最終確認:2026年11月3日
電験三種の電力で、架空送電線路の6つの論点をまとめた辞書です。電線とがいし・付属品の役目、塩害・振動・雷・コロナ・誘導障害の起こり方と対策を、対にして確かめます。
電力の論点:水力発電①|水力発電②|火力発電①|火力発電②|原子力発電|新エネルギーと分散型電源|変電所|架空送電線路|送電の特性
架空送電線路の構成 ── 軽くて強い電線を、がいしで絶縁し付属品で守る

| 部品 | 役目 | 押さえる所 |
|---|---|---|
| 支持物(しじぶつ)(鉄塔など) | 電線を支える | 送電電圧66 kV以上の線路では、一般に鉄塔を使う |
| がいし | 電線と支持物を絶縁する | 硬質の磁器。電線から支持物を伝って大地へ電流が流れるのを防ぐ |
| 電線 | 電気を送る | 鋼心アルミより線か硬銅(こうどう)より線。ふつうは被覆の無い裸線 |
| 架空地線(かくうちせん) | 鉄塔の最上部で雷を受ける | 鉄塔を通して接地した裸線。光ファイバを入れた物もある |
| アークホーン(あーくほーん) | アークを、がいしから離す | がいし連の両端に付ける金属の電極 |
| ダンパ(だんぱ) | 電線の振動のエネルギーを吸う | 電線に付けるおもり。微風振動(びふうしんどう)による断線を防ぐ |
| アーマロッド(あーまろっど) | クランプ付近の電線を補強する | 振動による断線と、アークによる溶断を防ぐ |
電線は、アルミで軽く鋼心で強くした鋼心アルミより線を多く使い、がいしは表面で放電させてアークホーンで守ります。付属品は、何を守るための部品かで覚えます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| がいしは、異常電圧で内部が絶縁破壊するように作る | 磁器の中を突き抜ける前に、表面でフラッシオーバするように作る |
| トーショナルダンパは、着雪を防ぐための器具 | 微風振動のエネルギーを吸う器具。着雪には難着雪リング、ギャロッピングには相間スペーサ |
| 懸垂がいし(けんすいがいし)の連結個数は、許容電流に応じて決める | 送電電圧に応じて決める。電圧が高いほど多く連ねる |
| 架空地線には、絶縁電線を張る | 鉄塔を通して接地した、裸の電線を張る |
- 架空送電線路は、鉄塔などの支持物に送電線を張り、空中を通して電気を送る線路です。
- 送電線・支持物・がいし・架空地線と、付属品でできています。
- 鋼心アルミより線は、アルミ線で質量を小さくし、それで足りなくなる強さを鋼心で補った電線です。
- ねん架(ねんか)は、各相の作用インダクタンスと作用静電容量をそろえるため、電線の位置を入れ替えることです。ジャンパ線を使って入れ替えます。
電線と、送電線の配列
| 比べる所 | 硬銅より線 | 鋼心アルミより線 |
|---|---|---|
| 導電率 | 高い(約97%) | 低い(約61%) |
| 値段 | 高い | 安い |
| 引張強さ | 小さい | 大きい |
| 重さ | 重い | 軽い |
| 同じ抵抗にしたときの外径 | 小さい | 大きい |
| 風圧荷重 | 小さい | 大きい |
| コロナ | 出やすい | 出にくい |
- 硬銅より線は、導電率の高い硬銅線を、何本もより合わせた電線です。
- 鋼心アルミより線は、中心に引張強さの大きい亜鉛めっき鋼線を置き、そのまわりに硬アルミ線をより合わせた電線です。
- 軽いので、鉄塔にかかる荷重が小さく、電線の垂れ下がりも小さく抑えられます。そのため、鉄塔の間隔(径間(けいかん))を広くとれます。
- 外径が大きい分、風を受ける力(風圧荷重)は大きくなりますが、コロナは出にくくなります。
| 電線の太さを決めるときに見ること | 太くすると |
|---|---|
| 機械的強度 | 引張強さが増し、張力や風・氷雪の荷重で切れにくい |
| コロナ放電の抑制 | 表面の電位の傾きが下がり、コロナが出にくい |
| 電圧降下(でんあつこうか)と線路損失 | 抵抗が小さくなり、どちらも小さくなる |
- 雷や開閉の操作で出るサージの波高は、電線の太さでは決まりません。避雷器(ひらいき)と絶縁の設計で扱うことです。
- 1相の電線を1本で送る方式が単導体方式、2本以上に分ける方式が多導体(たどうたい)方式です。
