
式から読み取れること
・代表長さの−1/4乗に比例する。長い(高い)ほど液膜が厚くなり性能が落ちる
・温度差の−1/4乗に比例する。温度差を大きくすると凝縮量が増え、液膜が厚くなって h は下がる
・凝縮潜熱 r が大きいほど h が大きい(水蒸気が有利な理由)
・凝縮液の粘度が高いと h が下がる
水平管群では下段ほど性能が落ちる
多管式コンデンサでは、シェル側に多数の管が並んでいます。上の管で凝縮した液が下の管に滴り落ちるため、下段ほど液膜が厚くなります。
N段重なった管群の平均熱伝達率は、単管の値に段数補正を掛けて見積もります。
$$h_N=h_1 N^{-1/4}$$
hN:N段の管群の平均熱伝達率
h1:単管(最上段)の熱伝達率
N:垂直方向に重なる管の段数
| 段数 N | 補正係数 N−1/4 | 単管に対する性能 |
|---|---|---|
| 1 | 1.00 | 100% |
| 4 | 0.71 | 71% |
| 9 | 0.58 | 58% |
| 16 | 0.50 | 50% |
| 25 | 0.45 | 45% |
実務では冷却側が律速する
凝縮側の熱伝達率が数千〜1万5千という値であることを、他の流体と比べてみます。
| 側 | 熱伝達率 h[W/(m2・K)] |
|---|---|
| 水蒸気の凝縮 | 8,000 〜 15,000 |
| 有機蒸気の凝縮 | 1,000 〜 3,000 |
| 冷却水(管内) | 3,000 〜 6,000 |
| 空気(空冷) | 30 〜 60 |
水蒸気コンデンサでは、凝縮側 10,000 に対して冷却水側 4,000。熱抵抗で見れば凝縮側 1.0×10−4、冷却水側 2.5×10−4 で、冷却水側のほうが大きいことになります。
汚れ係数を加えれば、その差はさらに開きます。
ただし例外があります。有機蒸気の凝縮では h が 1,000〜3,000 と低く、凝縮側が律速になることがあります。潜熱が小さく、粘度が高く、熱伝導率が低いためです。
さらに不凝縮ガスが混じると、凝縮側の h は一気に落ちます。これは別記事で詳しく扱います。
ゾーン分割 ― U が一定でない場合
コンデンサでは、伝熱面の場所によって U がまったく違うことがあります。単一の U と ΔTlm で計算すると大きく外します。
典型的なのは、過熱蒸気が入ってくる場合です。
| ゾーン | 何が起きているか | U の傾向 |
|---|---|---|
| 過熱除去部 | 過熱蒸気が飽和温度まで冷える(顕熱) | 低い(気体の顕熱伝熱) |
| 凝縮部 | 飽和蒸気が凝縮する(潜熱) | 高い |
| 過冷却部 | 凝縮液がさらに冷える(顕熱) | 低い(液の顕熱伝熱) |
過熱除去部の U は凝縮部の 1/10 以下になることもあります。ここを凝縮部と同じ U で計算すると、必要面積を大幅に過小評価します。
対処はゾーンごとに分けて計算し、面積を足し合わせることです。
1. 各ゾーンの熱負荷 Qi を熱収支から求める
2. 各ゾーンの ΔTlm,i を、そのゾーンの入口・出口温度から求める
3. 各ゾーンの Ui を求める
4. Ai = Qi/(Ui・ΔTlm,i) を計算し、合計する
温度差補正係数 F は要らない
純粋な凝縮部では、片側の温度が一定なので流れの向きが結果に影響しません。したがって F = 1 として扱えます。過熱除去部や過冷却部は顕熱なので、そこだけ F を考えます。
ドレン排出は性能そのもの
凝縮器で見落とされがちなのが、凝縮液(ドレン)の排出です。
凝縮液が機器内に滞留すると、その部分の伝熱面は液に浸かった状態になります。凝縮による高い熱伝達率は失われ、液の顕熱伝熱(数百 W/(m2・K))に落ちます。
チェックポイント
・ドレン出口ノズルの位置と口径は適切か(機器の最下部にあるか)
・スチームトラップの容量は足りているか。詰まっていないか
・ドレン配管の背圧が高すぎないか(下流の圧力でドレンが押し戻されていないか)
・立ち上がり配管があると、その高さ分の液柱が背圧になる
・真空系では、大気圧に排出するのに十分な液封高さ(バロメトリックレグ)があるか
とくに真空系の凝縮器は要注意です。機器内が負圧なので、ドレンを自然流下で抜くには10 m 前後の液柱が必要になります。これが確保できない場合はドレンポンプを設けます。
横型と縦型の使い分け
| 横型(シェル側凝縮) | 縦型(管内凝縮) | |
|---|---|---|
| 最も一般的 | ○ 標準 | △ 特定用途 |
| 凝縮側の h | 高い | やや低い(液膜が長く流れる) |
| ドレン排出 | 下部から容易 | 下向き流れで排出しやすい |
| 設置スペース | 水平方向に必要 | 垂直方向。設置面積が小さい |
| 向く用途 | 一般的な凝縮全般 | 真空系(圧損が小さい)、還流凝縮器 |
蒸留塔の塔頂に直結する還流凝縮器では、縦型を塔上部に取り付けて凝縮液を重力で塔に戻す構成が使われます。配管が短くなり、圧力損失も小さくできます。
まとめ
・設計は膜状凝縮を前提にします。滴状凝縮は高性能ですが持続しません。
・ヌセルトの式では、h は代表長さと温度差のそれぞれ −1/4乗に比例します。温度差を大きくしても h は上がりません。
・水平管群では下段ほど液膜が厚くなり、N 段で N−1/4 の補正がかかります。
・水蒸気コンデンサでは凝縮側の h が大きく、通常は冷却側が律速します。有機蒸気では凝縮側が律速することもあります。
・過熱蒸気や過冷却がある場合はゾーン分割して計算します。凝縮部だけなら F = 1 です。
・ドレンが滞留した分だけ伝熱面積が減ります。排出経路の確認は性能確認そのものです。
次は、コンデンサの性能を静かに破壊する不凝縮ガスの問題を扱います。
参考文献
- 尾花英朗『熱交換器設計ハンドブック(増訂版)』工学図書、1974年(1994年 2版6刷)、第2部 伝熱概論 第8章「対流伝熱」8・2 相変化を伴う対流伝熱(凝縮)、第4部 第25章「直接接触式凝縮器の設計法」 Amazonで見る
- 日本機械学会『伝熱工学(JSMEテキストシリーズ)』日本機械学会、2023年、第5章「相変化を伴う伝熱」 Amazonで見る
- 相原利雄『伝熱工学(機械工学選書)』裳華房、1994年、第5章「相変化を伴う熱伝達」 Amazonで見る
- 吉田邦夫・吉田英生 監修『熱交換器ハンドブック』省エネルギーセンター、2005年、II編1「多管式熱交換器」1.2 水冷・プロセス流体 (2)混合ガス+水蒸気の伝熱計算フロー Amazonで見る
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