- 多導体では、1相の電線どうしが触れないよう、スペーサ(すぺーさ)で間隔を保ちます。多導体の働きは、コロナ放電と多導体の論点にまとめました。
- 日本の送電線は、1基の鉄塔の左右に1回線ずつ張る2回線垂直配列が主流です。1回線が事故で止まっても、残りの1回線で送電を続けられます。
- 縦に並べると、各相の間の距離が違うので、各相の作用インダクタンスと作用静電容量がそろいません。各相の電圧降下がそろわず、三相が不平衡になります。
- そこで、区間ごとに電線の位置を入れ替えるねん架をします。誘導障害を抑える働きは、誘導障害の論点で確かめます。
がいし・付属品と、電線のたるみ
| がいし | 形 | 特徴 |
|---|---|---|
| 懸垂がいし | 笠の形の磁器を、いくつも連ねる | 送電線でいちばん多く使う。棒の形ではない |
| 長幹がいし(ちょうかんがいし) | 円柱の形の磁器にひだを付け、両端に金具 | 雨で汚れが流れる雨洗効果が大きい |
- 懸垂がいしの裏にはひだがあります。表面に沿った距離(沿面距離(えんめんきょり))を長くし、表面を伝わる漏れ電流を抑えます。
- 異常電圧が来ると、がいしの表面の空気で放電します。これがフラッシオーバで、電流は電線からがいし・鉄塔を通って大地へ流れます。
- 空気中の放電なら、雷の過電圧が去れば絶縁が戻ります。遮断器(しゃだんき)を入れ直す再閉路(さいへいろ)で、送電を続けられることがほとんどです。
- 磁器の中を突き抜けると、がいしが壊れます。だから、表面のフラッシオーバが先に起きるように作ります。

- 表面で放電しても、熱と衝撃でがいしが傷みます。そこで両端のアークホーンの間でアークを起こし、がいしから離します。
- がいしの性能を問う型もあります。フラッシオーバ電圧・汚れたときの特性・機械的強度などが関係し、系統の短絡(たんらく)電流は関係しません。
| 部品 | 付ける所 | 役目 |
|---|---|---|
| スペーサ | 多導体の、同じ相の電線の間 | 電線どうしが触れないよう、間隔を保つ |
| 相間スペーサ | 相と相の電線の間 | 強風などで相どうしが近づき、触れるのを防ぐ |
| クランプ | がいし連の先 | 電線をがいしに引き留める。ジャンパともつなぐ |
| ジャンパ | 引き留めた電線どうしの間 | がいしで分かれた電線を、電気的につなぐ |
| 埋設地線(まいせつちせん) | 鉄塔の脚の地下 | 鉄塔の接地抵抗を下げ、逆フラッシオーバを防ぐ |
| 難着雪リング | 電線 | よりに沿って滑る雪を落とし、氷雪が付くのを防ぐ |
- アーマロッドは、クランプ付近の電線に、電線と同じ材質の線を巻き付けた補強材です。
- 埋設地線は、鉄塔の脚の地下に放射状に埋めた接地線です。いくつかの鉄塔を地下で結ぶ物もあります。
- ダンパの種類と振動の見分け方は、電線の振動の論点にまとめました。

- 電線を鉄塔の間に張ると、電線の自重で弛度(ちど)が生じます。たるみを小さくするには、強く引っ張ります。
- 金属は温度が上がると伸びます。夏は電線が伸びてたるみが大きくなり、地面や建物に近づきます。
- 冬は縮んでたるみが小さくなり、張力が大きくなります。夏に強く張りすぎると、冬に切れるおそれがあります。
- そこで、張力を許容引張荷重(きょようひっぱりかじゅう)以下に保ち、夏も下がりすぎないたるみを決めて張ります。
言葉の式 たるみ = 合成荷重 × 径間の2乗 ÷(8 × 水平張力)
D:電線のたるみ(弛度)〔m〕 W:電線1 m 当たりの合成荷重〔N/m〕 S:径間〔m〕 T:電線の水平張力〔N〕
言葉の式 許容引張荷重 = 引張強さ ÷ 安全率
Ta:許容引張荷重(張ってよい張力の上限)〔kN〕 Ts:引張強さ〔kN〕 f:安全率(硬銅線は2.2、その他の電線は2.5)
- たるみと電線の実長の計算は、電力の計算の論点②の「電線のたるみ」で扱います。
がいしの塩害 ── ぬれた塩分に漏れ電流が流れ、沿面距離を長くして防ぐ

| 対策 | すること | 効く理由 |
|---|---|---|
| がいしを直列に増やす(過絶縁) | 懸垂がいしの連結個数を、直列に増やす | 沿面距離が長くなり、漏れ電流が流れにくい |
| 耐塩がいし | ひだを深くした、表面の距離の長いがいしを使う | 同じく沿面距離が長くなる |
| 長幹がいし | 円柱の磁器にひだを付けたがいしを使う | 雨洗効果が大きく、汚れが残りにくい |
| 洗浄 | 充電したまま水をかける活線洗浄などで洗う | 表面の塩分を取り除く |
| はっ水性物質の塗布 | シリコーンコンパウンドなどを塗る | 水をはじき、塩分も付きにくい。塗り替えが要る |
| 送電ルートの選定 | 塩害の起きやすい所を避ける | 塩分が付きにくい |
塩分で汚れたがいしがぬれると、表面に漏れ電流が流れるので、沿面距離を長くし、洗い、はっ水性物質を塗って防ぎます。絶縁電線や多導体は、がいしの表面を変えないので対策になりません。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| がいしの塩害対策に、絶縁電線の採用がある | 絶縁電線は電線を覆うだけで、がいしの表面は変わらない。多導体にするのも同じで、対策にならない |
| 懸垂がいしを並列に増やし、表面漏れ距離を短くする | 直列に増やし、表面漏れ距離を長くする |
| がいしの表面に、吸湿性の物質を塗る | 水をはじく、はっ水性の物質を塗る |
| 塩分が付くと、がいしの表面に過電圧が出る | 流れるのは漏れ電流(もれでんりゅう)。雑音や電波障害、フラッシオーバのもとになる |

- 海沿いでは、海からの風で塩分が運ばれ、がいしの表面に付きます。塩分は電気を通す物質です。
- 乾いている間は、漏れ電流はほとんど流れません。濃い霧や小雨でぬれると塩分が溶け、表面に電気を通す膜がつながります。
- 漏れ電流が増えると、可聴雑音や電波障害のもとになります。やがて、ふだんの電圧でもフラッシオーバを起こします。これががいしの塩害です。
塩害の起こり方と、再閉路
- 塩分は、台風や季節風で一度に運ばれることがあります。ばい煙などの汚れも、同じように絶縁を下げます。
- 汚れは塩分だけではありません。ちりやほこりのように水に溶けない物が多く付いても、絶縁は下がります。
- 漏れ電流が流れるだけで、雑音や電波障害は出ます。フラッシオーバまで進まなくても害になります。
- 雷の過電圧は一瞬で去るので、再閉路で送電を続けられることがほとんどです。塩害の地絡(ちらく)は、汚れと湿りが残る間はまたフラッシオーバします。
- そのため、再閉路に失敗しやすいのは、雷より塩害による地絡のほうです。
- 塩害などで表面の絶縁が下がると、表面に途切れ途切れのアークが出て地絡し、過電圧が出ることもあります(間欠アーク地絡)。
対策の考え方
- がいしの連結個数は、汚れの程度と電圧の階級を考えて決めます。
- 長幹がいしは、懸垂がいしのように笠を連ねず、1本の棒の形の磁器で作ります。穴埋めでは、ピンがいしとの取り違えに気を付けます。
- ピンがいしは、配電線の電柱の腕金の上に立てて、電線を支えるがいしです。
- ラインポストがいしも、電線と支持物を絶縁するがいしの種類の1つです。
- 対策の言葉は、漏れ電流と過電圧、はっ水と吸湿、直列と並列、長くと短く、の組で入れ替えられます。
電線の振動 ── 風か氷雪かで見分け、原因に合う器具で防ぐ

| 振動 | 起こり方 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 微風振動 | 氷雪の無い電線に、直角に弱い一様な風。後ろの渦で細かく上下に振れる | ダンパ・アーマロッド |
| サブスパン振動(さぶすぱんしんどう) | 多導体に強い風。スペーサとスペーサの間で、電線どうしが揺れる | スペーサの間隔を適切にする |
| ギャロッピング(ぎゃろっぴんぐ) | 翼の形に氷雪が付いた電線に風。揚力で大きく上下に踊る | 相間スペーサ・難着雪リング |
| スリートジャンプ(すりーとじゃんぷ) | 付いた氷雪が一度に落ち、その反動で電線が跳ね上がる | オフセット・難着雪リング |
| コロナ振動 | コロナ放電のとき、電線の水滴が飛ぶ反動で細かく振れる | 風による振動とは別のもの |
風だけか、多導体か、氷雪が付いたか、氷雪が落ちたかで振動を見分け、原因に合う器具で防ぎます。振動の名前と対策は、対にして覚えます。
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 一様な微風で電線の後ろに渦ができて上下に振れるのは、サブスパン振動 | それは微風振動。サブスパン振動は、多導体のスペーサの間で起きる |
| ギャロッピングは、多導体では起きにくい | 単導体より多導体、細い電線より太い電線で起きやすい |
| 微風振動は、重い電線で、径間が短く、張力が小さいほど起きやすい | 軽い電線で、径間が長く、張力が大きいほど起きやすい |
| 付いた氷雪が落ちた反動で跳ね上がるのは、ギャロッピング | それはスリートジャンプ。ギャロッピングは、氷雪が付いた電線が風で踊る |
- 電線が風などで振れると、断線したり、電線どうしが触れて短絡したりします。
- 氷雪が無ければ、微風振動かサブスパン振動です。サブスパン振動は、多導体だけに起きます。
- 氷雪があれば、付いたまま風で踊るのがギャロッピング、落ちて跳ねるのがスリートジャンプです。
微風振動とサブスパン振動
- 電線に直角に、毎秒数メートル程度の弱い風が一様に当たると、電線の後ろにカルマン渦という空気の渦ができます。
- 渦は電線の上と下に交互にできて、上下に交互の力を加えます。この周期が電線の固有振動数と合うと、振動が続きます。
- 周波数は約10〜60 Hz(ヘルツ)で、細かい振動です。
- 起きやすいのは、平地で径間が長い所、張力が大きい所です。直径の割に軽い電線(硬銅より線より鋼心アルミより線)で起きやすくなります。
- 風の速さと向きが一定のとき、早朝や日没のころに起きやすくなります。
- 長く続くと、電線を支える所の近くで、金属疲労により断線するおそれがあります。
- ダンパ(ストックブリッジダンパ・トーショナルダンパ)で、振動のエネルギーを吸い取ります。トーショナルダンパは、なすの形のおもりを反対向きに付け、上下の振れをねじれに変えて吸います。
- アーマロッドで支える所の近くを補強し、長すぎる径間を避けます。
- サブスパン振動は、多導体に固有の振動です。スペーサとスペーサで区切った区間を、サブスパンと呼びます。
- 風上の電線の後ろの流れの中で、風下の電線が不安定になって揺れ出します。水平の動きの大きい、ゆっくりした振動(約1〜3 Hz)です。
- 風速数〜20 m/sで起き、10 m/sを超えると激しくなります。
- スペーサや、電線を支える所がすり減るもとになります。スペーサの間隔を適切にし、支える所で振動のエネルギーを吸います。
ギャロッピングとスリートジャンプ
| 比べる所 | ギャロッピング | スリートジャンプ |
|---|---|---|
| 氷雪 | 翼の形に付いている | 付いていた氷雪が一度に落ちる |
| 動き | 揚力で上下と横に大きく踊る。長く続く | 落ちた反動で跳ね上がる |
| 起きやすい | 多導体、太い電線 | 径間のある範囲で、氷雪が一斉に落ちたとき |
| 害 | 相と相が触れる相間短絡 | 相間短絡と、鉄塔などの破損 |
| 対策 | 相間スペーサ、難着雪リング、径間を短く、起きにくいルート | オフセット、水平の配列、上下の間隔を広く、径間を短く |
- オフセットは、上下の電線を縦一列に並べず、横にずらす配置です。跳ね上がっても、上の電線に触れません。
- スリートジャンプには、たるみを小さくすることも効きます。
- ギャロッピングにダンパを挙げる資料もあります。多導体のスペーサも、ギャロッピングを抑える働きがあるとして扱われます。
- コロナ振動は、穴埋めでサブスパン振動と入れ替えられることがあります。多導体で強い風の振動はサブスパン振動です。
雷害と架空地線 ── 架空地線で雷を受け、接地抵抗を下げて逆フラッシオーバを防ぐ

| 雷害 | 起こり方 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 直撃雷(ちょくげきらい) | 電線に雷が直接落ちる。数百万V以上の過電圧で、がいしがフラッシオーバする | 架空地線で電線を遮へいする |
| 誘導雷(ゆうどうらい) | 雷雲の下の電線に逆の電荷がたまり、雷雲の放電で解き放たれて電線を進む | 架空地線で電荷を分け、影響を軽くする |
| 逆フラッシオーバ(ぎゃくふらっしおーば) | 鉄塔や架空地線に落ち、鉄塔の電位が電線より非常に高くなって、鉄塔から電線へ放電する | 埋設地線で鉄塔の接地抵抗を下げる |
架空地線で雷を受け止め、鉄塔の電位の上がりは、埋設地線で塔脚接地抵抗を下げて小さくします。電線に落ちた雷で起きるのがフラッシオーバ、鉄塔に落ちた雷で起きるのが逆フラッシオーバです。
言葉の式 鉄塔の電位上昇 = 塔脚接地抵抗 × 鉄塔を流れる雷撃電流
V:鉄塔の電位上昇〔V〕 R:塔脚接地抵抗〔Ω〕 I:鉄塔を流れる雷撃電流〔A〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 電線に雷が落ちたときの逆フラッシオーバを、塔脚接地抵抗を下げて抑える | 逆フラッシオーバは、鉄塔や架空地線に落ちた雷で起きる。電力線への雷で起きるのはフラッシオーバ |
| 架空地線の遮へい角は、大きいほど直撃雷を防ぐ | 小さいほど電線が架空地線の陰に入り、よく防ぐ |
| 鉄塔や架空地線に雷が落ちると、鉄塔から電線へ進行波が出る | 鉄塔から電線へ放電するのは、逆フラッシオーバ |
| 架空地線を張れば、誘導雷も防ぎきれる | 誘導雷の過電圧は低くできるが、防ぎきることはできない |

- 雷電流が鉄塔から接地抵抗を通って大地へ流れると、オームの法則で鉄塔の電位が上がります。
- 考えやすい数で確かめます。塔脚接地抵抗が10 Ω、鉄塔を流れる雷電流が30 kAのときです。
- 3×10⁵ Vは300 kVです。接地抵抗を半分にすれば、電位の上がりも半分になります。これが、埋設地線で接地抵抗を下げるわけです。
- フラッシオーバと逆フラッシオーバでは、電流の流れる向きが逆です。逆フラッシオーバは、鉄塔からがいしを通って電線へ流れます。
- どちらの放電も、アークホーンの間で起こして、がいしの破損を防ぎます。
- 配電線路では、雷の害のなかで、いちばん多く起きるのは誘導雷です。
架空地線と遮へい角

- 架空地線は、鉄塔の頂部に1条か2条張り、鉄塔を通して接地した裸線です。
- 架空地線から真下に下ろした線と、架空地線と電線を結ぶ線のなす角を、遮へい角と呼びます。
- 遮へい角が小さいほど、直撃雷を防ぐ効果が大きくなります。重要な系統では、架空地線を2条以上にして遮へい角を小さくします。
- 雷雲の下で、たまる電荷を電線と架空地線で分け合うので、誘導雷の影響も軽くなります。
- 通信線への電磁誘導障害を軽くする働きもあります。光ファイバを入れて通信に使う、光ファイバ複合架空地線(OPGW)も広く使われます。
ほかの雷害対策と、過電圧の分け方
| 対策 | しくみ |
|---|---|
| 不平衡絶縁 | 2回線で絶縁の強さに差を付け、弱い回線だけに雷電流を流して、2回線同時の停電を防ぐ |
| 架空地線の多条化 | 架空地線と電線の結合率が上がり、鉄塔に落ちたときのアークホーン間の電圧が下がる |
| 送電用避雷装置 | アークホーン間の電圧を抑え、雷による事故を減らす |
| アークホーン | 放電を電極の先の間で起こし、がいしの破損を防ぐ |
- 不平衡絶縁では、がいしの個数を左右の回線で変えて、絶縁の強さに差を付けます。
- 鉄塔逆フラッシオーバは、鉄塔の電位の上がりが、がいし連の衝撃フラッシオーバ電圧を超えて起きます。
- 径間逆フラッシオーバは、架空地線の径間の中ほどに雷が落ち、そこと電線の電位差が大きくなって起きます。
- がいしの絶縁は、強すぎてもいけません。直撃雷でフラッシオーバしないと、避雷器の性能を超えた過電圧が変電所の機器に加わるからです。
- 避雷器の酸化亜鉛素子は、非線形の抵抗の性質をもちます。ふだんの電圧では抵抗が大きく、サージの高い電圧では小さくなります。
| 種類 | 原因 | 例 |
|---|---|---|
| 外部過電圧(がいぶかでんあつ) | 系統の外からの雷 | 直撃雷・誘導雷・逆フラッシオーバ |
| 内部過電圧(ないぶかでんあつ) | 系統の中の操作や事故 | 開閉の過電圧、地絡時の健全相の電圧の上昇、フェランチ効果、間欠アーク地絡 |
- 開閉過電圧は、遮断器や断路器(だんろき)の開閉の操作で出る過電圧です。
- 過電圧は、波の形でも分けます。雷による外部過電圧と開閉過電圧はサージ性過電圧、1線地絡やフェランチ効果による物は短時間交流過電圧です。
- 誘導雷は、直撃でなくても、近くに雷が落ちて電磁誘導や静電誘導で出ます。
- フェランチ効果は、受電端が開放か軽負荷のとき、進み電流で受電端の電圧が上がる現象です。線路が長いほど著しくなります(線路定数とフェランチ効果の論点)。
- 中性点を直接接地すると、1線地絡で健全相の電圧の上がりは小さくなります。ただし、地絡電流は大きくなります(中性点接地方式の論点)。
コロナ放電と多導体 ── 表面の電位の傾きを、太い電線や多導体で下げる

| 条件 | コロナは | わけ |
|---|---|---|
| 電圧が高い | 出やすい | 表面の電位の傾きが大きくなる |
| 雨・雪・霧の日 | 出やすい | 晴れの日より、コロナ臨界電圧が低い |
| 気圧が低い所(山の上など) | 出やすい | 空気が薄く、絶縁が破れやすい |
| 気温が高い、湿度が高い | 出やすい | 気温が高いと空気が薄い。湿度が高いと臨界電圧が下がる |
| 細い電線、素線の多いより線 | 出やすい | 表面の電位の傾きが大きい。表面の凹凸も効く |
| 線間距離が小さい | 出やすい | 臨界電圧が下がる |
| 太い電線、多導体 | 出にくい | 等価半径が大きく、表面の電位の傾きが小さい |
電線の表面の電位の傾きが空気の絶縁耐力を超えるとコロナが出るので、電線を太くするか多導体にして傾きを下げます。傾きが小さくなると、コロナ臨界電圧は高くなります。
言葉の式 電界の強さ = 単位長さあたりの電荷 ÷(2π × 真空の誘電率 × 電線の半径)
E:電線表面の電界の強さ〔V/m〕 q:電線の単位長さあたりの電荷〔C/m〕 ε0:真空の誘電率〔F/m〕 r:電線の半径〔m〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| コロナ放電は、電線の電流密度がある値を超えると出る | 電線の表面の電界の強さ(電位の傾き)で決まる |
| 単導体にすると、多導体よりコロナを抑えられる | 多導体のほうが等価半径が大きく、コロナを抑えられる |
| コロナ臨界電圧は、気圧が高いほど低くなる | 気圧が低いほど低くなり、コロナが出やすい |
| 電線が太いほど、コロナが出やすい | 細いほど表面の電位の傾きが大きく、出やすい |

- コロナ放電(ころなほうでん)は、超高圧の架空送電線で、電線の表面の電界が空気の絶縁耐力を超え、表面の空気の絶縁が破れて放電する現象です。
- コロナが出始める最小の電圧が、コロナ臨界電圧です。低い音と薄白い光が出ます。
- 標準の気象は、20 ℃・1013 hPaです。このとき、電位の傾きが交流の最大値で約30 kV/cm、実効値(じっこうち)で約21 kV/cmを超えると出ます。
- 臨界電圧は、電線の太さ・表面の状態・線間距離・気象で変わります。出題は、上がるか下がるかの向きで問われます。
- 電線の表面の電界の強さは、電線の半径に反比例します。電線を太くすると、表面の電界が弱まります(電界と電束)。
- 電位の傾きは、単位の長さあたりの電圧です。100 Vの電極が5 m離れていれば、100÷5=20 V/mです。
- 値と単位は電界の強さと同じです。電位の傾きは電位の高い向きを正とし、電界は低い向きを正とするので、符号だけが逆になります。
- 同じ電圧なら、細い電線ほど表面のすぐそばで電位が急に下がります。表面の電位の傾きが大きく、コロナが出やすくなります。
コロナ障害と対策
| コロナ障害 | 中身 |
|---|---|
| コロナ損 | 放電で、電気が熱・光・音に変わる電力損失 |
| 通信線への誘導障害 | 近くの通信線に、雑音などの障害が出る |
| 受信障害 | テレビ・ラジオなどの受信に障害が出る。可聴雑音や電波障害のもと |
| 腐食 | 電線や付属の金具が腐食する |
| 消弧できない | 消弧リアクトル接地方式(しょうこりあくとるせっちほうしき)で、地絡のアークを消せなくなる |
- コロナ電流には高い周波数の成分が含まれるので、雑音や電波障害のもとになります。電線の振動(コロナ振動)を起こすこともあります。
- コロナは、電線だけでなく、がいしや金具にも出ます。
- 対策は、電線を太くする(太径化)、多導体にする、線間距離を大きくする、がいしの金具の突起をなくす、の4つが基本です。中空の電線を使う方法もあります。
- 突起には電荷が集まりやすいので、金具に丸みを持たせます。
- 電線を太くすると重くなり、鉄塔などを強くする必要が出ます。そのため、超高圧では多導体を使います。
多導体の特徴
| 多導体にすると(単導体と比べて) | わけ |
|---|---|
| コロナが出にくい | 等価半径が大きく、表面の電位の傾きが小さい |
| 送電容量が増える | 同じ断面積の単導体より表皮効果(ひょうひこうか)が小さく、電流を多く流せる |
| インダクタンスが減り、静電容量が増える | 計算に使う半径が大きくなる |
| 系統の安定度が上がる | インダクタンスが減り、送れる電力が増える |
| サブスパン振動が起きる | スペーサの間で、電線どうしが風で揺れる |
| 建設費が増える | 付属品が多くなる |
- 多導体は、1相に2〜8本程度の電線を使い、スペーサで間隔を保ちます。
- 同じ電位の電線の電荷が広がって並ぶので、見かけ上、太い1本の電線と同じ働きになります。これを、等価半径が大きくなると言います。
- 多導体で減るのはインダクタンスで、静電容量は増えます。穴埋めでは、この2つを入れ替えた選択肢に気を付けます。
- 多導体の電線の間隔を保つ部品は、スペーサです。シールドリングは、がいし連のまわりの電界を和らげる金具で、別のものです。
誘導障害 ── 電圧は静電誘導、電流は電磁誘導で、地絡のとき大きくなる

| 比べる所 | 静電誘導障害 | 電磁誘導障害 |
|---|---|---|
| 原因 | 電線の電圧 | 電線の電流 |
| 通り道 | 電線と通信線の間の静電容量(キャパシタンス) | 電線と通信線の間の相互インダクタンス(そうごいんだくたんす) |
| 平常時 | ねん架すれば三相のベクトルの和が0で、ほぼ0 V | 三相の電流のベクトルの和が0で、ほぼ0 V |
| 大きくなるとき | 地絡などで三相が不平衡になったとき | 1線地絡で、大地を通る地絡電流が流れたとき |
| 誘導電圧の大きさ | 静電容量の分圧で決まる | 周波数・相互インダクタンス・並行の長さ・電流に比例 |
| 特に効く対策 | 離隔・遮へい線・ねん架 | 中性点の接地抵抗を大きく・速く遮断・架空地線 |
電線の電圧が静電容量を通して起こすのが静電誘導、電流が相互インダクタンスを通して起こすのが電磁誘導です。ねん架した三相は平常時に打ち消し合いますが、1線地絡では打ち消されず大きくなります。
言葉の式 通信線の誘導電圧 = −jω × 単位長さあたりの相互インダクタンス × 並行区間の長さ ×(三相の電流の和)。大きさは 2πf × M × L × |電流の和|
E:通信線に誘導される電圧〔V〕 M:単位長さあたりの送電線と通信線の相互インダクタンス〔H/m〕 L:送電線と通信線の並行区間の長さ〔m〕 Ia+I_b+I_c:三相の電流のベクトル和(1線地絡では地絡電流 I_g)〔A〕 ω:交流の角周波数(=2πf)〔rad/s〕 f:周波数〔Hz〕
| よくある誤り | 正しくは |
|---|---|
| 電線の電圧が、相互インダクタンスを通して起こすのが静電誘導 | 電圧と静電容量の組が静電誘導、電流と相互インダクタンスの組が電磁誘導 |
| ねん架した三相では、誘導電圧の大きさの和が0になる | 0になるのは、ベクトルの和。大きさの和や差ではない |
| 誘導電圧が現れる事故は、三相短絡 | 三相短絡は三相がそろったままで、不平衡にならない。不平衡を生む1線地絡で現れる |
| 1線地絡のときの電磁誘導の電圧は、πfMLI | 角周波数2πfを掛けて、2πfMLI。並行の長さLが長いほど大きい |

- 電線と通信線が近いと、通信線に電圧が誘導されます。これが誘導障害(ゆうどうしょうがい)です。
- 静電誘導障害では、通信線に雑音などの障害が出ます。電線の真下の金属に電圧が誘導され、触れた人が感電することもあります。
- 電磁誘導障害でも、静電誘導障害と同じような障害が出ます。1線地絡では、感電の事故や通信障害のおそれがあります。
式で見る誘導電圧
- 電線と通信線、通信線と大地の間は、絶縁物を2つの導体ではさんだコンデンサと同じです。大地は抵抗率は高くても、断面積がとても大きいので導体とみなせます。
- 1本の電線では、2つの静電容量の分圧で通信線の電圧が決まります(コンデンサの直列・並列)。
言葉の式 通信線の電圧 = 電線と通信線の間の静電容量 ÷(その静電容量 + 通信線と大地の間の静電容量)× 電線の対地電圧
V0:通信線に誘導される電圧〔V〕 C1:電線と通信線の間の静電容量〔F〕 C2:通信線と大地の間の静電容量〔F〕 V:電線の対地電圧〔V〕
- 三相では、各相の静電容量と対地電圧の積の和で決まります。
言葉の式 通信線の対地電圧 =(各相の静電容量 × その相の対地電圧)の和 ÷(通信線と大地の静電容量 + 各相の静電容量の和)
E0:通信線の対地電圧〔V〕 Ca:a相と通信線の間の静電容量〔F〕 Cb:b相と通信線の間の静電容量〔F〕 Cc:c相と通信線の間の静電容量〔F〕 C0:通信線と大地の間の静電容量〔F〕 Ea:a相の対地電圧〔V〕 Eb:b相の対地電圧〔V〕 Ec:c相の対地電圧〔V〕
- 各相の静電容量が等しければ、三相の対地電圧のベクトルの和は0なので、通信線の電圧は0 Vです(平衡三相回路の計算)。等しくないと0 Vにならず、障害のおそれがあります。
- 電磁誘導は、電線の電流がつくる磁束の変化が、通信線と大地の間を貫いて起きます。理論の相互誘導と同じです(電磁誘導)。
言葉の式 通信線の誘導電圧 = 角周波数 × 相互インダクタンス × 電線の電流(大きさ。位相は j で90°進む)
V0:通信線に誘導される電圧〔V〕 ω:交流の角周波数(=2πf)〔rad/s〕 M:電線と通信線の間の相互インダクタンス〔H〕 I:電線を流れる電流〔A〕 f:周波数〔Hz〕
- j は、位相(いそう)が90°進むことを表します(記号法)。大きさは、角周波数と相互インダクタンスと電流の積です。章の頭の三相の式に付く −j は、誘導される電圧の向きを逆に取った書き方で、大きさは同じです。
- 三相の電流の和は、平常時は0です。1線地絡では、和が地絡電流になり、上の三相の式の大きさは2π(パイ)fMLIです。
ねん架と、誘導障害の対策
- ねん架では、送電線の全長を3の倍数(3・6・9等分など)に区切り、各相の位置関係が全体で同じになるように入れ替えます。
- 各相のインダクタンスと静電容量の不ぞろいがなくなり、平常時の誘導電圧はほぼ0 Vになります。
| 対策 | 静電誘導障害 | 電磁誘導障害 |
|---|---|---|
| 電線と通信線の離隔距離を大きくする | 効く(静電容量が小さくなる) | 効く |
| 遮へい線・遮へい層のあるケーブル | 効く | 効く |
| 通信線を光ファイバケーブルにする | 効く(電気・磁気の影響を受けない) | 効く |
| 電線をねん架する | 効く | 効く |
| 中性点の接地抵抗を大きくする | ― | 効く(地絡電流が小さくなる) |
| 地絡した所を速く遮断する | ― | 効く(障害の続く時間が短くなる) |
| 架空地線 | ― | 軽くする |
- 遮へい線は、電線と通信線の間に設ける接地線です。通信線の代わりに遮へい線が静電誘導を受け、電線と同じ符号の電荷は大地へ流れます。
- 導電率の大きい遮へい線は、電磁誘導障害だけでなく、静電誘導障害にもよく効きます。
- 中性点を直接接地すると地絡電流が大きくなり、電磁誘導障害のおそれが大きくなります。高い抵抗での接地や、消弧リアクトル接地方式で、地絡電流を抑えます(中性点接地方式の論点)。
- 工場・現場では、計装の信号ケーブルを動力ケーブルから離して敷き、シールド付きのケーブルを使います。離隔と遮へいで誘導を減らす、同じ考え方です。
まとめ
架空送電線路は、鋼心アルミより線を、表面で放電させるがいしで絶縁し、架空地線と付属品で守ります。
塩害は沿面距離を長くし、振動は原因に合う器具で、雷は架空地線と埋設地線で防ぎます。
コロナは電線を太くするか多導体で抑え、誘導障害は静電と電磁の組で見分けます。
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参考文献
- 『みんなが欲しかった!電験三種 電力の教科書&問題集』TAC出版 初版(2018年) CH06 送電の章(SEC02 架空送電線路・SEC04 線路定数・SEC05 送電線のさまざまな障害)、CH12 電線のたるみと支線の章
- 『電験3種過去問マスタ 電力の20年間』2026年版 電気書院 第5章 送電
- 第三種電気主任技術者試験 電力・法規 問題(電気技術者試験センター) 平成28年度・平成29年度・平成30年度・令和元年度・令和2年度・令和3年度・令和4年度上期・令和4年度下期・令和5年度上期・令和5年度下期・令和6年度上期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期・令和8年度上期
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